【完結】♪ぼざキャン△   作:迷えるウリボー

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※本作執筆にあたり、《ぼっち・ざ・ろっく!》は原作6巻まで、《ゆるキャン△》はアニメ2期までの設定や描写、及びちょくちょく原作漫画の設定を参考にしています。原作のストーリーとは齟齬があるかもしれませんが、ご容赦ください。


1話 そして陰とリンは再会した。

 

 

 子供の頃。

 物心がつくかどうかという頃は、親戚や両親の実家によく遊びに行っていた。

 そこで“(わたし)”は、親戚の子と遊んだりもした。と言っても、従姉妹とは性格も趣味もいろんなものが違うから、話すことすらままならなかったけれど。

 かすむような記憶の中で覚えていることがある。

 おじいちゃんの記憶。お母さんたちは親戚同士でお酒を飲んでいる。そんな中、おじいちゃんは庭先に出てよくわからない道具を弄っていた。

 肉の脂が焼ける音、香ばしいにおい。隣には、同い年の女の子。

『リン、ひとり。おじいちゃんと一緒に、肉食うかい?』

 いつだったか、おじいちゃんは“わたし()”たちにそんなことを言っていた。

 

 

────

 

 

 十月。東京都、下北沢の一角。ライブハウスSTARRY(スターリー)

 営業が開始して数年、軌道に乗り始めた当店は、女店長の伊地知(いじち)星歌(せいか)が指揮をとり、バイトメンバーが仕事に掃除にライブの準備に、あるいは学生らしく勉強に精を出している。

 そんな中、二人の少女が爆発した。

「青春したいわーっ!!」

「ヒィッ!?」

 長い赤髪を横で纏めたザ・女子高生な女の子は、喜多(きた)郁代(いくよ)。秀華高校三年、下北沢のガールズバンドグループ《結束バンド》のボーカル&リズムギター担当だ。郁代は机の上、向き合っていた教科書類に向かって倒れて頭を抱えた。その所作と、彼女らしからぬ金切り声が彼女の爆発だ。

 ピンク髪の女の子は、後藤(ごとう)ひとり。秀華高校三年、同じく《結束バンド》のリードギター。ひとりは郁代の声に驚いて、文字通り爆発した。比喩じゃない。破裂してひとり()()()ものが飛び散っている。

「ひとりちゃん!? 爆発しないで起きて!? 私の願いは切実なのよぉ!」

「あばばばべば」

 郁代は爆発四散したひとりの片鱗をかき集めて必死に叫んでいる。

 いかに騒がしいライブハウスとはいえ、準備時間からそうやって喧しければさすがに怒る人もいる。

「こぉら! うるせーっ!」

 ドリンクコーナーから顔を出して、馬鹿みたいに叫んだのは金髪のロングヘアーをサイドポニーにした女の子。伊地知(いじち)虹夏(にじか)、大学一年生。《結束バンド》のドラム担当、同時に癖の強いメンバーを指揮するリーダーだ。店長星歌の妹でもある。

 真面目な虹夏は、テキパキと仕事をこなしながら二人にキレた。

「喜多ちゃんは黙って勉強! ぼっちちゃんはバイト! 邪魔すんなー!」

「でも伊地知先輩! ずっと勉強、勉強、勉強……女子高生らしさが足りないんですよー!」

「そもそも喜多ちゃんは学生! 勉強が本分だろ!」

「そうはいってもぉ……!」

「郁代がいつにも増してうるさい……」

 郁代とひとりとは違う机でだらけきっているのは青髪の少女、山田リョウ。虹夏と同い年、けれど大学には進学してない、このスターリーでバイト三昧な日々。《結束バンド》のベース担当でもあった。そして一人での行動が好きな金欠バンドマンでもあったりする。

「遊びに行きましょう! どこか! 楽しいところ!」

「あっはい」

「去年みたいに私の別荘とか?」

「てめーらぁ……」

 虹夏のこめかみが震えに震えた。

 ひとり、郁代、虹夏、リョウ。《結束バンド》のメンバーである四人は、日々ガールズバンドとして活動している。レーベルとの契約もして早二年、近頃は順調そのもの。

 けど音楽とは少し離れたところで課題もあって、その最たるものはボーカル・郁代の大学受験だ。

 郁代はザ・陽キャ女子。バンド仲間だけじゃない、学校の友達との遊びにも余念がない。いつ頃からか成績は下がり、一時期は親とも成績や進路をめぐって喧嘩をしていたくらいだ。

 今、郁代は去年大学受験で頑張っていた虹夏の後を追うように受験に精を出し──そしてストレスで爆発していた。

 先輩でリーダーの虹夏はそれを諫める。あと半年もしないうちに郁代も試験だ。ここで大事なメンバーの道を暗くするわけにはいかない。

 だけど、郁代の陽キャパワーは絶大だ。それにリョウはだらけきって役に立たねぇ。加えてひとりは「静かなとこなら……」とか言うイエスマン。もう三人は完全に遊びに行きたいムードだった。

 結果、虹夏は仕方なく了解した。

「仕方ないなー。確かに最近根詰めてたみたいだし、特別だよ? どこ行きたい?」

「キャンプしましょ!」

「は?」

 虹夏は「馬鹿かコイツ?」みたいな顔をした。郁代は天を仰いでいる。

「都会の喧騒から離れての静謐(せいひつ)!」

「静謐って言葉をどこで覚えた?」

「郁代、キャンプはだるい」

「リョウ先輩! 山中湖のフェスで《SICK HACK》が出るんですって」

「決定!」

「リョウ!?」

 まさかのアウトドアNGなリョウがOKを出しやがった。

「ロックフェスに行って-、ついでにキャンプもしてー。青春ですよっ!」

「喜多ちゃんさぁ! 私たちのアウトドアキャパシティわかってる!? 絶対キャンプがメインでしょ!?」

「自然……静か……いい」

「ぼっちちゃん!?」

「というわけで、週末はキャンプに行きましょー!!」

「おいお前ら! 運転するの私なんだぞー!」

 虹夏の声は、もう三人には届かなかった。

 

 

────

 

 

 十月。山梨県身延(みのぶ)町にある県立本栖(もとす)高校。

 部活棟の最奥、物置部屋とも言えるような狭い部屋の扉には《野外活動サークル》という立て札がかけられていた。

 そんなめちゃくちゃ狭い部室の中、部員である三人の少女が適当な格好で座って寛いでいる。三人横並びだ。

 全員が三年生、つまりは受験生。けれど、左に座る紫のミディアムヘアの少女──大垣千明(ちあき)は黒縁眼鏡のブリッジを押し上げて言った。

「お前ら……そろそろキャンプがしたいと思わないか?」

《野外活動サークル》、略して“()クル”。発足から二年と少し、このサークルはサークル外の人たちも巻き込んで、校庭での落ち葉焚きから本格的なキャンプまでいろんな野外活動に精を出してきた。

 野クルメンバーが言うキャンプは、例えばデイキャンプみたいな短いものじゃない。それもたまにはするけれど、ほとんどはキャンプ道具を用意して、それぞれ食材を用意して、場合によっては顧問の車で県外へ行く──そんな本格的な活動だ。

 例えサークル活動とはいえ、受験生にして……いや受験生だからこそ攻めた活動提案。けれどピンク髪に碧眼の、ちょっとにへらっとした笑顔が似合う女の子は「ハイ!」と元気に挙手をした。

「いいねアキちゃん! どこ行く!? どこ行く!?」

 千明を『アキ』と、そう呼んだ彼女の名前は各務原(かがみはら)なでしこ。三人の真ん中に座っている。高校一年生の冬、静岡からこの山梨県身延町に引っ越して来て、以来キャンプにはまって月に一度はどこかへ旅に行くようになったストロング少女。

「良い返事だ各務原隊員っ! 犬山隊員もそう思うだろぉ!?」

 なでしこに煽られて、千明は一層自分の欲望を燃え上がらせる。ここ数か月。ずっと、ずっと受験勉強に精を出してきた。それが学生の本分だってわかってはいる。

 そうは言ったって、たまには息抜きをしてもいいじゃないか……!

 千明は行動力があるけれど、こんな風に猪突猛進でどこか抜けている部分があった。

「そういうアキが一番成績がピンチなんやけどなぁ。大丈夫なん?」

「うっ……それを言われるとだな……」

 千明は一気に現実に引き戻された。右側に座っていて唯一注意を促した、どこか間延びした喋り方の女の子の名前は犬山あおい。愛称は《イヌ子》。山吹色の髪をゆるふわなサイドテールにしていて、太眉と八重歯が特徴だ。

「言うなよイヌ子。勉強に精を出してもいいけど、四六時中根を詰めるのも大変だぜ?」

「もちろんわかっとるよ? でもなぁ、それでアキが浪人したらちょっと後味悪いやん?」

 あおいの言うことはどこまでもその通りで、誰も真正面から反論はできない。仮に遠出のキャンプになっても、野クルの顧問も教員なわけだから車を出してはくれないだろう。

 けれど、それでも。

「それを見越してだな。今回のテストは頑張ったんだよ……!」

 千明は両拳に力を入れた。

 十月中旬にあった小テスト。友達同士結果は確認しあった。野クルでは一番成績が悪い千明でも、確かに及第点と言える点数だった。

 それに。

「あおいちゃん。今回は、私もみんなで行きたいんだぁ」

「なでしこちゃん?」

「だって、私たち……もう四か月で卒業だもん」

 なでしこは笑っていて、でもその眼は寂しそうだった。

 受験が終わったら野クルだけじゃない、親しいメンバーで「またキャンプをしよう」とは約束していた。それでも志望校だってそれぞれ違う。控えめに言っても田舎町の身延町だし、大学に進めば新しい友達も増えるだろう。高校のメンバーで集まれる時間も残り少ない。

 受験前の景気づけの意味でも、また集まりたいと思っていた。

 そんな寂しさもある、千明の提案でなでしこの想いだった。

 あおいは大きく伸びをした。

「う~ん、そう言われると断りづらいやん」

「えっと、それじゃあ?」

「ええよ。行きたいのは私だって一緒やもん」

「おしっ! 我ら野クルの決断力は世界一だぜ!」

 千明の眼鏡が光った。

 そうと決まれば話は早い。みんな、必死に睨んでいた教科書をいったん閉じる。

 千明はなでしことあおいの顔を覗き込んだ。

「せっかくだからよ。どっか広いところでキャンプしようぜ」

 今までいろんなところを皆で回った。朝霧高原、伊豆半島のジオパーク巡り、山中湖、麓キャンプ場、四尾連湖などなど。広いキャンプ場も多い。

「そやね~。斎藤さんや志摩さんも誘おうや~。なでしこちゃん、声かけといてくれる? あの二人真面目やし、SNS(メッセ)じゃなくて直接説得した方がいいと思うんよ」

「うん! 明日にも誘っておくよ!」

 斎藤さんと志摩さん。二人とも野クルメンバーではないけれど、キャンプをきっかけに三人と交友を持つようになった友達だ。

 五人そろっての久しぶりのキャンプ。特になでしこと千明は、二人が断ることなんて微塵も疑っていない。

 すでに「ここがいい」「あそこがいい」とはしゃいでる二人を見て、ブレーキ役になることの多いあおいは朗らかに笑った。

「久々のキャンプ、どうなるやろね~」

 

 

────

 

 

 野クル三人の決起集会から十日ほど後日。山梨県南都留郡、山中湖村。

 文字通り山中湖を望むことができる、富士五湖の中でも一番富士山に近い場所。観光地としても有名、別荘もいたるところにある。湖畔にはキャンプ場もあるし、湖らしくアヒルボートで回れたりもする。

 そんな山中湖を眺めながら、湖畔の道路をヤマハの原付で悠々と進む少女がいた。

(十月の山中湖……さすがに寒いな)

 ヘルメットと厚い黒ダウンに隠れている長ーい紺色の髪が特徴的な彼女は志摩(しま)リン。なでしこたちと同じ本栖高校に通う高校三年生だ。

 なでしこがキャンプにはまるきっかけとなった張本人で、祖父の影響で中学時代からキャンプをしていた生粋のキャンパー。手に馴染んだキャンプ道具一式を原付の荷台に装備して、リンは今日もキャンプに出かける。

 どちらかというと一人でふらっと出かけるぼっちキャンプが好きで、なでしこがいる野クルには所属していない。でも、最近はぼっちキャンプだけじゃなくて野クルメンバーとのグループキャンプをすることも増えてきた。

 リンは適当な湖畔の駐車場に原付を停めた。まだまだ女子高生のリンは、大人ほどの体力もない。親からも安心安全を口酸っぱく言われている。お利口で適度な休憩だ。

 身長145cm。縮こまった体をおおきく伸ばして、リンは一息ついた。

「来たぜ……山中湖&富士山」

 謎のドヤ顔。

 快晴。リンの眼前には山中湖。それに日本人の心に住まう富士山が、雪化粧を被って父母たる大地に寄り添っている。多感な高校生、しかも受験勉強中のストレス。タガが外れた今、ちょっとドヤ顔したくなるのも当然かもしれない。

「でっと……今日は恵那たちのリベンジキャンプでもあるんだったか」

 リンが今日、山中湖の湖畔を走っているのは当然キャンプのため。ぼっちキャンプじゃなくてグループキャンプ。受験生ではあるけれど、「卒業も近いしいつものメンバーでまたやろう」というなでしこの提案をリンは断らなかった。人付き合いが苦手なリンではあるけれど、なでしこをはじめ野クルメンバーと過ごした時間は長い。

 目的地は大間々岬キャンプ場。以前、千明とイヌ子、そしてもう一人リンの友人がキャンプに臨んで、けれど準備不足でリンやサークル顧問を心配させた苦い記憶がある場所だ。

 そこでキャンプをする。受験前の最後のキャンプで、リンの言う通りリベンジキャンプでもある。

「久々だし……なでしこたちには感謝、かな」

 休憩を終えて、リンは再び目的地へキャンプ場に向かう。

 リンは自前の原付で悠々と出かけて、ついでに言えば道中の富士五湖の観光もしてきたからちょっと遅めの到着だ。逆に他のメンバーは電車移動ではあったけど、早朝に出発したから「もう到着したよ」とリンのスマホにも連絡が来ていた。今頃は各々テントを建てているに違いない。

 観光を大いに楽しんで、リンはなでしこたちの待つキャンプ場にやってきた。

「リンちゃーん!」

 岬の奥にあるフリーサイトまで行くと、リンを呼ぶ快活な声。なでしこが大きく手を振って呼んでくれる。犬みたいにはしゃぐなでしこに、柔らかく手を振り返したリン。学校では頻繁に顔を合わせる二人。でも、二人は本当に久しぶりにキャンプ場で再会した。

「バイク移動お疲れ様! 西湖と河口湖、どうだった?」

「うん。まだ紅葉もあったし、人もちょっと多かったけど楽しめたよ」

「写真撮った……!?」

「後でみんなにも見せるから」

「やったー!」

 なでしこはリンの荷物を一つ持つ。

 リンは聞いてきた。

「でも、今回はやけに急だったね? それにこのキャンプ場、恵那たちにとってはトラウマもあるだろうに」

「そうだねぇ。でも、やっぱりみんなでまったりしたかったんだ。鳥羽先生も許可してくれたし」

「ふーん……」

 二人で他のメンバーが待つフリーサイトへ。案の定テントは張られていて、他にテーブルや椅子もセットされている。焚き木を囲んでいる三人の少女もいた。

「みんな、お疲れ」

 リンが声をかけて。

「おーしまりん!」

「リンちゃん、お疲れ様やねぇ」

 千明とあおいがそれぞれのトーンで声をかけてくる。それに加えてもう一人……

「リンー」

「斎藤、今日はちくわは……さすがにいないよね」

 リンが『斎藤』と呼んだ黒髪ショートの女の子は、斎藤恵那(えな)。やっぱり本栖高校の三年生で、リンにとってはここにいる四人の中で一番古くからの友達だ。リンと同じく野クルに所属していないけど、こうして時々キャンプに参加している。

 なでしこ、千明、あおい。それにリンと恵那。この五人に、今日はいないけれど顧問の鳥羽(とば)先生を加えるのがだいたいのキャンプメンバーだ。

「大垣たち、今日は準備は万端?」

「ばっちりだぜ! あの時しまりんや鳥羽先生に心配された初心者キャンパーはここにはいねぇんだよぉ」

「まだ五回も行ってないのに氷点下キャンプやったもんな~」

 もう二年近く前の話。ここにいる五人にとっては笑い話のネタだ。

 リンは自分の荷物を置いた。

「さて、私もテント建てようかな」

「リンちゃん! 手伝うよ!」

「ああ、別にいいよ。なでしこは今日も料理番でしょ」

「うん! わかった!」

 なでしこ。果てしなく犬。

「なでしこちゃんはいつも元気だね」

 千明、あおいと一緒に散策に出るというなでしこ。そんな野クル三人を眺めながら、恵那はリンの隣に移動した。

「だな。こっちまで煽られるよ」

 リンは静かに笑って、自分のテントを組み立て始める。

 もともと人付き合いがそこまで好きじゃなくて、ぼっちキャンプが好きなリンと、天真爛漫ななでしこ。

 二人はキャンプをペグにして交友が始まったといっても過言じゃない。キャンプを通してお互いを知っていって、今ではそれぞれのペースを守りつつ、時々お互いのペースに歩み寄るいい関係だ。

 リンにとってはなでしこだけじゃない。付き合いの長い恵那とも。ちょっと喧しいけどなんだかんだ他の人にない距離感が新鮮な千明とも。優しさとちょっとしたホラ吹きがやっぱり新鮮なあおいとも。

 なでしこと千明が提案したという、寂しさから来るグループキャンプ。

(……確かに、グループキャンプもこれからはしなくなるだろうしなぁ)

 全員もうすぐ高校を卒業する。新しい環境で、同じようにキャンプが好きな友達ができるとも限らない。そもそもリンはぼっちキャンプが好きなわけで。

 そんな風に考えて、リンはいつもより少しだけ、ほんの少しだけ緩慢な動きでテントを設営した。自分用の椅子も用意して、あとはもうなでしこたちの動きに合流するだけ。

 と、焚き火番をする恵那に合流して気づいた。

「あれ、薪足りてなくない?」

「え、そう?」

 別に気づかなかった恵那が悪いわけじゃない。基本ソロで動くリンと、なでしこたちよく動く野クルと一緒にしかキャンプをしない恵那との違いかもしれない。使うペースを考えると、夜には尽きてしまうだろうという程度の量だった。

「私、買ってくるよ」

「え、いいの?」

「静岡と比べればまだ疲れてないし。管理棟に行けば買えるだろうし。恵那は火を守っててよ」

「りょーかーい」

 リンはまた一人になる。

 立ち上がって管理棟へ。駐車場と比べればまだ近い位置にあるから問題ない。

 数分後、管理棟入り口。ちょうどガラス戸の入り口をちょっとだけ開けて棟内を覗いている人がいて、リンは違和感を覚えた。

「……なでしこ?」

 そこにいたのはピンクの髪色、ロングヘアーの、明らかに女の子という出で立ちの後ろ姿だ。

 ただ服装はさっきものとはとは違う。だからなでしこじゃないのは明らかだけど、ただでさえ珍しい髪色なのに瓜二つに見えた。

「……」

 リンの脳裏にちょっと刺激が走って、けれどそれはすぐに治まった。そもそも薪を買いに来たのだ、入り口を占拠する人にはどいてもらわないといけない。

 リンは近づいて、後ろから声をかけた。というか後ろからしか声をかけられなかった。

「……あの」

「ヒィ!?」

「ヒィ!?」

 最初の『ヒィ』は少女のかな切り声。次はそれに驚いたリンの声。

 リンに意識外から声をかけられたのか、それに驚いての挙動。それどころか、ピンク髪の少女は急に土下座をしてきて額をバンバン地面にたたきつけていた。

「あああこっこの度はお見苦しく邪魔して申し訳ありましぇん!」

「ええっ、いや、別にそこまでじゃ……!?」

 なんだコイツ。それがリンの感想だ。こわ。

「いや、別にただ通りたいだけだから別に──あれ」

 違和感。脳裏にもう一度走る電撃。

 ピンク髪の少女。なでしこ以外にも覚えがある。だって彼女は──

「もしかして……ひとり?」

 リンは眼下の少女に尋ねた。どうしてか自分の名前を呼んだリンに向け、一瞬びくついて、次に錆びた歯車みたいにぎこちなく顔を上げて。

「え……あっリン……ちゃん?」

 少女──ひとりは()()()の顔を見て、呆然と返す。

 後藤ひとり。

 志摩リン。

 陰とリンは、こうして()()した。

 

 

 






・きっかけ。
①志摩リンちゃんのおじいちゃんの中の人ってあの人だよね。
②あの人って某スネークさんだよね。
③スネークって段ボールを愛するよね。
④ぼっちちゃんも段ボール好きだよね(完熟マンゴーという誤解)。
⑤あのおじいちゃんからキャンプと段ボールの遺伝子が別たれたのでは……!?
⑦よし、書こう。

 というわけで、リンの祖父とひとりの祖父が同じあの人、つまり志摩リンと後藤ひとりが従姉妹同士という状況です。
 整合性……? それはうまいのか?(某蛇)

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