最も完成されたアーチャーとしての召喚であるということ。具体的には、FGOを経験済みとか、原作の全ルートの経験を蓄積しているとか、そんな感じです。
ただ、FGOも原作もその他諸々、中途半端な触れ方しかしてないので鋭意勉強中。
時は少し経ち、私たちは強風にあおられながら爆音響く市街地の中を移動していた。
「な、なによ、これ!」
そこかしこで聞こえる銃声がここが戦場であることを如実に表している。
...まぁ、紆余曲折はあったがどこまで行っても私の役割は変わらない。ここが戦場であるならばそれ相応の行動を取るだけだ。
魔力は十分。というよりも先程からひしひしと伝わってくるのだが、どうやらこの地は神秘に満ちた土地柄らしい。
本来、他の英霊たちと比べて敷居が低いはずの私の魔力の制限がかなり緩和されているのを感じる。お世辞にも燃費がいいとは言えない私の魔術にとってはかなりありがたいことだ。
いつでも投影できるように周囲へと気を配りつつ、歩みを進めていく。
「なんで私たちが不良たちと戦わなきゃいけないの!!」
「サンクトゥムタワーの制御権を取り戻すためには、あの部室の奪還が必要ですから...」
ユウカの愚痴を拾い上げたチナツの言う通り、銃弾飛び交う市街地を抜け目的地を奪還しなければならないというのはかなり骨の折れる仕事だ。集団の護衛をしながらとなるとさらに難易度は跳ね上がるが...
「それは聞いたけど...!私、これでもうちの学校では生徒会に所属してて、それなりの扱いなんだけど!なんで私が...!」
それでもなお、愚痴をこぼすユウカの下へ凶器が飛来する。
弾丸の飛来を感知すると同時、十字を背負った盾をユウカを守るように投擲する。盾は地面へと突き刺さりしっかりとユウカを銃弾から守り切ってみせた。
(やはり近接武器、特に剣に分類される物でなければことさらに燃費が悪いのは変わらないな...)
「ひっ!えっ?えっ?た、盾...?」
突如眼前の地面に突き刺さった盾を目にして少女たち全員が一様にぽかんとした顔で呆けてしまう。
(むっ、そういえば事前に説明していなかったな)
「驚かせてすまない。なにせ銃弾が飛んできていたものだからな。それと、ここはまだ戦場のど真ん中だ。驚かせたのはこちらだが今は先を急ぐべきだろう」
とりあえず勢いに任せて誤魔化そうとして見たが流石にそうは問屋が卸さなかった。
「い、いやいやいや、説明してください!先生!なんですか今の!?」
「私の目がおかしくなっていなければ今、急に盾が現れたように思うのですが...」
「安心してください。私もそう見えました」
「というかあんな重そうな盾を軽々と...?凄い筋力ですね...」
『先生?私も存じ上げないのですが...?ひとまず物陰に避難して今の現象の詳細な説明をお願いします』
市街地に放り出される前に受け取っていた無線からも困惑した声音でリンも問いかけてくる。
今後もこの世界で生活していく中で、
ゆえに分かりやすいように噛み砕いて私の使用する投影魔術について説明することになった。
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「そうだな...ではまず、魔術について知っているかね?」
まずは魔術がこの世界にどれほど馴染みのあるものか、その辺から探ってみる。魔術とは何か、その問いに答えたのはユウカだった。
「科学的にありえません!フィクションの中の産物に過ぎない、荒唐無稽な代物です!」
まぁ、見るからに理系な彼女のことだ。その返答は想像に難くなかった。そしてその反応は他の少女たち、ひいては無線越しのリンからも似たような反応が返ってきた。
「そうか...」
(これだけ神秘に満ちた土地だ...てっきりそれなりに知られているものだと思っていたんだが)
これまで出会ってきた少女たちの頭に浮かぶ幾何学の紋様しかり、ハスミなどの一部の生徒に備わった常人とは
「では、そのフィクションが現実になったと思いたまえ。私は俗にいう魔術師というやつだ。いや、厳密には魔術使いなのだが...まぁ、その辺りは気にしなくていい。私は魔術を用いることで様々な物質を作り出すことが出来る。
それなりに制限があるし、燃費の悪い魔術ゆえ、いつでもどこでもというわけにはいかないが...必要に応じて生み出すくらいはできる」
『...』
「...君たちにとって馴染みがないということはよく分かった。しかし、今は飲み込んでくれ...そして可能であればここから先は私一人で行きたいと思っている。今説明した通り、私自身の特殊な成り立ちゆえに実弾が致命傷になることはないからな」
刀剣類以外の投影は燃費がすこぶる悪いから連発はしたくない。かといって、全ての攻撃から彼女たちを無傷で守れると思い込むほど、私は自分にうぬぼれてはいない。
それゆえに実力を示して単独行動に持ち込むことで彼女たちのリスクを最大限減らそうと思ったのだが...単独行動の打診に対して彼女たちの反対はそれはもうすごかった。
「だ、ダメです!ダメです!実弾が致命傷になりえないって...急にそんなこと言われても、確証もないのにそんなリスクは取れませんっ」
「私たちにとって今回の任務は先生を守ることが最優先です。風紀委員としてもみすみす先生を危険にさらすわけにはいきませんね」
「ユウカさんとチナツさんの言う通りです。それに先生がおっしゃっているのは、先生の元居た場所でのお話ですよね?魔術というものはこの辺りでは全く身近ではありませんし、キヴォトスでも同じように実弾が効かないという保証はできません。
当然、それを試すわけにもいきません...我々にはヘイローがありますから先生がご無理をなさらずとも我々が先生を守ります」
「私も日々の巡回で慣れていますので微力ながらお手伝いします」
ヘイロー、とはいったい何を指すのか?やはり召喚されて間もない現状ではお互いの認識に齟齬が生まれているようで微妙に話がかみ合わない。
『ヘイローとは私たちの頭上に浮かぶ輪のことで私たちの命や人格を司るもの...と言えばわかりやすいでしょうか?これが破壊されない限り私たちは命に別状はありません。
そもそもヘイローは物理的干渉を受け付けないので破壊の心配もありませんし、私たちの体は並の弾丸では致命傷には至らないほど頑丈ですから先生の懸念は不要かと思われます』
こちらの考えを見透かしたようなリンの言葉を聞くが、かといって「はい、そうですか」とはいかない。
まだ正式になったつもりはないが仮にも先生と呼ばれているのであれば生徒をむやみに危険にさらすのはいただけないだろう。仮に先生出なかったとしても年端もいかぬ少女たちが危険に冒されるのを黙って見過ごすのは、俺の存在意義としても、一端の大人としてもあり得ない。
「...」
『...』
「今は言い争っている場合ではないな。かといって私も引くつもりはない。折衷案としてこのまま全員で向かおう。無論、私も戦闘には参加させてもらう」
「それは...」
「まぁ、待ちたまえ。何も最前線に立たせろなんて無茶を言うつもりはない。君たちの言い分を信じるのであれば多少の被弾は耐えられるとのこと。ならば私は後方から戦術と火力の両面で君たちを支援するとしよう。どうかね?」
『安全な場所へ隠れていただくことはできませんか?』
「無茶を言わないでくれ。可憐な少女たちを戦場の最前線に立たせることだって本来であればあり得ないことだ。これでもかなり譲歩しているのだよ。この提案が受けられないなら無理にでも一人で行かせてもらう」
「むぅ...」
渋るような顔をする面々に断固とした意志を告げる。
「まだ認めたくはないがこれは“先生”として、そして“大人”としての矜持だ。子供たちだけに危険を背負わせて指をくわえてみていることなど死んでも出来んよ」
私の言葉に絶対に折れない意思を感じ取ってくれたのだろう。渋々ではあるが戦闘への参加を納得してくれた。
話し合いの末にハスミ、チナツの両名とともに後方にポジショニングすることになった。前線はユウカ、中盤はスズミが受け持ってくれている。
ユウカに関しては最前線ということもあり最も被弾率が上がる立ち位置であるためにかなり心配ではあるが...もしもの時はまた私が盾を
「いっ、痛っ!痛いってば!あいつら違法JHP弾を使ってるじゃない!?」
信じがたいことだが、彼女たちの言葉は本当で実弾に被弾しても「痛い」で済ませてしまっている。よく見なくても重症には程遠い...元の世界とはまったくもって異なる光景に常識が歪みそうだ。
「伏せてください、ユウカ。それに、ホローポイント弾は違法指定されていません」
被弾について気にした様子もなく冷静に斜め上のツッコミをするハスミ。もっと他にツッコむべき部分があると思うんだが...
「うちの学校ではこれから違法になるの!傷跡が残るでしょ!」
「ふむ、それはよくないな。特に顔の傷は一生ものになりかねない。各自、被弾には最大限の注意を」
「今は先生が一緒なので、その点にも気を付けて行きましょう」
あれだけではあまり分かってもらえなかったようで4人がこちらに警戒を割きすぎているのが分かる。とはいえ、すぐに解消できる問題ではないのも事実。今は目的に集中すべきだろう。
「分かってるわ。先生、さっきは渋々納得しましたけど前線には出ないでくださいね!」
「分かった分かった。ひとまず私が指揮を取ってみよう。何か不満があれば言ってくれたまえ」
「え、えぇっ?戦術指揮をされるんですか?まぁ...先生ならそういうこともするのかしら...?」
「分かりました。これより先生の指揮に従います」
「生徒が先生の言葉に従うのは自然なこと、ですね。よろしくお願いします」
期待には全霊で応えなければならないな。魔術の準備をしながら今一度気を引き締める。
「よし、じゃあ行ってみましょうか!」
ユウカの言葉を合図に私たちは戦場を駆けだした。
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矢をつがえ弦を引き絞る。狙うはヘルメットで頭部を保護した不良――ではなく彼女の持つサブマシンガン。こちらにばらまかれた弾を横軸の移動で回避しつつ撃ち終わり際リロードを始めたその銃身に一射。
「うひゃぁっ!!」
銃身のみの破壊に成功。続く二射も同じように不良生徒の無力化に成功した。本格的な戦闘が始まってから気づいたことだが敵対しているのは現状ではすべて不良生徒だ。スケバンであったりヘルメットをかぶっていたりと格好には多少の差異があるが、紛れもない“生徒”である。
となれば当然ながら本人を狙うわけにはいかない。というわけで無力化のために銃を壊したり、魔術で作った猛獣用の捕獲ネットを取り付けた矢で拘束するなどしてユウカたちの補助に徹している。後は指揮だな。
「ユウカ!少し下がれ!右から射線が通り過ぎだ!」
「は、はい!」
「スズミ!左前方の瓦礫の裏に複数人いるぞ!閃光手榴弾をお見舞いしてやれ!」
「了解です!」
「ハスミは後方を警戒!恐らく5時方向の建物の陰で一人こちらを狙っている輩がいる」
「分かりました」
「ふっ!ユウカ、投擲した盾を使え!チナツは障害物を盾にユウカの下へ治療に向かってくれ」
「はい」
「
右の障害物の裏からこちらの様子を窺っていた少女に
「目的地までもう少しだ!抜かりなくゆくぞ!」
『はい!』
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「いつもより断然やりやすかったですね」
「...やっぱりそうよね?」
「先生の指揮のおかげで、普段よりずっと戦いやすかったです」
「弓の腕前も並外れていましたね」
戦闘が終わり一息ついたところでスズミを発端に私の実力が多少は認められたようだ。
「それは良かった。慣れない指揮だったがこちらも頑張った甲斐があるというものだ」
それを聞いてユウカが納得するように呟いた。
「なるほど...これが先生の力...」
警戒しながら歩みを進めていくと、ようやく目的地が視界に収まった。
「先生、もうシャーレの部室は目の前です!」
「あぁ、だがまだここは屋外だ。警戒は怠らないように」
そんな風に話していると、無線からリンの声が聞こえてきた。
『少しよろしいですか?今、この騒ぎを起こした生徒の正体が判明しました。生徒の名前はワカモ。百鬼夜行連合学園で停学になった後、矯正局を脱獄した生徒です。似たような前科がいくつもある危険な人物ですから、十分に気を付けてください」
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Side:ワカモ
リンが一行に騒動の中心人物について語っているのと同時刻、シャーレの部室を跨いだ反対側には狐面に和服姿の少女が堂々とした足取りで歩みを進めていた。
「...あらら。連邦生徒会は来ていないみたいですね。フフッ、まぁ構いません。あの建物になにがあるかは存じませんが、連邦生徒会が大事にしてるものと聞いてしまうと...壊さないと気が済みませんから」
確固たる執念をもって少女は進む。お面の裏でその口元は愉悦に歪んでいた。
「あぁ...久しぶりのお楽しみになりそうです、ウフフフ♡」
基本箱推しだけど、ワカモは頭一つ抜けて推しです。