劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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映画、今日からでしたね……


弟から好かれる達也

 リーナが悪戦苦闘している頃、リビングに残ったメンバーは雑談をしていた。

 

「そういえば雫嬢。そなた交換留学でアメリカに行っていたそうじゃな」

 

「一年の時に三ヵ月だけだけど」

 

「おぬしのような力のある魔法師がよく留学など許されたの。愛梨やワシらでは絶対にありえない事じゃとおもうのだが、何か特別な理由でもあったのかの?」

 

「詳しい事は良く分からないけど、ウチの会社が関係してたんじゃないかと思う」

 

「企業連合か……ありえそうじゃの。ちなみに、達也殿はどう思ったのじゃ?」

 

 

 まっさきに達也に意見を求めるあたり、沓子も達也の事を想っているのだろうとうかがわせる光景だと、香蓮はそんなことを思っていた。

 

「雫と交換で留学してきたのがあのリーナだからな。そこらへんに理由があったのじゃないかとは思うが、雫の言う通り企業連合の力かもしれないからな。なんとも言えない」

 

「あの娘、そんなに偉いのか?」

 

「九島烈の弟の孫娘だからな。日本にゆかりがあるという点では選ばれても不思議ではない」

 

「九島の関係者か……あまり威厳は感じなかったが、そうじゃったのか」

 

「別に九島の人間からだって、それほど威厳は感じなかったじゃない」

 

 

 栞にツッコまれて、沓子は恍けたように首を傾げた。退役したとはいえ、リーナがスターズ総長『アンジー・シリウス』であることは教えるわけにはいかないので、達也としてはこれで納得してくれたことに安堵したのだった。

 

「あのリーナとかいう子、司波深雪と同等程度の実力だとお聞きしましたが、それは確かなのですか?」

 

「今の深雪お姉さまと比べれば大したことは無いと思いますが、あの方が留学していた時の深雪お姉さまとは互角だったと聞いていますわ」

 

「あの時の深雪嬢といっても、愛梨によりも凄かったはずじゃぞ? その深雪嬢と互角ということはあの娘、相当な実力者というわけか?」

 

「少なくともあたしでは勝てなかったかな……本当に悔しいけど」

 

「エリカ嬢はあの娘と何か因縁でもあるのか?」

 

 

 エリカが苦々し気に呟いたのを、沓子は不思議そうに眺める。それほど付き合いがあるわけではないが、エリカの性格は沓子も十分把握していたので、ここまで悔しそうに呟いたエリカに疑問を抱かずにはいられなかったのだ。

 

「あたしには関係ないけど、身内が負けたっぽいのよね……何時かお礼参りしてやろうかと思ってるんだけど、実力差は確かにあるもの」

 

「千葉様だって十分強いと思いますけど」

 

「エリカでいいわよ。あたしも亜夜子って呼ばせてもらってもいいかしら?」

 

「構いませんわ、エリカさん。しかし、あのリーナというお方、そこまで強いのでしょうか?」

 

 

 事情は知っているが、話を聞く限りポンコツであると結論付けている亜夜子としては、エリカが勝てない相手だとは思えなかったのだろう。

 

「戦闘においては敵わないと思うわ。純粋に力勝負を挑んだところで、あたしじゃ一本も奪えないでしょうし」

 

「それでしたら、私たちでは敵わないですわね。魔法力は兎も角、この中で一番強いのはエリカさんでしょうし」

 

「そんなこと無いと思うわよ? あたしだって、達也くんには手も足も出ないし」

 

「達也さんは別格ですので。我々四葉の人間だって、達也さんに敵う人などいませんので」

 

 

 去年新発田勝成が達也に三対一で挑んで負けたことは亜夜子も知っている。だがその結果を亜夜子は至極当然の事であると思っているのだった。

 

「でも達也さんって四葉家では疎まれてたって聞いたことがあるけど」

 

「それは達也さん本来の力を知らない愚か者どもが、達也さんの尊厳を必要以上に貶めようとしていただけですわ。本来ならそのような不敬な輩など消し去って当然だと思いますが、達也さんの慈悲で今まで通り働いていますが」

 

「亜夜子、あまり内情を話すと母上に怒られるぞ?」

 

「ご当主様も私と同じようなお考えをお持ちですので、そのような心配は無用ですわ」

 

「……母上は兎も角、黒羽さんは複雑な思いを抱いているんじゃないか?」

 

「お父様は別にどうでも良いですわ。そもそも、文弥が黒羽を継げば、お父様のお考えなど関係なくなりますし」

 

 

 文弥も完全なる達也信者なので、彼が黒羽を継げば間違いなく達也に忠誠を誓うだろう。それが理解出来る達也は、少し貢に同情したのだった。

 

「亜夜子嬢の弟君は達也殿に憧れておるのか?」

 

「私たち双子は、幼少の頃より達也さんに憧れを抱いておりましたから。特に弟の文弥は、中性的な顔立ちと小柄な体躯を気にしている様子ですので、達也さんのような容姿に憧れるのかもしれませんね。もちろん、実力面でも憧れているようですが」

 

「新人戦で見たけど、確かに可愛い感じがする男の子だったもんね」

 

「それ、本人には言わないでくださいね。まぁ、会う機会は無いかもしれませんが」

 

 

 栞の文弥に対する評価に、亜夜子は笑いそうになるのを堪え、それを窺わせない態度で答えた。

 

「でも、文弥君って航にちょっと似てたかもとは思った。航も中性的だし」

 

「雫嬢も弟君がおるのか」

 

「うん。航も達也さんに憧れてる感じがする」

 

「男からも人気なのじゃな、達也殿は」

 

「俺の事を嫌ってる方が多いと思うがな」

 

 

 嫌ってるというよりは認めたくないと思ってる男子が多いのだが、達也は細かい事は言わずにそう締めくくったのだった。




異母弟ですが、光宣からも好かれてますしね……

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