「………………………………よし」
私は、カウンターズ所属のニケ、名前は「ラピ」。
部隊を指揮する指揮官の提案で、今日から記録を付けていこうと思っている。
一つ言っておきたいことだけど、これは本部に向けての報告書の類ではないことを明記しておく。
……これで、いいのだろうか?
指揮官からは「各々が思うことを書いていくだけでもいい。他に気になることがあればメモ代わりにしてもいい。何を書くのかは君達の自由だから」と言われたが、日記のようなものを書いてみるのは初めてだ。
……分からない、自分のことを書いた日記とはどういうものなのかが分からない……。
おそらく、このまま書き進めてしまえばまたいつもの報告書のようになってしまうだろう。
それではせっかく提案してくれた指揮官に申し訳ない。
……こういう時は、指揮官の言う通りに自分だけではなく、皆のことも書いていこう。
もしかしたら、そこから気づけることがあるかもしれないから。
まずは……今しがた指揮官の部屋にシャワーを借りに行った「アニス」のことから書いていこうと思う。
アニス……彼女は私がカウンターズ所属のニケになる前からの付き合いがある。
彼女の活躍によって窮地を脱したことが何度もある私達のかけがえのない仲間。
一方で、任務帰りや外出した後には浴室内に靴下を脱ぎ散らかしたり、定期的な掃除をサボっていたりと生活面でだらしないところも見受けられる。
別の部隊との合同訓練を指揮官と共にサボることも多いため、苦情も上がったりしている。
……いえ、なぜそこにいるんですか指揮官。あの時のあなたは、書類作業をしていたはず……
……いけない、なぜか脳裏に奇妙なポーズをした指揮官が「すり替えておいたのさ!」と言ってくる光景が浮かんでしまった……あの人なら嬉々としてやっていそうなのが猶更ひどい。
気を取り直して次だ。
次に書きだすのは様々な武器の情報が掲載されている雑誌を食い入るように見ている「ネオン」について書いていこうと思う。
彼女との出会いは本当に突然だった。
指揮官やアニス……そして今は前哨基地にいないもう一人の仲間と共に、なんとか任務を成功させた後、アンダーソン副指令に呼び出され、彼の指示に従いシミュレーションルームでの戦闘力テストを受けることになり、そこからほとんど時間を空けずにまた任務に駆り出される……そう思っていた時にエリシオンのCEOから直接派遣されたのが彼女だ。
自分をスパイであると最初から公開し、むしろその状況を楽しんでいるという図太い精神。
火力に対してすさまじいまでの信頼と熱意を持っており、その熱意に助けられることもしばしば。
あのような気性だからなのか、同じく火力で押し切る指揮官を「師匠」と呼び慕っている。
……指揮官のような人物を図太いと表現していいのだろうか……あれは図太いとは何か違う気がする……。
…………つい先ほどに書き始めた記録を見返してみるが、思っていた以上に書けていて私自身驚いている。
これも私が仲間に恵まれているからなのだろうか。
……そう、私はとても恵まれている。
力にも、機会にも、そして仲間にも。
この輝きを絶やさないようにこれからも私は――
「ほらほら! 指揮官様も一緒に入ろ!」
「待て待て待て待て!! ヘイアニス! 俺 is 男! 君 is 女の子! 一緒に入ったら守衛さんががががが!!??」
「え~? 守衛さんのことなんて気にしなければいいじゃない♪ もし怒られたとしても私の方から誘ったって言えばいいんだから♪」
「それで大丈夫だった時ある!? この間なんか『女の子達の純情をもてあそび股を掛けようとする不埒者っ! 今ここに天誅を下す! イヤーッ!』って奇声あげながら折檻されそうになったんだからね!?」
「……指揮官様は、私みたいな女の子じゃ、イヤ?」
「うぐぬぅ……ぐ、ぅ……い、いやじゃ、ない、ですっ……!」
「やった♪ それじゃ一緒に入ろ~♪」
「待って待って待って待って! マジで今日だけはマズいから! あの人この間絡み酒してきて、『指揮官、早く責任を取れ。取らなければ死ね』とかガチ目な殺気出して殺害予告してきたから!」
……改めて決意を固めようとしていたが、指揮官とアニスの声によって気が抜けてしまった。
さてと、守衛さんに指揮官が三枚おろしにされる前に助けに行かなければ。