劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

1183 / 2283
こっちでも似たようなネタが……


話しのネタ

 悪口大会から解放された達也は、リビングで一息吐こうとお茶を淹れようとキッチンに向かった。すると丁度ほのかと雫がキッチンにいたので、達也はその脇をすり抜けて自分でお茶の用意を始めようとしたが、ほのかと雫に追いやられて、結局お茶は二人が用意してくれることとなった。

 

「あら達也さん、お帰りなさい」

 

「さっきから家にはいたんですが、ただいま帰りました」

 

 

 先にリビングで寛いでいた夕歌に声をかけられ、達也は大人しく夕歌の相手をすることにした。

 

「庭先で千葉さんたちと何か話してたようだけど、何をしてたの?」

 

「大したことは話してませんよ。ちょっと一条や吉祥寺の事が話題になっただけです」

 

「何でその二人の事が話題になったのか気になるけど、恐らく達也さんとの違いってところかしらね」

 

「まぁそんなところです」

 

 

 自分から話す内容でもないので、達也はテキトーにお茶を濁して夕歌の追及を躱す。なんとなく夕歌が追撃の気配を見せる中、ほのかと雫が達也のお茶を持ってきた。

 

「お待たせしました、達也さん」

 

「悪いな。わざわざ持ってきてもらって」

 

「問題ない。私たちも丁度休憩しようと思ってたから」

 

 

 そう言って、雫は達也の隣に、ほのかは斜め前に腰を下ろした。本当なら達也の正面に座りたかったのだろうが、既に夕歌がその位置に座っているので、ほのかは雫の正面に腰を下ろしたという形だ。

 

「そういえば光井さんと北山さんは、一条君や吉祥寺君と面識があるのよね? 実際に会ってみた感想とかあるかしら?」

 

「三高の一条君は前、ちょっとだけ一高に通っていたので話したことはありますが、吉祥寺君とは話したことがないので何とも言えません」

 

「そうなの? じゃあ実際に話したことがある一条君の印象を教えてもらえるかしら?」

 

「彼は深雪にご執心でした。相手にされていないのにめげずに声をかけたりしてましたし、態度があからさま過ぎました」

 

「そういえばそんな話もあったわね。真夜様が突っぱねたらしいですが、七草家のご当主が横から口を挿んで、自力で振り向かせることが出来るのなら、という話になったとかならないとか」

 

「実力だけじゃなく、男としての魅力も達也さんに負けている一条君が、深雪を振り向かせられるわけ無いじゃないですか!」

 

 

 ここでも一条の批判になりつつあるので、達也は何とかして話題を変えようと口を開く。

 

「というか、夕歌さんが一条や吉祥寺の事を気にするなんて、何かあったんですか?」

 

「別に? ちょっと気になっただけよ」

 

「そもそも、少し前まで夕歌さんは石川にいたんですから、一条や吉祥寺の情報を集められましたよね?」

 

「一応治療という名目で行っているからね。情報収集なんてしてる暇はなかったわ」

 

「そういえば一条君のお父さん、何者かに嵌められて重傷を負ったんですよね? もう大丈夫なんですか?」

 

「私が付き添わなくても大丈夫なくらいには回復してるし、あちらもいつまでも得体のしれない女が側にいるよりか身内だけの方が回復も早まるでしょうしね」

 

「達也さん、一条家当主を襲った相手は分かってるの?」

 

 

 雫が何故夕歌にではなく達也に尋ねたのかといえば、達也なら真相を知っていてもおかしくないと思っているからだ。ほのかも同様のようで、達也に視線を向けてジッと待っている。

 

「一応国籍不明船という事になっているが、恐らくは新ソ連の仕業だろう」

 

「断言しちゃってもいいと思うけどね、私は。あのタイミングで仕掛けてくるなら、どう考えても新ソ連関連しか考えられないもの」

 

「誰もが分かってますが、あくまでも国籍不明船という事になっているのですから。横浜事変の時だって、大亜連合は関わっていないという事になっているんですからね」

 

「ホント、国同士のやり取りって面倒よね」

 

 

 心底面倒臭いと感じているのがありありと伝わってくる夕歌の言葉に、雫とほのかも頷いて同意する。横浜事変の際には巻き込まれた側とはいえ当事者として参加していたので、大亜連合が関わっていると断言出来ると思っているのである。

 

「あの時もだけど、どうして犯人が分かってても特定出来なかったという事にするのかしら? 国益があるとは思えないのだけど?」

 

「今回はまだ分かりませんが、横浜事変の時には大亜連合は手痛いしっぺ返しを受けてますから。そこで日本軍の侵略だとか騒ぎ出さなかったことで、侵攻した事を公式に否定できるという事で手を打った、という感じではないでしょうか」

 

「手痛いしっぺ返し、ね……達也さんが言うと説得力が違うわね」

 

「まぁ、そのしっぺ返しを大亜連合にプレゼントしたのは俺ですから」

 

 

 『灼熱のハロウィン』として語られている事件は、横浜事変に対する日本軍のお返しだ。そもそも大亜連合が諦めずに侵攻を続けようとした事を察知した日本軍が、先手を打った形なのだが、達也がいなければ未だに大亜連合は侵攻を続けていたかもしれないのだ。

 

「私たちはニュースでしか見てませんが、そんなに凄いんですか? マテリアル・バーストって?」

 

「結果を見れば分かるでしょ? 何せ大亜連合の形が変わったんですから」

 

「まさに戦略級魔法だね。そんな凄い人が私たちの夫になるんだから、いろいろと分からない」

 

「なにしんみりしてるの?」

 

 

 雫がしみじみと呟いた事が気になったほのかが、達也に向けていた視線を雫に移す。じっと見られて恥ずかしかったのか、雫はほのかから視線を逸らし、それ以降何も話さなかった。




まさに戦略級ですからね……

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。