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物心がついた時から、少年は万能だった。
勉強も運動も、家事も雑事も、知能も体力も。あらゆる全てにおいて、少年は最高峰だった。
一度でも教われば全てを理解した。教わらなくとも、自ら進んでやってみれば知識を身に着けた。
体を動かせば全てを容易くこなした。体操も運動も、果ては暴力さえも。全てが簡単だった。
何をするにしても、何をしたとしても、少年はその全てを完璧に達成する事が出来る『才能』を持っていた。
ある時は、天才と謳われた。
ある時は、神童と謳われた。
ある時は、万能と謳われた。
ある時は、全能と謳われた。
それ故に―――少年は、退屈だった。
退屈で、退屈で、退屈で。憂鬱で、暗愁で、消極的で、仕方なかった。
持て囃される事に愉悦は感じなかった。寧ろ真逆で、虚しさの様なものを抱き続けていた。
何もかもが完璧で。何をやっても完全で。
放たれるのは称賛だけ。だが、向けられるのは嫉妬、憎悪、嫌悪、厭悪、忌避と数多く。
欲しいならばくれてやる。望むならばくれてやる。やれるものならやってやる。
捨て去りたくて仕方ない。消し去りたくて仕様がない。
欲しかった訳ではないのに。望んだ訳ではないのに。鬱陶しく焼き付いて、しつこく噛み付いて、離れる事を知らない
それなのに―――ソレが奪われる事はなかった。ソレが失せる事はなかった。
向き合いたくない。向き合いたくもないソレを、もはや自分の力でどうにかするしかない。
絶望はした。叩き潰されるかの様な、殴り飛ばされるかの様な、そんな苦痛を味わい続けた。そんな最悪に、ずっとずっと耐え続けていた。
それから数年。少年が小学生から中学生に上がる寸前の所になって。
ようやく―――神は、少年へと手を差し伸べたのだ。
少年に、やっと『個性』が舞い降りた。
才能などというくそくらえな呪いを容易く破壊してくれる
個性『誓約』。自らに不利な条件を枷の如く取り付ける事が出来るという個性によって、初めて少年は救われたのだ。
少年は、
今後一生、この才能は使わない。どれだけ自分が危機に陥ったとしても、本能が叫んだとしても、この枷を決して解き放つ事はない―――と。
それは、己が全てを放り投げる愚行だったのかもしれない。
自分の人生が円満で終わるに必要不可欠なものだったのかもしれない。
けれど、けれども―――青年は、そんなものよりも不幸を望んだ。
己を幸せへと導く鍵ではなく、己を苦しめ続ける不幸を枷としたのだ。
神は少年に手を差し伸べた。だが、同時に―――ここが少年を狂わせた。
「もう大丈夫! 何故って?
――――――私が来た」
理想の
今や青年となった少年―――
例え自分が死ぬ様な傷を負ったとしても、必ず人を助ける者。
これは、自らを攻めて、攻め続けて、苦しみながら人を助ける歪な英雄の物語である。