劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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タイトル考える気無いです


続・九校戦の話題

 朝食の席でも、先ほど響子が提示した九校戦に関する情報が話題になっていた。

 

「九校戦が中止、ですか……私が集めた限りではそんな情報はありませんが……」

 

「香蓮さんの情報収集能力は凄いと私も思っていますけど、藤林さんの情報収集能力は香蓮さん以上だと思いますわよ」

 

「ですが、まだ決定したわけではないのですよね?」

 

「正式な判断はもう少しかかると思いますけど、運営本部は出来る事なら中止にしたいでしょうね。ここ二年間、事件が起こりっぱなしですし、達也くんと深雪さんが四葉家の人間だという事が公になって、注目度と共に危険度も上がっていますから」

 

「それ以外にも、一条がいますから、十師族の力を削ごうと考えるなら、九校戦を狙うのが一番ですし」

 

「十師族以外にも優秀な魔法師が集まる大会だもんね。あたしは応援するだけだけど」

 

 

 参加者じゃないから狙われない、などとエリカは考えてはいないが、ターゲットになりにくいとは思っている。もちろん、会場全体を狙う可能性だってあるので、完全に安全な場所など無いと分かっているのだ。

 

「万が一中止となった場合、意気込んでいた人たちは納得するのでしょうか?」

 

「ウチは『打倒一高』をスローガンに一年間過ごしてきましたので、納得出来ない人は多そうですし」

 

「それは我が四高も同じですわ。達也さんの技術力に追いつこうと、この一年相当頑張っていた先輩方もいらっしゃいますし」

 

「一高内にも、達也さんの不敗神話を止めようと思ってる人は多いと思う。もちろん、それと同じかそれ以上の人が、達也さんに担当してもらいたいと思ってるんだろうけど」

 

「確定なのは深雪、ほのか、雫の三人だけだもんね……成績上位三人には太刀打ちできないし、三人とも達也さんを希望してるわけだし」

 

「後は吉田君だね。彼のCADは達也さんにしか調整出来ないわけだし、古式魔法を使っているから、大勢のエンジニアに見せるわけにもいかないしね」

 

「あと水波も。四葉の人間と公表してから、水波もいろいろと大変なんでしょ?」

 

 

 雫に問われて、水波は無言で首を横に振る。自分がどんな存在と思われようが関係ないと開き直っているのもあるが、主の前で「たいへんだ」などと、口が裂けてもいないのだろう。

 

「実際水波は一時期クラスメイトから質問攻めに遭ってたもんね。ボクが水波と仲良くなったきっかけだからよく覚えてる」

 

「それが最初だったんですね。私はてっきり、香澄ちゃんが一方的に水波さんを気に入って連れまわしてるのかと思っていました」

 

「酷いな~。ボクがそんなことするように思ってるわけ?」

 

「入学式で司波先輩に勘違いで飛び膝蹴りを放ちかけた香澄ちゃんですから、それくらいしてもおかしくはないと考えていますが」

 

「それは忘れてよね! ちゃんと謝ったんだし、達也先輩だって許してくれたんだから」

 

「それは相手が達也くんだったからでしょ。入学早々魔法を使うなんて、本来なら停学ものだったんだから」

 

 

 姉妹喧嘩が始まりそうになったのを感じ取り、愛梨が強引に話題を九校戦に戻す。

 

「ウチの一条や吉祥寺もですが、打倒一高――いえ、打倒達也様に燃えている男は少なくないと思いますわ」

 

「対抗意識を燃やすのは良いけど、簡単に達也さんに勝てるとは思えない」

 

「達也さんは、選手として出たいと思わないんですか? せっかく一科生にも負けない魔法力を取り戻したのに、裏方に徹するなんてもったいないですよ」

 

「まだ完全にコントロール出来ているわけじゃないからな。下手をしてオーバーアタックで失格になるのは避けたい」

 

「オーバーアタックといえば、一年の時の一条の攻撃、あれは完全にオーバーアタックじゃった。相手が達也殿でなければ、一条は殺人者となっていたわけじゃよな? あやつ、反省しておるのか?」

 

「その後すぐ倒されたので、達也様に対してライバル心を燃やしてる様子でしたね。まったく反省していなかったのではないでしょうか」

 

「やはり一度、徹底的に根性を叩き直した方がよさそうじゃの。吉祥寺もじゃが、達也殿を下に見過ぎておる」

 

「まぁ実力を隠すのがお上手な達也さんですから、ちょっとくらい実力がある相手が勘違いをしてライバル視するのは仕方ないかもしれませんが、四葉家次期当主として、そろそろ本気になっていただかないと。我々四葉分家の者として、次期当主様が舐められるのなど耐えられません」

 

 

 亜夜子の言葉に、深雪と夕歌が大いに賛同して力強く頷く。深雪は分家の人間ではないのだが、そこにツッコミは入らなかった。

 

「慶春会の時も思ったけど、達也さんは相手を徹底的に叩きのめす事はしないんですよね。まぁ達也さんが徹底的に叩きのめそうとしたら、相手がこの世から消え去っちゃうのだから仕方ないのかもしれないけどね」

 

「消え去る、ですか?」

 

「夕歌さん」

 

 

 ここには達也の魔法を知らないメンバーもいるので、達也は夕歌に釘をさす。それで漸く自分が危ない事を口走りそうになっていた事に気が付き、夕歌はそれ以降口を開かなかった。

 

「そういえば達也の魔法って、いろいろと表に言えないような魔法なんだっけか? 羨ましいよな、何か凄い物を持ってるってのはよ」

 

「えっ、あ、うん……そうだね」

 

 

 レオのある意味空気の読めない一言に、隣に座っていた幹比古がキレのない相槌を打つ。それで何とかなるとは思えなかったが、全員がその話題に触れないよう努めたのだった。




何で中止にしちゃったんだろう……

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