劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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どっちも大変ですね……


からかったりからかわれたり

 食事を済ませた後もお喋りしていたら、その集団に女性が声を掛けてきた。

 

「あら摩利、もう用事は済んだのかしら?」

 

「一応な。花音がいると聞いて顔を出したんだが、相変わらず五十里にべったりなんだな」

 

「お久しぶりです、摩利さん。だって許嫁なんですから、これくらい普通ですよ。摩利さんだって婚約者と一緒の時はこれくらい甘えてるんじゃないですか?」

 

「そんなことは無いぞ。あたしはお前ほど人目を気にしないわけじゃないからな」

 

「つまり、二人きりの時は甘えてるってわけね」

 

 

 摩利の言葉を曲解してからかう真由美に、摩利が鋭い視線を向けるが、真由美は素知らぬ顔で視線を逸らしたのだった。

 

「コイツのお守りをさせられてると思うと、市原が可哀想に思えてきた」

 

「ご心配なく。最近は達也さんに相談出来ますから」

 

「達也くんに? まぁアイツなら真由美の相手をした程度でどうかなるわけも無いしな」

 

 

 注文を聞きに来た店員に紅茶を頼み、摩利は真由美と鈴音の間に腰を下ろした。

 

「中条も服部も沢木も久しぶりだな」

 

「渡辺先輩は随分と雰囲気が変わりましたね」

 

「そうか?」

 

「はい。すごく大人っぽいです」

 

「以前は真由美さんと一緒にふざけていたイメージが強かったからでは? 私から見れば、渡辺さんはあまり変わってないように思えるのですが」

 

「どういう意味だ!」

 

「そのままの意味ですよ。達也さんに間を取り持ってもらえなかったら未だに千葉さんとの関係にビクビクしていたのではないかと言っているのです」

 

「それは……」

 

 

 摩利が懐いているエリカへの苦手意識はそう簡単に取り除けるものではないし、達也と出会ってからというもの、エリカの実力はぐんぐん伸びているのだ。魔法無しで戦えば摩利など良いように小突き回されるのが目に見えるくらいの実力差がついているのだった。

 

「『千葉の麒麟児』と謳われた修次さんも、エリカちゃんの前では形無しだもんね」

 

「剣術の腕はシュウの方が上だが、どうもエリカには強く出れないらしんだよな……」

 

「達也くん曰く『恐妹家』らしいしね」

 

「まぁ千葉さんは我が強いですもんね。論文コンペの時はかなり衝突しましたし」

 

「それは花音が頭ごなしに駄目だっていうからだよ」

 

「だってあの子たちが絡むと、絶対ろくなことにならないんだもん」

 

 

 花音はあの子たちと言ったが、実際には達也が絡むとろくなことにならないと思っている事を五十里は知っているため、達也に同情しつつも苦笑いを浮かべて花音の言葉を肯定した。

 

「まぁ彼らは巻き込まれる側だから仕方がないのかもしれないけど、確かに事件は多かったね」

 

「最後の一年はなかなか楽しかったがな。肋骨を骨折したのは楽しくなかったが」

 

「そのお陰で深雪さんがミラージ・バットで圧勝したのを見られたんだし、悪い事ばっかじゃなかったんじゃないの? それに、骨折したお陰で修次さんが会いに来てくれたんだし」

 

「その所為で千葉さんに怒られていたそうですがね」

 

「何故市原がその事を知っているんだ!?」

 

「私にもそれなりに情報網がありますので」

 

 

 涼しい顔でそういわれ、摩利は自分が慌てているのが恥ずかしくなって、急遽話題変更を試みた。

 

「と、ところで中条たちは誰か目ぼしい相手はいないのか?」

 

「い、いませんよそんな人……」

 

「自分もいませんね」

 

「自分はあまりそういうのに興味はないので」

 

「あぁ、沢木はそんな感じがするが、中条と服部は違うんじゃないのか?」

 

 

 特に深い意味はないが、摩利は二人を交互に見て小さく頷いた。その行為が自分たちをからかっていると勘違いしたあずさと服部は、慌てて摩利に反論する。

 

「ですから、自分と中条はそういった関係じゃありません」

 

「そうですよ! 私と服部くんじゃ釣り合いませんし」

 

「別にあたしは何も言ってないだろ。それとも、そういう関係なのか?」

 

「「違います!」」

 

「分かった分かった。というか、あんまり騒ぐと店の人に失礼じゃないか?」

 

「騒がせている人が言っても、説得力が無いと思いますが」

 

「別にあたしは騒がせた覚えは無いんだがな」

 

 

 摩利としては二人が勝手に騒ぎ出したのだと言いたいようだが、隠しきれていない笑みを見て鈴音はため息を吐く。見た目は大人っぽくなっているかもしれないが、やはり中身は真由美と同レベルだという意味を込めて。

 

「お互いに気になる相手がいるなら無理にとは言わんが、あたしは中条と服部はお似合いだと思うぞ」

 

「あーちゃんもはんぞー君もいい子だしね」

 

「付き合う付き合わないは個人の自由ですので、この二人の言う事は聞かなくていいですよ」

 

「ちょっとリンちゃん!? さっきから酷くない?」

 

「このくらいじゃないと反応してくれないじゃないですか。それに、中条さんや服部くんの事を考えれば、この程度でも温い方だと思いますよ」

 

 

 顔を真っ赤にしているあずさと、上手く呼吸が出来なくてせき込んでいる服部を見ながら、鈴音はうんうんと頷く。

 

「あーちゃんもはんぞー君も大丈夫? 何かあったの?」

 

「それをお前が聞くのか……さすがにあたしでも分かるぞ」

 

「そもそも真由美さんは分かってて言ってますから。こんな事ばかりしているので、達也さんに名前で呼んでもらえないんですよ」

 

「えっ、そうなの!?」

 

「さぁ?」

 

「リンちゃん!」

 

「まぁまぁ、落ちついてください」

 

 

 真由美をからかって遊んでいる鈴音を見て、摩利は『市原も変わってないな』と安堵の表情を浮かべるのだった。




おもにからかってるのは鈴音だったり……

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