劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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妥当と言えば妥当かと


七草がいない理由

 達也が新居に到着してから二時間後、漸く愛梨と響子、リーナが新居に到着した。これで今日越してくるメンバーは全員揃った事になる。

 

「達也様、お待たせいたしました」

 

「はい、達也。今日から一緒に暮らせるわね」

 

「こんにちは、達也くん。ちょっと遅れたかしら?」

 

 

 三者三様に挨拶を交わし、それぞれに割り当てられた部屋に荷物を運び入れる。もちろん四葉の従者が運び入れる手伝いをするが、荷解きは自分でするようだった。

 

「ところで達也さん、何故この五人が最初に選ばれたのか、ご当主様から何か聞いていますでしょうか?」

 

「いや、特に何も聞いていないな」

 

「ご当主様の事だから、たぶん自分の好き嫌いで選んだかもしれないわね。十師族の中で七草の人間だけ今日じゃないのも、そういう理由かもしれないし」

 

「この間の若手会議で、七草家は深雪お姉さまを広告塔にしようとしたらしいですし、ご当主様の心証を悪くしていてもおかしくはありませんわね」

 

 

 実際深雪を矢面に立たせようとしたのは智一で、真由美と香澄は関係ないのだが、家としての心証が悪くなったから、今回のメンバーに入れなかったのではないかと、夕歌と亜夜子は邪推する。

 

「正直七草家がああいう事を考えるというのは、会議の前になんとなく分かっていたんだがな。真正面から叩き潰せば、大人しくなると思って黙っていたのだが」

 

「さすが達也さん、悪い人ですね」

 

「ですが、あの会議以降、七草家を支持する家も少なくありません。自分たちの関係者じゃなければいい、という愚かな考えを持つ家の人間とは、今後付き合い方を変えた方が良いかもしれませんわね」

 

「そういう事も含めたから、七草家の二人じゃなくて一色家のお嬢様が今日なのかもしれないわね。九島家はあまり正面切って四葉家に喧嘩を売るつもりは無いみたいだし」

 

「夕歌さん……あまり好戦的な姿勢は慎んでください」

 

 

 本気で呆れているわけではなさそうだが、達也は幾分か非難めいた視線を夕歌に向ける。もちろん、夕歌も半分くらいは冗談なので、達也の視線に肩をすくめてみせた。

 

「俺たちが考えても、母上の考えなど分かりませんよ。真面目に考えているのかもしれないし、おふざけで選んだのかもしれないのですから」

 

「ご当主様に対してそんな考えを持てるのは、達也さんくらいですよ」

 

「そうね。私たちじゃ恐れ多くてそんなこと考えられないもの」

 

「そんなものですかね……」

 

 

 達也にとっては、それほど恐ろしいと思えない相手だが、分家の人間である夕歌と亜夜子には、それなりに恐怖の対象なのだと、達也は改めて真夜という存在を認識し直した。

 

「お待たせ。こっちは終わったわ」

 

「藤林さんは、ご当主様の事をどう思われます?」

 

 

 荷解きを済ませリビングにやってきた響子に、亜夜子は突如真夜について尋ねた。響子は少し虚を突かれた様子だったが、すぐに真夜について考え始めた。

 

「私はそれほど面識があるわけじゃないから、あくまで参考意見になるだろうけど――」

 

 

 そう前置きしてから、響子は居住まいを正して話し始める。

 

「極東の魔女と言われるだけある、という雰囲気は感じたわ。祖父が警戒するのも納得するくらいの力を秘めている感じがしたし、達也くんのお母さんだと言われても納得出来るくらいの実力を感じたの。あの人が本気で他の二十七家を潰そうと動けば、恐らく一週間持たずに二十七家は滅びる、そう感じたわ」

 

「今はそこに達也さん、深雪さんに、大勢の達也さんの婚約者が加わっているから、藤林さんが感じた脅威は十数倍に膨れ上がっているでしょうね」

 

「そうね。達也くんと深雪さんだけでも脅威だというのに、そこに多くの魔法師として高い素質を持った婚約者たちが加わってるのだから、四葉家が十師族の中で頭二つ、三つとびぬけたというのも、大げさではないのかもしれないわね」

 

「更にUSNAの戦略級魔法師も加わってるのだもの。響子が感じた脅威は、もう可愛いものになっているかもね」

 

「リーナ……一応戦略級魔法師だという事は秘密になっているんだが?」

 

「ここにいるメンバーなら、全員知っているんだし良いでしょ。それに達也だってそうなんだから」

 

 

 達也とリーナが戦略級魔法師であることは、ここにいる全員が知っている事なので神経質になる必要は無いし、この建物は調布に建てられたビルと同じくらいのセキュリティなので、盗聴の心配もない。唯一盗聴出来る可能性がある魔法師は、既にこちら側にいるのだから、その心配をする必要もないのだ。

 

「だからと言って堂々と話されるのも困るんだがな」

 

「まだ私は聞かされると驚くのですが……達也様が『灼熱のハロウィン』を巻き起こした戦略級魔法師で、リーナさんがUSNA軍スターズ総隊長『アンジー・シリウス』だったなんて……」

 

「そうかしら? 貴女のライバルと言われている深雪だって、本気を出せば戦略級に劣らない実力を秘めているのよ?」

 

「ご当主様以上に、深雪さんは怒らせたらマズいですからね」

 

「大丈夫ですよ。達也さんが何とかしてくださいますから」

 

「あまり期待されても困るんだがな……というか、なるべくなら深雪を不機嫌にさせないようにしてもらいたい」

 

 

 深雪の実力を知るメンバーは、達也の心からの言葉を受けて苦笑いを浮かべるしか出来なかったのだった。




あの家は仲良くなる気ないでしょ……
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