透き通る世界の無銘の弓兵   作:矛盾ピエロ

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便利屋68登場!

 ヘルメット団の破棄された拠点にあった違法兵器の部品という僅かな手掛かりについては一度置いて、アビドスの面々は柴関ラーメンへとお昼を食べに来ていた。定例会議でふざけアヤネを激怒させたお詫びである。

 

「いやぁーやっぱり柴関は美味しいねぇ。アヤネちゃーん?そろそろ機嫌治してくれたかなー?」

 

「...(もぐもぐ)」

 

「アヤネ、チャーシューもっと食べていいよ」

 

「...(もぐもぐ)ふぁい...んぐ、ゴクッ...ゴクッ...ぷはぁっ...ふぅー、定例会議の件はもういいです。それよりもヘルメット団の拠点に会った違法兵器の部品,,,あれの流通ルートをどうやって調べるのかを考えましょう」

 

「まぁまぁ...今はお昼ご飯の最中なんですから。その話はまた今度にしましょう?」

 

 たしかに美味しいラーメンに舌鼓を打ちながらするには少々無粋な話かもしれない。

 

「なんで私がバイトに入ってるタイミングで...私言ったじゃん、来るなら私がいない時にしてって」

 

「そう邪険にしないでよーセリカちゃん。ここら辺お店少ないからさ。あ、そういえばさー...」

 

 雑談に花を咲かせながら食事を楽しんでいると、遠慮がちなノックと共に柴関の扉が開かれた。

 

「あ...あのぅ...」

 

 わずかに開かれた扉の隙間から顔を覗かせたのは紫がかった髪の内気な印象を抱かせる少女だった。新しい客の来店にセリカが対応する。

 

「いらっしゃいませ!何名様ですか?」

 

「あ、えっと...こ、ここで一番安いメニューって、お、おいくらですか?」

 

「?一番安いのは...580円の柴関ラーメンです!看板メニューなんで、美味しいですよ!」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

 そう言うと少女は扉を閉めて再度外へと出てしまった。

 

「ん?」

 

 不自然な行動にセリカが首を傾げて困惑している。そのやり取りが気になって、食事をしながらも少しだけ意識をそちらに向けていると...先程の少女を含め、4人の少女が店内へと入ってきた。

 

「えへへっ、やっと見つかったねー600円以下のメニュー!」

 

 来店した四人組の少女たちの中でも一番小柄な白髪の少女が楽しそうな笑顔でそう言った。

 

「ふふっ、だから言ったでしょう?何事にも解決策はあるのよ!これも全部想定内なんだから」

 

 少女の楽しそうな言葉に返したのは、4人の中で最も背が高く、その身の丈ほどもある上品な赤褐色のコートを纏った少女だった。

 

 だが...なぜだろう、上品で気位の高そうな雰囲気を出しているが...どことなく“作られた感”があるというか...

 

「さ、さすが社長です...!」

 

 先程、柴関で一番安いメニューの値段を聞いていた紫髪の少女は社長と呼ばれた少女の言葉に一点の曇りもない尊敬の眼差しを向けている。

 

「はぁ...」

 

 ため息を吐きながらその様子を見守っていた最後の少女は軽く店内を見回して周囲の様子を気にかけている。途中、こちらに視線が向けられているのを感じたが...それも一瞬のことだった。

 

「4名様ですか?お席にご案内しますね」

 

 改めての来店に今度こそセリカが席へと案内する。しかし、それを相手側が断った。

 

「んーん、どうせ一杯しか頼まないからカウンターでいーよ」

 

「一杯だけ...ですか?うーん...でも、どうせならごゆっくりできるお席へどうぞ。今の時間は空いてる席も多いので」

 

「おぉー!親切な店員さん、ありがと!それじゃあお言葉に甘えて。あ、甘えるついでにお箸は4膳でお願いね?優しいバイトちゃん」

 

「えっ?まさか...1杯を四人で分け合うんですか?!」

 

 珍しい注文の仕方に思わず、と言った感じで驚きの声を上げるセリカ。それを怒っていると思ったのか内気な紫髪の少女が大声で謝罪していた。

 

「ご、ごめんなさいっ。貧乏ですいません!!お金が無くてすみません!!」

 

「え、あ、いや...!その、別にそんな謝らなくても...」

 

「いいえ!お金が無いのは首が無いのも同じ!生きる資格なんてないんです!虫けらにも劣る存在なのです!虫けら以下ですみません...!」

 

 何もそこまで否定的にならなくても...と思うぐらいにはネガティブで極端な思考だった。介入するべきかどうか悩んでいると、落ち着いた雰囲気を持つ少女が紫髪の少女を諫める。

 

「はぁ...ハルカ、ちょっと声デカいよ。周りの迷惑になる...」

 

「あぅ、す、すみません...」

 

 しょぼんとしたハルカと呼ばれた少女を慰めたのはセリカだった。

 

「気にしないで!お金が無いのは罪じゃないわ!だからもっと胸を張って!」

 

「へ...?」

 

「そもそも私たち学生だし!お金のやりくりに困ることなんて当然だもん!それでも小銭をかき集めてご飯食べに来てくれたんでしょ?店側はそれだけでも嬉しいんだから!...ちょっと待っててね、すぐ持ってくるから!」

 

「...なんか変な勘違いされてない?」

 

「んー...面白いから放置で!」

 

「はぁ...私たち別にいつも金欠ってわけじゃないんだけど」

 

「強いていうなら金遣い荒いのってアルちゃんだもんねー?」

 

「ちょっと、アルちゃんじゃなくてしゃ・ちょ・う!でしょ。ムツキ室長、肩書はちゃんと付けなさいよね」

 

「えー?今は仕事の時間じゃないからいいじゃん?それより、社長なら社員にラーメンぐらいちゃんと奢れるようにならなきゃねー?」

 

「...ふん」

 

「実際、今日の襲撃依頼ってあんなに傭兵雇う必要あったの?おかげでウチの全財産使っちゃったわけだけど」

 

「あ、あらゆるリソースを総動員して徹底的にやるのよ!それが私たち便利屋68のモットーでしょ!」

 

「初耳だけど...」

 

「ぶっちゃけビビってるんでしょ?アルちゃん」

 

「ビビってなんてないわよ!全部私の想定内なんだから」

 

「お昼ご飯以外はね...はぁ、まぁいいよ。リスクは減らせるに越したことないし、質より量とはいえあれだけの数ヘルメット団がいて落とせてないなら警戒するに越したことはないだろうし」

 

「そ、そうでしょ!そうでしょ!...すぐに私の判断が正しかったって分かるんだから!フフン♪今回の依頼を無事に成功させてがっぽり報酬が手に入ったら、すき焼きにしましょ!だから気合い入れていくわよ、みんな!」

 

「すき焼き...いったい、それは...?」

 

「大人の食べ物だね、すごく高いけど...」

 

「う、うわぁ...わ、私なんかが食べてもいいのでしょうか?ハラきりですか?」

 

「ふふん♪ウチみたいな一流企業の社員ならそれぐらいの贅沢は当然よ!」

 

 少し聞き耳を立てさせてもらったがどうやらどこかへと襲撃の予定があるらしい。便利屋...セリカ襲撃のヘルメット団の拠点にあった名刺...偶然と片づけるには少々都合が良すぎるか。

 

 とはいえ、現状の彼女たちには非がない。今しばらくは静観が必要か...と次にとるべき行動について悩んでいる間にどうやら彼女たちの注文が来たようだ。そこには特盛を越えた量一杯のラーメンが鎮座していた。

 

「うひゃー、なにこれ!?超特盛じゃん!」

 

「ざっと、10人前はありそうだけど...」

 

「え、えっと...オーダーミスでしょうか?こんなの払えるお金ありませんけど...」

 

 厨房の方に目を向けると柴関の大将が口元に微笑を湛えながら何食わぬ顔で作業をしていた。

 

(粋な人だ...)

 

 これなら自分がでしゃばる必要はないだろうと静かにラーメンを堪能していると特盛ラーメンのおいしさに大はしゃぎの四人にノノミが話しかけていた。そしてそこからアビドスの皆と交流を深める四人。

 

 ただ、白髪の小柄な少女と落ち着きのある少女がなにかに気づいたようにアイコンタクトを取っていた。これは...どうにも和気あいあいとした友人関係で終わる事態にはならないようである。

 

 

#####

 

 

「それじゃあ気を付けてね!」

 

「お仕事上手くいきますように☆」

 

「えぇ!あなたたちも学校の復興頑張ってちょうだい!陰ながら応援してるわ!それじゃあね!」

 

 和気あいあいとした談笑は終わり、空腹も十分に満ちた頃店先で四人組の少女たちと解散する。セリカのバイトも終わり、全員でアビドス校舎への帰路につく。

 

「気さくでいい人たちでしたね~☆」

 

「ん、ゲヘナってもっと荒っぽい人だと思ってた」

 

「シロコちゃんの認識は間違ってないと思うけどねー。あの子たちがちょっと特別ってだけで」

 

「皆さん、この後はどうしましょうか?何もないようなら解散してもいいと思うのですが...」

 

「あ、私は賛成!今日はもうバイトもないし久しぶりにゆっくりしたいし」

 

「私もこれ以上は特に用事はないですね~」

 

 校舎に着く前に解散の雰囲気が5人の間に流れる始める...が、自分の予想が正しければ解散はしない方がいいだろう。

 

「リラックスしている所申し訳ないが、まだ解散はしない方がいいかもしれないな」

 

『?』

 

「うへー、やっぱり?」

 

「ホシノは気づいていたか...とりあえず皆学校に着いたらバリケードの準備だ。襲撃に備えておこう」

 

 学校に着くとすぐ、困惑する4人の背を押して襲撃への準備を始める。理由については確証が持てるまで待っていてもらう。説明が難しいし、当人たちから直接確かめた方が早いしな。

 

『!皆さん、校舎より南方15㎞の地点で大規模な武装集団を確認しました!どうやら先生のおっしゃる通りだったようです』

 

「嘘っ!ちょ、そろそろ説明してよね!どういうこと?」

 

「まぁ、待ちたまえセリカ。それよりアヤネあちらの戦力を分析できるか?」

 

「? ヘルメット団じゃないの?」

 

『えぇと...ヘルメット団、ではありませんね...傭兵です!日雇いの傭兵集団と確認が取れました!』

 

「ふぅん?傭兵ねー...結構高いはずだけど」

 

「そうなのか?」

 

「うん、ここら辺傭兵が必要な仕事なんてほとんどないからさ?あっちも一回あたりの仕事でがっぽり稼がないとやっていけないんだよねー。

 だから必然的に依頼料が高くなっちゃって、結局他所の学区のに頼んだ方がいいやってなって、さらに仕事が減る悪循環ってわけ」

 

「ほぅ...?」

 

「仕事に対してモチベが高いわけでもないし定時になったら帰るんじゃない?」

 

「傭兵としてそれでいいのか...まぁ、そういうことなら持久戦に持ち込んだ方が勝算が高いか。相手の人数もこちらの比ではない。全員無理をせずに時間を稼ぐ方向で行動することを意識してくれ」

 

『はい!』

 

『これ以上校舎に接近されるのは危険かと。皆さん、お願いします!』

 

「よーし、行ってみよー」

 

「はーい☆」「食後の運動」

 

「ぶっ飛ばしてやるんだから!」

 

 アヤネを除く4人が集団に近づくと最前線にはつい最近見た覚えのある顔が4つほど並んでいた。

 

「あれ...ラーメン屋さんの...?」

 

「うぐぐ...」

 

 社長を名乗っていたアルという少女はこちらを見て居心地の悪そうな顔をしている。こんな場面で思うことではないのだが...公私を割り切れないあたりを微笑ましく感じてしまうな。

 

「誰かと思えばあんたたちだったの!?ラーメンも無料で特盛にしてあげたのに、この恩知らず!」

 

 恩を仇で返す所業にセリカが毛を逆立てる程の怒りを露わにする。さもありなん。

 

「あははっその件はありがとね?でもそれはそれ、これはこれってことで!こっちも仕事だからさー?」

 

「悪いとは思うけど、公私はハッキリ区別しないと。受けた仕事はきっちりこなすのがウチのモットーだから」

 

 社長を名乗っているアルよりもこっちの二人の方が割り切りがいい。まぁ昨日今日立ち上げたという感じでもなし、割り切れない社長の方が心根が真面目すぎるのだろう。

 

「なるほど、さっき話してた仕事って言うのがアビドス(うち)を襲うことだったんだね。先生の言う通り、準備してて正解だったみたい」

 

「もぅ!学生ならもっと健全なアルバイトをしましょうよ!」

 

「ちょっアルバイトじゃないわよ!れっきとしたビジネスなんだから!肩書だってちゃんとあるし!」

 

「まぁまぁ、お話ししに来たわけじゃないでしょー?さっさと始めよっか」

 

「誰からの依頼なのか...力づくでも口を割らせる」

 

「ふふ、出来るものならやって見なさい!この人数差を覆せるなら、の話でしょうけど!総員!攻撃開始よ!」

 

 アルの号令で傭兵集団が動き出した瞬間、その足元に高速で飛来した矢が突き刺さる。

 

「ひぇぇっ!!」

 

「な、何事!?」

 

シューー!!

 

 矢尻に仕込まれていた発煙材が着火し瞬く間に辺りを濃い煙が覆いつくしていく。

 

『全員、手筈通りに。おそらく爆発物の類を大量に用意しているはずだ。適宜私が対処するつもりではあるが、皆も注意してくれ』

 

 肯定の返事をインカム越しに聞きつつ指示を出す。

 

『ノノミは遠距離から牽制を。シロコは移動を繰り返しつつドローン等を使って遊撃。敵の撹乱を第一に』

 

「はーい☆」「了解」

 

『ホシノは障害物を使いながら正面を頼む。ただ、無理をする必要はない。自己判断で撤退してくれても構わない』

 

「はいはーい」

 

『セリカはノノミとホシノの中間付近で最前線に対して集中攻撃だ。前後どちらのフォローにもすぐに動けるように意識していてくれ』

 

「任せてよね!」

 

『アヤネは全体の動きを見つつ変化があれば教えてくれ。それとドローンによる物資支援も頼む』

 

『任せてください!』

 

 一通り指示を出し終えれば向こうの混乱もすでに収まりつつある...がまだ何名かは混乱から立ち直れていないようだ。

 

「あ、あわわ...あわわわわ...」

 

「もぅ...社長しっかりして。とりあえずこの煙幕を吹き飛ばそう。ムツキ、お願い」

 

「はいはーい!楽しくいこっか♪」

 

 小柄な少女はムツキと言うらしい。ムツキは持っていた大きなボストンバッグを放り投げる。それは宙を舞い、放物線を描きながら前方へと飛んで――

 

「ドッカーン♪」

 

 ムツキの持つマシンガンから放たれた銃弾がバッグに着火する――

 

「させんよ」

 

「「!?」」

 

 ――よりも先に再度飛来した黒塗りの矢がバッグの端を引っ掛けて後方の建物の壁に縫い付けた。

 

(投げられたバッグからチラと見えたものから察するに恐らく中身は爆弾だな。初手から使ってきたあたり威力よりも範囲に優れたタイプか...)

 

「さっきも思ったけどなに?あの矢。いったいどこから...」

 

「多分、あそこ」

 

「うっそぉ...えぇ...?学校の屋上?んー...たしかに人影はあるっぽい...?けど、あそこから届くなんてヤッバいね」

 

「スナイパーライフルならともかく弓でこれだけ離れた位置から狙撃できるなんてね。しかも、多分起爆しないように敢えてバッグの端に引っ掛けるようにしてる」

 

「んー...どうする?撤退しちゃう?」

 

「あんまり逃げられそうにないかもしれないけどね。どうする?社長」

 

「へ?なにがかしら?」

 

「相手、今の戦力じゃ大分きついかも。今のうちに傭兵を盾にして撤退するって手もあるけど」

 

「ちょ、冗談でしょう!?せっかく全財産つぎ込んで傭兵を雇ったのに!それにここで尻尾巻いて逃げるようじゃ真のアウトローなんて夢のまた夢よ!」

 

「はぁ...仕方ないか」

 

「あ、あの...どうしましょうか?」

 

「とにかく前進よ!校舎の屋上に狙撃手がいるんでしょ?!もっと近づければ私が撃ち抜くわ!」

 

 ふむ...流石にこの位置では聞き取れないがこちらを指を差している様子から察するに屋上にいるのがばれたか...とはいえ、この距離だ。社長のアルが持っているスナイパーライフル以外は決定打にはなり得ないだろう。

 

 そうこうしている間にも傭兵集団は続々と戦闘不能へと追いやられている。皆上手いこと立ち回っているようだ。

 

『シロコ、深追いはしなくていい。ある程度の撹乱が済んだならホシノのフォローに回ってくれ』

 

「ん、了解」

 

『アヤネ、向こうの動きはどうだ?何か変化は?』

 

『今のところは特に問題はなさそうです。それと、先程現在戦闘中の傭兵集団のものと思しきSNSのアカウントを見つけました。定時まで残り30分ほどだそうです。「依頼料を値切られた」という愚痴もこぼしていますので残業する可能性は低いかと』

 

「了解だ。みんな聞いていたな?後30分で相手の戦力は激減する。それまで頑張って耐えてくれ」

 

 具体的なゴールが見えてくれば戦闘へのモチベーションも保てるというもの。元気のいい返事を聞きながら戦況を見渡し直して丁寧に相手の出鼻を挫いていく。30分後、こちらの予想通りに傭兵の少女たちは撤退し始めた。

 

 キーンコーンカーンコーン

 

「...あ、定時じゃん」

 

「うっし、そんじゃ帰りますかー。帰りにご飯食べに行かない?」

 

「あ、私蕎麦食べたい」

 

「は、はぁ!?ちょ、ちょっと待ちなさい!?」

 

「今日の日当だとここまでだよ。あとは自分たちで何とかしてね。みんなー、帰るよー」

 

『はーい』

 

 なにやら揉めているようだが...まぁ、そういう失敗もあるだろう。位置の関係上直接慰めることはできないが心の中でエールを送ることにした。

 

 それはそうと、戦力の激減を受けてあちらの戦意もかなり落ち込んだようだ。ここから見る限りの様子だと撤退する可能性が高いだろう...現状、貴重な手掛かりのため出来れば逃がしたくはないが...

 

 懐から廃棄された拠点で見つけた名刺を取り出して眺める。

 

 彼女たちの居場所は割れている。この後、名刺に書かれている住所を直接訪ねるつもりなので、ここで無理に捕縛する必要はないというのが正直なところだ。さて、彼女たちの行動や如何に...

 

「...はぁ」

 

「あっちゃー...こりゃヤバいね。定時まで時間稼がれちゃったかぁ」

 

「どこかで情報が漏れてたのかも。バリケードとか事前に準備されてたし」

 

「あ、アル様...どうしましょうか...」

 

「くっ...うぅー!こ、これで終わったと思わないことね!覚えてなさい!アビドス!」

 

「あはは!アルちゃんそれ、完全に三流悪役(ヴィラン)台詞(セリフ)じゃん」

 

「うるさい!にg...じゃなくて!撤退!撤退するわよ!」

 

「は、はいぃぃ!」

 

「またねー♪」

 

「あっ待ってくださ~い!...ってもう行っちゃいましたね」

 

 手慣れた様子の撤退にノノミがストップをかけるが、時すでに遅し。驚異的な逃げ足で便利屋の面々はその場を後にしていた。

 

「うへー逃げ足は一人前だねぇ、あの子たち」

 

「ふぅー...とりあえずこれで一安心ね!」

 

「うん、一件落着、かな?」

 

『一件落着と言うにはまだ早いかもしれません。結局、依頼主や襲撃の理由も聞きそびれてしまいましたし...』

 

「その辺は追々調べていけばいいよ。便利屋68だっけ?そこから調べるのが良さそうだねー」

 

『とにかく敵兵力の退却...退勤?を確認しました。皆さん、お疲れさまでした』

 

「はーい、今日のところは後片付けをして解散にしようか?先生もそれでいい?」

 

『あぁ、私も手伝う。手早く済ませて各自しっかり休んでくれ』

 

 キヴォトスに来てからそう珍しいことでもないが今日も濃い一日だった。敵対関係であることは置いておいて新しい出会いもあったし、本当にこの地は退屈する暇さえない。

 

 僅かな精神的な疲労と確かな充足感のようなものを感じつつ、消費した弾薬や破損した備品を記録していく。それらを手早く投影して補給を終えると、みんな疲れていたのだろう、その日はすぐに解散した。

 

 

 

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