透き通る世界の無銘の弓兵   作:矛盾ピエロ

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お久しぶりです( °Д °;)
また、週一ぐらいを目標に投稿再開していく予定です。

楽しんでいただければ幸いです


第三話 疑念?信頼?

 

 アビドス高校からの救援要請を受けて現場に到着した翌日、炎天下の中バイクを走らせていた。

 

 本来であればすぐにでも元凶であるカタカタヘルメット団への対策に尽力するべきなのだが、どうやらタイミングが悪かったようで一昨日、つまりはアビドスに到着する一日前に襲撃を退けたばかりだったようだ。

 

 当然ながら相手にも物資の補給や装備の準備がある。次の襲撃は早くても2,3日後ではないかとの予測が立てられて、それまでは襲撃への対策を立てたり、一度シャーレへと戻って追加の物資を運んでくることにした。

 

「ん、おかえり先生」

 

「シロコか、出迎えありがとう。アヤネに頼まれていた追加の物資を持ってきたんだが、少し運ぶのを手伝ってもらっても?」

 

「ん、そのために待ってた」

 

 サムズアップで了承してくれたシロコと共に校内へと物資を運び込む。

 

「先生、荷物もう少し私の方で持とうか?」

 

「ありがとう、だが心配は無用だ。この程度なら問題ないとも。シロコの方こそ重くはないかね?」

 

「ん、キヴォトスの人間は外の人よりも力持ちらしいからこれぐらいへっちゃら。もっと任せてくれてもいいよ?」

 

「そうだったな...いや失礼、どうにも元居た世界の常識にまだ囚われているというか...まぁ、それを抜きにしてもあまり女性に荷物を持たせるのは男としてどうかと思ってしまってね」

 

 軽い雑談をしながら校内を歩き続ける。ちなみに追加で運んできた物資の内訳は2割が食品関連(お菓子)、7割が弾丸などの戦闘用の備品で1割が市販の医療品だ。

 

 戦闘用の備品は投影魔術で用意したのでかかった費用はかなり安上がりになっているのだが、実はまだ投影魔術については話していない。いや、どちらかというと話すタイミングを逃してしまったというべきか...授業が個別の自習となっている影響か、思ったよりも全員が集まる機会が少ないのだ。

 

 次に全員が集まるとしたら恐らくカタカタヘルメット団が襲撃を仕掛けてきた時だろう。戦闘もあるだろうからその後にでも話を聞いてもらうとしよう。

 

ガラガラ...

 

「あ、先生!お疲れ様です。物資の追加補充ありがとうございます」

 

「気にする必要はないとも。現状、私にできる事はこれぐらいだからな。まだ出会ってから日も浅い私が校内をうろついていては君たちも肩の力を抜けないだろうしな」

 

 警戒心の強い生徒()に余計な心労は掛けたくない。これから時間をかけて信頼関係を築いていくまでは距離感に注意すべきだろう。年頃の少女は繊細なのだ。

 

「ん、セリカのことなら先生は気にし過ぎだと思う」

 

「あはは...私もシロコ先輩と同意見です。アビドスに来てくださってまだ2日ですけど先生はとても真摯に手伝ってくださっていますし」

 

「しかし、彼女の警戒ももっともだろう。これまで自分たちで守ってきた学校にいきなりよく知りもしない人間が現れたら多少キツイ態度をとってしまうのも分かるさ」

 

 これ以上この話を続けても進展はないだろうと思い、持ち込んだ物資について話題を逸らす。

 

「それよりひとまずこの教室へ運んだが、物資を移動した方が良いのではないかな?要望のあったお菓子の中には冷蔵保管が必要なものもあるし、医薬品も然るべきところに仕舞っておいた方がいいだろう」

 

「あっそれでしたら隅にある冷蔵庫へ入れてください。実は校内の電力は必要最低限にしているのでこの辺りの教室にしか電気は通っていないんです。昨日持ってきてくださった食品に関しては後で手分けしてそれぞれ持ち帰ろうと思っています」

 

「そうだったのか、ではそうしておこう。あぁ、それと今回の物資に関する領収書だ...こちらで受け持つつもりだったんだが、本当にいいのかね?遠慮はして欲しくないんだが...」

 

「ん、貰えるものは貰っておくべき」

 

「シロコ先輩!いくら先生が助けてくれているからってなんでもかんでも甘えるわけにはいかないじゃないですか...セリカちゃんじゃないですけど、お金関係は特にアビドス(うち)の問題にも直結してきますし...」

 

 問題...?カタカタヘルメット団からの襲撃だけではなかったか...周辺の環境や今のアビドス高校の現状と今の発言から推測するのは難しくはないが...求められるまでは勝手に動くべきではない、いや少しアビドスの過去について調べておいた方がいいか...?

 

「そっ、それよりも先生!少し聞きたいことがあってですね...!」

 

「あぁ、なにか足りないものでもあったかね?」

 

「いえ...そうではなくて、シャーレに手紙を出す前に事前にどんな組織なのかを調べていた時に目にした情報があってですね...」

 

 どことなく言いにくそうな雰囲気を出しているアヤネが話しやすいように続きを促す。

 

「詳細不明の組織がいきなり出てきたのだからその判断は正しい。気になることがあるなら遠慮せずに聞いてくれ。可能な限り答えさせてもらおう」

 

「えっと...その、うーん...私もあんまり信じているわけではないのですが...その、先生が不思議な力を持ってる?と言いますか、手品みたいにいろんな物を取り出していた、みたいな情報を見て...」

 

「...なるほど、そういった伝わり方をしているということは情報源は恐らくあの時鎮圧した生徒達の誰かだろうな」

 

「...?よく分からなかった。どういうこと?」

 

「えっと...こういう言い方はしたくありませんが、つまり先生は何か力を隠しているのではないかということです。ガセ情報として扱うにはその手の情報を目にする頻度が多かったように感じて」

 

 こちらの様子を窺う二人の瞳には少しの疑念が浮かんでいるように感じる。しかし、焦る必要はない。いずれ伝える予定だったのだから、そのタイミングが少し早まっただけのこと。

 

「ふむ...本当はもう少し後、具体的には次のカタカタヘルメット団の襲撃をしのいだ後にでも話そうと思っていたのだが、そこまで情報が出回っているのなら今話しておくべきだろう」

 

「ん、なにかあるんだね?」

 

「あぁ、といっても君たちに悪影響のある話では...ないと思いたいが...まぁいい。ひとまず全員を集めてもらえるだろうか?仲間外れはよくないし、一度に話してしまった方がその後の手間も省けるだろう」

 

「わ、分かりました。では、他の皆さんに連絡をしてきますので少々お待ちください」

 

 一体何が飛び出てくるのかと戦々恐々とした様子のアヤネを見て苦笑いしてしまう。

 

「そうかしこまらないでくれ。大した話ではないさ」

 

 

#####

 

 

「それで?おじさん達をわざわざ呼び出してどうしたのかな?何か問題でもあったー?」

 

 思っていたよりも全員近場にいたようで早く集まることができた。さて、どうやって話を切り出すべきか...

 

「まずは先程のアヤネの話を聞いてもらった方が話が早いだろう。アヤネ、頼む」

 

「はい、えっと...私がシャーレに救援要請の手紙を送ろうとしていた時の事なんですけど...」

 

 アヤネの話を初めて聞いた三人は三者三葉の反応でこちらを窺っていた。内容が内容なだけに訝し気な視線が多いのは仕方ないことだろう。

 

「んーと、アヤネちゃんの話は分かったよ。それで?全員を呼び出したってことは説明してくれるってことでいいんだよねー?」

 

「あぁ、わざわざ時間を取ってもらってすまないな。誤解の無いように弁明させてもらうと、秘密にするつもりは元より無かった。ただ、切り出すタイミングを逃してしまってね。次のカタカタヘルメット団の襲撃後にでも話そうと思っていたことだ」

 

「ん、結局先生はどんな力を持ってるの?」

 

「私は“魔術”が使えるんだ」

 

「ん?」「は?」「えぇ...?」「うへー...」「まぁ☆」

 

 途端に胡散臭げにこちらを見だす5人...いや、1人ワクワクした視線を送っているか。

 

「まぁ、そういう反応になるのも分かるが...まずは実物を目にした方が良いだろう。投影開始(トレース・オン)

 

 全員に見えるように手のひらを出して造花を一つ投影する。投影対象に造花を選んだのは...特に理由はない。危険物は警戒させてしまうし、校内に存在するものだとマジックの類を疑われるかもしれないと思い、こうしたが...よく考えなくてもこちらの方がマジックらしいな...

 

『ええぇぇぇぇぇぇぇ!!』

 

 選択ミスに心の内で反省したが、存外悪い選択ではなかったらしい。

 

「うへー、とりあえず先生の言ってることがホントだっていうのは分かったよー」

 

 ある程度全員が落ち着きを取り戻した後にホシノが口火を切って話し合いが始まる。

 

「凄いですねぇ☆他にも何か作れるんですか?」

 

「構造を熟知していれば魔力の許す限り大抵のものは作れる。日用品、雑貨、道具から武器の類までな。流石に口に入るものは無理だが」

 

「とんでもないですね...あっもしかして運んでいただいた備品も?」

 

「あぁ、弾薬の類は全て自作だ。食料品や医薬品は別なのでその点は安心して欲しい」

 

「すごい...もしかしてお金も作れる?」

 

「...まぁ、可能か不可能かで言えば不可能ではないだろうが...流石に賛成できないな」

 

 こう言っては何だが、シロコはもう少し道徳や倫理について学ぶべきかも知れないな。ホシノも似たようなことを思ったのだろう。

 

「シロコちゃーん。あとでお説教ねー」

 

「...ん」

 

 表情はそこまで変わらないながらもしょんぼりしたシロコの顔が印象的だった。セリカは未だに眉間の皺が取れないようで訝しむような表情を隠さずに疑問を投げかけてくる。

 

「ホントに大丈夫なの?」

 

「何か気になるところが?教えてくれれば答えよう」

 

「その、魔術?ってのについては詳しくないけど、戦闘中に急に弾切れを起こしたりなんかしたらシャレにならないでしょ?本物より威力もないかもだし」

 

「もっともな理由だな。威力に関しては今から試し撃ちをすれば疑念は解消できるだろう。そして期限についてだが...今説明しても納得は難しいと思うが気にしなくてもいい。私の投影魔術は少し特殊でね。投影したらそこで完結して現世に残り続ける奇特なものだ。

 もちろん意図的に投影を解除することは可能だが...先生という立場に賭けてもいい、君たちの不利になるようなことはしないと誓おう」

 

「気にするなって言われても...」

 

「まぁそうだな...さて、どうするか」

 

「んーじゃあこれから毎日先生に魔術で弾薬を作ってもらえばいいんじゃないかな?初めて先生が来た日に貰った物資はまだ残ってるわけだから、少なくとも一日は残るって分かってるわけだし」

 

「それで納得してくれるなら私は構わないとも。ちなみに襲撃後にこの話をしようと思ったのは、今セリカが言った疑問を解消するのに襲撃後の方が都合がいいと判断したからだ」

 

「うん、それにも納得したから大丈夫だよ」

 

 ある程度の疑念も晴れたようでその後は全員で試し撃ちをして威力に不足が無いことも証明できた。そして再度教室に戻ってきた。

 

「それにしてもすごいねー。話が始まった時は疑っちゃったけどおじさんびっくりしちゃったよー」

 

「ん、私も使えるようになりたい」

 

「シロコ先輩はお金が欲しいだけでしょ...まぁ、使えたら便利そうではあるけど」

 

「ですよね☆私も部屋いっぱいにぬいぐるみを作って飛び込んでみたりしたいです~☆」

 

「ノノミ先輩は魔術が無くてもできそうですけどね...そう言えば情報収集の際に先生は弓が得意だという情報もあったんですが、もしかしてこれも...?」

 

「そうだな。他人よりも触れる機会が多かったから得意と言っても差し支えないだろう」

 

「へぇ~どれぐらい?」

 

「そうだな...数km先までなら高速で移動されても当てることができる程度か」

 

「それはもう得意とかいうレベルじゃなくない?」

 

 本来の予定とは違ったが、今回の話し合いを通してある程度は親交を深められたように思う。多少は信用してもらえるようになっただろうか?

 

 そうであることを願いながらその後は投影した弾薬の試射をしたり、ヘルメット団の対策を立てたり、校内の掃除を全員で手分けしたりしてその日は解散となった。

 

 




久しぶりの投稿で改めて思ったんですけど、エミヤの投影魔術って便利すぎですね。

一部独自解釈もありますけど、構造が分かっていればやっぱり貨幣の偽造とかできちゃうのかなって考えると、使い手がエミヤでよかったとしみじみ思います。

あと、別シリーズを近々初めてみたいと思っています。(投稿頻度はお察しですし、なんなら他の作品にも影響出そうなんですけど)その時は少しだけあとがきで触れさせていただくので気になった方は是非覗いてみてください。
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