約束のリアライズ   作:ひなせひろと

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第3章:見えてきたもの

 5年前。

 

「ルーカス~。洗濯終わったわよ~」

「ああ、ありがとう」

 夢の記憶。

「へへっ」

「っと……。どうした、急に抱き着いたりして」

「べっつに~?意味なんてないよ。ただなんとなく抱き着きたかっただけ」

「そうか……」

 いつものように思い出す。あの楽しかった日々を。かけがえのない日常を。

「……ねえ、あたし達ずっと一緒だよね?」

「もちろん」

「今はさ。こうして一緒にいる時間を楽しみたいけど……。いつかは一緒に住んで結婚して……。その……こ、子供……産みたいなって……思うんだ……」

「——ああ、誰似か楽しみだよな」

 出会って、仲良くなって、そのまま……。よくあるカップルに過ぎなかった。だからこそ楽しかった。

「ふふっ、どっちでもめちゃくちゃ愛するもんね~」

 

 

「ああ、俺達は婚約者。絶対に別れたりするもんか」

 

 

 しかし。この思い出が、最後だった。

 

-------------------------------------

 

「へへっ、今日も果物いっぱい採れたなー。ルーカスに渡して喜ばせちゃおっ」

 ルーカスの恋人サユリは、いつものように森に自然に生えてある果物を採って、ルーカスと一緒にピクニック気分で食べようとしていた。

「(良い実験台がいますねぇ……連れ去って実験をしてしまいましょうか)」

 ぶぉん。ゼルガはサユリに睡眠ガスをまきちらした。そう、彼女もこいつの毒牙にかかったのである。

「あ、れ……急に眠気が……すぅすぅ…… 」

「……ニィ」

 

 

「ああっ、ぐぅ!」

「ハァーッハッハ!その調子!その調子ですよォ!」

 

 

 

 サユリの悲鳴は、ゼルガの研究所内で、寂しくこだました……。

 

 

 

 

 

 

「はあ……はあ……。おい、サユリがどこにいったか知ってるか!?」

「いや、知らない。サユリがどうかしたのか?」

「いないんだよ!、3日前から!」

「なんだと!?」

 俺はパニックになった。あんなに近くにいたのに急に消えたのだから。変な事はしてない、果物を取りに行くと近くの森に行ったのを見守っただけだ。そこで怪しい噂も聞かない。何かを気を付けるわけがない。

「どこかに行くと置き手紙があったわけでもない……急に行方不明になるなどありえない、何かあったんだろうが、どこに連れていかれた……!」

「お、俺も探してみる!」

「ああ、よろしく頼む!」

 三日。それは、この時の俺にとってはすごく長い時間だった。一人では一日後にすぐに探した。森を重点的に探した。それでも見つからない。行方不明として捜索するのはまだ早いかと思ったが、急にいなくなること自体がおかしいのですぐに要請した。これが神の理不尽じゃなかったら一体何なんだ……。

「くそっ……くそっくそっくそ!」

 

 

 

「!サユ……リ?」

 そして、数日後。

「おい、サユリ!しっかりしろ!目を開けてくれ!」

「……」

「サユリいいいいいいいいいいいいいいいいい!」

 サユリはある日突然亡くなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ダグラスで泊まった日の夜。宿にて。

「(自分で見つけたのは不幸中の幸いだったのか、埋葬はすぐにできた)」」

 ルーカスは一人、レバニアルに入った原因を思い返していた。

「(こんな……こんな理不尽、受け入れられるか!絶対に犯人を見つけ出す!)」

 といっても、思い返すのはいつもである。

「(……入ってから3年、か。レバニアルへの加入も俺が5人目で遅かったが、今ではシグマ達大火事事件組も加わり人が増えた。ここで一気にあらゆる人間を調べて、犯人を見つけて仇を取る!あんな殺人事件の犯人が自殺しているわけがない!)」

 シグマのように、話を聞いて回ると言った事はした。しかし、死体だけ放置するように、姿や痕跡をそもそも見せていないのだ。これのせいで国も同情はしてくれても、真剣には探してはくれない。それでも全国各地で探し回ったが見つからず。だからレバニアルに入ったのだが、ひょんな事から(主にシグマ達ノーシュ組と出会ったから)城に入るきっかけが出来た。今ここで全て聞き出さなかったらなんなのか。

「サユリ、見ていてくれ……。絶対に犯人を見つけ出して見せる」

 

 

 

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 十数年前。アリアが14歳の時。

 

 

「ふんふふん、ふふ~ん」

 コリエーヌ家の令嬢アリアは、いつものように自分の部屋で、紅茶を飲みながら本を読むという休日を楽しんでいた。

 

「キャアアアアアアア!」

 

 その音は突然だった。アリアの場所は、階段もあってかかなり小さく聞こえる。ガシャンガシャンという窓ガラスや花瓶だと思われる物が壊れる音も。最初の数秒数十秒は無視していたが、しばらく続いたので、無視できなくなる。

「?下がなんだか騒がしいわねぇ……」

 アリアはこの騒音は何なのだろうと、一回に意識を向ける。その時だった。

「——ニィ……!」

 突然、謎の男が現れた。

「あ、あなた誰よ!」

 男は薄茶色の布に身をくるみ、服には宝石は武具、ちょっとした小瓶などの色んな装飾がされてあった。なぜそんな恰好をしているのだろうと、思わず言いたくなる、そんな服装だ。

「っぅぐ!あ”あ”っ!ううっ!」

 しかし、そんな事を思っていたら、すぐに手で口を封じられた。どうやらしゃべってもらったら困るらしい。

「(フフフ……これで彼女は体の成長が止まるはず。私の研究の成果が出れば首都での立場も安泰だ。それにあの薬は記憶も無くすように作ってある。記憶を無くした少女が路頭に迷い、どうするのか……フフッ、想像しただけでわくわくしますねぇ!)」

 男の手には毒薬が塗られてあった。しかも、体内に入れない限りなにも効果もしない、よく作られた薬を。アリアお嬢様の楽しい休日は、突然出出来た何者かによる薬の効果によって、記憶と共に壊された。

「(ですがまずは、自分の家の惨状を見て絶望してもらいましょうか……ヒヒャハァ!)」

 ゼルガは、好き放題したあげく、アリアを幼児化させた後すぐに去ってしまった。

 

 

 ゼルガがアリアの部屋に入る数分前。

「(ここは……コリエーヌ家でしたっけね。貴族に手をかけるのは社会の影響的にやらない方が良いかもと思いましたが……私の体の改造のため、犠牲になってください。私は研究が大好きなんです!)」

「がああっ、なっ、なんだこれはぁっ!」

「きゅ、急に眠く……息が……」

 使用人達が次々とバタバタ倒れる。

「ハハハ、ハーハッハッハッハ!」

 

 

 ゼルガに毒薬を体内に入れられ、何が起きたのかを知るために二階に降りてきたアリア。

「そ、そんな!」

 彼女は驚愕した。だっておりてきたら死んでいたのだ。全員。使用人や家族のだれもが。

「み、皆!どうして!」

 その死体は、とても気味が悪かった。白目をむいて、口を開けて、あきらかに突然死とわかるような、それでいて見せしめともとれるような、とにかく恐怖を与えるような不気味な感じ。それを、まだ成人していないアリアは—―

 

「あああ、あぁ……。うわああああああああああ!」

 

 発狂して、家を飛び出した。どうせいても意味がないのだ。とりあえず気味が悪い自宅にはいたくないという理性はなんとか働いていた。

 

 

 

 

「(私は何でここにいるんだっけ……)」

 首都までなんとかきたが、自宅にある財布を持ってきていないので、野宿するしかない。気がつけばもう夜だった。

「(ああ、確か急に使用人と両親が死んで……それでパニックになって逃げて……。ご飯は服を売って食べられたけど……あたしのこの体……誰にそうさせられたのか、そうさせたのがどういう奴だったか、覚えてない……」

 アリアは、自分が何をされたのかを理解していた。自分が今どういう状況なのかを理解していた。記憶がまだ完全には無くなっていないうちに、自分がしなきゃいけない事を必死に脳に刻み付ける。

「(そうだ私は……とにかく自分の体の事をわかってくれる人を探してここに……)」

 手あたり次第、人に話しかける。その必要がある。だからここに来たはずだ。

「あ、あのっ!」

 そう言って、たまたま一番近くにいた女性に話しかけた。

「はい?」

「今、時間ありますか!ちょっと相談があるんですけど!」

「相談?国や家族とかじゃなくて私に、ですか?」

「そうです!」

 迷っている暇はなかった。自分は今絶体絶命なのだ。とにかくその状況を説明しないと……。

「……まあ、いいですけど……」

「やった!初めて!」

「初めて?」

「し、信じられないかもしれないですけど、実はあたし……。体が成長しないんです!こう見えて14歳なんですけど……」

「じゅ、14歳?その身長で!?生まれつき低身長だったとかではなくて!?」

「そうなんです!何者かにそうさせられて……」

「……は、話で良いなら聞きますけど……」

 彼女、ファルペとの出会いは、アリアにとって、とても幸運なものだった。じゃなかったら、レバニアルを立ち上げて、逆襲をする事さえできていない。

「いやっ……でも流石に信じられないなぁ、あなたどう見ても幼女じゃないですか……。成人手前というのなら証拠を……」

 出会ってばかりのファルペでも、流石に常識をもってアリアに接していた。

「証拠ならありますあたしは、コリエーヌ家の長女です!(周囲にばれないように耳を当てて小声で)」

「コリエーヌ家!?」

 周囲にバレたら困るのでわざわざ小声で言ったのに、ファルペの大声で台無しになった。それぐらい、心の余裕はなかった。そして、彼女に説明し終え、はれて協力者になった頃には、コリエーヌ家の謎の死がベアトリウス中をかけめぐった。大火事事件と違って、とある世帯一つのみなので、どうしても国が動くには理由にかけていた。しかし、その後一応捜査をして、犯人の証拠を見つけられずという公式記録が残っている。

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