勉強不足でした(´;ω;`)
キヴォトスに来て『先生』となってから数日、まずは着任の際に与えられたシャーレという組織の建物内の掃除に精を出しつつ、シャーレ周辺の地理や現状の整理に時間を割いた。その中で、私にとって馴染みのない常識や抑えておくべき点がいくつかあったので一旦それらについて整理してみようと思う。
まずは、このキヴォトスにおいて魔術やそれに類する存在は一般的ではないということ。これは私が
だが、これはこの地に神秘が存在しないことの証明にはならない。むしろ、私が元居た世界とは別種の神秘性を持つことによって独自の発展を遂げていると考えるべきだろう。その最たるものがこのキヴォトスにおいて人口の大部分を占める生徒たちということになる。
本来、人に備わるはずのない肉体的特徴を持っているし、その肉体強度も一般人とは比べるべくもない程に優れている。
シャーレ周辺の散策の際に、こちらに絡んできた不良を数人懲らしめる機会があったので、その際に武器をいくつか取り上げさせてもらって調査を行ったが、調べた結果...殺傷能力を極端に落とした
不良生徒から取り上げたハンドガンを手に取る。銃弾が装填されていることを確認して無造作に開いた自身の左手に向けて発砲。
ッパアァァァァン!!
小気味よい発砲音と共に左手に少々の衝撃が走るが、発射された銃弾が左手を貫くことはなく焦げ臭い煙を残しながら左手に収まった。
「ふむ、
一つの検証が無事に終わったことで「量産品に対して過剰な反応はいらないな」と一人納得していると――
『な、な、なにやってるんですかー!!』
手元に置いていた『シッテムの箱』と呼ばれるタブレットからここ数日で聞きなれた声が聞こえてくる。
「あぁ、アロナか。起こしてしまったか?だとしたらすまない」
『ね、寝てません!...いや!いやいやいや!そんなことより、なんでそんなに冷静なんですか!?今、自分で自分の手を撃ちましたよね!?きゅ、救急車...はやく、救急車を呼ばないと...』
あぁ、そうか...私の特殊な成り立ちについて説明した時にはまだアロナとは出会っていなかったか、だとしたらすまないことをした。急に同居人が奇行に走ったら驚いてしまうのも無理はない。
「落ち着きたまえ。左手は無事だ。ほら、どこにも傷はないだろう?」
そう言って、確認できるようにタブレットの画面へと左手を向ける。ぷらぷらと平気であることを示すように手を振ればアロナは困惑を隠しきれずに奇妙な表情をしていた。
『え?えぇ...?本当ですね?えっと、本当に大丈夫なんですよね?』
なおも心配そうに尋ねてくるアロナを安心させるために私自身について少し掘り下げて説明することにした。
「私は純粋な人間ではないんだ。あぁ、この場合の純粋というのは精神性の話ではなく、肉体的な意味での話だ」
『? どういうことですか?』
言葉の意図を捉えきれなかったアロナは画面の向こうでキョトンと首を傾げていたので、私自身についてかいつまんで話すことにした。
「私はここ、キヴォトスに来る前にいた場所で守護者という立場にいた。あまり長々と語るものではないので詳細は省くが、私の元いた世界の中でも特殊な境遇に位置する者たちがいる守護者はその中の一つでその立ち位置ゆえに私、いや私たちには『神秘を有していない攻撃に対して無類の耐久を誇る』という特異な性質がある」
『それって...』
「あぁ、端的に言い表すならば先程実演したように量産品の銃弾などの現代兵器で私に傷をつけることは不可能ということだな」
『す、すごいじゃないですか!...あれ?でも初めからそう分かっているならどうして今さら実演したんですか?』
「あぁ、それはキヴォトスでもその特異性が保たれている保証がこれまでなかったからだな。早い段階で確証を得る必要があった」
『えぇっ!?か、確証もないのに撃ったんですかぁ!?先生はこのキヴォトスに必要な大事な人なんですから!そんな危険なことはしないでください!』
「いや、しかしだな...この検証が成功したことで量産品の武器に対して過剰な防衛を必要としなくなったわけだし、多少の無理もきくようになっただろう?それに痛みには慣れている。どちらにしても大事にはならなかったはずだ」
『しかしも案山子もありません!もっとご自分を大切にしてください!じゃないと...』
「じゃないと?」
『リン行政官に今日のことを報告しますっ。リン行政官は怒ると怖いんですよっ』
言うことを聞かない子供に対する親への言いつけにも似た脅しに少し思う所はあったが、心配してくれているということには変わりない。藪蛇にならないように素直に許しを請う。
「おっと、それは困るな。分かったとも、今後は気を付ける。だから許してくれアロナ」
『もぅ...』
ひとまず、魔術や私自身に関するものについて知りするのはこの辺りでいったん区切りとしていいだろう。他に気になる点として挙げられるのは、キヴォトス内で暮らす一般市民の存在か。一般市民、と呼称しているがその実態はわたしの常識とはかけ離れている。
まず、純粋な人間の容姿をしている者がいない。一般市民とされている大人たちの容姿はそのほとんどが二足歩行する犬や猫などの動物あるいはロボットの容姿をしている。その他に持つ特徴と言えば、リンたち生徒にあった“ヘイロー”なる頭頂部の光輪が無いこと、そして生徒たちのように実弾での被害を軽微に抑えられるという所か。
しかし、人間の容姿を持った大人がいないということは些か不可解な点だな。現状見つかっていないだけとも捉えられるが、この特異な事象には何かしらの意味があるように思う。
『そういえば...先生?私が知る限り、最近は夜になるとほとんどシャーレの中にいないでどこかへと出かけているようですけど、どこに行ってるんですか?...あっ!まさか、さっそく生徒のお部屋にお泊りしてるとか!もぅ、先生ったら随分大胆なんですねぇ』
「...なにを勘違いしているのかはあえて聞かないが、シャーレ周辺の見回りに出ているだけだ。この地に満ちている魔力...?と言っていいかはまだ断定できないが神秘に満ちた力を供給されている限り、私は睡眠や食事を必要としないからな」
『供給って...例えばどんなことをしているんですか?』
「キヴォトス内であれば、おそらく特別な動作は必要としないな。現に、今も微量の供給を受け続けている。魔術の使用など、力を乱用しなければ恒久的に動き続けられるだろう」
『だから休憩室にいつまでたっても使われた形跡がなかったんですね?でも、睡眠や食事ができないわけじゃないですよね?そんな生活してたら疲れちゃいますよぅ。悪いことは言いませんから、生活環境は整えていきましょう?先生』
「しかし、必要になることはないと思うが?私自身、そういう生活は長く経験してきたから今さら精神的な疲労を感じることでもないしな」
それでも納得がいかないのかアロナはうーん...と悩んだ末に一つの提案をしてきた。
『じゃあ、こうしましょう。もしかしたら生徒の皆さんがシャーレにお泊りすることが今後あるかもしれません。その時、生活必需品がないのは困るでしょう?それに、そんな生活をしていることが生徒の皆さんにバレたらすごく心配されちゃいますよ?』
そう言われてしまうと、反論は厳しい。
「なるほど...それは盲点だったな。心配をかけるのはこちらも本意ではない。生徒がシャーレに泊まる機会はないと思うが、そういう理由であれば無駄な出費とも言えないか」
『いや、必要じゃなくてもできないわけじゃないんですから、絶対無駄な出費じゃないですけどね?もー!ホントにリン行政官に報告しますよ!』
怒るアロナを宥めながら、まずは近くのコンビニへと出かけてみることにした。これまでは立ち寄ることが無かったが、生活用品などの買い出しを今後も行うなら、立地の関係上徒歩5分もないためこれからも定期的に利用することになりそうだ。
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「い、いらっしゃいませ!エンジェル24です!」
コンビニへ入店すると、すぐに店員の元気な声が聞こえてきた。しかし、その声がどうにも幼いように思えて店員の方へと視線を向けると、店員の方もこちらを向いたところだった。
...やはり、これまでに会った生徒たちに比べて幼く見える。
「え、大人のひと...?も、もしかして、噂の先生ですか?」
「どのような噂かは知らないが、最近こちらにやってきた先生ということなら私のことだろう」
答え方が少々ぶっきらぼうだったのか、あるいはその噂とやらに良からぬものがあったのかは分からないが、少女は緊張した様子でさらに声をかけてくれた。
「わ、私はソラです。今日からこのコンビニ、えっとエンジェル24でアルバイトをすることになりました。よろしくお願いします!」
「よろしく頼む。今日からなのか...それはいいタイミングだった。私も今日から本格的にここを利用していくつもりだ。それと...失礼を承知で尋ねるが、私が出会った他の生徒たちよりも幼く見えてしまってね。ソラは高校生なのか?」
「他の生徒より幼く...?あ、私、中学生ですからそのせいだと思います」
「中学生なのか。なるほど」
広大な面積を有するキヴォトスのすべてが元の世界で言う高校で構成されているわけではない。当然、中等部の生徒もいるわけで...ソラは後者だった。
「えっと、中学生を雇ってくれるところはあんまりないんですけど、ちょっとお金が必要な事情がありまして...」
「ふむ...深くは聞かないが、なにか困ったことがあれば相談くらいは乗れるだろう。その時は、話してくれると嬉しい」
「あっ...ありがとうございます!えっと、それじゃあ早速なんですけど少しだけお話聞いてもらっていいですか?」
「あぁ、もちろんだ」
どうやらさっそく困り事があるようだ。
「えっと、さっき言ってた事情とは違うんですけど、雇ってもらえたのはいいんですがこのコンビニ、以前に襲撃されてたり戦車に突っ込まれたりしたことがあるって店長から聞いていて...初日からちょっと不安なんです。それと、先生以外にこのお店に来る人ってほとんどいないみたいですし...」
「なるほど襲撃や戦車が...であれば、シャーレ周辺の見回りを強化しておこう。完全に防ぐことはできないだろうがある程度は防止できるはずだ」
「そ、そんな...わざわざしてもらうのは申し訳ないです」
「気にしなくていい。元々、この辺りの治安の悪さに関してはどうにかしようと考えていたところだ。むしろ背中を押してもらうきっかけになった」
言外にこちらの助けにもなっていると伝えてあげれば、彼女は少し緊張が解けた様子で笑みを見せてくれた。
「えへへ...ありがとうございます。エンジェル24は文字通り24時間ずっと開いてますから、必要なものがあるときはいつでも来てください!お買い物はいつでも大歓迎です!」
聞き逃せない文章が出てきてしまった。
「...」
「? どうかしましたか?」
「一応の確認だが、ソラがずっといるわけではないよな?」
「...えっと...えへへ」
先程とは違う誤魔化すような愛想笑いでこちらを見るソラに思わずため息をついてしまう。
「はぁ...先程、私以外に客はほぼいないと言っていたな。店長は定期的に様子を見に来るのか?」
「いいえ?様子を見に来ることはないって言ってました。他のお店と兼任してるらしくてそっちの方が忙しいから、ここの管理は任せるって言われてます」
「...」
治安云々以前にここの住人の感性はやはりズレているんじゃないか?こんなに幼い子供一人に店の管理を任せるんじゃない、とその店長とやらを怒鳴りつけてやりたい衝動に駆られる。
「あ、あの...どうかしましたか?」
「いや、ソラは悪くないさ。であれば、店を開ける日時をある程度決めてしまおう。その日時以外はソラは他の用事を優先していい。学校にも行きなさい」
「え?で、でも...」
本当にいいのかな...?と不安を含んだ表情でこちらを見るソラに目線を合わせ、諭すように言葉を続ける。
「強要するつもりはないが、常にここにいるというのは流石にブラックが過ぎるだろう。連絡先を交換しておけば、緊急の時はこちらから連絡を取って開けてもらえばいい。どうかね?」
「...いいんですかね?」
「客が私しかいないのなら、店を常に開けていようが偶にしか開けなかろうが売り上げはさして変わらないだろう。時間は有効活用した方がいいさ」
「はい!ありがとうございます先生!じゃあ、改めてエンジェル24をよろしくお願いします!」
「あぁ、こちらこそよろしく頼むよ。ソラ」
ちなみに、エンジェル24は品揃えが非常に充実していて雇用形態以外は悪くない店だった。
ソラちゃんってとんでもなくブラックな職場にいるんじゃ...?と書きながら思いました。勉強不足で解釈ミスがあったら教えて欲しいです(エミヤ側も含む)。
もうちょいソラちゃんとかのプレイアブル化されてないキャラの情報欲しい。名字も分からんのですが...
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