劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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こっちも凄い破壊力……


エイミィの料理

 リーナの料理を片付けた後、今度はエイミィの料理がテーブルに並べられた。

 

「さっきのよりはマシじゃが……」

 

「こっちもこっちで酷い……」

 

「まぁエイミィだしね」

 

 

 初見の沓子と栞はこちらでも驚きの表情を浮かべたが、何度か見たことがある雫は当然のように受け入れた。ただし、料理に手を伸ばそうとはしない。

 

「一色さんと一緒に頑張ってはみたんだけど、エイミィの酷さは想像以上だった……」

 

「光井さんが悪いわけではありませんわ。あれはエイミィさんが悪いです」

 

「いやー、中火で五分なら、強火で三分くらいかなーって思ってたんだけど、気がついたら五分以上経っててさ」

 

「素人が失敗する原因の一つは、言われた通りにやらないからだよ」

 

 

 雫がエイミィが作った料理を見ながらアドバイスをする。漸くショックから抜け出した沓子も、愛梨を労うように頷いていた。

 

「愛梨の実力を以てしてもこの出来とは……エイミィはよほどの腕なのじゃな……」

 

「食べてないのに評価しないでよ!」

 

「このようなものを食べて腹を下したくないからの。先ほどのリーナ嬢のように、まずはお主が食べてみれば良いではないか」

 

「食べたって平気だって! ……マズッ!?」

 

 

 沓子の言葉に苛立って料理を口にしたエイミィだが、すぐに吐き出しそうになり、雫に睨まれてトイレに走っていった。

 

「やはりエイミィも料理は向いてないみたいだね」

 

「そもそも、エイミィは場をひっかきまわす事しか向いてないと思うよ」

 

「そんなことは無いと思うんだけど……」

 

 

 雫の酷い言い草に、ほのかは思わずエイミィのフォローをしたが、内心は雫に同意したい気持ちでいっぱいだった。

 

「じゃあ最後はボクたちの料理だね」

 

「香澄さんも泉美さんも、最低限の基礎は出来ていましたので、特に問題は無いと思いますので」

 

 

 そういって水波は香澄と泉美が作った料理をテーブルに並べる。前の二人とは違い、見た目は普通に美味しそうな印象を与える料理だった。

 

「これなら食べれそうじゃの……うむ、普通に美味しいではないか」

 

「沓子がそう言うなら平気だね。私たちもいただきましょう」

 

「なんじゃ、香蓮はワシを毒味役じゃと思っておるのか?」

 

「沓子は美味しくないものははっきりと美味しくないって言いますから」

 

「下手に美味しいと言ってじゃんじゃん出されるのは御免じゃからな」

 

 

 沓子と香蓮のやり取りを聞きながら、他のメンバーも二人の料理に手を伸ばす。誰にも食べてもらえなかったリーナと、ようやくトイレから戻ってきたエイミィも、若干複雑そうな表情を浮かべながらも料理に手を伸ばした。

 

「泉美ちゃんと香澄ちゃんは何で今日来たのかしら?」

 

「ボクはお姉ちゃんと泉美が暴走しないように見張る為だよ」

 

「私が元々深雪お姉さまに料理を教わるために集まっているのですから、私がここにいるのは当然だと思いますが」

 

 

 真由美の言葉に、香澄は呆れながら答え、泉美は当然の事であると主張した。

 

「でも、この人数で食べられる料理がこれだけじゃ、あんまりお腹はたまらなそうね」

 

「まだ食材はあるから、誰か作ればいいよ」

 

「雫はやらないの?」

 

「私はいいや。これだけの人数に食べてもらえるだけの腕は無いし。それこそ、深雪かほのかが作った方がおいしいごはんが食べられる」

 

「まぁ、あたしも最低限しか出来ないしね」

 

「せっかくですので、達也さまに作っていただくというのは如何でしょうか」

 

「達也くんに? 達也くんって料理出来たんだ」

 

「最低限だがな。しかし、そんなに作る機会も無かったから、期待されても困るんだが」

 

「リーナやエイミィよりマシだと思うけど?」

 

「エリカ、そこと比べるなんて達也様に失礼だとは思わないの?」

 

 

 突如部屋を襲った冷気に、エリカは自分が失言をしたという事を自覚した。もちろんエリカだって達也がリーナやエイミィのようなものを作るとは思っていないし、冗談で言ったつもりだったのだが、深雪にはその冗談が通用しなかったのだ。

 

「じょ、冗談だから。達也くんもゴメンね?」

 

「気にしてないし、冗談だって分かってたからな」

 

「あら、そうだったの。ゴメンなさいね、エリカ。つい達也様を侮辱したものだとばかり」

 

「あたしがそんなことするわけないじゃないの」

 

 

 引き攣った笑みを浮かべながら、エリカは深雪から視線を逸らした。このくらいの冗談なら深雪も気にしないだろうと思った少し前の自分を殴りつけたい気持ちに苛まれたが、この程度の冗談に過敏に反応した深雪が悪いのではないかとは考えられない様子だった。

 

「それじゃあ、達也さまにお願いするということでよろしいでしょうか?」

 

「うむ。達也殿の手料理を一度は食べてみたいの」

 

「私たちよりお上手だったらどうするつもりなの?」

 

「ひとしきり反省しながら、ワシたちも上達しなければと決意すればよいじゃろ」

 

「沓子は相変わらず楽観視が過ぎるよ……」

 

「栞が何事も重く考えすぎなのじゃ。もう少し気楽に過ごさないと大変じゃろ?」

 

「どっちも極端だと思いますけどね」

 

 

 香蓮の言葉に、愛梨も笑いながら頷いたのだった。




水波の策で達也の手料理が振る舞われることに

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