消費は計画的に。そして継続的に
~モモトークwithユウカ~
『こんにちは先生。早瀬ユウカです。私のこと、覚えていらっしゃいますか?』
『もちろんだ。シャーレ奪還作戦の時には世話になった』
『覚えていただいて幸いです
あの時のことを思い返すと、先生お一人でもなんとかしていたような気がしないでもないですが...そう言っていただけて嬉しいです
それはともかく、用件なのですが。例のシャーレ奪還作戦時の弾丸の経費について、振り込みが確認できなかったので連絡させていただきました
請求書は届いていると思うのですが、お支払いはいつ頃になりそうでしょうか?』
『なるほど、こちらで処理しなければいけない件だったのか...
すまない。請求書が届いたのは確認していたんだが、届け先を間違えたのかと思っていた
あやうく連邦生徒会に送り届けるところだったよ。早めに連絡をくれて助かった』
『いえ、誰にでも勘違いはありますから。気にしないでください
お仕事での経費扱いでしょうから連邦生徒会に請求すればシャーレに支払われるはずです。その分をそのままこちらに頂ければ大丈夫ですから』
『ありがとう。にしても請求書一つ取ってもそれだけ手順を踏まなければいけないのは少々面倒に感じるな』
『弾丸もタダではないですからね。お金周りの手続きが複雑化するのは仕方がないことかと』
『請求書は連邦生徒会のテンプレートを使えばいいのかな?』
『あー...そうですね。できればミレニアムで使っているもので作っていただいた方がこちらとしては助かるのですが...えっと、よろしければ今度シャーレに伺ってもいいですか?
その時に今必要な書類と今後ミレニアム関連で必要になりそうな書類を持って行きますので』
『移動の手間があるだろう?こちらから向かおうか?』
『いえいえ!ちょうどシャーレの近くに用事がありますから気にしないでください!
ミレニアムの書類を使って欲しいというのはこちらの都合ですし、ついでに簡単なお手伝いぐらいはさせてください』
『そこまで言ってくれるならお言葉に甘えさせてもらうとしよう。ありがとうユウカ』
『礼を言われるほどのことじゃないですから。それでは近日中にシャーレに伺いますね
ではまた、今日もよい一日を』
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「こんにちは、先生。以前ご連絡した通りミレニアム関連で今後必要になりそうな書類を持ってきました。お手すきの際にご確認ください」
「わざわざすまない。助かるよ」
「いえいえ...モモトークでも言いましたけど本当に気になさらないでください。それより、もうお昼時ですけど先生はもう昼食は済ませたんですか...?」
ユウカの言葉を聞いてまだ済ませていないことに気づく。だが、まぁ...別に腹が空くわけでもなし特段気にすることはないだろう。
「いや、まだだな」
「そうなんですか?でしたら先に昼食を取っていただいても構いませんよ。規則正しい食生活は健康に欠かせませんから。先生のように忙しい方は特に」
「心配してくれてありがとう。だが、気にする必要はない。ユウカには以前少しだけ話したと思うが、私は少々特殊な経歴をしているだろう?そのつながりであまり食事や睡眠を必要としない身体になっているんだ」
私の説明に困惑の表情を隠せない様子のユウカ。
「えぇ...?そんな、霞を食べて生きる仙人じゃないんですから」
「上手い例えだな。似たようなものだ。もっとも、私の場合は霞ではなくキヴォトスに満ちる神秘を魔術に変換しているわけだが...」
「...先生?悪いことは言いませんからちゃんと食事をしてください。たとえ必要が無かったとしてもできない訳ではないでしょうし、食事や睡眠は人間的に健康な生活に欠かせない重要な要素なんですから。
肉体的に健康だったとしても、精神的に不健康になってしまっては元も子もないんですから」
諭されるように強めの語気でそう言われるも、どうにも食指が動かないというか...昔からどちらかというと、食べるよりも食べてもらう方が好きだったからな。
誰かに料理を作ってそのついでに自分の分も作るなら話は変わってくるかもしれないが、相手がいるわけでもない。アロナは...食事が必要なのか?
「...別にシャーレが薄給と言わけではないんですよね?食材を買う余裕もないとか...?」
「いや、こういった職種の給与の相場に詳しいわけではないが新任にしてはそれなりに貰っているはずだ。まぁ...そちらも使い道が分からずに財布のひもが頑丈になってしまっているわけだが...」
「最近の使い道は?」
「たしか...シャーレの内装を整えるために家具類を購入したか。あとは...あぁ、そういえば多機能内蔵型で自動運転の室内掃除機を買っていたな。まぁ、俗にいうルンバだな」
私の話を聞きながら机の上の領収書を手の取ったユウカが驚愕の声を上げた。
「領収書はこれですね...って、郵送費込みで15万円?!しかも、発送元がウチのエンジニア部じゃないですか?!あぁもうっ、どこからツッコめばいいのか...」
ユウカも気づいたようだが発送元はミレニアムサイエンススクールのエンジニア部だ。エンジニア部という部活については詳しく知らないが、所属している学園がミレニアムであるということが実は購入を決めた主な理由だ。
シャーレ奪還時に共闘して、ユウカが礼儀正しい良い子だというのは知っている。なので何か問題があれば相談もできるだろうと判断して高額商品の購入に踏み込んだわけだな。
「はぁ...いろいろ言いたいことがあるので一つずつ答えてください。まず、どうしてルンバを買おうと思ったんですか?見たところ清潔に保たれているように感じますが。定期的に清掃業者に依頼をしてもいいのでは?」
「掃除はこまめにした方が良いだろう?シャーレは一人で掃除をするには広すぎるし、今後シャーレが本格的に動き出した際に掃除に割く時間が取れるかもわからないからな。
今後もしかしたら機密性の高い書類を扱うかもしれないから清掃業者に頼むのは得策ではないだろう」
「合理的でいい判断だと思います。質問しておいてなんですが、私もルンバを買うこと自体に思う所があるわけではありません。
しかしですね...なんでこんな高額な商品を選んじゃったんですか?もっと安価で済ませることも出来たはずでは?」
ユウカの言うことはもっともで、実際に他のルンバは4~5万円程度、高性能なものでも10万を超えることはないのがおおよその相場だ。格安品なら1万強で買うことも出来た。
正直なところ、こだわりもなかったので安価なものを複数台買うことを最初は考えていたのだが...
「どうにも多機能内蔵型という文言に惹かれてしまってね。私の魔術は物の構造を知ることにも長けているから少し解析してみたいと思ったんだ」
「うーん、詳しくは知らないので魔術を持ち出されると否定しにくいですね...それで、解析の結果はどうだったんですか?値段以上の収穫があったならいいんですけど...ウチのエンジニア部が作ったものなのであまり期待はしていませんが」
「おや?そのエンジニア部というのは問題児集団なのかね?」
「そりゃあ、ミレニアムに在籍しているくらいですから優秀なのは認めますけれど...セミナー会計の立場からしたら天敵といっても過言じゃありません。
ロマンなんて非合理的なものを求めて次から次に開発費を申請してきますし、開発に関しては優秀なのに余計な機能を無駄に付けようとしたり...この前なんて作り出した兵器で学校の備品や施設に多大な損害が出たんですよ!
まったく、なんでミレニアムの生徒なのに防犯意識があんなに低いのかしら...セキュリティもザルだし...」
どうやらかなりの問題児集団のようだな。まぁ、それでも廃部等の処置が下されないあたり本当に優秀な生徒たちが所属しているのだろう。
相当苦労をさせられたのか、次から次へと溢れてくる愚痴を静かに聞いていると正気の戻ったのか、少しだけ朱の差した顔を誤魔化すように咳払いをしてユウカは話を元に戻した。
「コホン、それでどうだったんですか?ミレニアムのエンジニア部の作品は?」
「そうだな...まず、最も重要な掃除に関する機能は見事だと思ったよ。僅かな汚れやほこりもしっかりと感知して丁寧に掃除をしてくれたからな。
あとは...まぁ、キヴォトスだからな多少の防犯対策に小口径の自動小銃が組み込まれているのは...うん、まだ納得はできる。しかし、調味料を噴射する機能はいらないな」
「はぁ~...またそんな無駄な機能を...まぁいいです。エンジニア部の愚痴を言いたくてこの話を始めたわけではありませんから。とにかく!今後は計画的な消費を心がけてくださいね!...う~ん、なんだか心配ですね。一応家計簿を見せてもらってもいいですか?私の方でチェックさせてください」
「...つけてないな」
「はい...?」
「家計簿はつけてない」
「つけてないんですか?!もうっ!だからこういう衝動的な消費をしちゃうんじゃないですか!
私も手伝いますから今から家計簿をつけましょう。まずは領収書を全部集めてください。今から先生の消費をしっかりチェックさせてもらいますからね!」
反論の余地もないので、大人しくここ最近の領収書を集める。不幸中の幸いというべきか、レシートを残していたのは無意識のうちにこういう事態を危惧していたのかもしれない。
「まったく...大人なんですからしっかりと大人らしく計画的な消費をしてください。お小遣いをもらってパーッと使っちゃう子供じゃないんですから」
「耳が痛い話だ...以後気を付けよう」
「まぁ...早い段階で改善できそうで良かったです。こうして領収書の整理を手伝ってくれる子なんてそうそういませんからね?私くらいなんですから...あっ!でも次は絶対に手伝いませんからね!」
そこまで言われるとむしろ手伝ってくれそうな雰囲気を感じるのだが...まぁ、藪をつついて蛇を出す必要はないか。
「フッ、あぁ分かっているとも。手伝ってくれてありがとう、ユウカ」
「むぅ...なんだか変な納得の仕方をされているような...まぁいいです」
その後もユウカに手伝ってもらいながら家計簿を作っていき、全てのレシートの整理が終わったのは1時間ほど後のことだった。
「うーん...説教しといてなんですけど、ルンバ以外はむしろ全く無駄がないというか...本当に食費に割いていないんですね。これはこれで別のお説教が必要な気がします」
「そういわれてもな...私はどちらかというと食べるよりも誰かに作る方が好きなんだ」
「でしたら...誰でもいいので生徒に食事を作ってあげて一緒に食事をするというのはどうでしょうか。もちろん、相手の了承が必要でしょうけど」
「ふむ...まぁ、それなら」
「言い出した手前、もちろん私も協力させてもらいますから。それと、今後はきちんと食事をとっているか確認するために食材のレシートや作った料理の画像を私に送ってください。
こちらでしっかりと確認しますから」
「毎食ごとにか...?さすがにそれはユウカの負担になるだろう。せめて日に一食とか、いやそれでも多いと思うが」
「だ、だって...それぐらいしないと先生のその悪習慣を直すことは出来なさそうだし...私が毎日お世話をできるなら別なんですけど...って!こ、コホンッ!とにかく!これは先生のためなので、絶対に!守ってくださいね!」
その後、なんとかユウカを説得して報告は一日一食に留めてもらった。ちなみに基本的には連邦生徒会へ手伝いに行くついでにアユムやモモカ、リンなど連邦生徒会のメンバーに差し入れをする形で落ち着いた。
もちろん、時折手伝いに来てくれるユウカとも食事を共にしている。
やっぱりトップバッターは全ブルアカユーザーのメモロビどーてーを奪ったであろうユウカしかいないと思いました。
時系列的にはMainstoryの『幕間・連邦生徒会』の後くらいを想定してます。
エミヤは玩具とかソシャゲとかしてなさそうだったので、ルンバでも買わせました。
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