ノーゲーム・アーカイブ 〜ゲーマー兄妹が透き通る世界に迷い込んだようです〜   作:旅する野良猫

1 / 3
クソ遅筆マンです。
(新作なので)初投稿です。


序章(チュートリアル)

 

優しくもどこかはかなげな光が差し込む電車の中で眼を閉じていた青髪の少女はそっと口を開いた。

 

「私のミスでした」

どこまでも青く澄み渡る世界を映す窓からの光に照らされながら少女は眼の前の兄妹に言う。

 

「私の選択、そしてそれによって招かれたこの状況」

「結局この結果にたどり着いて初めて、アナタたちが正しかったことを知るなんて」

車両の揺れでつり革から生じた影が兄妹と少女の間を揺れ動く。

少女の髪で隠れていた瞳が振動でわずかに覗かせ、兄妹を見据え震えていた。

 

「今更図々しいですが、お願いします。『  』

兄妹は何も答えない。ただその場で少女を見る。

だが、少女にはそれが何かしらの意図を感じ取れたのだろう。

口角が僅かに上がる。

 

「きっと私のことは忘れてしまうでしょうが構いません」

「何も思い出せなくても恐らくアナタは同じ状況で同じ選択をするでしょうから」

 

 

「大事なのは経験ではなく、選択」

「貴方方にしか出来ない選択の数々」

――苦しそうに。

苦々しくも、笑みをなお浮かべ続ける彼女の覚束ない足元に広がる血溜まりはゆっくりと。

しかし確実に広まりつつあった。

 

挑むものplayer祈るものprayerに関して話したことがありましたね」

「あの時の私には分かりませんでしたが、今なら理解出来ます」

少女は尚も言葉を続ける。

――自分では届かなかったからと。

 

「それを言ったあなた達の延長線の選択。そしてそれが意味する、心構えも」

 

 

「ですから  先生

 

「ここでないどこかへ。いつか、きっとたどり着いてください」

今も少女の瞳は揺れながら、二人を見続ける。

堪えるように。そして、祈るように。

 

「私が信じられるあなた達なら、この捻れて歪んだ先の終着点と別の結果(未来)を」

「次を笑って迎える始まりの場所へと至る奇跡の一手(必然の結末)に」

「そこへ繋がる選択肢はきっと見つかるはずです」

 

 

――――“次”を託します、『  (先生)』。

 

 

 


 

 

 

――!!――生!!

「先生、起きて下さい!!」

「ンぇ……?」

「ん……にぃ、エロゲのイヤホン忘れてる……」

「い、いいや妹よ!? 兄ちゃんがフルボイスゲーは一周目はボイス切ってるの知ってるだろ!? それにエロゲなんてやってないからな!?」

 

 

 

兄――空。童貞・引きこもり・非モテ・コミュニケーション障害・ゲーム廃人。

典型的引きこもりを思わせるジーパンにTシャツ、そこから覗かせるのはそのなりに似つかわしくない筋肉質な肉体。そしてボサボサの黒い髪の青年。

 

妹――白。不登校・引きこもり・対人恐怖症・ゲーム廃人。

血のつながりを疑うかのように兄とは対照的に白い。

やや痩せぎすな体型と兄と同じく染み付いた隈のある美少女。

「……ゲームじゃないなら編集中のステフじゃねぇの……?」

「イメー、ジ、プレイ?」

「そんな関係じゃないの知ってるよなぁ……!?」

おかしい。つい先程まで屈伸煽りする青髪の野良をミンチにして、個別でクリスマスチキンにしてやった所な筈だと思いながら机に置かれているはずのディスプレイを見ようと目を開いて気づく。

ゲームをするのに最適にしてあるはずの自室ではありえない眩しさ、それが日の光であると認識できたのは久しく感じることのなかった網膜を焼かれる感覚故にであった。

日に触れる可能性があればサングラス等で対策を抗していたが為に長らく紫外線に眼球を晒させることなく生きてきたその瞳にはいささか刺激が強く、涙が漏れ出る。

 

つまるところ、フラッシュバン(閃光手榴弾)を疑似的に喰らっていた。

「あがぁーーーーっ!!! め、目がぁーー!! 目がぁーーーーーー!!!!」

両目を抱えて苦しむ某大佐のオマージュをするかの如くのセリフと足をバタつかせ平静を保とうとしていた。

「ステフ、に……伝えろ、カーテンは弄、るなと……っ!!」

兄妹仲良くジ●リで言いたいセリフを吐いて悲鳴を上げている様子を見れば分かることだろう。

 

 

…………さよならキヴォトス。ありがとうノーゲーム・アーカイブ【完】

と、なるのも無理はないし、これがネット小説であればブラウザバックでもしていることだろう。

現に連邦生徒会首席行政官である七神リンも、これがあの連邦生徒会長が連れてきたらしい先生なのかと疑いの余地しかない上、然程似ていない兄妹の行動ですでに不満だけが募っている。

最低限の説明義務だけ済ませる為にこの場に居合わせているようなものなのだ。

「あ、あなた方はおそらく私たちが呼び出した先生なのですが……」

「せん……」

「せ、い?」

「はい。あぁ、推測形で話したのは私も先生方がここへ来た経緯を詳しく分かっていないからです」

「あー、まぁそのなんだ。とりあえず、状況が分かんないからさ。アンタの名前とそっちの事情を話してくれないかな?」

困ったように頭を掻いて笑う空。

呆れかえったのかため息をつきながらもリンは自身の紹介と説明を始める。

「紹介が遅れました、私は七神リン。学園都市『キヴォトス』の連邦生徒会所属の幹部です」

 

 

 

 

「それで? 件の連邦生徒会長サマがいなくなった途端、総崩れになったわけだ」

「……簡潔的に言えばそうなります」

――――訳が分からない。

七神リンは応対用のソファーに腰かけ、コーヒーを口にする兄妹をそう評した。

二人からの質問に対して、言いにくそうに顔を歪ませるリンは、少し前までフザけ倒していたはずの相手に自分の意識が全力で警鐘を鳴らしていることを理解できずにいた。

物事は事細かに分解していけば対処可能な範囲へと規模が狭まるのが道理である。

しかし、そんな常識など捨て置いているのかこの兄妹は頼りなくだらしないと見下されていたこの現状を一転させつつあった。

 

文字通り――――訳が分からない。

リンはこの兄妹をそう認識するほかなかった。

 

「ですので……その、この事態の収拾を付けるべく先生にはこのキヴォトスで働いていただきたく……」

だが、訳が分からなくても首席行政官としては連邦生徒会長の連れてきたこの二人を使うしかないし、どのみち騒動を収めなければ何も始まらない。

 

故に七神リンは声を上げ、助けを求めた。

 

「え、嫌だけど」

その助けを求める声は秒どころかコンマレベルで却下されてしまったが。

「はい?」

な~に故に我ら兄妹が起き抜けにいきなり拉致された組織の話を真面目ぶって聞かねばならんのかねン〜ン?

菓子折り……つけ、て、丁寧に媚び、へつらう、の……!!

何より我ら兄妹、引きこもりコミュ障ぞ!? そんな簡単に働けてたら苦労せんわ!!

余り、『  』を舐めない、で!!

なにせ目の前にいるのは生粋の引きこもりゲーマーである。

労働させようなど論外以前の話であった。

 

「で、ですが先生に来ていただかないと……!」

ヘラヘラと――目以外で笑いながら空が答える。

「それ、行政を担ってる連邦生徒会サマがどうしても俺たちを連れて行かなきゃいけないようなレベルの問題が起きてるってコトだろ?」

「――な」

「状況把握出来てないうちに丸め込もうとするのは勝手だけどさ、そういう時は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と、アドバイスしとこう。焦りが丸見えだぞ♪」

――と、全てを見透かすかのように視線を鋭くし、笑いながら空は言う。

冷や汗を一筋垂らし、なおもリンは答える。

「で、ですが本当にこれは――」

「だからさぁ? それなら相応の頼み方ってあると思うぞって俺は言いたいんだわ」

ヘラヘラと笑いながらこの男はどこまでの対価を出せるかを聞いていることを理解した。

「身の安全や生活の保障等でしたらもちろん保証致しますのでどうか……」

「冗談だろ? ……交渉事は立場を考えながら話せ。な?」

さらに吊り上げられた天秤から察せるのは安全や生活はそもそも勘定に入れる以前の問題であること。

「……状況が変わった後もお二人の安全はもちろん保障させていただ「あー……分かった。受ける」」

「え?」

余りに唐突に手のひらを返され、リンは目を丸くしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっと待って!!代行!! 見つけた、待ってたわよ!! 連邦生徒会長を呼んできて!!」

「……あぁ、面倒な人達に捕まってしまいました」

エレベーターを降りた直後、人ごみの中から現れた少女たちへと不満タップリにリンは言う。

 

「って、隣のその人達は?」

リンが隣の兄妹を見ると先程の素顔では無く、紙袋とかぼちゃを被った仮装をしている二人がそこにはいた。

いつの間に着替えたのか、『I♡人類』と書かれた黄色いTシャツを白も着てペアルックになってダブルピースをしていた。

「あぁ、こちらの方々はこれからキヴォトスの先生として働く方であり、連邦生徒会長が特別に指名した人物です」

「あの連邦生徒会長が? ますますこんがらがってきた……」

 

 

 

 

 

「結論から言ってしまえば、現在連邦生徒会は行政制御権を失った状態です。認証を迂回できる方法を模索していましたがその方法は見つかっていませんでした……今までは」

「つまり、今では方法があるということですか?」

黒い羽根を持つ少女、羽川ハスミが問う。

 

「はい」

そう言ってリンは後ろにいた二人へと振り返って目線を送る。

「こちらの先生方がフィクサーになってくれるはずです」

「「!?」」

「ちょ、ちょっと待って!! この変な被り物をした二人がフィクサー!? 年齢だって対して変わらなそうなのに!?」

「ほ〜う、見た目と年齢だけで人を判断するとはそれでも仮に連邦生徒会という行政に直談判に来るほどの者がするべきことなのか? そして何より変なとは何かな、変なとは?」

第一印象の時点で怪しまれてしかるべき風貌なのではあるが、空の言動に言葉を返せず言いよどんでいるとなおも一人の少女に向けられた口撃は続く。

 

「一応?チーム『空白』の?メインユニフォームとして?これでもメジャーな衣類どころか仮にもプレミア扱いされてるんだが!?」

「にぃ、ブチ切れ……?」

「キレてないが!? 仮にも? 兄ちゃんは人のファッションセンスをとやかく言う資格があるのか説いたいだけであって、そもそもプ◯ティーリズムやおしゃ◯魔女、ア◯カツの系統をプレイしてファッション系統に最低限造詣を得た自分に、そう言った発言が出来ているかスーツとパーカーを合わせて着ている彼女に聞きたいだけなのだよ、妹よ!!」

 

そう言いつつも空のダメージはデカく、目の前の少女の方が謎に良いセンスなのが堪えていた。

「だ、だとしてもそんな恰好をしていては先生として見えないですし分からないのも仕方ないと思います!!」

そして追い打ちをかける圧倒的正論。

「そ、それに本当にすごいのかなんてわからないですし」

しかし段々と尻すぼみ気味になり、半信半疑と言わんばかりにユウカはちらちらと兄妹を見る。

この少女、早瀬ユウカはとてもチョロかった。

 

「でしたら先生、一緒に取り返しに行きましよう」

「え、嫌に決まってんじゃん」

「理解……でき、ない」

「は!? え、いや、なんでですか!?」

ユウカが空と白へと問いただすべく詰め寄るようとするが――

「いきなり知らない異世界に来たら行きたくないだろ……」

 

そも異世界転移してファンタジー世界ならまだしも現代よりの世界で紛争地帯に飛び込まされなければならないのか。

しかもなんかトラブル起きてる的な事が通信で入っていたのも見たのだ。

当然の結論である。

しかしユウカは諦めが悪い女であった。

「い い か ら!! 行きますよ先生!!」

かぼちゃヘッドと紙袋を被った珍妙な両者の首根っこを掴み、キヴォトス人パワーで運び始める。

「計算が得意そうな雰囲気出しておいてパワー系かよ!?」

「ゴリ押し攻、略ダメ……!!」

イヤーーーーッ!!となんか力がなくて弱々しい兄妹――略して空白はズルズルと引きずられていく。

 

仮にも引きこもり属である『  』(二人)の抵抗などユウカは歯牙にもかけず、そのまま連れて行き気が付けばそこは戦場であった。

爆発音と銃声の飛び交うそのど真ん中へと連れてこられた兄妹は――。

「「ひッ……!?」」

まるで役に立ちそうにないんですが!!?

頭を抱えて丸くなっていた。

俗にいうカリスマガード形態である。

「に、にぃ……来世、でも一緒……だよ、?」

「あ、あ、あたり前だろ、しろぉ……!?」

 

なんなら、もう死の覚悟を決め始めていた。

だが、そうなるのも必然と言えよう。

ユウカの目の前にいるのは現代日本という戦争どころか銃火器に触れる事すら難しい国で培養された生粋のエリート引きこもりである。

――最も分かりやすく言語化するなら、

「FPSとかSTGが出来れば戦争が出来るなんて厨二病の空想に決まってんだろ!? なにより怖くて動けんわ!!」

コレに尽きた。

「これで本当に役に立つの……?」

「普通に考えろよ、戦場にニート連れ込んで役に立つ訳が無ぇだろッ!?」

泣きながら空はユウカに叫ぶ。

キヴォトス人であるユウカや同行している生徒たちはまだしも、ここにいる空と白は跳弾でも当たれば即死である。

『目標であるビルまでの道中、暴れている不良グループの一掃をお願いします』

通信機から無線で飛んでくるリンの声を聞きながらユウカはイラついた様子で反応を返す。

「一掃しろじゃないでしょーが!! ここから震えてる先生を抱えて前線を推し進めろって無茶言ってる自覚あるの!? 第一、そっちの治安維持要員はどうしたのよ!?」

『ミレニアムの精鋭である早瀬さんがいらっしゃるのですから必要ないでしょう?』

バカスカと銃弾が飛び交う戦場で物陰で震える兄妹を尻目にユウカは必死に反論をしようとするも通信はすぐに切れてしまい、やる場所のない怒りにその両手はプルプルと震える。いや、なんなら握っていた通信機からミシミシと軋む音が聞こえていた。

 

 

 

 

 

 

「スズミ、目標停止標札付近にフラッシュバン置いとけ」

 

「えっ……あ、はい!!」

ミレニアムサイエンススクールの生徒会組織である〝セミナー〟に所属する少女、早瀬ユウカは戸惑っていた。

「随分と御大層に……戦車まで持ち出してのデモ行為ってどういうことだよこの世界。ま、だとしても、戦車って案外脆いんだわ」

「砲撃、ラグ多……すぎ、機、動性もビミョー……」

「だから部隊運用を前提で動くし、戦術ドクトリンなんてもんがあるわけだ」

目の前で起きている状況をうまく飲み込むことが出来なかった。

「ハスミ、53m先の消、火栓左のチェーン……」

「りょ、了解しました。撃ちます!!」

ずぶ濡れだったり誤射したりと互いに鬱憤が溜まりだしたのか不良生徒らが仲たがいを起こしつつある中、ひっそりとユウカは戦車に寄ってぺたりとIED(即席爆弾)を取り付けてこれ指示したモノの元へと戻る。

 

そして、数分待って響くは轟音。

 

「「きたねー花火だぜ……」」

言ってみたいセリフランキングのセリフを言いながら二人は言葉を紡ぐ。

「一両……だけ、な、んてカモ過ぎ……♡」

「お手玉一つでお手軽ヒューマングリル機になっちまう訳だからな」

燃え上がる戦車を背景に『  (兄妹)』は非常に強烈な笑みを浮かべて楽しげに生徒達へと視線を向けた。

 

「こんなん六代タイトル防衛戦に比べりゃ……」

「ちょーヌルゲー……♪」

楽しめる環境である。

その事実が、ユウカたちの目の前にいる二人の瞳を怪しげに輝かせた。

 

 

 

兄――空、十九歳。

妹――白、十四歳。

職業、プロゲーマー。

現代のゲーマー史において各ゲームジャンルタイトルを六つ獲得、防衛している生ける神話のプロゲーマーである。

 




以前友人に話したら書くことになった二次創作シリーズ第一弾です。
一話分書き終わって勢いままに投稿した罪人ですが、クソ遅ぇ執筆速ですが書いていきます。
作者は承認欲求モンスターなので、評価やコメント頂ければ幸いです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。