約束のリアライズ   作:ひなせひろと

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第3章:見えてきたもの

 ダグラスをシグマ達とベリアル達に任せ、マキナはアイカとレバニアル達を引き連れゼルガの研究所にやってきた。

 見渡す限り、砂浜と木。ちょっとしたバカンスのような場所の奥深く、あきらかに人工的に切り開いて作ったであろう土地に、その建物はあった。

「ここが、ゼルガという人の研究所……」

「こんな所で何してるんディスか?そのゼルガっていう人は」

 ディスカーがマキナに質問する。

 

「……実は、あいつの事は詳しくない。元々とある学校で魔法の研究をしていたらしいが、十数年前から国の一軍人となっている。何をしてきたのか元々あまり言わない奴でな、特に表立って悪い事はしていないから今まで放置して来たが……」

 

 いよいよもって狩る時が来た。そう言いたいようだった。

「来てみれば、確かにこんな所で何をしているんだと言いたくなるような場所だな……」

「入る前に少しそのゼルガという奴について教えてもらおうか。具体的にそいつはこの帝国で何をしているんだ?」

「そうか、お前らにはまだ誰が何の担当をしているのか説明していないんだったな。どこも大体同じだろうが、ゼルガは軍部増強と武器開発を任されている。だからこういう事をするのも許可しているんだが……」

「怪しい言動が見えると?」

「……一言で言えばそうだ」

 マキナは頷いて話を続ける。

「具体的には、研究協力をしていた部下が突然騎士をやめたり、世界各地にある珍しい素材を集めたり。軍人という肩書きだが、ほぼ科学者に近い事をしているんだ。つい3年前に軍人として仕事をしないのなら軍人扱いをしないと言ってただの役人になったばかりだ」

「そんな事が……」

 驚きの情報だった。普通側近でもない限り、暗殺も陰謀も企みずらいはず。こんな堂々と研究してるなんて、いったいどういう権力が働いているのか……。

「科学者扱いになるまでにやっていた仕事で一定の評価は得ていたから今まで所属させているが……ゼルガだけ、経歴が不明な時期があってな。後々独自に調査をしようと思っていた所だ。もちろん内容次第では追放、もしくは処分するつもりだった。だが、こういう事務的な事をするのは私しかいなくてな。今まで放置せざるをえなかったんだ。こういう形でお前らに言う羽目になるんだから、全く嘆かわしい話だよ。ようやくエジーナ人だとわかったからいいが……」

 ようやく話を終え、マキナはため息をつく。ベアトリウスは過去の栄光が過ぎ、少し衰退しているが安定もしていた。

「なにそれ、だったらほぼ黒じゃない」

 アリアが一言でさらっと結論を言う。

「昨日の今日ですから、誰が犯人なのか考えるとおそらくそのゼルガという人ぐらいしか犯行はできませんよね」

 

「……後処理が面倒なんだよ…………」

 

 マキナは都合が悪そうにそっぽを向いた。人手不足が響いているようだ。

「だからってやってもらわないとな。きちんと仕事をしているのは良い事だ」

 ルーカス達ベアトリウス人は、まだ全盛期の名残があるせいか、どうしてもその当時の圧政で物事を考えてしまう。しかし、今はその面影すらないほど、酷い有様なようだ。

「よくそんな状態なのに国民にバレていないわね。と言っても私達にはバレたけど」

 アリアがマキナを煽る。

「……国の事が知りたいならこの件が終わった後でいくらでも教えてやる。だが、今はそうじゃないだろう?」

「ええ、我々の推測が正しいのなら、ここで何かよからぬ事をしているはずです。気になる事は今は我慢しましょう」

「気を付けて入りましょう」

「ああ」

「……入るぞ。行方不明の件はここで終わらせる」

 

 

 

 

 

 

 

「なっ、こっ、これは……!」

「なにっ、ここ……異臭がするし、なんか暗い……」

 扉を開けて、中に入る。部屋は暗かったが、人が一人、ポツンといる事ぐらいは確認できた。朝日の関係で日の光はあるのだろう。

「!ゼルガ!」

 マキナが叫ぶ。

「これはこれは、マキナさんではありませんか。おや?知らない人達も。どうしたんですか、そんな大人数で。私に何かようですか」

「とぼけた事を……」

 ここにきて、まだ演技するようだ。

「今朝、急に行方不明になった国民が出た。お前、何か知らないか?」

「ああ、彼らの事ですか?彼らならあそこに……」

 言って、ゼルガが指さした方を見る。見せしめなのか、入って見つけやすい所にいた。マキナ達から見て斜め右前。そこには場違いな鉄の牢屋があった。誰がいつ、ここに作ったのだろうか。運んできたのだろうか。思わず考えたくなる。

「やっぱりいた!ダグラスの住民達よ!」

「住民達をどうするつもりだ?ここで何をするつもりだ!」

「どうもしませんよ。ただ、少し私の実験に協力してほしくてね……」

「ならどういう実験か言ってみろ!今までの怪しい行動を全て喋ってもらうぞ!」

「どうせ、最終的に死に至る奴でしょう?」

「……」

 ゼルガが急に黙る。その通りだと言いたかったのだろうか。

「とぼけたって無駄だ!なら、あそこにある白い物はなんだ!骨じゃないのか!?」

 研究所という名の実験室は、随分と掃除せず、ごみがほったらかしなようだった。

「眠らせて半ば強制的に実験をしようとしていて、こんな隠れた場所で異臭を放ち、いったい何の実験をしているっていうんだ!」

 

「俺のサユリのように殺すんだろ!」

 

 そしてルーカスは、自国の闇に触れた被害者として、大声で決定的な人物を言った。

「サユリ?誰の事ですかそれは?」

「ふふん、ついにあたし達の目的を言う時が来たようね」

 アリアも前に出る。

「あたしはアリア・コリエーヌ。記憶を無くし、無くした当時の謎を追っている貴族よ。あたしのこの幼児化の件、あんたなら何か知ってるんじゃないの?というか、あんたでしょう?あんたのような人間しかこのベアトリウス帝国でいないもの。マキナが言っていた事から察するに、ね」

「俺は元々、サユリが突然死体で見つかって、ずっとその謎を追いかけてきた。レバニアルに入ったのもそうだ。犯人じゃないというのなら、証拠を出してもらおうか」

 

「ふっ……フハハハハハハ!アーハッハッハッハ」

 

 ゼルガはずっとにんまり笑って黙って話を聞いていたが、アリアとルーカスの話を聞いて高らかに笑い始めた。いや、リアクションをした、という感じだろうか。

「ああ~、あなたあの時のお嬢様だったんですねぇ!いやあ~流石に忘れていましたよ!」

 

「だって、あの時からずっと変わらないんですから!」

 

「私の薬の効果がここまで効いているとは!実験は成功だったようですねぇ!」

 本人は何もかもわかっている。ゼルガはアリアの目の前で、堂々と自分が犯人だと告げた。というより、ここまで彼が物語を考えていた、というのが筋だろう。どうも、この男は何か面白いものを探している節がある。実験も、そういう事の一つなのだろう。

「そうです!私があなたをそうさせました!そんなに全てを知りたいなら、全部教えてあげますよ!あの時、何があったのかをね!」

 言って、ゼルガは右腕を前に出し手を開く。

「っ!お嬢様気を付け—―」

「!?」

 隣にいたファルペが気づいて、アリアの方に振り向いた。しかし、遅かった。

 

 

 

「あああああ!アアアアアアアアアアアッ!」

 

 

 

「エ”エ”ェァ!」

 アリアの叫び声と共に、彼女の頭上に黒い霧のようなものと、バチバチとした紫の電気がまとわり始める。

「アリアお嬢様に何をしたの!?」

「なにって、元に戻してあげたんですよ。記憶が知りたいんでしょう?私が張本人だってさっき言ったじゃないですか」

「お嬢様、大丈夫ですか!」

 

「ああっ、うぅ!」

 

「……」

 段々落ち着いていく。痛みがあるから、ではないようだ。 

 

「……ふふっ」

 

 そして、薬の中身が何だったのかを理解して、アリアは笑った。

「お嬢?」

 ディスカーが心配して話しかける。

 

「……皆、もう安心して。あたし、完全に記憶を取り戻したわ!」

 

 と、本人が言うが、他の皆は状況を理解しきれていない。しかしアリア本人はあーすっきりしたと言わんばかりの表情でクスクスと笑っていた。痛みよりも取り戻した記憶の方が嬉しいのだろう。

「取り戻した、って……」

 ファルペが困惑しながらアリアの様子を見守る。

 

「——やっぱりあんただったのね!わざわざあたしの記憶を蘇らせてくれるなんて、どういう風の吹き回しよ!」

 

「どうして蘇らせたかって?」

 指を差すアリア、答えるゼルガ。完全に二人だけの空気になっていた。

 

「——そんなの、絶望してほしかったに決まっているじゃないですか!実の両親も、使用人も死んで、孤独の身となったあなたが、どう私に再会するのか楽しみだったんですよ!素敵な仲間に出会えて良かったでちゅねぇ、コリエーヌお嬢様ぁ!」

 

「……ゲスいな、こいつ」

 ファルペも無言で頷いた。

「……」

 アイカは当然のように気味悪く後ずさる。

「ん~……ですが、少々私の想像とは違いますねぇ?なぜそんなにニコニコしているんですか?もっと絶望してくださいよ!」

 

「絶望はしていたさ。初期の頃はな」

 

「ほう……?」

 ルーカスがアリアの話を引き継ぎ、話す。

「だが、俺達レバニアルが、彼女の心を完璧にではないが癒した。だからこうしてアリアは立っていられる。流石のあんたも、幼児化の手助けをしてくれる奴がいるとは、思っていなかったようだな?」

「くっ……」

 本人としてはもっと時間が掛かった再会だったのだろうか。でも、出会った今となってはどうでもいい事だ。ゼルガの少し残念だという表情も、何もかもどうでもいい。ただ、むかつくから倒したい。そういう気持ちだけが、自分達をつき動かしている。

「それよりも俺のサユリの事だ!サユリはあんたが殺ったのか!?」

「だからサユリって誰の事ですか?私をイライラさせないでくださいよ」

「ポニーテールで、俺と似たような服を着ている奴だ!ちょっとつり目の!」

「……。……ああ~。そんな人も、いたかも知れませんねぇ。確かにここにはいませんから、もしかしたら出会っていたかもしれません」

「そんな人、だとぉ!?」

 単に忘れただけだ。ゼルガにとって、彼女サユリはついでに攫っただけだから。生き死にその物がどうでもよかった類の。

「……死体を見渡しましたが、毛や皮らしき欠片を発見。臭いは……ウン。ありマスね。この異臭はやはり実験の時にでる腐敗臭ディス。服までは洗ってないようディスね」

 忘れないうちに、とばかりに、ディスカーはこの研究室の周囲を見渡し、怪しい個所をまんべんなく見て回った。そして、あきらかに骨などがあるいわゆるごみのたまり場の所に行き、決定的な証拠を入手した。というか、見つかるに決まっているのだ。こんなわかりやすい事があるだろうか。なぜ今まで何年も気が付かなかった。わかりやすく行方不明もしてまで。なにがしたいのか。

「じゃあここでサユリさんがいた証拠が見つかれば……!」

「完全に殺したっていう証明ができるわね!」

しかし、この場所で、このゼルガという男が実験という名の殺人をしているのは判明した。となれば、やる事は一つ。

「ぐぎぎぃ~……。——ええ、そうですよ!そんなに知りたいなら教えてあげますよ!私は自分の体を改造するために色んな人達を集めて実験しています!興味ありませんから実験後の事なんて知りませんけどね!」

「興味ないだと?人を集めておいてなに言ってるんだお前は!」

 マキナがここに来て本当に良かったと心底思いながらゼルガに怒る。

 

「こんなに堂々と話すって事はノーシュの大火事事件もお前がやったんじゃないのか?」

 

「大火事事件?研究ばかりしていたのにわざわざ外国に行く時間があったと?」

「それぐらい疑わしい事をしているだろうが」

「……」

 マキナは心の中でハズレか……と思った。

 

 

「何を言うのかと思ったら……。私はただ死んだらそれ以上実験できないから、体が耐えられるかどうか人を集めて確かめてるだけです。人間の耐久力を調べているんですから、当然同じ人間を実験体にしないと意味がありませんよねぇ?だから集めたんです」

「——もういい」

 最初は驚き、途中からずっとふるふるわなわなと怒りで震えていたマキナが、これ以上ゼルガと会話する事を拒否する。

 

「ゼルガ、お前がこんな事をする奴だとは思わなかった。ここで処刑させてもらう!」

「ええ、殺した後でやってくださいよ!今までそうしてきたんですからっ……ねェっ!」

 

 キンキィン!

 

 ゼルガとマキナの剣が、それぞれぶつかり、金属音が鳴り響く。ゼルガの踏み込んだ一撃は、マキナが左足を一歩後ろに下げた事で受け止められた。 

「なぜ研究ばかりしていた?帝国のために生きているのではないのか?」

 マキナが質問をする。よそからやってきたこの男に。

「私は私のためだけに生きていますよ。この帝国が一番自分の価値観に近かったのは事実ですがね」

「……私はお前のような奴を守り、導きたくて軍人になったんじゃない!」

「でしょうね。だから今から殺すんでしょう?」

「——ああ。さよならだ、ゼルガ」

 言って、お互いに距離をとる。これは見ていたアリア達にとって、参戦しろという合図だった。

「行きますよ、お嬢様!」

「あたしもいつでも大丈夫よ」

 

「何もかもここで終わりにしてやる!」

 

「い、いったい何が始まるんだ?」

 牢屋に閉じ込められた行方不明者達は、ゼルガとの戦いを、ただ黙ってみている事しかできなかった。

 

 

 

 ゼルガとの戦いは、そう簡単ではなかった。定期的に薬を飲み、体を強化。幻惑と魔法を使って錯乱。いわゆる軍人的な攻撃の仕方はそこそこ理解しているぽかった。こっちは、戦闘人数が多いが、子供と、行方不明者、いわゆる実質的な人質持ちの戦いなので、そこまで有利というわけではない。また、戦いを通じて、ゼルガが人間の能力を明らかに超えているのを肌で感じた。

「ふっ!」

「たぁっ!」

 剣で攻撃。が、全て防いでくる。

「ハアアアア……!」

 無数の黒い球がこちらに襲い掛かって来る。

「いやぁ、人がたくさんいると戦うのが楽でいいですねぇ。全員を攻撃すればいいのですから、ねぇ?」

「ヒィッ!」

 ゼルガが行方不明者達の方をちらっと向いて笑う。きちんと標準に入っていますよという事だ。

「ふんっ、くだらん」

「貴様のゲスなセリフはもう聞き飽きた」

 お互いに、軽症のダメージは受けている。相手は防御力が高いだけ。しかし、決定的なダメージは与えられていない。こっちには回復役のイリーナがいるが、長期戦に持つれこんでしまうと、向こうが何をするのかわからない。

「同時攻撃をしよう」

「ああ」

 ルーカスとマキナがアリアに提案する。もちろんこれはゼルガに悟られないよう、回避時に、たまたま近くに移動したという体で行っている。割と高度な演技をしているのだ。

「どうやって?」

 アリアが言う。

「向こうは一人ずつこちらを倒そうとしている。そしてたまに全体攻撃をして、じわじわ追い詰めようともしている。盾役やわかりやすいおとりは引っ掛からない。なら、堂々と大きな一撃を叩き込む」

「問題はタイミングだ。こっちが攻めても、向こうは距離をとって来る。読み行動もあまり効果がなかった。なら……一人は近接、もう二人は遠距離がいいだろう。奴は自分のミスで食らったと思うはずだ。だから……」

「私の出番ディスね」

「ああ、よろしく頼む」

 マキナがディスカーの方を向いて頷いた。

「んん?」

 アリアが流石に立ち止まる。この時、ゼルガからは相変わらずファルペがアリアとマキナに対して回復しているように見える。しかし実際は作戦会議中だ。マキナ達の声が聞こえないよう、ルーカスやアリアは音がでかく聞こえるような攻撃をしている。わざと足音を立ててるとかだ。

「見ての通り、攻撃は魔法壁で塞がれます。食らえば致命傷ディスから。しかし、魔法弾を拡散弾させれば、相手は必ずそれ以外の方向に移動するしかないディス。もちろん魔法壁を貼りながら。ですからそこを叩いてください」

「う、うまくいくぅ?」

「いくかじゃないディス、いかせるんディス。自分の手で。アリアお嬢、今まで何のためにやって来たんディスか?」

「……」

 言われてアリアは、相手が定期的に背後から攻撃してきたり、とにかく急所を狙ってくるのを思い出した。

「いいディスか。絶・対・に・避・け・な・い・で・く・だ・さ・い・よ・」 

「わ、わかったわ……」

「ならはやく待機場所についてください。準備は俺がやります」

 合図はディスカー、という事だ。

 しばらく、錯乱のための攻撃が始まる。当たればラッキー、当たらなくても別に問題ない、そういう楽な攻撃を。相手からは決して楽しているようには見えない、戦闘の経験がある程度あるからこそできる攻撃を。

 そして、ゼルガによる何度目かのアリアに対しての魔法弾と本人の突き攻撃が来た時——

「今ディスっ!」

 アリアはいつものように反射的に剣を横にしてゼルガの突きを防ぐ。後ろの魔法弾は、ファルペが張ってくれたシールドで最小限に抑えた。少し痛い。アリアはこの状態で、何が起こるのかと思い待っていた。

 それはすぐだった。たまたまゼルガの後ろにいたディスカーがそのまんま拡散弾を連射する。作戦を聞いていないファルペ達は思わず驚いてとっさに走りながら距離をとった。

 

「「うぉおおおおおおおおおお!」」

 

 そして、ディスカーの左右にいた、ルーカスとマキナが、ルーカスは左から、マキナは右から置物をうまく利用しての空中攻撃をしかけた。これで、ゼルガはアリアの方向に避けるしかなくなる。ようするに、アリアが邪魔な存在となる。

「しまっ——」

 この、しまっ、が合図だった。

 アリアは腰を低くし、ゼルガのヒットアンドアウェイが当たらないようにしつつ、遠心力を乗せた回転居合切りをゼルガの腹部にお見舞いした。これで一瞬移動が鈍る。

 

 ダダダダダダ!

 

 ディスカーの放った魔法弾がいくつかゼルガにシールドが張られた状態で命中する。そしてルーカスの攻撃は背中に、マキナの攻撃はゼルガの頭に当たった。

 

「ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”!」

 

 バタッ、どさ……。ゼルガは絶叫と共に、憤死した。倒れてから死ぬまで、あっという間だった。

 

「……終わった、な……」

 

「ええ、少なくともアリアお嬢様にとっては」

「あっ……」

 アリアが自分の体を確認する。こちらからはよくわからないが、体の状態が元に戻り、身長が一瞬に数ミリ~5センチぐらいまで急に伸びたのだろう。まだ、目でわかるほどじゃないが、これで一安心だ。

「体の変化はよくわからないが、これはおそらく……」

「ええ。これから普通の成人女性として、身長がのびるはずディスよ」

「やったぁー!やったやったー!」

 アリアは大人だが、ぴょんぴょんと少女らしくジャンプして喜ぶ。

「皆ありがとう!よぉ~~~やく元に戻れたわ!」

 あー長かったぁ!と言うアリア。本当になんとしてでも戻りたかったらしい、どすが効いた声だった。

「まぁ、あたし達には変化がよくわからないけど……」

「うん。一緒に過ごせば、元に戻ったかどうかなんてわかるよね!」

「本当に終わったのね。なんだったんだろう、このゼルガっていう奴……作戦も都合よく決まったし……」

「……。行方不明になった人達を助けるぞ」

「ええ!」

 軍を辞めているアイカはゼルガの事がどうしても気になったが、それどころじゃないので先にさっさと捕まっていた行方不明者達を救出した。

 

 

 

 行方不明者は、丁度二桁に届かない九名。身動きが取れないよう縄でしばられていた。丁度、一人で管理ができるぐらいの、ギリギリの人数だ。マキナ達は彼らに、今までの状況を説明しながら、攫われた当時の様子を聞き、縄をほどいた。

「た、助けてくれて、ありがとうございます!」

「急にこんな所にいたかと思えば……そんな事が起きていたんですか……」

「……お前達には世話になった。感謝する」

 マキナが素直にアリア達レバニアルに礼を言う。

「おい、俺のサユリの件……」

「ああ……やった事として処理する。匂いが残っていると判明した以上、そのサユリとやらの匂いもすぐにわかるだろう」

「助かる(サユリ……仇は取ったぞ……)」

「……お前には同情すべきかもな。まさかこんな極悪犯罪者がいたとは」

 マキナがルーカスに同情する。

「サユリの件で、愛すべき母国であるはずのベアトリウスを信じられなくなったのは確かだ。だが、心のどこかでまだ信じている。……お前もそうだろ?」

「……。ああ、もちろん」

 この大人らしい会話で、二人には絆が出来たに違いない。シグマはそう思った。

「とりあえず、ダグラスに戻りましょうか。あたし達レバニアルの役目は終わったから、シグマ達に言って、解散しないと」

「寂しくなりマスね……」

「そうだのう……」

「あたしはお嬢様とこれからも一緒のつもりですけどね!」

「それは勘弁して……」

 アリアはファルペの言葉としぐさに苦笑した。

 

「……」

 

 外に出てダグラスの方に戻りながら、マキナはシグマ達がどうなっているか気になっていた。

 戦いが終わってなかったら、このまま連戦だからだ。

 

「(大火事事件、か……。今回の件はこれで終わりだが、気になる事は増えてしまった。変な繋がりもできてしまったし……)」

 戻りながらマキナは一人、休憩するまもなく、次の仕事について考えていた……。

 

 

 

 

 

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「お、なにこれ?」

 

 捕まる前の記憶。旅をし、普通に道草を歩いていた。そんな時列車を見つけた。

 

「列車?なになに、今後通るのここ?」

 

 地図なんて宝を探す時ぐらいしか見た事ないクーシャは、国境沿いに列車が通る事になるのを純粋に面白そうと思った。

 

「ラッキー!食料あるじゃん!盗んで食の足しにしよう!後は誰が盗んだのかわからないように証拠隠滅をさせて……っと……。ニヒヒヒヒ!」

 

 職業は完全犯罪型軽泥棒。食品が入っている木箱から一部ずさんな管理しているのを見つけ、そこから手とダガーで広げて穴を作り、広げる。そこから中に手を入れ自分の袋の中に移動させる。適当に布で拭いた後、すぐに列車から出ていった。

 

 もちろん、この時に当時忘れないよう列車のあちこちに貼ってあったスケジュール表をそのまま入れて持ち帰ったのだが、まさか食料の間にそんなものが入っていたなんてクーシャは思いもしなかった。

 

 

 

「はぁ……。あんな事しなければなぁ……」

 

 ノーシュの牢屋の中で後悔する。と言っても軽犯罪なので三か月で済む。軽犯罪で泥棒しているのも、最悪捕まった時に支払ったりすぐに外に出られやすくするためだ。本気で悪をしようなんて思っていない。宝を探しているのだって一獲千金のためだ。トレジャーハンターをしようにも手に入れる品の価値や財宝の場所がわからず金にならないから手っ取り早い泥棒をしているだけで。食料だって数日間分を1日でまとめて集めるのが基本だ。

 

 なのに、だ。

 

「私がこんな所にいるなんて……」

 

 隣の変な敬語男の声を聞いて嫌になる。独り言がうるさいからだ。

 

「順調だったのに!うまく定年までいけば金をたっぷり手に入れたままウハウハな老後が過ごせたのに……!おのれフェルミナ教!来世では負けんぞ!」

 

 なにやら嘆きながら悔しさを露にしている。隣の部屋のこいつが自分と同じ金目当てで神父をしていたとは。とても信じられない。しかもこいつは自分よりも罪が重い三年間。なにをしたんだ……聞きたくはないが気になる。

 

「……俺のしている事はいつかバレるだろうとは思っていた。だからここにいても不思議じゃない。だが、復讐心は消えぬ!まだ商人を殺したい!はぁ……だがそれはいつになるのか……。果たして兵士を騙し通せるのか……?」

 

「……」

 

 斜め右の牢屋に入っている怪しげなローブをまとった男は殺人罪らしいし、短い期間だからと男だらけの危険な空間にいる事が単純に嫌になり始めた。軽犯罪のよくある泥棒でこんな目にあうとは。

 

 

 

「(あ~もう、なんでどいつもこいつもあたしよりもヤバい事してるのよぉ-!あたしがやったのは軽犯罪。だからさっさと刑期を終えて、こんな所出ないと……!)」

 

 辺に話しかけちゃいけない奴がいる時点で、神経を使い、すり減る。今のうちに出ていった後の予定を考えた方が楽しく過ごせるだろう。しかしそれも、自分以外の犯罪者がいない自分一人だけの空間なら楽しいのだ。余計な事が耳に入る時点でうんざりする。

 

 クーシャは、刑務所から出るまでの三か月間、とにかく毎日神に早く時間が過ぎ去るようお祈りをしながら生活を送った。

 

 

 

 

 

 

 

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「うぉおおおおおお、捉えろ!捉えろぉー!」

「ヒャハアアアアアアアア!」

 

「来た!」

 

 シグマ達が脱獄者バレンを待ち構えて見たもの。それは追いかけてきた警備兵とバレンが戦いながらこっちに迫ってくる光景だった。

「あいつは足が速いんか?抑えるのは無理だったようやな」

「っ!ニィ……」

 バレンが自分達の事を認識する。たどり着くまで残りほんの数十秒。その間に、バレンという男がどういう奴なのか見極めたい。そう思っていたら……。

 

「間に合ったか……」

 

 バレンとは違う別の男が現れ、こちらに顔を向けた。

 

「あ、あなたは……ジークさん!?」

 その男を知るのが仲間にいたので、話はスムーズに進みそうだった。

「イリーナさん?知ってるんですか?」

 イリーナは、避難していくダグラスの住民を目で追いながら、バレンじゃない男を見るなり一言ぶつける。ジークというらしい男は、既にバレンを警戒しながら話しており、見た感じなんとも余裕がありそうだった。

「イリーナか。お前は確かノーシュに……。まぁ俺もベアトリウスには来るつもりはなかったんだが、なりゆきで来てしまって――なっ!」

 

 キィン!

 

 会話している間にもバレンは走ってきている。ずっと余計な事はせずその場から動かずに待ち構えていたシグマ達は、ジークとバレンが戦い始めるのを見てしまった。

「不本意な状況だねェ……!まさかこんなに人が集まるとは思わなかったよ!」

 バレンは会話をずっと聞かせてくれるような奴ではなかった。すきをついて攻撃してきた。しかしジークもそれは理解しているようで、受け止めて反撃をくらわそうとする。しかしぬるい攻撃だったようで、バレンはさっと避けて回避した。今のジークの意識はイリーナ達の方に向けられており、バレンへの攻撃は当たればラッキー程度にしか考えてないらしい。

「何後ろを見てるんだ?お前は脱獄したんだろ?なら追いかけて来る奴がいるのは当然じゃないか」

「わかってないねぇ、俺に歯向かってくる、いわゆる戦おうとする奴がこんなにたくさんいるとは思わなかった、という意味で言ってるんだ!」

 バレンが話始めた事で、ジークは完全にスイッチを切り替える。

「何?……ああ、そうか。お前は戦闘狂なんだったな。確かにお前にとっては追い詰められているというより、むしろ好都合な状態だな」

「くそっ、待ち構えていたからか!?バレンを興奮させてしまった!?」

「いや、その効果はあまり薄いはずや。いくらバレンでも追いかけてくる事を想定はできるはずやからな。興奮しているのは単にわい達がバレンにとって珍しいからだと思うで。久しぶりの外やろうし……」

 

「はんっ、自分から脱獄しておいて、俺達と戦いたかったからだぁ?責任問題になるからやめてくれよ」

「全くだな。ああいう巻き込み型が一番厄介だ。話が通じるようで通じないからな」

 

 冷静に警戒するシグマ達とジークに対し、エドガーとベリアルは逃亡させるのが一番嫌な事だと即刻判断し、戦おうとする。

「おい、お前ら!俺は見ての通りこいつと戦っている最中で、住民にまで手が回らん。脱獄したのが今から何分前なのかは知らないが、加勢してバレンの相手になるならさっさと決断しろ」

 ジークもたまたまこういう状況になったようで、そっちの詳しい状況は知らない、だから決断するのは早い方がいいと、遠回しに助言する。

「くそっ、やるしかないか……」

「シグマ!」

「うん、皆!」

「俺をもっと楽しませてくれよォ!」

 ジークの言葉で、やむをえず戦う事を決断するシグマ達。住民に被害が出ないように、短期決戦を望んでいた。

 

 

 

 町中で戦うのはなんだかんだこれが初めてで、荷物の上に乗ったり、壁に激突ぐらいはするのかと思ったが、皆が役割分担をしてくれたおかげでそうはならなかった。

 特にエドガーとベリアルは、部下に指示を出してダグラスの東西の出口を乗っ取った。バレンを決して見失わないようにするためだ。

 

「うぉおおお!」

 キィン!

 

 エドガーの攻撃は受け止められた。

「シッ!」

「ふっ……チッ……足狙いかよ」

 その追撃にベリアルが普段はしないであろう足狙いをし、剣で振り下ろす。エドガーの大きな一撃は完全にこのための振りだったというわけだ。

 シグマ達の中で真っ先に攻撃したのはこの2人だった。2人がバレンと戦い始めた事でジークは目に見えて攻撃する頻度が減ったが、その傷からバレンとの戦闘は簡単ではなかった事が理解できた。

 ジークは落ち着きながら体の手当てをし、引き続き隙を見てはバレンへ攻撃をする。

 バレンにとっては長期的に見て不利な状況だった。マイニィもイリーナも、普段あまり攻撃しない人が今回ばかりは逃がさないという決意の表れなのか、嫌がらせのように魔法弾を放ち、うっとうしさと存在感を感じさせている。

 バレンは回避しながら戦っているのだが、その回避の先に次に戦うべき相手がいるという回避方法をしている。ようはヒット&ウェイを超高速にし続けているのだ。戦っているシグマ達は接近してきて1回2回の攻撃しか狙われないが、それが何回もパターン化されると話が少し違ってくる。しかも毎回こうなわけじゃなく、きちんと後ずさりして面倒だと思った相手には逆に踏み込んで無力化させようとする。

 戦闘狂といわれる理由が、その実際の戦いでこれでもかというぐらいひしひしと伝わってきた。 

 流石にこの数と被害を考えると、動きにくい場合もあると思ったジークとシグマ達は、さっさと気絶させると方針を変え、一斉攻撃をしかけた。バレンにとってその行動は不意打ちだった。しかしシグマ達にとって不意打ちならそれはそれでこした事はない。この作戦はうまく行き、バレンが目に見えてわかりやすく驚き、ダメージが入る。

 何度も一斉攻撃をし、よろけたバレンに最後の一撃をジークが与えて、ようやくバレンは気絶し、倒れた。

「ふう……。なんとか気絶したわね……」

「……」

 気絶し服も半分くらいボロボロになっているバレンは、うつ伏せのまま全然動かない。

 

「世話になったな。ジーク・レターニアだ。そこにいるイリーナと同じで、フェルミナ教の信者だ」

 

「こちらこそ。世話になった」

 ベリアルとジークは握手を交わした。

「でもどうしてダグラスに?」

 ようやく落ち着いて話ができる、とバレンを見て思ったジークがシグマ達の方に向き、手を伸ばしてくる。そしてイリーナの知り合いという事はフェルミナ教の信者だと言わんばかりに、自分の職種を皆に説明した。

「この場所自体に用はないが、たまたま近くを通りかかってな。少しここの宿屋に泊まってさっきまで外出していた。ベアトリウスを去ろうとした時にそこのバレンと出会った。……俺の方はいい、こんな人数を引き連れて何をしているイリーナ」

「わ、私はそこにいるシグマという人の手伝いを……」

 フェルミナ教の信者でありながら、なぜそんなに戦闘能力があるのかという疑問はあったが、ジークからしてみればイリーナの存在の方が珍しいらしい。布教活動をしているとしか本部には届いていないだろうが、そんなにだろうか。

「シグマ?」

 ジークはイリーナの手を目で追い、シグマまでたどり着く。

「シグマ・アインセルクです。大火事事件の再調査をしています」

「ああ、なるほど……。合点がいった。どうりでベアトリウスの奴らと行動を共にしていると思ったら。変だと思ってたが、そういう事だったのか」

「……」

 イリーナがノーシュ人なのはフェルミナ教の人達やシグマ達は既に知っている事である。ジークは最初からベアトリウスの人間と行動を共にしているのが不思議だったらしい。その疑問が解けたようだ。

「バレンと戦う羽目になったり、お前達と出会ったり、今日は変な巡り合いだな。そのうち何か起きそうだ、それこそ大火事事件の犯人が見つかるとかな」

「……」

 シグマは自分が一番気にしている事をいきなり言われたので、変な表情が出ないように顔を固めジークの事をじっと見つめていた。

「あなた、よくバレンと互角に戦えたわね。戦闘狂で有名で身動き取れなくしてたのに」

「ふん、俺も祖国で兄弟が騎士団にいる。昔はよく修行をしていた。信者だからって戦わないと思ったら大間違いだ」

「そう……」

 にしてもとメイは思ったが、それ以上は聞かない事にした。面倒だと思ったし、話が長くなると思ったからだ。今はバレンの事だ。

「あんたのおかげで助かったのは事実や、ありがとな!」

 ずっと礼を言いたかったマルクがメイの前に出てジークに話しかける。

 

「本当に助かった。寸前の所だったな……」

 たまたまジークがダグラス宿屋に泊まっていて、外から帰ってきたらという状況だったらしい。

 いや、ジークがダグラスにたまたまいたことよりも、ジークがダグラスを後にしなかった事を喜ぶべきか。ちょっとでも時間がずれていたら、ダグラスは今以上の被害が出ていた事は間違いない。そうならなかったのはジークのおかげである。

 なんという幸運。とてもありがたい事だった。

 

「……」

 

 そんな時だった。

「!」

「うおっ、こいつ!」

「エドガー!」

 今までずっと気絶した振りをしていたのか、つい数秒前に起きたばかりなのかはわからないが、バレンは急に飛び上がり、そのままずっと自分を見張っていたエドガーに攻撃した。エドガーはギリギリの所で回避したが、その光景を見てベリアルとジークが戦闘モードに切り替える。

「ッチ……」

 

 バブォォーン!

 

「何ッ!?——ッグォオオオオオオオ!」

 

「……え?」

「し、死んだ?……」

 ジークがバレンを抑えるために放った魔法弾は、もろにバレンに命中した。しかしこの叫びよう、バレンにとって致命傷だったらしい。急に起きて飛びあがったのはなんだったのかと思うくらい、ぴくりとも動かなくなり、そのまま再び地面に倒れた。

 ただし、絶命した状態で。

「(やはりあの時点で致命傷だったか……。とどめを刺すつもりはなかったんだが、タックルぐらいじゃあ気絶しないだろうしやむを得ないか……)」

 ジークは心の中で、ダメージの蓄積が体に反映しない奴だと思いながら苦虫を噛み潰す。心の中で自分が処理をしなくてもいつかまた誰かに迷惑をかけていただろうと思い、自分がした行動を納得させる。

「おい、これどう処理するんだよ?」

「う~む……」

 エドガーはこうなったらどうするのかが気になり、ベリアルの方を向いてバレンを指さして質問をした。

「普通に死亡と報告して終わりだろ。な、そうだよなベリアル師匠!何を悩む事があるんですか」

 自分がやった事じゃない、エドガーはとぶつぶつつぶやく。どうやら責任問題にとにかくしたくないようだ。

「バレンはアレスハデスにしか居場所がないような典型的な奴だったんだ。あのような奴を何とか更生させるのがあの監獄所の目的だ。そんな奴が死んだら、悪はどんな物だろうと更生できないと認めてしまうようなものだろう」

「知らないですよ、そんな事作ったのは元々国でしょう!【欠陥品】を処分したぐらいで何を言ってる」

「(け、欠陥品……。まぁ、否定はできないわよね。バレンもダグラス出身、いつ戦闘狂だったのかも不明だもの……)」

「っち、悔しいが普通に報告するか……」

「ええ、ぜひそうしてください!」

 

「(こいつは全く……)」

 

「(あ?なんだよ?何も間違ってないだろ?)」

 

「「(ふんっ)」」

 

 最初から最後まで、シグマとエドガーはお互いを嫌い合っていた。

 

 

 

 

 

 

 

「(くくく……面白い物が見れましたねぇ!戦闘狂バレン!フェルミナ教のジーク!両方とも知っている人は知っている大物ですよ!なんて運が良いんだろう私は!)」

 マルクがシグマの肩を手を置いて、酒場で休むのを促した時。ネ・イ・ナ・ス・は一人、ジークとバレンが戦っていた一部始終をずっと黙って見ていた。もちろんシグマ達はネイナスの存在には本人が気配を刑しているのもあって気づいていない。

「(これだから、ベアトリウス帝国はたまらないんですよ!なにっが起っこるかなぁ~♪)」

 レリクスに来たのはたまたま、そこでシグマ達やマキナ達と出会ったのもたまたま。

 偶然に過ぎないが、ネイナスはベアトリウスで起きる事件に、心の底から愉しんでいた。彼は人の感情が高ぶるのがなにより好物だから。

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