劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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料理の腕も戦略級……


料理の破壊力

 先にリビングにやって来たのはほのかたちのチーム、そのすぐ後に深雪たちもリビングにやってきた。

 

「一緒にやってたんじゃないの?」

 

「さすがに人数が多かったから、二つに分かれたんだよ」

 

「まぁ、ほのかはここに泊まった事もあるもんね」

 

 

 勝手知ったる何とやらで、雫はその事に驚く事はなかった。

 

「まずはリーナの料理から食べてください」

 

「……それが料理なのか?」

 

 

 目の前に出された料理に、沓子が思わず疑問を溢す。他のメンバーも衝撃を受けているようだが、言葉を発する事が出来ない様子だったので、沓子が代表して疑問を呈した形になってしまったのだ。

 

「失礼ね! これでもだいぶマシになってるんだからね!」

 

「確かに、この間よりかはだいぶマシだな」

 

「でしょ! さぁタツヤ、遠慮せずに食べてちょうだい!」

 

「申し訳ありませんでした、達也様……リーナの下手さ具合は私たちだけでどうにか出来るものではありませんでした……」

 

「消し炭にならなかっただけマシだって深雪さんが言ってたけど、どうやら本当だったのね……」

 

 

 半信半疑だったようだが、真由美もこれがリーナにとってマシなのだと漸く理解出来たようで、困り果てた表情で達也に両手を合わせて頭を下げた。

 

「これ、食べるの?」

 

「出された以上、食べるしかないのではないでしょうか……」

 

「とても人が食べるものには思えないのですが……」

 

 

 雫が零したセリフに、栞と亜夜子が応える。だが、どちらも食べたく無さそうな雰囲気である。

 

「あたしが作った方が何倍もマシなものなんて珍しいわね……」

 

「これを大量に製造すれば、敵戦力を削れるかもしれませんね……」

 

「渡したところで、これを食べるとは思えないんだけど?」

 

「まぁ、手を出すような人間はいないでしょうね……よっぽどお腹がすいていても、これに手を出すかどうか分かりませんし」

 

 

 エリカと香蓮も、リーナの料理を見ながら別用途を考えているようで、誰一人リーナの料理に手を伸ばそうとはしない。

 

「ちょっと! 何で誰も食べてくれないのよ!」

 

「じゃあまずリーナが食べてみれば良いんじゃないの? そうすればあたしたちも食べるかもしれないわよ」

 

「そうですね。リーナさんが毒味をしてくだされば、私たちも食べようと思えるかもしれませんし」

 

「エリカもアヤコも酷いわね……食べたって死にゃしないわよ」

 

「死ぬかどうか分からない物を食べさせようとしないでほしいのだけど」

 

 

 栞の言葉に、残りのメンバーも力強く頷く。本当に最悪が起こっても達也が何とかしてくれるだろうと思っているリーナだが、さすがにそこまで言われてショックを受けないわけはなかった。

 

「みんなして酷い言い草ね……分かったわよ! まずワタシが食べてみればいいんでしょ!」

 

 

 そう言ってリーナは目の前に置かれた物体を手に取り、怯むことなく口に運んだ。

 

「うわぁ、勇気あるな……」

 

「香澄ちゃん、思っても口に出してはいけませんよ」

 

「でもさ、あれって人が食べても大丈夫なものには見えないんだけど」

 

「あれを食べて大丈夫だったら、リーナ様は人ではないと言う事でしょうか」

 

「水波も結構酷い事を平然と言うよね」

 

「香澄さんには負けますがね」

 

「はぁ……」

 

 

 香澄と水波に挟まれた泉美が、盛大にため息を吐いたが、気持ち的には二人に同意したいのだろう。さっきからリーナの料理とリーナを交互に見ては、顔を顰めているのを姉である真由美はバッチリと見ていたのだった。

 

「リーナ、大丈夫?」

 

「み、水……」

 

「やっぱり人が食べるものじゃなかったんだね」

 

 

 雫がしみじみと呟きながら、リーナに水を手渡す。何か言いたげな表情を浮かべたリーナだったが、自分の現状をどうにかする事を優先したのか、雫からコップを奪い取り水を飲む。

 

「とりあえずリーナさんは失敗した、という事で良いのでしょうか?」

 

「見た目は多少なりともマシになったようだが、味の方は失敗のようだな」

 

「(達也さん、見ただけで分かってたのではありませんか?)」

 

 

 亜夜子が小声で尋ねてきたので、達也は目で頷いた。そのやり取りはリーナからは見えず、深雪や真由美たちからは亜夜子が達也にくっついているように見えるものだった。

 

「亜夜子ちゃん、何をしてるのかしら?」

 

「達也くんの腕にしがみついていたように見えたけど、まさかこれだけの婚約者がいる前で抜け駆けかしら?」

 

「そのような事はございませんわ。少し気になった事があったので達也さんにお伺いしていただけですもの」

 

「本当ですか?」

 

 

 亜夜子の言葉を信じずに、深雪は達也に直接尋ねた。達也はありのままを話すわけにはいかないので、深雪の耳元で事情を話した。

 

「そういう事でしたか。亜夜子ちゃん、疑ってゴメンなさいね」

 

「いえ、疑わしい動きを見せたのは私ですので。深雪お姉さまが謝ることはございません」

 

 

 互いに頭を下げてこの件は終わったのだが、事情が分からない真由美は何故深雪が納得したのかが分からず首を傾げていた。

 

「とりあえず、この料理は片付けて良いのかな?」

 

「作った本人があれだからな。片付けても良いんじゃないか」

 

「分かった」

 

 

 達也と雫で話を進めて、リーナの料理は封印されることになったのだった。その事にリーナは不満げな表情を浮かべたが、アレをもう一度食べろと言われて食べられるか、作った本人でも怪しいので何も言わずに見ていたのだった。




カオスな展開になりそうだ……

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