偽物の善悪を倒し、2人は洞窟を出る。出た直後に目の前で空間が裂け気味の悪い目玉が浮かぶ世界が広がる。その世界から現れたのは幻想郷の管理者こと八雲紫。
彼女はゆっくりと地面に降り立つと、冷たい目線を善悪に向けた。
「……貴女は何者かしら。」
「紫じゃないか。機嫌が悪そうだがどうかしたのか?」
「そりゃ機嫌も悪くなるわ。だって……博麗の巫女が異変の元凶と一緒にいるのだから!」
途轍もない殺気が善悪に向けられ、彼女は咄嗟に後ろに飛びのけた。さらに空から八雲藍、橙が降りてきた。おおよそ、待ち伏せされていたのだろう。三人の視線は善悪に向いていた。
「ちょっと待って紫!善悪は私と一緒に戦ってくれてるのよ!?そんな奴が偽物な訳ないじゃない!」
「霊夢……」
霊夢が善悪を庇うように前に出て説得するが紫が殺気を緩めることはなかった。けしてこの紫、藍、橙は偽物ではない。しかし彼女らは明確な殺意を持って味方の善悪を偽物だと言った。それをはいそうですかと納得するには霊夢にはどちらに関しても情報が足りない。
「なら霊夢。貴女はこれを見てもまだそいつが偽物でなはないと言えるかしら。」
スキマと呼ばれる空間を使いどこからか手鏡を引っ張り出し、善悪に向ける。途端に善悪は体が崩れ、その後すぐに再生した。
そう、先程戦った善悪と同じ現象が起きたのだ。
「……仮に元凶として私を手伝うなんてありえないわ。私が紫、貴女に言うことはただ一つよ。善悪は偽物だとしても悪じゃない。」
「悪よ。彼女もまた、本物に成り代わろうとする虚像に過ぎないの。今ここで倒さないと本物が活動できないわ。」
「博麗、言いたいことは分かるが今は一刻を争う事態になっている。悪いがそいつを引渡して貰いたいんだ。」
三人はジリジリと近寄ってくる。後ろの洞窟に逃げ込んだところで奥は行き止まり、逃げ場は無い。なら戦うか?それこそ一番の愚策だろう、相手は幻想郷の管理者。さらにその式と、その式の式も居るのだ。とてもじゃないが勝ち目などない。
「さぁ、諦めて消えなさ……」
「魔攻『ディバイン☆マジック』だぜ!」
突如空から光の柱のような6つの魔力弾と沢山の黄色の弾幕が降り注ぐ。霊夢と善悪は爆発により巻上がった砂埃に乗じて逃げ出す事に成功した。
犯人は霧雨魔理沙。幽香とお茶していたがじっとしていられず飛び出して来たようだ。
「いやいや、間一髪だったぜ!」
「ありがとう魔理沙助かったわ……」
「……。」
善悪は黙りこくっている。自分は偽物だと言われそれをあっさりと証明されてしまったのだ。もはや自分がなんなのかすらわからないのだ。
「ねぇ、善悪。浄玻璃水晶の能力って2回以上同じ相手に使えるの?」
「自分以外には無理のはずだ……だからあいつを倒した時点で私は本物のはずなんだ……なんで私がぁぁぁ!」
善悪の目からポロポロと涙が落ちる。少なくともこの涙は虚像ではない。霊夢は立ち上がると魔理沙にあることを頼んだ。魔理沙は一瞬動揺したが、霊夢の説明を受け納得し飛び去って行った。
丁度その時、紅魔館の方角からガラスの塊が紅い槍に貫かれた状態で吹き飛んできた。なんとそれは浄玻璃水晶の分身体だったらしく、霊夢が今まで幻想郷で見た事のない容姿をしていた。
「く……そ……あんな……吸血鬼に……負げ」
その言葉を最後にガラスの塊は砕け散った。その瞬間、そこら中から光の柱が上がり偽物のいくつかが色を失いただのガラス人形に成り果てていった。
分身を倒せば虚像達は纏めて消えるようだ。
「消えた!あたいの勝ちね!さいっきょーのあたいにお見それをなして逃げたのね!!」
「チルノちゃんお見それじゃなくて恐れだよ……」
「そーなのかー」
善悪は砕け散った水晶の分身の破片を掴み取ると能力を使い判定した。すると黒ずんでそれは消滅。業を司る程度の能力はその能力の対象の罪を判定し、場合によって罰を与える能力。消滅する程の罪は命を奪う行為を惨たらしい手段で行うよりもさらに酷い。
判定で出た罪は『命に対する最悪の冒涜的行為』
つまり浄玻璃水晶が能力を悪用し、自分の思い通りの手駒を使い、実在する者へと成り代わろうとさせた事がその罪に繋がったのだ。
「一刻も早く止めましょう。このままでは何人か成り代わられてしまうかも知れません」
「そうね、行きましょう。」
落ち着いた善悪と共に、霊夢はまた浄玻璃水晶探しを再開するのだった。
魔攻『ディバイン☆マジック』
オリジナルスペル。
光の柱のような弾幕を最初に放ち、左右に飛び回りながら大量の黄色の弾幕を撃つ。
光の柱はしばらく残る。