カタカタヘルメット団の襲撃を退けた後、撤退するカタカタヘルメット団が乗り捨てていた大型のミリタリートラック(屋根なし)を再利用する形でアジトへと向かっていた。
「アロナ、ヘルメット団の現在地は?」
『はい、先生!ヘルメット団は現在私たちの10㎞先を走行しています。発信機が未だ破壊されていないことから、恐らく尾行はまだバレていないと考えられます!』
「ありがとうアロナ。発信機をアヤネと共有してくれ」
『了解です!』
「さてと...」
再び運転に集中しつつ、同席者の少女達に声をかける。
「あと10分もしないうちにアジトに着くだろう。皆準備の方はどうかね?」
「ばっちりだよー」「いつでも」「問題ないわ!」「OKでーす☆」
『こちらも支援準備完了してます!』
「それはなにより、そして一つ提案があるんだが――」
提案内容は先に自分が一人偵察に出て基地の全体像を把握してくるというもの。基地周辺をぐるりと一周し、その際に魔術によって基地内の構造を解析、これによってどこに何があるのかを詳しく把握することができる。
『いやいや流石に一人では危険です!補給所や弾薬庫の位置を把握できるのは、たしかに凄くありがたいですけど...リスクとリターンが見合ってないと思います』
「んーそうだねぇ。おじさんも反対かなー?そこまでもしなくても苦戦するような相手じゃないと思うよ。ただでさえ敗走中で余裕もないだろうしね」
「ん、逆に偵察中に見つかって人質に取られた方が厄介かも」
そこに関しては、霊体化という隠密手段があること説明しようと口を開く直前でセリカの言葉に遮られた。
「なんでもかんでも自分ひとりで解決しようとしないでよ。これは元を辿れば
「――あぁ、そうだな。いや失敬、どうにも私は昔から世話を焼きすぎるきらいがある。たしかにこれは君たちの戦いだ。私が矢面に立ちすぎては君たちのメンツを潰すことになりかねないか」
「ま、補給物資に籠城戦ともう十分すぎるぐらいおんぶに抱っこな気もするけどねー」
「ちょっと先輩!せっかくいい感じに納得してるんだから、水差さないで!」
「フッでは、私は今回もあくまで支援に徹し君たちを支えることにしよう。それぐらいなら問題ないかね?セリカ」
「ふんっ足引っ張らないでよね!」
「あぁ、善処するよ」
気合十分、ひとしきり話し合いを終えるとタイミングを見計らったかのようにアヤネから通信が入る。
『カタカタヘルメット団のアジトがあると思しきエリアに入りました...!半径15㎞圏内に敵シグナルを多数検知!あちら側にもすでに気づかれていると思います!全員、戦闘準備を!』
「さて、あぁも啖呵を切ったんだ。アビドスの力を存分に見せてくれたまえ」
「うへー先生にそこまで言われちゃ仕方ないねー」
「やってやるんだから!」
「悪い子にはお仕置きが必要ですからー☆」
「うん、行こう」
その後のアジト襲撃は非常にスムーズに進行した。元々、敗走中でカタカタヘルメット団の指揮が低かったことやこれまでにないこちらからの襲撃に相手は終始混乱状態。やる気に満ちた彼女たちの前では烏合の衆も同然であった。
あまりにも戦力差が酷かったので、むしろやり過ぎないように注意したぐらいだ。どんな境遇であれ彼女たちもまた私が支えるべき生徒には変わりないのだから。
『敵の退却を確認しました!それとアジト内の重要設備のいくつかに致命的なダメージを与えることにも成功しましたね。皆さん、お疲れ様です!』
「よしっ!」
「これでしばらくは大人しくなるかな」
「よーし、作戦終了ー。みんなお疲れー。先生も指揮、ありがとね」
「お役に立てたようでなによりだ」
「それじゃあ、みんなで帰りましょー☆」
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「おかえりなさい、皆さん。お疲れ様でした」
「ただいま~」「アヤネちゃんもオペレーターお疲れさま」
学校へと無事帰り着き、ようやく事態はひと段落と言ったところか。
「火急の事案だったカタカタヘルメット団についてはこれで片付きましたね。ようやく一息つけそうです☆」
「そうだね。これでやっと、重要な問題に取り掛かれる」
「これで心置きなく借金返済に取り掛かれるわ!ありがとう先生!この恩は一生忘れないから!」
一つの問題が片付いて肩の荷が下り晴れやかな心情なのだろう。常よりも晴れやかな笑顔でお礼を言ってくれるセリカの言葉に返事を返そうと思ったが、それよりも気になる単語が出てきた。
「...借金か」
「あ...わわっ!えっと...!」
「その、先生...」
話そうと決心したアヤネの様子にセリカがストップをかける。
「待って!!アヤネちゃん、それ以上は!」
「...!」
「...いいんじゃないかな?話しても。別に罪を犯したとかじゃないしさ?それに、ここ数日先生は十分すぎるくらい私たちを手伝ってくれたでしょ?」
「ホシノ先輩の言う通りだよ、セリカ。先生は信頼できる大人だと思う」
「そ、そりゃたしかに凄く助かったけど、先生だって結局は部外者だし!」
意見の対立。それ自体はどのような集団であれ間々あることだ。しかし、現状の流れから察するにこのままではセリカだけが孤立してしまう事態になりかねない。それは避けるべきだろうと判断して、注目を集めるために大きく手を叩く。
パン!パン!
「ひとまずお互い落ち着いてくれ。まず、キミたちの事情について私から催促するつもりはない」
「先生...」
「アヤネの手紙で要請された物資の補給とカタカタヘルメット団の問題については解決したとみてもいいだろう。今少し聞いた内容から察するに、私が協力したとしても一日二日でどうにかなる問題でもないように思う」
「ん、そうだね...」
できるだけ角が立たないように優しく諭すように意識して言葉を続ける。
「であるならば、私は一度追加の物資を持ってくるためにシャーレへと戻る。だから後日話し合ってみんなでどうするかを決めてくれ。
全てを話すのか、あるいは何も話さないのか...話さないにしてもどういう支援が欲しいのかを伝えてくれればこちらも多少なりとも手伝えることはあるはずだ。それでいいだろうか?」
「うん、ありがとねー先生。早速だけど、この後みんなで軽く相談してみるよ」
「あぁ、結論を出すのに焦る必要はない。ゆっくり決めるといいさ」
「そうさせてもらおうかなー。ノノミちゃん、先生の見送りお願いしてもいい?」
「もちろんです☆それじゃ先生、行きましょうか?」
「あぁ」
少しばかり気まずそうなセリカの表情が気になったが、アビドス対策委員会は頼りになるメンバーばかりだ。任せることに不安はない。
「ありがとうございます、先生」
駐車場へ停めたバイクへの道すがらノノミがポツリと言葉をこぼした。
「気にすることはない。むしろお節介になっていないか心配しているぐらいだ」
「うふふ♪それこそ心配ご無用です☆...あのままじゃ、セリカちゃんが拗ねちゃってたかもしれませんから」
「アビドスの抱えている問題を何とかしたい想いが人一倍強い証拠だろう。ここは居心地がいいからな」
「あら☆それじゃあ先生もアビドスに来ちゃいましょうよ。シャーレ兼アビドス高等学校所属ってことで☆」
「フッそれも悪くないかもしれないが...これでも一応は“先生”という立場を任された身だ。一つの学校に肩入れするというのはあまり良くないだろうな」
「それは残念ですね...セリカちゃんも喜んでくれると思ったんですけど」
ノノミとの談笑はバイクに乗り込むまで続いた。それと、匿名希望の要望により追加の物資の中でお菓子の占める割合が少し増えたが、さて誰からの要望だったか...
【Fate×呪術廻戦】の方にリソースを割かれてしまい、少し短めになってしまいました。分かってたことですが、やっぱり影響なしというわけにはいかなかったです。
ただ、どちらも自分なりに丁寧に面白く執筆できたらと思っています。感想や誤字脱字報告、お待ちしてます。