劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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 どうも、猫林13世です。今回は魔法科高校の劣等生を原作に話を作っていきたいと思います。
 序盤はコミックの優等生の内容も含みますので、分からない人はそんな話もあるんだと捉えてくれれば幸いです。


始まり

 西暦2095年3月25日、横浜某所。有名人なども多く訪れるこの場所で、1人の女性が注目を集めている……いや、女性では無く少女と言った方が良いかもしれない。男女問わず注目を集めている少女、『司波深雪』は誰が如何見ても美少女と評される容姿をしている。そんな彼女がこの恋人たちが大勢居る場所で1人で居るはずも無く、当然彼女にも連れは居る。だが彼女にとって相手が連れでは無く、自分がその人の連れだと思っているのかもしれない。

 彼女が今日この場所に訪れた理由は、中学卒業と誕生日のお祝いを兼ねた申し出を受けた形なのだが、彼女自身今日の申し出はそれだけで十分お祝いの意味を持っているものだったので何もしなくても彼女は上機嫌なのだ。

 先に言った通り、司波深雪は誰もが認める美少女なので、そんな彼女が上機嫌で歩いているだけで周りの視線を独り占め出来るのだ。

 

「今の子凄く綺麗だったわね」

 

「芸能人かな?」

 

「でも、あんな綺麗な人、芸能界に居たかな?」

 

 

 このように女子同士の会話のネタになったり、恋人と一緒に居るのに他の女に見とれてたと彼女に制裁を加えられたりするなど、彼氏側から見れば多大な被害を被ったりしてるのだが、深雪にとってはそんな事は関係無いのだ。

 彼女にとって今興味の全ては一緒に居る相手に向けられているのだから。卒業と誕生日のお祝いなのだから、当然その相手は恋人……では無く――

 

「人が多いな。深雪はぐれないように手を繋いでおこう」

 

「はい、お兄様!」

 

 

――お兄様と呼ばれる相手だった。

 深雪がお兄様と呼ぶからには、その相手は彼女の兄なのだろう。従兄や近所の親しい年上の男性と言う可能性もありうるのだが、彼は間違い無く『司波深雪』の兄なのだ。

 それほど似ている兄妹では無いのだが、見る人が見れば間違い無く兄妹に見える2人。だが少し深雪の方には兄に向けるには相応しくない感情が見て取れるのだ。

 彼女の兄、『司波達也』は妹の深雪ほど見目麗しいと言うわけでは無いが、女性受けが良さそうな高身長、切れ長で理知的な印象を受ける目元、聞き惚れるような声では無いが、歳のわりに深い印象を与える声と、女性人気は高そうな見た目と声だ。

 それに加えて彼は文武両道で、中学の成績では他者を寄せ付けないぶっちぎりの1位、生徒会長選に当日まで本人が知りえない所で出馬させられてたりと内面も人気なのだ。

 そんな彼と彼女が一緒に歩いていると、やはり彼の評価は少し下がってしまうのは仕方の無い事だろう。達也1人で居る時の周りの評価は上の中か上の下なのだが、深雪の隣に居ると如何しても比較対象が極上なので精々中の上か中の中と言う評価になってしまうのだ。

 

「でもあの子、男の趣味が微妙ね」

 

「そうかな……私はカッコいいと思うけど」

 

「確かにカッコいいけど、あの子とはつりあってない気がするのよ」

 

「言われて見れば確かに……」

 

 

 このように兄妹が一緒に出かけると必ずと言って良いほど影でコソコソと何かしらを言われるのだが、深雪は周りに何を言われようと達也と一緒に居られるだけで幸せで、達也の方も言われ慣れてるのであまり気にしないのだ。

 兄妹と言うが、この兄妹は歳の離れた兄妹では無く、同い年なのだ。同い年と言っても双子では無く、達也が4月生まれで深雪が3月生まれ、約1ヶ月だけ同い年なだけで、実質1歳離れているのだ。

 中学に入った頃の2人しか知らない人が今の2人の関係を見れば驚くのだろうが、色々あって深雪は達也につくすのが生きがいになったのだ。

 

「深雪、ちょっとこの店に入っても良いか?」

 

「もちろんです! お兄様」

 

 

 ショーウインドウに飾られた髪飾りを見て、その後深雪の事を見た達也が、そのような提案をしてきた。深雪は達也に求められれば何でもする気持ちなので、彼の提案を断るような事は絶対に無いのだが、達也は毎回深雪に尋ねるのだ。

 一方深雪の方は、達也に見つめられたと勘違いをして、顔が真っ赤になっている事も気に出来ないほど心中穏やかでは無いのだ。

 

「いらっしゃいませ」

 

「ショーウインドウの髪飾りを見せてもらいたいのですが」

 

「畏まりました」

 

 

 店に入ってすぐ対応してきた店員に対して、特に構えるでも無く自然に対応出来る達也は、何処か普通の中学生とは違うのだろう……いや、卒業してるから中学生と言って良いのか微妙だが、間違い無く普通の15歳では無いだろう。

 店員に持ってきてもらった髪飾りを深雪の髪に宛がう。髪飾り単品でも十分美しいのだが、深雪の髪に納まると何倍にもその魅力は跳ね上がった。

 

「とてもお似合いです。まさしくお客様の為に作られたようなものですね」

 

 

 店員のこの表現を、大げさだと言う人間はこの場には存在しなかった。もし他の客が居たとしても、誰もが納得するほど、その髪飾りは深雪に似合っていた。

 

「似合ってますか?」

 

「おっと、鏡はそっちだったな」

 

 

 達也があてがった方からでは、深雪が確認出来る鏡は無い。その事に気付いた達也は反対側に回ろうとしたが――

 

「お兄様のご意見さえいただければ、深雪はそれで十分です」

 

 

――深雪のこのセリフで達也の足は止まった。

 およそ兄に対してのセリフでは無いが、深雪にとって達也の意見は何よりも大切なのだ。もちろん達也は深雪に似合うと思ったからこの店に入った訳で、深雪の質問に対しての答えは最初から決まっていたのだ。

 

「似合ってるよ。そもそもお前に似合うと思ったから手に取ったんだ」

 

 

 達也のセリフも妹に対しては適切では無いかもしれないが、この言葉で深雪の気持ちは決まった。最初から兄の買い物に口を挟むつもりは無かったが、この一言で髪の毛1本も挟む余地が無いくらい深雪の気持ちは固まったのだ。

 

「では、これをおねだりしてもよろしいでしょうか?」

 

「当然だ。むしろ俺が選んだようなものだからな」

 

 

 深雪の可憐なおねだりに魅了された店員だったが、達也の反応にも関心していた。彼女(店員には2人が兄妹だと見抜く眼力は無かったので)の可憐なおねだりにも動じない態度に、店員は心惹かれたのだ。

 

「それではこれをいただけますか?」

 

「は、はい! ありがとうございます」

 

 

 会計を済ませて包装された髪飾りを深雪に手渡す。ただそれだけの事なのに、深雪はもの凄く喜んだ。

 

「ありがとうございます! 一生大切にしますね」

 

「一生は大げさだろ。気に入ったものがあったらまた買ってやるさ」

 

「良いんです! お兄様からもらったものは、深雪にとってどんな高級品よりも価値があるんですから!」

 

 

 深雪のこの態度に、若干の不安を感じつつもスルーした達也も、何処と無く普通の兄では無いのかも知れない……




もしかしたらタイトル変えるかもしれませんがご容赦ください……

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