劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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リーナの目的は言えるわけがない……


達也との初遭遇

 達也一人でキッチンに向かったため、リビングには女子だけになった。ほぼ全員が達也の婚約者ということで、話題は当然、達也の事ばかりである。

 

「皆さんは達也さんと最初に会ったのは何時でしょうか?」

 

「あたしたちは入学してすぐ達也くんと会ったわね。特にあたしは初日から会ったし」

 

「私とほのかは、入学してちょっと経ってから達也さんと初めて話したからね」

 

「私はちゃんと話したのはテスト勉強で教わった時だけど、見かけたのは新勧週間の時だね」

 

「私たちは九校戦の時ですわね」

 

 

 亜夜子の質問に次々と答える中、リーナだけはどう答えるかに困っているように深雪には見受けられた。普通に交換留学でやってきた時に会ったと答えればいいのだが、留学が目的ではないという事を知っているメンバーが数人いるので、その人の反応を気にしているのだろうと結論付け、特に手助けはしなかった。

 

「そういえば、三高のみんなって達也くんの事を何処で知ったの? 九校戦前の懇親会の時にはすでに知ってるようだったて達也くんが言ってたのをなんとなく聞いたけど」

 

「最初は司波深雪さんの事を調べるために一高に偵察に行ったんですが、そこで私が達也さんに一目惚れしまして」

 

「その後、ワシたちも香蓮が撮ってきた達也殿の写真を見て興味を持った、というわけじゃな。深雪嬢の事も気にはなっておったが、それ以上に達也殿に心惹かれたんじゃ」

 

「油断した訳ではないですが、その所為で九校戦は惨敗でしたけども」

 

「あれは個々の力もだけど、達也くんの力が大きかったからでしょ。そうじゃなきゃあそこまでの快勝はなかったって当時の参謀本部も話してたらしいし」

 

 

 当時の一高幹部で、達也の力無しに九校戦を勝てたと思っていた人間は一人もいない。彼の事を認めたがらなかった服部ですら、新人戦・本戦どちらも優勝できたのは達也のお陰だと思っていたくらいだ。

 

「あの時は一条の戯けが達也殿にオーバーアタックを喰らわせたからの。あれを見た時は本気で達也殿が死んでしまったかと思ったわい」

 

「それはボクたちも見ました。あの攻撃は完全にオーバーアタック判定されて当然だったと今でも思ってます」

 

「達也様がそのまま一条を倒したので大会運営本部も試合を止めませんでしたが、あの攻撃で我々三高の負けは決定していたはずでした」

 

「まぁ、普通に負けたけどね」

 

 

 将輝は達也に、真紅郎は幹比古に、そしてもう一人はレオに倒されたため、三高は普通にモノリス・コードで敗北し、そのまま本戦でも一高に敗北したのだった。

 

「ところで、リーナは何時まで黙ってるの? 達也くんと初めて会ったのは留学してきた時なんでしょ?」

 

「そっか、あの時エリカはいなかったのよね」

 

「あの時?」

 

 

 深雪が零した言葉に、エリカは首を傾げながら尋ねた。

 

「リーナはね、初詣の時に達也様に会っていたのよ。まぁ、声は掛けてないから正確にはエリカがおもってる時が初対面という事になるのかもしれないけど」

 

「あっ、あの時小野先生と達也さんたちが気にしてた人ってリーナだったんだ」

 

「ほのかはその場にいたんじゃないの?」

 

 

 雫の問いかけに、ほのかは恥ずかしそうに視線を逸らした。

 

「達也さんに振袖を褒めてもらって、他の事を気にしてる余裕が無かったから」

 

「なるほど」

 

 

 実にほのからしい理由だと、雫はそれだけで納得出来た。だが、他のメンバーはほのかが発した言葉を聞き逃さなかった。

 

「達也様に褒めていただいたのですか?」

 

「え、うん……似合ってるって言ってもらったけど」

 

「羨ましいですわ! 振袖姿くらい、何時でもお見せしますのに」

 

「仕方あるまい。ワシらは石川、達也殿たちは東京なのじゃから、会う機会が限られて居ったんじゃ。その点、ほのか嬢は達也殿と同じ学校、同じ学年で初詣に一緒にいける間柄なのじゃから」

 

「私も行きたかったけど、あの時はいろいろと立て込んでたのよね」

 

「そういえば、その頃東京では『吸血鬼騒動』があったのですよね?」

 

 

 香澄の何気ない問いかけに、リーナは飲んでいた紅茶を噴き出した。何事かと一斉に視線を集めたが、リーナは笑ってごまかし、水波から手渡されたタオルで噴き出したお茶を拭いた。

 

「ごめんなさい、ちょっとむせちゃって……」

 

「そういえばその事件の結末ってどうなったのでしょうね? 詳しい事は石川には情報が届かなかったものでして」

 

「十師族が責任を持って終わらせたようですわよ。具体的に言えば、九島家が動いていたと」

 

「九島が? ですが、東京の事件に九島が首を突っ込んでいたわけですか?」

 

「秘密裏に動いていたと、こちらで情報は掴んでいましたので。表立って動いていたのは七草・十文字連合と千葉家を中心とした警察の方々らしいですが」

 

「せっかく捕まえたと思ったら、九島にパラサイトを横取りされたのよね……あー、思い出したら腹が立ってきたわ!」

 

「エリカ、落ちついて。達也さんは気にしなくていいって言ってくれたじゃない」

 

「それ以外にもあの時にはイラつく事がいろいろあったのよ。今度会ったらただじゃ済まさないんだから」

 

 

 独り言のように聞こえたが、エリカの視線はリーナに向けられており、リーナも自分に向けての言葉だという事は理解している様子だった。その事情を全て知っている深雪は、ただ微笑んでいるだけだった。




まさかUSNAのスパイだったとは、言えるわけがない……数人には知られているが
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