横島っ!   作:緋踏そら

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文化祭の準備や病気にかかり、投稿が遅くなりました。
すみません。



参話―後半

保健室の騒ぎの後、横島と何故かイナホは校長室に呼び出された。

 

部屋の中には、横島達の他に実と見慣れない男が座っていた。

 

「ありえねぇ」

 

「…………」

 

横島達が呼ばれてから続いていた長い沈黙は一人の男に破られた。

 

「玄、残念だけど事実で真実よ」

 

実に玄と呼ばれた男は目元を吊り上げ睨むように実を見る。

 

「けどな!! 十年前に造ったとはいえ、この素因測定器は自信作だ!!」

 

素因測定器…通称魔検“ケロンボ”に手を当て、声を張り上げる玄の顔には疑惑の感情がみられた。

 

「廃材で造ったって秋は言ってたけど?」

 

「バっ…天才は材料を選ばねぇんだ!!」

 

秋と玄の言い争いを苦笑いを浮かべ見ているイナホ…横島も苦笑いしてるが此方は別の意味で苦笑していた。

 

「(すげぇな、廃材で造ってこの機能と性能かよ…隊長が見たら絶対スカウトすんだろうな…)」

 

生前、色んな意味で世話になった隊長こと美神美智恵が目の前の玄の技術を知ったらどんな手を使ってでもオカルトGメンにスカウトし、霊具を製作されるだろう……ま、マケンが造れても霊具を造れるかは分からないが…

 

「(この人もある種の天才か…しかも、超が付くほどの…)」

 

出されたお茶を飲みながら、まじまじと玄を見る。

 

「ちょっと、聞いてるのか!?」

 

少しばかり、考え事にふけていた横島に実は机を叩き注意する。

 

「え…は、はい…スンマセン」

 

「ったく…よく聞いてきなよ、お前の為の話なんだから…」

 

呆れた声色で言ってくる実に対して、横島は今度は真面目に聞こうと姿勢を正し実と玄の方に目線をやる。

 

「マケンを使えないと授業に置いてかれるってのもあるけど、そんな物はこの際どうでもいいの…一番困るのは“自衛”だね」

 

教師が授業をどうでもいいと言う発言に、眉をひそめるが自衛と聞き納得する横島。

 

「身を守るために必要なんスよね?」

 

「そっ、当たり。この学園で起きるトラブルは大抵マケン絡み“決闘”もあるし、それに決闘以外でマケンを使ってくる輩もいるんだ。そんな時、身を守るのは他の誰でもない自分自身だ」

 

マケンに対抗するにはマケンを使うしかないため、マケンはどうしても必要になってしまうが……その人の身体能力やエレメントに絶対的な違いがあれば別だが……。

 

「って言っても、お前はマケン無しでも大丈夫な気がするけど…ま、ないに越したことはないからね」

 

確実とは言えないが、横島の高い身体能力や武術ならば下手な事が起きない限り大丈夫だと踏む実。

 

横島自身も、マケンがなくともある程度大丈夫だと思っている。

 

「悪いけど、一ヶ月程なんとか凌いでくれると助かるわ」

 

「(一ヶ月か…遅いんか、早いんか分からんが楽しみだな……どうせなら、魔見とかを希望だな…)」

 

……どうせ、覗きかなんかに使用するだろうに。

 

話は済み、横島とイナホは退室し、部屋には玄と実の二人が残った。

 

 

「どう、 先生に似てたでしょ?」

 

実は先ほど出ていた横島の事を聞く。

 

「あぁ、目元がソックリだ…んで、女の子が持ってたのが例のマケンだろ?」

 

今度は、玄がイナホの事を聞く。

 

「えぇ、ヤマタノオロチを封ぜし霊峰“アマノハラ”と八つのマケン……」

 

 

 

 

 

一方、部屋を出ていた横島とイナホはと言うと……

 

「(うんにしても、なんでイナホちゃん呼ばれたんだ?)」

 

結構、どうでもいいことを考えていた。

 

 

 

 

 

 

×××

横島とイナホの二人は、校長室を後に部活へ加入するため様々な部活動に足を運んでいた。

 

いつのまにか時間はお昼時になり、春恋が加わり三人でお昼をとっている。

 

「検警部? …って、何さ?」

 

春恋の持ってきた、お弁当をつつきながら疑問を浮かべる横島は不思議そうに聞く。

 

「“検警部”っていうのは、統生会だけでは数が多くて手がつけられない事件や事故の解決をサポートする部なの…」

 

春恋は、マシンガンの様に次々と説明していく。説明を聞いていた横島は、辛うじて理解をしていた。一緒に説明を聞いていたイナホは理解が追い付いてないのか、目を回している。

 

「……ちなみに“魔導執行部”と“検警部”を合わせて“魔導検警機構”。通称“マケンキ”って呼ばれてるわ」

 

長らく続いた説明は終わり、横島は「(よ、良かった~。これ以上説明されたら、理解が追い付かんかった)」と一安心する。目を回していたイナホの頭からは煙のような物が上がっていたが、見なかったことにした横島は目線を斜め後ろに向ける。春恋も横島の目線の先を見るが、其処には一つの芝生しかない。

疑問を抱く春恋は横島に聞こうとするが、先に横島の口が開いた。

 

「っで、お前はいつまで其処に隠れてるつもりなんだよ?」

 

突如、声を上げる横島になんぞやと思う春恋と復活したイナホ。

 

「ぶはっ!! 」

 

「きゃっ!!」

 

芝生の中から、いきなり一人の男子生徒が出てきた。突然のことに、可愛らしい悲鳴を上げる春恋とイナホ。

 

「へへっ、面白そうな話を聞かせて貰ったぜ……ってか、よく気付いたなお前…」

 

「(コイツ、今朝の…俺と同じで除きしてた野郎じゃえねか…芝生の中で何してるんだ?)男の気配なんて知りたくなかったけど…こんだけ近けりゃ分かるっての」

 

なんて事はないという顔をする横島を裏腹に春恋は男子生徒の名を聞き出している。

 

「初めまして、統生会福会長の天谷春恋さんですね」

 

「うっわぁ…」

 

張り付けた様な笑顔と媚を売る様な甘ったるい声を出す男子に、ドン引きする横島。

 

「……一年生の碓健悟といいます。以後、お見知りおきを」

 

横島の態度に一言もの申したい男子生徒…健悟だが、これ以上は駄目だと悟る。自身の爽やかなイメージを崩さないようにする為、我慢する……ま、イメージは健悟の妄想だが。

 

「ん?…春恋ちゃん、春恋ちゃん。あれ今朝の…」

 

「えっ? ……あら、うるちさん。どうしたの、そんなに慌てって?」

 

横島の教えた先には春恋LOVEの水屋うるちが慌てた様子で走ってくるのが見えた。乱れた呼吸を整えることもなく、春恋に用件を報告する。

 

「大変なんですっ! 校門前で“決闘”が! すぐ来て下さいっ!」

 

 

 

 

 

×××

「ゴメンなさい、通して下さいっ」

 

「邪魔じゃ」

 

うるちの“決闘”の報告を聞き、すぐ近くに居たコダマを連れ校門前にやって来た横島達。

 

校門前には、幾つもの人影が出来ており、その中央には二人の男女が向き合ってた。

 

男の方は、大柄で天日の制服ではなく…何故か袖を破れた学ランを着て下駄を履いていた。まさに、番長……完全に生まれてくる時代を間違えっていると感じてしまう格好であった。

 

そして女の方は、見覚えのある顔だ。

先日の入学式の時の試合をしていた…

鼻に貼ってある絆創膏と大きな胸が特徴の志那都アズキだ。

 

「お、副会長遅かったな」

 

「アズキさん。また、貴女ですか…それじゃ、お願いします姫神さん」

 

アズキに色々と言いたい春恋だが、今はこの騒動を解決することが最優先と判断した春恋はコダマに立ち会いをお願いする。

 

「しょうがないのぉ……両者、決闘で賭ける魂は決まっているな?」

 

「オイが勝ったら…こ、恋人に……」

 

「アタシが勝ったら金輪際、アタシに近づかない…」

 

ストーカーと被害者の構図を思い浮かべてしまう決闘の内容に横島は拍子抜けする。

 

「(こ、こんなくだらん事で決闘しても良いんかい! ……わざわざ決闘しなくても教師に言えば、どうにかしてくれるだろ)」

 

横島をよそにコダマは決闘の儀を執り行っていた。

 

男とアズキはおもむろに拳を突き出した。

 

「ここに対なす二つの流れ、二人の道は交わらん。己が道を開くため、己が証を立てるため魂賭して天日に示せ」

 

着実に決闘の儀を進めていくコダマ。

 

「日の子の道を!!」

 

『天に契んで!!!』

 

アズキと男は声を張り上げ、誓いを宣言する。決闘の儀は終わり、男はすぐさまアズキから間合いを取る…一方アズキは間合いどころか構えさえ取っていない。

 

「どういうつもりか? 構えもとらんたぁ!」

 

「入りたての新入生に気取り過ぎてもな……マケンなしでやってやるから―来な」

 

それは、明らかな挑発行為。

たかが入学したばかりの一年生。

自身より強いわけがない。

ろくにマケンも使えないだろう。

そんな事を思っているアズキは隙だらけで油断をしていた。

それは男の目からも決闘を見に来た野次馬でさえ感じ取っていた。

 

「フン、気が強いな……そこが魅力……ばってん……後悔すっぞ!!」

 

その言葉を合図に男はアズキに襲いかかる。

 

「フン! ん?」

 

力強い動きでアズキを捕らえようと巨腕を振るうが、腕の中にはアズキはいなかった。

 

アズキはどこに?

 

その考えが頭の中で埋め尽くされたが、答えはすぐに分かった。

 

「―ッ!!」

 

「シッ!!」

 

アズキは強力な脚力を生かし、男の攻撃を真上に跳ぶことで避けた。

しかし、避けただけで終わずアズキは男の顔面目掛けて蹴りをいれる。

突然の攻撃に避ける暇もなく、直撃する……確かに…確かに入った攻撃だが、聞こえたのは呻き声でも叫び声でも無かった。鉄あるいは金属を殴ったような音が周りに響きわたる。

 

「クフフ、コレがオイのマケン。頑ななり、魔堅“フルメタル”!!!」

 

男の腕に付いてた腕輪が、機械じみた姿に変わっていた。

 

魔堅“フルメタル”

体を鋼鉄以上の硬度に変えることができ、部分的に硬質化することが可能である。男はこの能力を使い、顔面を部分硬質化しアズキの蹴りを真っ正面から受けても傷ひとつ負わなかった。

 

「ムン!!」

 

「おぉぉ!!!」

 

今度はマケンにより強化された腕で、アズキに殴りかかる。危なげに避けたアズキは当たりはしなかったが、制服が破れ下着が丸見え状態になり、周囲の男達が歓喜の叫びをあげた。

 

「あやつ部分的硬質化出来とるの」

 

「えぇ」

 

「魔堅は体を鉄の様に硬くする事が出来るけど、全身を硬めると身動きとれないから一部分だけ硬質化させる部分硬質化……それを入学したてで出来るなんて」

 

コダマと春恋は口には出さないが、男を称賛する。二人の説明を聞いていたイナホも「スゴいです」と取り合えず褒めてる。

 

「忠夫もすぐにあれぐらい出来ると良いわね……あれ、忠夫?―っ! まさか!!」

 

「下着ーッ!! 女子高生の下着ーッ!! これは決してやましい事じゃない! この決闘の真実を記録し、後世に伝えねばッ!!」

 

「うわっ! なんだテメェ!? と、撮るんじゃねぇッ!!」

 

横島は何処から取り出したのか、分からないが立派なカメラを携え、アズキと男の………アズキだけを激写していた。

それを見た、男子生徒達は後で焼き回しして貰おうと考えた者が何人か居たとか居なかったとか…

 

「脳ミソ、ピンぼけてんのか! おのれはーッ!?」

 

すかさず、突っ込むコダマに突っ込み魂が染み付いてきたと殴り飛ばされながら、思っていた。

コダマからしたら、たまったもんじゃ無いことこの上ないだろう。

 

アクシデントがあったが、決闘は終わりへと進んでいく。

 

「邪魔が入ったばってんが、これで終わりたい! ……なっ、速い!! 硬化!!」

 

幾千の攻防のすえ、舞え上がった土煙の中からアズキが突然現れ、それに体がすぐに反応出来ない男は体を硬質化させた。

 

「ムダたい!! なんばしよっても、こな体にはきかんばい!!」

 

男の言う通り、マケンを使ってないアズキの攻撃は硬質化した男の体を傷付ける事は叶わない…が、策も無しに攻撃をしに出てきた訳ではなかった。

 

「どいつも、こいつも……口数が多いッ!!」

 

「あがぺ!!!」

 

金属音ではなく、何かが潰れる音が聞こえた。攻撃が通った音だ。

 

男は言葉にならない声を上げ、大の字に倒れる。

 

「……どれ確認…うっ…勝者志那都アズキ!!」

 

「喋ってたら口、硬質化出来ねぇだろ…バカで助かった…」

 

コダマの言葉を聞き、アズキは体の力を抜き安吐する。

 

男の魔堅“フルメタル”は防御力に優れたマケンであるが、出来るのは薄皮一枚程度だ。口の中までは出来ないと悟ったアズキは男が口を開いた瞬間を狙い、蹴りを撃ち込んだ。生身の場所にアズキの蹴りは想像以上のダメージを与え、見事アズキは勝者を勝ち取ったのである。

 

余談だが、アズキの下着姿を写した横島のカメラは誰かさんに、ズタボロにされていたらしい…

 

 




ムヒョや屍姫のどっちらかを、GSとクロスさせた小説を書きたいと思います。
どの作品とコラボした小説が読みたいか感想覧に書いてくれる幸いです。

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