劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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題名が長い!


ピラーズ・ブレイク一回戦第一試合

 九校戦五日目、新人戦二日目のこの日、朝一から試合があるので達也は早めに会場入りしたのだが……

 

「おはようございます、達也さん!」

 

 

 達也よりも先に第一試合の出場選手が居た。

 

「悪いエイミィ、待たせたか?」

 

「違いますよ~。達也さんだって三十分前に来てるんですから、そんな申し訳無さそうな声を出さないでください。唯単に私が早かっただけなんですから」

 

 

 ピラーズ・ブレイク第一試合出場選手、明智英美が笑顔で達也の心配を無用だと言う。彼女もまた達也に少なからずの好意を向けている為、達也の背後にスタンバイしている深雪の機嫌はよろしくない。

 

「深雪もおはよー!」

 

「ええ、おはよう」

 

 

 だがそんな事お構いなしの明るい性格であるエイミィは、不機嫌そうな深雪にも挨拶をした。

 

「それにしてもエイミィ、随分と早いけど何かあったの?」

 

「昨日の興奮が抜けなくてね~。今朝も早くに目が覚めちゃったんだよ」

 

 

 昨日の試合、スピード・シューティングでエイミィは雫に負けはしたが準優勝と言う好成績を収めたのだ。その興奮が残っててもおかしくは無い。

 

「それじゃあ最終チェックをするから確認してくれ」

 

「了解です!」

 

 

 ピシッと効果音がつきそうな勢いで敬礼をして、達也からCADを受け取るエイミィ。彼女には少し似合わない全長五十センチのショットガン形態の特化型CADだ。

 エイミィはそれをクルクルと回し、銃を放つ動作をして見せた。

 

「エイミィ、貴女ってやっぱりイングランド系じゃなくってステイツ系でしょ」

 

「違うって何度も言ってるでしょ! グラン・マの実家はチューダー朝以来『サー』の称号を許されてるんだから」

 

 

 女子二人のやり取りを聞きながらも、達也は検査機から視線を逸らさない。

 

「如何だ?」

 

「雫の気持ちが分かりますね~。私も達也さんに調整してもらいたいですもの」

 

「問題ない?」

 

「ええ!」

 

 

 雫が達也をお抱えにしようとしてるのは、既に一高女子の間に知れ渡っているのだ。エイミィがニコニコとしてる中、達也の表情は優れない。

 

「自分じゃ気付かないのか……少し調整するからヘッドセットを付けてくれ」

 

「えっ、何でですか?」

 

 

 達也の言葉に驚くエイミィ。彼女としては今のままでも十分実力を発揮出来ると思っていたのに、達也はそうではなかったのに驚いたのだ。

 

「本当は早起きしたんじゃなくって眠れてないんだろ?」

 

「……分かります?」

 

 

 この指摘に気まずそうな表情を浮かべながら達也に問いかけるエイミィ。その問いかけに達也は無言で頷いた。

 

「ウチの親より鋭いかも……」

 

 

 達也に言われた通りにヘッドセットを装着し、その結果が映し出されているディスプレイを見ながら達也の眉間に皺が寄っていく。それにつられるようにして、エイミィがみるみる身体を縮こまらせていく。

 

「お兄様?」

 

 

 達也の表情に不安を覚えたのか、深雪が彼に声をかけた。その問いかけで現実に戻ってきたのか、達也は眉間の皺を伸ばして深雪に笑いかけた。

 

「エイミィ、君も安眠導入機(サウンド・スリーパー)を使わない人かい?」

 

「もって、達也さんも?」

 

 

 この問いかけには達也は普段より明るい表情で頷いた。

 

「ワァオ! お仲間! あれって何だか気持ち悪いじゃないですか。妙なウェーブが出てるって言うか……とにかく嫌なんですよね~」

 

「気持ち悪いのは同感だが、如何しても眠れない時には使用する事。翌日に大事な試合が控えてる時には特に」

 

「は~い……」

 

 

 達也に注意され、エイミィはまるで親に怒られたように素直に返事をした。

 

「それじゃあフィードバックを少し強めにしとくから……少し刺激が強く感じるかもしれないが我慢する事。寝不足で負けたなんて言われたく無いだろ?」

 

「我慢するからお願いします! そんな事になったらみんなのオモチャにされちゃうよ!」

 

 

 言葉だけならその事をネタにからかわれると思うのだが、エイミィはキュロットの上から微妙な辺りを押さえながら顔を赤らめているので、達也はたっぷり一秒固まってしまった。

 

「……疑うような事を言いたくないが深雪、お前たちは部屋で何をしてるんだ?」

 

「い、嫌ですね~お兄様、深雪は何もしてませんよ」

 

 

 達也の微妙な視線を受け、若干焦りながらも答える深雪。

 

「そっか、深雪の部屋は安全なんだね」

 

「エイミィ! 余計な事言わないで! お兄様に変だと思われるでしょ!」

 

「達也さんなら大丈夫だとは思うけど?」

 

 

 気まずい沈黙と雰囲気が控え室を覆う。この雰囲気を打破するには、急な話題変換もやむおえないと判断した達也が口を開いた。

 

「幸いにして試合は朝一だ。試合が終わってから仮眠を取る事。深雪、『カプセル』を使えるように手配しておいてくれ」

 

「分かりました。すぐに戻ってきます」

 

 

 感覚遮断カプセルの利用申請をしに深雪が部屋から出ていき、達也は無言でCADの微調整を始める。その沈黙に耐えられなくなり、エイミィが達也に話しかける。

 

「達也さんって何処でその調整スキルを身に付けたんですか?」

 

「普段から深雪のCADを調整してるし、自分のも昔から自分でしてたからな。自然と身に付いてたかな」

 

「そうなんですか……凄いですね」

 

 

 会話が続かない事に焦るエイミィ、だが達也はそんな事を気にするほど優しくは無い。

 

「勝てますかね……」

 

「随分と弱気だな、エイミィらしくない」

 

「だって、スピード・シューティングは何とかなりましたけど、ピラーズ・ブレイクには三高のエース、一色愛梨さんが出場するんですよ」

 

「ああ、彼女か……」

 

 

 懇親会会場であった愛梨の顔を思い出し、達也は何となくエイミィが不安がってるのに気がついた。

 

「一回戦で当たる訳じゃないんだし、今から心配しても意味は無いぞ」

 

「それは……そうなんですが」

 

「大丈夫、エイミィなら勝てるさ」

 

 

 根拠が無い訳ではない達也の励ましに、エイミィは徐々に気分を取り戻してきた。

 

「そうですよね! 昨日だって百家の人に勝ったんですからね! 師補十八家が相手でも何とかなりますよね!」

 

「その意気だ」

 

 

 エイミィが完全にテンションを取り戻したところに、深雪がカプセルの申請を終わらせて戻ってきた。

 

「お兄様、カプセルの申請をしてきました」

 

「ありがとう。こっちも調整が終わったところだ」

 

 

 微調整が済んだCADを受け取り、達也から励まされたエイミィは、一回戦をほぼ無傷で勝利して、その後カプセルの中で眠りについた。

 フィードバックが強めで、刺激が強かった所為か、エイミィは文句を言う事無くカプセルの中でグッスリと眠っている。

 

「お兄様、エイミィに何を言ったんですか?」

 

「大した事は言ってない。ただ戦う前から負けると思ってるのがエイミィらしくないと言っただけだ」

 

「そうですね。エイミィらしくありませんね」

 

 

 達也がエイミィに何を言ったのかを聞かせてもらった深雪は、機嫌を良くして観客席に戻って行ったのだった……次の雫の試合を見る為だろうと思いながら、達也は次の控え室へと向かうのだった。




フラグ確定ですかね……
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