劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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スバルの口調、変えるかどうか……


買い出し組

 誕生日パーティーの買い出しを任されたリーナは、千秋とエイミィとスバルの三人と共に頼まれたものを買いに街に出ていた。

 

「料理戦力外の私たちはこういうところでしか役に立てないものね……」

 

「分かってたけど、そういうくくりなんだね……」

 

「まぁ、ボクも人の事言えないけど、エイミィとリーナは特に酷いもんね」

 

「何で私まで……」

 

 

 魔工科生で一科の三人とあまり付き合いのない千秋は、一人居心地の悪さを感じていた。確かに他のメンバーに比べれば料理下手ではあるが、戦力外と言われる程酷いとは思っていなかったのだ。

 

「まぁまぁ、平河さんもそんな不貞腐れないで。こうして一緒に買い出しを任されたんだ。頼られていると思おうじゃないか」

 

「里見さん……なんだか男の子みたいだね」

 

「まぁ、ボクはこういう口調が染みついちゃってるからね。だけど、ボクだって女子なんだから『男の子』みたいと言われると傷つくんだが」

 

「ご、ゴメン……」

 

「悪かったと思ってくれるならそれでいいよ。ボクも女らしくしようと思ってもなかなか変われないから、指摘されるのは分かってるから」

 

 

 口調だけでなく、服装も女性らしさよりもボーイッシュな雰囲気な物を好むため、ますます女らしさから遠ざかっているのだ。

 

「スバルは魔法特性もあるから、目立つようにそうしてたんでしょ? だったらなかなか抜けなくても仕方ないと思うけど」

 

「認識阻害だっけ? スバルも厄介な特性を持ったわね」

 

「そのお陰でいろいろとあったけどね。今ではいい思い出さ」

 

「ほら、また男っぽい口調になってる」

 

 

 エイミィに指摘され、スバルは恥ずかしそうに視線を逸らした。達也の前ではなるべく女らしい口調を心掛けているのだが、気心の知れた仲であるエイミィたちの前では、未だに男っぽい口調が抜けないのだ。

 

「スバルのファンは多かったから仕方ないかもしれないけど、もう婚約者がいる身なんだから、もう少し女らしさを身に着けた方が良いよ」

 

「分かってはいるんだが……前に十三束君に『男友達みたい』と言われてからはいろいろと気にかけてはみたんだがな……いっそのこと渡辺先輩のような感じを目指してみようかとも思ったけど、ボクと渡辺先輩はそれほど接点も無かったから、どうすればいいのか分からなくてな……」

 

「だったら、後でエリカに聞いてみる? いずれ義理の姉妹になるわけだし、特徴とか教えてくれると思うけど」

 

「あれ? でもエリカって摩利と仲が悪いんじゃなかったかしら? 確か深雪がそんなことを言っていたような気がするけど……」

 

「私も聞いたことがあるかも」

 

 

 今まで黙っていた千秋も、エリカと摩利の仲が良くない事は聞いていたので思わず口を挿んだ。

 

「深雪ほどじゃないけど、エリカもブラザーコンプレックスだからね。大好きなお兄ちゃんを取られて拗ねてるだけだって」

 

「でも、未だに関係は改善されてないっぽいし」

 

「エリカも子供っぽいところがあるからね」

 

 

 スバルの感想に、エイミィもリーナも頷いて同意した。ただ千秋だけは、兄を取られたというエリカの気持ちがなんとなく理解出来た。

 

「(千葉さんが懐いてる気持ちは、前に私が達也さんに懐いてた気持ちとたぶん同じ……急にお姉ちゃんを取られたような気になって、勝手に思い込んで、そして恨んで……)」

 

「平河さん? どうかしたのかい?」

 

「いえ、何でもないです……」

 

「千秋も平河先輩を達也さんに取られる、とか思ってたんでしょ? 詳しくは知らないけど、論文コンペの時一悶着あったらしいじゃん」

 

「ま、まぁね……」

 

 

 自分が考えていたことを見透かされた気がして、千秋はとっさにエイミィから視線を逸らす。エイミィに読心術は使えないが、千秋はひょっとしたら心を読まれたと考えたのかもしれない。

 

「お喋りもいいけど、さっさと買い物を済ませて帰りましょうよ。あんまり長い時間買い物してると、まともに買い出しも出来ないと思われるかもしれないわよ?」

 

「エイミィなら兎も角、ボクたちがそんな風に思われてるとは思わないけど、リーナの言う通りだね」

 

「うんうん……? って! 何で私がまともに買い出しも出来ないって思われなきゃいけないのよ!」

 

 

 危うくスルーしそうになったスバルの毒に気付いたエイミィは、スバルの毒に気付いた瞬間に顔を真っ赤にしてスバルを問い詰める。

 

「いろいろと子供っぽさを残してるエイミィなら、そう思われてても不思議じゃないって事さ」

 

「確かに、エイミィは子供っぽいわよね」

 

「何処を見ていってるんだー!」

 

「おや? 別にボクたちはエイミィの身体の一部分を見て言ったわけじゃないんだが。それとも、エイミィは心当たる部分があるのかい?」

 

「グヌヌ……今に見ておれ! すぐに成長してスバルなんか相手にならないくらいになってやるんだから!」

 

「望みは薄そうだが、成長するようにボクも祈っておいてあげるよ」

 

「(人の事言えないから、この話題に加わるのは止めよう)」

 

 

 エイミィの胸を見てから自分の胸に視線を落とした千秋は、そう考えながら少し三人から距離を取った。下手に巻き込まれて自分も指摘されることを避けたのだが、結果的にその行為は失敗だった。

 

「千秋、何で逃げるのよ?」

 

「な、何でもない! それよりも早く終わらせて帰ろうよ。何時までもあの家を離れてると、知らない間に達也さんが他の人と親密になっちゃうかもしれないし!」

 

 

 苦し紛れだったが、意外に効果があった千秋の言葉で、三人は弾かれたような速度で買い出しを済ませ、急ぎ家に帰ろうと提案したのだった。




変えるとキャラが弱くなりそうだ

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