「つまり、ジンクス!で す の で !!!」inキヴォトス   作:RBT E10

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すいませんでした。

すッッッごい遅れました。

もう年末…早い、早くない?


一般ヴァルキューレ生徒「局長!なぜトリニティに副局長を派遣したのですか?!」

 

「……………すまない、もう一度、もう一度言ってくれないか?私が、だれを派遣したと…?」

 

尾刃カンナは理解できなかった。脳が、心が、理解を拒んだ。それを示すかのように声が震え、体が震えている。カップに注いだコーヒーなどこの振動で8割がた零れただろう。それを示すかのように太ももが今凄く熱い。

 

嘘であってくれ。冗談であってくれ。夢であってくれ。幻であってくれ。

 

きっと、そう、あれだ、幻聴だ。そうに違いない。疲れた心と体が見せる幻覚幻聴なのだ。うん、きっとそうだ。

 

しかしてその思いは打ち砕かれることとなった。

 

「いえ、あの、何故、局長は副局長をトリニティに向かわせたのだろうか?と疑問に思いまして…。」

 

「夢であってほしかったなぁ!!!!!」

 

カンナは崩れ落ちた。

 

 

 

しかし、がばっと起き上がりすぐさま電話を入れる。

 

「もしもしコノカ?今どこにいるんだ?」

 

「もしもし?姉御、どうしたんすか?藪から棒に」

 

「いいから早く、今どこにいるんだ?」

 

「どこって…今もうトリニティについた頃っすよ。」

 

バンッッッ

 

カンナは倒れ込んだ。

 

そして、菩薩のような穏やかな表情を浮かべて

 

「もう、いいや。うん。責任は私がとるから。任務をしっかりこなしてこい。」

 

「姉御?!姉御どうしたんすか?!なんかすごい音したんすけど?!」

 

「ああ、いや問題ないさ。うん。大丈夫だ。頑張るんだぞ、コノカ。」

 

「わ、わかったっす。で、電話切るっすね。」

 

ツーツーツー

 

音が辺りにむなしく響く。そして彼女は穏やかな声色で

 

「みんな、今日はお泊まりすることになるかもしれん。もしそうなったら、手当は出すから、頑張ってくれ。」

 

と言った。

 

現実とは、かくも非常なものである。

 

 

事の発端は二日前。連邦生徒会長が行方不明になった時に、矯正局から凶悪犯が脱走。周辺に被害を与えながらもその多くを確保したが、7人ほど逃がしてしまったのだ。

 

これを受けてヴァルキューレ、SRT、連邦生徒会は連名で彼女らを「七囚人」として指名手配した。

 

しかし、そのどさくさに紛れて最狂にして最悪の愉快犯である不沈艦ことゴールドシップが脱走していたことが連邦生徒会執行部七神リンの報告によって発覚。そのため、ヴァルキューレとSRTは協力して七囚人以上の凶悪犯たる彼女を捕縛するためにキヴォトスのあちこちを駆けずり回る必要に駆られたのだ。

 

行方をくらましたゴールドシップの捜索のために各学園に数名ほどヴァルキューレとSRTの方から派遣することとなったため、あらゆる学園にカンナたちは赴いた。

 

当初は10数校ほど回る予定だったのだが、予想外の事態が起きてしまう。

 

最初に赴いたアビドス高等学校。生徒数も少なく、住民の少なさとその広大な敷地から隠れるにはもってこいな場所であるのが故に真っ先に白羽の矢がたった場所だったのだが

 

なんと、そのアビドス区内で遭難しかけてしまうというまさかの事態が発生。

 

奇跡的にその学園の生徒に助けられたものの、予定が大幅に狂ってしまった。

 

そのため、現在は他の人員を各学園に派遣しているのである。

 

さて、ここまでの説明でみんなはこう思っただろう。

 

「え、何が問題なの?」と。

 

そう、問題ないのだ。

 

今回派遣されたコノカは書類仕事を少し苦手とし、迷信を信じすぎなきらいがあるが、カンナからの覚えもめでたく副局長の肩書にふさわしい頭の回転の速さと実力を持っている。

 

だから、何も問題ないのだ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

そう、このトリニティには彼女がいる。

 

迷信…ジンクスをぶち破ることに圧倒的な行動力と発揮するクレイジーダイヤモンドこと、里野ダイヤモンドその人が。

 

そしてもう一度言おう。

 

コノカは迷信を信じすぎなきらいがある。

 

………つまり今のトリニティに副局長を派遣するというのは火薬庫に時限爆弾を放り込んだようなもの。

 

要は何か問題が発生することがほぼ確定していることに等しく…

 

擁護するとすれば、カンナは最近のゴタゴタ(優しい表現)によってあまりにも疲労の溜まってしまっていたために頭が働いていなかったということ。

 

しかし、だからといって現実は変わらず、ダイヤがなんらかの「やらかし」(とてもマイルドな表現)を起こすのはほぼ確定しているのだ。

 

そして、それを原因とする被害と仕事の増加量を見積もった結果、カンナは「お泊まり確定」と言った直後、どこぞのボクサー漫画の主人公のように真っ白になった。

 

 

所変わってトリニティ。

 

そこの普段は開放されていない入り口にてコノカは自らが率いるヴァルキューレとSRTの生徒に声をかけていた。

 

「さぁーて。ここからは各自散開していくっすよ。」

 

「くれぐれも発見時は戦闘を避けることっす。アレと真正面からやりあって勝つなんて、今のアタシらじゃ逆立ちしたって無理ですし。」

 

その言葉にギリッと歯ぎしりをするものが数名。しかしその数名も反論することはない。

 

何故ならば彼女らもコノカの言ったことが真実であると理解しているし、なにより間近であの一大作戦を見届けた者たちだ。今自分たちが追っている相手がどれほどの相手かは理解していた。

 

「ただし、」

 

…しかしそれは立ち向かわない理由にはならない。それは

 

「他の生徒に危害が加えられそうなった場合はやりあってもいいっすよ。ほんの少しでも時間を稼ぐことも重要っすから。」

 

コノカもよくわかっていた。

 

「それでは、散開ッ!!!

 

「「「「「はっ!」」」」」

 

そうして散らばっていく部隊の面々を見送り、「さて…と」と、改めて足をトリニティに向けようとしたその時。

 

「あ、ジンクスの気配みーっけ。」

 

 

                   ぞあっ

 

 

その気配に思わず振り向きながら銃を突きつける。

 

「うわぁ?!」「ッッッはーっはーっはーっ…!」

 

「急に銃を突きつけないでくださいよ。びっくりしちゃったじゃないですか。」

 

「あんたは…里野ダイヤモンド…?」

 

自らのトラウマを刺激されそうな気配の先にいたのは、あの黄金の名を冠する存在とは似ても似つかない少女。その姿はとても先ほどの気配とは似ても似つかない。

 

「?確かに私は里野ダイヤモンドですけど…?」

 

「それより顔色が悪いが大丈夫なのか?」とこちらを気遣う彼女に「大丈夫だ、問題ない。」と伝えつつ先ほどに気配について思案する。

 

あの気配は尋常のものではなかった。まるで食べごろの獲物を見つけた肉食獣のような気配。アレに似たものを、コノカは知っている。見たことが、あるのだ。

 

 

今でも思い出せる。

 

爆炎の中で倒れ伏す仲間たち。その圧倒的な力でもって作戦を真正面から粉砕していく不沈艦。

 

どのような事件を起こしても、どれほど抵抗したとしても、最後には逃げの一手を選んでいた彼女が初めて逃げずにその力を全力で振るった、あの戦い。

 

その時に、あいつが笑みとともに発した気配。先ほどのものはそれとよく似ていた。

 

もっとも、先ほどのものの方が、なんだか粘着質なものであったが。

 

それはさておいて、

 

「というか…なんで、あんたがここにいるっすか?」

 

この場所からトリニティに入ることは知らされていなかったはずだ。

 

なのになぜ、彼女はここにいるのだ?

 

おかしい。あまりにもおかしすぎる。

 

目の前のダイヤに向けて警戒を高める。

 

その質問に彼女は何でもないように口を開き

 

「ああ、それはですね…そこにジンクスの気配を感じたからです。

 

「急にIQ下がりましたね?」

 

なんかよくわかんないこと言いだした。

 

あまりにも素っ頓狂だったからか、思わずいつもの口調が崩れてしまった。

 

いや待てほんとに理解できない。なんだジンクスの気配って。ジンクスに気配なんてあるのか。

 

「ありますよ?わかりませんか?」

 

「急に頭の中覗かないでもらえないっすか??」

 

「それより……貴女、気にしてますよね?」

 

「え、気にしてるって、何をっすか?」

 

気にする?いや気にするもなにもここにはあの、トチ狂ったような危険度を誇るキヴォトス史上最狂の犯罪者を追ってきt

 

「朝の占い、気にしてますよね?」

 

「ッッッ?!……なんで、わかったんすか…。」

 

一瞬の動揺を直ぐに隠して理由を問いただす。

 

「今日の運勢が…一位だったこと。」

 

「…!…まぁ、まぁ…それは、それは…。まさか読み違えた?

 

…何かを小さく呟いたが、それがどのような言葉まではわからない。

 

「…そうですね…なんとなく、でしょうか。」

 

「ですが、想像したものではなかったようですね。…ただの勘違いでした。」

 

「ご迷惑をお掛けしました。」

 

「いやいやいいっすよ。大丈夫っす。」

 

「誤解なんで誰にでもあるのだから。」そう言って頭を下げた彼女にコノカは声をかける。

 

その言葉を聞いた彼女は少し微笑んだあと、「では、お仕事頑張ってください」と言って、こちらに背を向けて歩き出そうとした。

 

しかし、コノカはなんとここで痛恨のミスを犯す。

 

「あっ、そういえば、職場に向かう時に黒猫見かけたり、カラスに突っかかられたりしたんすよねぇ。やっぱり、13日の金曜日ってついてないっすね。不吉なものたくさん見ちゃったし、朝の占いの分が帳消しにされてそうっす。……

ぐるん

……どうしたんすか?なんか凄い笑顔って、目が、目が笑ってないんすけど?!」

 

「ふふ、ふふふ、ふふふふふふ…一度は耄碌したかとも思いましたが、どうやら勘は当たっていたようですね…!」

 

「あ、あの?里野ダイヤモンドさん…?」

 

余計な言葉とはまさにこのこと、マックイーンも真っ青になるほどの綺麗なスリーアウトをかましたコノカはあわれ、見事なまでに地雷を踏みぬいた。

 

そして、ぎゅっと手を握られ、引っ張られていく。

 

「さぁさぁさぁそうと分かれば早速ジンクスを破りに行きますよー!」

 

「ぅえ?!いや、今からアタシ大事なしごって力強っっっ?!」

 

手を引かれ学園内に連れていかれるコノカ。「ああやっぱり厄日だ、13日の金曜日は」と心の中で嘆いていた、その時であった。

 

「失礼。」

 

突如としてダイヤが振り向き、腰のホルスターから銃を引き抜く。そして

 

バンッッッ

 

目にも止まらぬ早打ちで、コノカの頭上を打ち抜いた。

 

 

手早く銃をホルスターに戻して、ニコニコと笑顔のまま「すみません。驚かせてしまいましたね。」と言い、そして

 

「頭上から小さな何かがコノカさんの方に落ちてきていたもので。」

 

と続けた。

 

「………へ?」

 

思わずコノカも目を見張った。先ほどの射撃はあまりにも早く、鋭く、精確であったからだ。さらに言えばそれだけではない。

 

先ほどの言葉が本当であれば、彼女は目で見なくとも落ちてくる物体をどうやってか正しく認識することができ、そしてそれに対する判断を即座に下せるということ。

 

これだけでも、彼女が並みの存在ではない…キヴォトスでも上位の実力を持つことは確かだ。

 

…トリニティに通っている時点で資金は確約されているようなものであり、ジンクスのためなら暴走特急とも称される行動力を発揮する。そこに強さが合わさったとなれば…なるほど、これは、ティーパーティも手を焼くわけだ。とコノカは静かに納得した。

 

「…あの、大丈夫ですか?」

 

「え、ああ、チョーッとぼけえとしてただけっす。いけないっすね…気を引き締めないと。」

 

「?………兎も角、一緒にジンクス、破りに行きましょうか。」

 

「成果は出ている。…順調ですね。」

 

そうしてルンルン気分のダイヤに有無を言わさず再び手を引かれていくコノカ。

 

(ああ、連れていかれるのは確定なのか)

 

手を引かれながらそんなことを考えていた彼女の耳に、ダイヤの呟きは拾われることはなかった。

 

 

 

さて、結果から言えばある意味大成功であったといえるだろう。

 

なにせ、今日の不運は里野ダイヤモンドがすべて薙ぎ払ってくれたのだから。

 

物が落ちてくれば銃で破壊するか手で受け止め、バナナを踏んで滑りそうになれば持ち前のパワーでひょいと持ち上げ、不良生徒との乱闘の際に銃がジャムったかと思えば「こんなこともあろうかと」と言わんばかりに銃を投げてよこす、階段から落ちそうになった時は自身をつかんで空中で一回転してそのまま着地する*1などなど…

 

まぁ、挙げればきりがない。そのたびに毎回感謝を伝えるものの、ダイヤがいなければ今頃これらすべてをその身をもって味わうことになっていたということに、思わず身震いしてしまう。

 

…乱闘の際に相手側が余計な一言を発してダイヤが暴走し、あげく正義実現委員会も参戦して大変なことになったが、その後はなんとかなったので結果オーライ、だと思いたい。

 

しかし、本来の目的であるゴールドシップの動向は全くと言っていいほど掴むことができなかった。

 

事実、(彼女についていく形ではあってあったが)こちらの聞き込みの成果はなく*2、トリニティ内に散らばっていった部下たちからも「手掛かりなし」という結果が伝えられた。

 

はあとため息をついたところに声がかかる。

 

ダイヤが指を差したところに視線を移すと、クレープの屋台が見えた。

 

二人でそこに向かってクレープを注文した。

 

「私は…このチョコバナナ味を、コノカさんはどうしますか?」

 

「え、ああ、アタシは…同じもので」

 

「じゃあ、チョコバナナ二つで。」

 

「かしこまりました。しばらくお待ちください。」

 

じゅうっと生地が焼かれる音がして、しばらくして、二人分のクレープが手渡された。

 

「「いただきます。」」

 

二人そろってクレープにかぶりつく。たっぷりの生クリームとバナナの上からかけられたチョコソースがひどく甘ったるい。

 

「見つからなかったんですか?」

 

「…何がっすか?」

 

「ゴールドシップの手掛かり」

 

やっぱり知っていたか。と、肩を落とすと「気づいていたのですね」と少し目を見開いて驚いたようだった。

 

「なんとなくっすけどね。…勘みたいなもんっす。」

 

「あんの愉快犯まーじで逃げ足早いのどうにかなんないっすかねぇ。あんだけ強いのに瞬間移動能力持ちとか反則っすよマジで。」

 

あーやだやだ、と顔を振って、ふぅ…と軽く息を吐いた。

 

「ま、ここにいないなら、もう用はないですね。」

 

「もう帰るのですか?」

 

その言葉にうなずいて、よいしょと立ち上がる。道中の案内と、自分を不運から守ってくれたことにありがとうと礼を述べると、彼女は優しく微笑んで

 

「どういたしまして」

 

と言った。

 

「あ、そうだ、コノカさん。こちら、ぜひ。」

 

「ん?なんすかこれ…電話番号?何で二つ?」

 

「はい。私の実家が会社を経営しているので、何かご入用でしたら、ぜひ。」

 

「あ、下のは私の携帯の番号です。」

 

唐突に渡してきた紙切れに書かれていたのは、2種類の番号。彼女によれば、一つは自身の実家の会社のものでもう一つは自身の携帯のものであるのだと言う。

 

…一方的に電話番号を知ることになるのは、なんだかスッキリしない。それに、忘れてはいけないのは、彼女も立派な問題児の一人であるということだ。今の所“アウト”なラインには突っ込んではいないが、それでもグレーな部分がないとは言えない。

 

とはいえ、今日の行動を鑑みれば根は善側の人物ではある。別に交換しても問題はないだろう。

 

それに彼女の実家である里野家はカイザーほどとはいかなくともそれなりの影響力を持っている。交換して損はないと思うが…

 

「あはは、会社の方はいらないっすよ。個人の方で十分っす。ええと…あ、ほら、これアタシのっす。」

 

そんなものはいらない。これが権力闘争にバタついている上層部ならまだしも、彼女本人は権力なんぞに興味はない。そもそも公正であることを求められる警察組織の副局長が入手するべきものではないのだ。

 

 

「そうですか…わかりました。」

 

「アタシは警察機関なんで」

 

「…腐っているわけではないのですね。」

 

「アタシらはまだ大丈夫っす。姉御…カンナ局長とカヤ防衛室長がどうにかしようとしているんで。」

 

「そうですか…。なら、失礼なことをしましたね。すみません。」

 

「謝る必要はないっすよ。交換できたっすか?」

 

電話番号の交換が終わったかという問いに隣で座っているダイヤは肯首することで答えた。

 

 

しばしの沈黙。…風が頬を撫で、鳥のさえずりが木霊し、遠くからは生徒の笑い声が聞こえてくる。

 

 

平和だった。あれほど銃撃の音が絶えないキヴォトスの中で、今、この場所だけは、平和であった。

 

 

「それじゃ、アタシはもう行くっす。…道中ありがとうございました。」

 

「帰りは案内しなくてもよろしいので?」

 

「大丈夫っすよ。ちゃーんと頭に入ってますから。」

 

「そうですか。では、また…いずこかで。」

 

「ははっ。そうっすね。…何か情報があったら連絡お願いしますっす。」

 

「もちろんです。」

 

そして出口に向かって歩き出したコノカを見送って、ダイヤもその場を静かに離れていった。

 

 

 

 

 

 

 

「…で、問題は特段起こらなかった、と。」

 

「はい、ゴールドシップの情報についての収穫がなかったことを除けば特段なにもなかったっすよ。」

 

ヴァルキューレの一室。そこでコノカから報告を聞いた尾刃カンナは、安堵と悔しさの混じった溜息を吐いた。

 

「そうか…なら、よかった。…徹夜を覚悟していたんだがな。」

 

「…あの子(里野ダイヤモンド)には、基準があるのかもしれないっす。というか、それしか考えられないっすよ。」

 

「無作為にジンクスを破りに行っていないということ、か。」

 

そう言って少し考えるそぶりを見せた彼女は、すぐにコノカの方に顔を向けて「ご苦労、コノカ。」とねぎらいの言葉をかけたのち、休息を促した。

 

こちらのことをしっかりと気にかけてくれるその姿勢はとてもありがたかった…が、それはそれとして気になることがあったので聞いてみた。

 

「あの、ところで姐御?ちょっといいすか?」

 

「ん?どうしたんだコノカ?」

 

「…何でジャージに着替えてるんすか。」

 

「………何も聞くな。」

 

 

 

所変わってトリニティ。

 

その一室。

 

「…では、ヴァルキューレはゴールドシップの痕跡を見つけることはできなかった、と。」

 

「ええ、どうやら巧妙に痕跡を隠蔽している様です、ナギサ様。」

 

「そう…やはり厄介極まりないわね、彼女(ゴールドシップ)は。」

 

ティーセットとお茶菓子、そして何らかの書類の乗ったテーブルに座った桐藤ナギサの言葉に少しばかり頭を下げながら答えた里野ダイヤモンド。

 

静かに立ち続ける彼女の前でナギサは少し思案した後に紅茶を一口。

 

「…ところで、『梅花繍眼の七宝(ばいかしゅうがん しちほう)』は、まだ…?」

 

「申し訳ありません。いまだ見つけられず…。」

 

その問いに対するダイヤからの報告は芳しくないものだった。しかし、ナギサはそれを予期していたようだった。

 

「謝る必要はないわ。あなたの力はよくわかっていますし、そう簡単に見つかる物でもないということもわかっていたわ。」

 

「それにミカが貴婦人の大戸を偉物なしに僅かばかりでも動かせるようになったのでしょう?あなたの協力のおかげだわ。」

 

「…もったいないお言葉です。」

 

「とりあえず、今のところは『七宝』と下手人の捜索、頼んだわよ。ダイヤモンド。」

 

その言葉に対して頭を下げるダイヤに対し、ナギサは特に気にも留めない様子で捜索の指示を出し、部屋から退出させる。

 

一人きりになった室内で、静かに息を吐き手元の紙に目をやるナギサ。

 

そこには「エデン条約」という文字が書かれていた。

 

 歯車が少しづつ動いていく。

 

 

 

ミレニアム 某所

 

「う、うわぁっ?!」

 

                 ドタドタバタン!!??

 

「どうしましたかウタハ………さ、ん?」

 

「え、ええっとここは…どこ?」

 

「き、君は、誰だい…?」

 

「うえっ?!…ぼ、僕?」

 

「ああ、君だ。」

 

「あ、えっと…僕は、シュヴァルグラン。」

 

 「先生」という存在が来たことによって

 

 

 

 

ゲヘナ 某所

 

「對不起~、うちの議長がまた余計なことしちゃったみたいで。」

 

「助かったよ、クラウン。悪いな、また世話になっちゃって。」

 

「いいのよ、イオリ。問題ないわ。ハァ…マコト議長はこれがなければまだましなのだけれど…。」

 

「お互い、苦労してますね…。」

 

 あらゆる歯車が回りだし

 

 

 

 

”私についてはこんなところかな”

 

「ん、わかった。じゃあ次は私。…覚えてるとは思うけど、砂狼シロコ。」

 

「アビドス高等学校一年生、奥空アヤネです。」

 

「アビドス高等学校二年生の、十六夜ノノミですよ~。」

 

「アビドス高等学校一年の黒見セリカよ!」

 

「アビドス高等学校一年、銅鑼(ドゥラ)メンテだ。そして…」

 

「ふわぁぁ…揺らさなくても起きてるよ~。アビドス高等学校三年生の小鳥遊ホシノだよ~よろしくね~先生。」

 

”うん、よろしくね。”

 

 世界が動き始めた

 

*1
お姫様抱っこのようになってちょっとドキッとしたのは内緒

*2
なお、聞き込みをするたびに「とうとう一線を越えたんですか?」といった趣旨の言葉がダイヤに放たれ、それをコノカが否定すると言ったやりとりがあったことをここに記しておく。




次回、アビドス対策委員会編 開始
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