劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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かなりの大人数だな


参加者

 屋上に人の気配を感じていた達也は、屋上にいる人間の存在を確認してすぐに興味を無くした。片方が深雪であることは分かっていたので、敵意があるかどうかの確認をしただけなので、愛梨には気づかれなかったようだ。

 

「達也さん、天井になにかあるんですか?」

 

「いや、何でもない」

 

 

 急に上を見た達也を不思議そうに眺めていた美月にそう答えて、達也は周りにやたら人がいたことを思い出した。

 

「もちろん、美月も来るわよね?」

 

「私が行ってもいいの? 噂だけど、そこってかなり警備が厳しいんでしょ? 部外者の私が入っても大丈夫なのかな」

 

「来客なんだから大丈夫だって。もし警備に引っ掛かっても、堂々としていれば何ともないから」

 

「てか、随分と大仰な噂になってるんだな」

 

 

 新居の事は既に学内に知れ渡っているので、ある程度の噂は覚悟していたのだが、まさかそんな事になっているとは達也もエリカも知らなかったのだ。

 

「そういえば、まだ来客とか一回もなかったから、本当に大丈夫なのかあたしも分からないや」

 

「エリカちゃん!?」

 

「大丈夫だ。美月やレオ、幹比古なんかは友人として登録してあるからセンサーに引っ掛かることはない。もちろん、あからさまに怪しげな行動をとった場合、すぐに四葉の魔法師に囲まれる事になるがな」

 

「わ、私! そんな怪しい行動を取ったりしませんよ」

 

「分かっている。今のは冗談だ」

 

 

 達也の分かりにくい冗談を真に受けた美月は真っ青な顔をして、顔の前で必死に手を振る。冗談だと教えられてホッとした表情になったが、顔の青さはまだ引いていなかった。

 

「そもそも、美月やレオが四葉の秘密を探ろうとか考えるわけ無いものね。ミキはちょっと分からないけど」

 

「何で? 吉田君だって、四葉家の懐に飛び込んだらどうなるかくらいわかってると思うけど」

 

「分かってても調べたいと思っちゃうかもしれないでしょ? それに、美月たちたちと違って、ミキは精霊を使役出来るわけだし、見つかる可能性は二人より低いでしょ?」

 

「古式魔法だろうがセンサーに引っ掛からないわけじゃないぞ、エリカ。そもそも、あの家にはエレクトロン・ソーサリスがいるんだ。古式魔法にだって精通しているんだぞ、あの人は」

 

「古式魔法の名門だもんね、藤林家は」

 

「そう言うわけだから、あの家で魔法を使おうとした時点でアウトだ。幹比古だろうがレオだろうが、あの家の情報を引き出そうとした時点で拘束される」

 

「うへぇ……そんな物騒な家に住んでたんだあたし」

 

 

 冗談めかしてエリカは教室に戻っていった。最後の一言は美月が必要以上に気にしないようにというエリカの心遣いだったのだが、果たして美月にそれが伝わったかは達也には分からなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 誕生パーティーの計画は順調に進んでいるようで、深雪と水波も当然のように参加者として考えられている。

 

「私たちは当日お手伝いすればいいのかしら? それとも、前日から手伝いに行った方がいい?」

 

「深雪と水波は当日で大丈夫。前日までに出来る準備は私たちでするから」

 

「場所は? 新居で良いのかしら? それとも、また雫のお家が何処か場所を提供してくれるの?」

 

「今回は新居で良いって達也さんが」

 

「そう。じゃあ当日新居に行けばいいのね」

 

 

 雫と当日の相談をしている深雪の分の仕事をほのかと水波が分担して行っていた。ほんとなら仕事が終わってから話べきなのだろうが、ほのかと水波が気を利かせて深雪の分を請け負ったのだ。

 

「そのパーティーってドレスコードは?」

 

「特に気にしなくてもいいって達也さんは言ってたけど、多分みんな着飾ると思うよ。とくに、七草先輩は随分と気合入れてたし」

 

「そう……ちなみに雫は?」

 

「お父さんが気合いを入れて新調したドレスがあるから、それを着るつもり」

 

 

 雫の父である潮は、本当はウエディングドレスを作らせるつもりだったのだが、雫がそれはまだ早いと怒ったため、普通のドレスになったのだが、雫はそのやり取りを思い出して恥ずかしそうに視線を逸らした。そんな雫の態度を見て、深雪は別の考えに至っていた。

 

「(雫が恥ずかしそうにしているのは、それだけ攻めているドレスということ? もしそうだとしたら私も今あるドレスじゃ対抗出来ないわね……)」

 

「深雪、どうかした?」

 

「いえ、何でもないわ。雫がドレスを新調したという事は、ほのかの分もあるのかしら?」

 

「うん。お父さん、ほのかの事を本当の娘だと思ってるから」

 

「羨ましいわね」

 

 

 自分と父親との関係は完全に冷え切っているので、今更そんな関係を望んだりはしない。ただ、雫とほのかを溺愛する潮を見て、少し羨ましいと思ってしまうくらいには、そういう関係に憧れを懐いているのかもしれない。

 

「部外者は私と水波ちゃんだけ?」

 

「エリカが西城君と吉田君、後美月に声をかけるって言ってた。後は達也さんを慕ってる隅守君や十三束君を誘うとか誘わないとか」

 

「そう……七草先輩は? 誰か誘うとか言ってなかったかしら?」

 

「先輩? 特に何も言ってなかったけど」

 

 

 何故深雪がそんなことを聞いてきたのか分からなかった雫は、小さく首を傾げながら深雪を見詰める。しかし、そんな雫の愛らしい仕草にも負けず、深雪は鉄壁の笑みで話題を打ち切り、二人に任せていた自分の分の仕事を処理し始めたのだった。




やましい心の人間は、すぐに四葉の魔法師に囲まれる……

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