劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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個人個人ではそれほど騒がしくないのに……


騒がしい七草三姉妹

 再びレオもどこかに行き、達也は一人でグラスを傾けていた。

 

「あっー達也くんだ~。今まで何処にいたのよ」

 

「先輩、酔ってるんですか?」

 

「酔ってないわよ~」

 

「すみません、達也さん。私は止めたんですが真由美さんが……」

 

「鈴音さんの所為じゃないですよ」

 

 

 完全に酔っぱらっている真由美を手で押さえながら、申し訳なさそうに頭を下げる鈴音にグラスを持った手で謝罪は不要と伝える。

 

「達也くん!」

 

「なんでしょうか?」

 

「どうしてリンちゃんの事は名前で呼んで、私の事は呼んでくれないのよ!」

 

「特に深い意味はありませんが」

 

「前々から思ってたんだけど、もしかした達也くんの中で私よりリンちゃんの方が上なの?」

 

「そんなに驚く事ですか? 少なくとも真由美さんは、達也さんに迷惑をかけ続けているのですから、それほど上位にいるとは思えませんが」

 

「リンちゃんだって、それほど胸が無いから上にいるとは思えないけど」

 

 

 酔っぱらっているからか本気なのかは分からないが、真由美は鈴音が気にしている事をはっきりと言い放つ。

 

「大きければいいというものでもないでしょうが!」

 

「でも、女性の魅力を上げるうえでは必要だと思うけど? 実際リンちゃんだって気にしてるから激昂してるわけだし」

 

「酔っ払いの戯言に付き合う程、私は寛容じゃありません! だいたいすぐ酔っぱらう癖に真由美さんは呑み過ぎなんですよ!」

 

「せっかくあるんだから呑むにきまってるじゃないの! というか、リンちゃんだって普段は呑む癖に、何で今日は呑まないのよ!」

 

「真由美さんが暴走する可能性を考えて呑まなかったんですよ!」

 

「二人とも落ち着いてください。七草先輩はアルコールを摂取してるんですから、叫ぶと余計に回りますよ」

 

 

 とりあえず二人を落ち着かせて、達也は真由美に水を差しだす。

 

「二人で騒いでたから目立ってますよ」

 

「だいたい達也くんが私の事を……」

 

「真由美さん?」

 

 

 急に黙った真由美を心配して顔を覗き込んだ鈴音は、立ったまま寝てしまった真由美を見て呆れたような息を吐いた。

 

「どうしましょうか」

 

「俺が運んでおきますよ。水波」

 

「はい、お呼びでしょうか達也様」

 

「先輩が寝てしまったから、少し手伝ってくれ」

 

「かしこまりました」

 

 

 水波を引き連れて真由美を部屋まで連れていく達也を見送って、鈴音は少し手持無沙汰になってしまう。

 

「さて、どうしましょう」

 

「申し訳ありません、鈴音さん。お姉さまがまたご迷惑を」

 

「割と何時も通りですから、気にしなくていいですよ」

 

 

 申し訳なさそうに謝る泉美に、鈴音は達也がしたように手で謝罪不要を告げる。

 

「普段から騒がしい人ですが、お酒を呑むとますます五月蠅くなっちゃうんだよね」

 

「香澄ちゃんだって、普段から落ち着きがないように思いますが?」

 

「なんだよ! 泉美だって司波会長が絡むとやかましいじゃないか」

 

「深雪先輩の事を広めるためにも、大声で宣伝するのは必要なんですわよ」

 

「不特定多数の人に司波会長を曝すような案に反対してる割に、泉美って自分は司波会長の事を広めようとしてるよね」

 

「テレビや雑誌などのマスメディアに曝すのが嫌なだけで、深雪先輩の素晴らしさは全世界の人間が知るべき事ですから!」

 

「それもどうなのさ……」

 

 

 姉が騒がしかったが、妹たちも大差ないなと、鈴音はそんなことを思っていた。

 

「泉美ちゃん、さっきから何を叫んでいるの?」

 

「み、深雪先輩!? いえ、何でもありませんわ」

 

「そう? 何だか喧嘩してるみたいだったから」

 

「け、喧嘩なんてしていませんわよ。ねっ、香澄ちゃん?」

 

「う、うん……特に喧嘩というわけではありませんので。迷惑かけてしまって申し訳ありません」

 

「喧嘩じゃないなら良いのよ。雫とほのかが気にしてたから、私が聞きに来ただけだから」

 

「き、北山先輩がっ!? ちょっと謝ってきます!」

 

 

 よっぽど雫が恐ろしいのか、香澄は深雪に一礼して雫の許に駆け出した。残された泉美は、深雪が側に来てくれたことで幸せいっぱいな表情を浮かべている。

 

「深雪さんも大変そうですね」

 

「市原先輩ほどではありませんわ。私は周りの人が何とかしてくれることもありますけど、市原先輩は七草先輩と渡辺先輩、お二人の相手をしなければいけないのですし」

 

「真由美さんも摩利さんも、見ているだけなら楽しいんですけどね……十文字くんは何もしてくれませんし」

 

「まぁ十文字先輩があのお二人を止めるとは思えませんしね」

 

 

 克人が進んで仲裁に入るとは深雪も思っていなかったので、鈴音と一緒に笑い出した。

 

「克人さんはいろいろと気が付くんですけどね……自分に関係ないことにはとことん無頓着ですから」

 

「そういえば泉美ちゃんは、昔から十文字先輩とお付き合いがあるんでしたね」

 

「同じ十師族で、お姉ちゃんと克人さんは同い年でしたから。元々は二人を結婚させようとしていたみたいですけど、司波先輩が登場した所為で、お姉さまの気持ちは司波先輩に完全に傾いてしまったわけですし、これからは普通のお付き合いだけだと思いますわ」

 

「家同士の付き合いというのは、なかなか面倒なものですけどね」

 

「私は数字付きではないので、お二人の気持ちは分かりませんが、大変なのは確かですね」

 

 

 家同士の付き合いの大変さを共感し、三人で苦笑いを浮かべて話題を終わらせたのだった。




それぞれ違う変態性……

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