劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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美月役の佐藤聡美さん、レオ役の寺島拓篤さん、ご結婚おめでとうございます


デバイスオタク・あずさ

 とりあえず落ち着きを取り戻したあずさを連れて、真由美たちはウインドーショッピングを再開した。

 

「あーちゃんも少しは大人っぽい服を着てみたら?」

 

「私には似合いませんよ」

 

「そんな事ないわよ。あーちゃんだってもう大学生なんだから」

 

「真由美さんや市原先輩なら似合うでしょうけど、私なんかが着ても子供が悪戯で親の服を着た、としか思われないですって」

 

「中条、それは自虐が過ぎるんじゃないか?」

 

 

 真由美があずさを着せ替え人形にしようとしてるのを知っていながら知らん顔していた摩利が苦笑いを浮かべながらツッコミを入れる。あずさが自分の名前を出さなかった事に対してはツッコミは入れない。なぜなら真由美があずさに勧めている服は、摩利本人が自分には似合わないと思っているからだ。

 

「だって! 結局身長は伸びなかったですし、顔もこんな感じですから」

 

「背は真由美だって大して変わらないんじゃないか?」

 

「そんな事ないわよ! あーちゃんよりはあるわよ! ……あっ、別にあーちゃんが小さいって事じゃないからね」

 

「どうせ私は幼児体型ですよ……」

 

 

 真由美は自分の事を子供体型と表現するときがあるが、あずさはそれ以上の幼児体型と表現する。摩利はどうしたものかと視線を逸らすと、その先に見知った男子を見つけた。

 

「おい、あれ達也くんじゃないか?」

 

「本当ね。どうせなら付き合ってもらいましょうか」

 

 

 そういいながら真由美は駆け足で達也に近づき、半ば強引に達也を連れてきたのだった。

 

「なんですかいきなり……」

 

「真由美に見つかったが運の尽きだと思って諦めてくれ」

 

「まぁ、用事は済んだので帰るだけだったので構いませんが……」

 

「司波はいないんだったな。それなら別に気にする必要は無いか」

 

「その代わり、七草先輩は妹さんたちに俺と会ったとか言わないでくださいよ。泉美の事ですから、すぐに深雪に報告しそうですし」

 

「そんな事――ありえそうね……」

 

 

 否定しようとして、泉美ならあってもおかしくないという考えが真由美の思考を占領した。

 

「ところで司波くん、さっき言ってた用事って何ですか?」

 

「大したことではありませんよ。シルバー製の新しいモニターを受け取りに行ってただけです」

 

「見せてもらっても良いですか!?」

 

「え、えぇ……こちらです」

 

 

 あずさに尾行されていた事も、周辺に真由美たちがいる事も分かっていたので、達也は帰り際に牛山から新製品のサンプルを受け取っていたのだった。

 

「羨ましいなー……」

 

「良ければ差し上げますよ?」

 

「良いんですか!?」

 

「えぇ、もうワンセット貰ってますので、中条先輩が欲しいと仰るなら」

 

「是非ほしいです!」

 

「相変わらずだな、これも……」

 

 

 デバイスオタクと揶揄されるだけはあるなと、摩利はあずさの浮かれようを見ながら苦笑する。

 

「そういえば鈴音さん。この間貰った研究資料ですが、なかなか興味深い物でした」

 

「達也さんにそう言ってもらえると、なんだか自信につながりますね。ですが、達也さんの恒星炉実験のように、まだ実際にやってみたことは無いので、あまり参考にはならないかもしれませんが」

 

「そんなことありませんよ。あのデータだけでも見直した方が良い部分がだいぶある事に気付かされましたから」

 

「ですが、達也さんに指摘された部分を見直した結果ですから、私だけの力ではありませんよ」

 

「すっかり研究パートナーだな、市原と達也くんは」

 

「てか、リンちゃんは『鈴音さん』で、私は先輩のままなの? いい加減名前で呼んでもらいたいんだけど」

 

「では、深雪の対処を先輩がしてくださるなら、名前でも何でもお呼びしますが」

 

「お前は司波と相性が悪いからな」

 

「深雪さんが一方的に敵対心を燃やしてるだけじゃないの!」

 

 

 他の婚約者には寛容な態度を取り始めている深雪だが、真由美とリーナにだけは未だに敵愾心を剥き出しにしている。リーナは達也の事を『ダーリン』と呼んだりしているからある意味仕方ないのだが、真由美に至っては特に何かをした覚えはないのだ。

 

「達也くんから何とか言ってもらえないかな?」

 

「俺が言ったところで根本的な解決にはなりませんよ。そもそも、先輩自身の問題なのですから、ご自分で解決してください」

 

「そうだぞ真由美。自分の問題は自分で解決しないと意味がないだろ」

 

「なによ……エリカちゃんとの関係修復を達也くんに手伝ってもらった摩利に言われたくないわよ」

 

「いやー、それにしても人が多いな、ここは」

 

「あからさま過ぎますよ」

 

 

 ものすごい勢いで誤魔化した摩利に、鈴音が冷静にツッコミを入れた。

 

「仕方ないだろ。シュウはエリカの事を可愛がっていたし、エリカが千葉の家を出ていく前に兄妹の関係を修復しておかないと完全に拗れる事になりそうだったんだから」

 

「摩利が頑張る、という考えはなかったわけ?」

 

「だから、剣術だけならあたしなんかよりもエリカの方が数段も上なんだぞ! 試合を挑まれでもしたら、良いように小突き回されるだけなんだぞ!」

 

「エリカももう子供じゃないんですから、俺が間に入らなくても大丈夫だったとは思いましたがね」

 

 

 その光景を思い出しながら、達也は苦笑いを浮かべながら答える。その間あずさは、達也から貰ったシルバーモデルのサンプルを舐めるように眺めていたのだった。




次は真由美役の花澤香菜さんかな……それともかねてから噂されている中村悠一さんと井上麻里奈さんか? そっちは本当に付き合ってるのかは知らないけど

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