劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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次元が違う強さ


鍛え方の違い

 達也に誘われて、幹比古とレオは道場で身体を動かしていた。

 

「運動出来るのはありがたいけどよ……この後シャワーを使っても本当に大丈夫なんだろうな?」

 

「昨日言ってたシステムの書き換え、もう終わったのかい?」

 

「一時的に書き換えるだけなら、それほど時間もかからない。そもそも書き換えが終わっていなかったら、今頃レオと幹比古は地下施設に捕えられているだろうな」

 

「そういえばゲストパスを外しても問題なかったな」

 

「何時の間に書き換えたんだい?」

 

「昨日の夜に少しな。本格的な書き換えは無理だったが、一日くらいなら問題ない」

 

「簡単そうに言ってるけど、システムの書き換えってそんなに簡単じゃないよね?」

 

「まぁ達也なら何でもありだからな」

 

 

 幹比古の疑問に対してのレオの答えに、達也は苦笑いを浮かべるが幹比古は納得したように頷いた。

 

「僕たちの常識の範囲内にいないんだったね、達也は」

 

「普通の物差しじゃ計れないからな」

 

「何だか酷い言われようだが、ゲストパス無しで動けるのは、道場や風呂場、後は居住スペースだけだからな。四葉の秘密が隠されている地下施設には、パスがあろうが無かろうが入れないが」

 

「怖いもの見たさで行ってみたい気もするが、達也に殺されるのは勘弁願いたいしな」

 

「僕はそもそも見に行きたいと思わないから」

 

 

 好奇心を懐いているレオとは違い、幹比古は本気で興味なさそうな雰囲気を醸し出している。

 

「やっぱり彼女が出来ると違うのか? 前だったら幹比古だって気にしてたはずだが」

 

「それは関係ないよ。そもそも僕は最初から、四葉家の秘密を知りたいなんて思わないから」

 

「そんなものか? まぁ、俺も達也や深雪さんが四葉の関係者じゃなければ気にしなかったかもな」

 

「何で?」

 

「自分に関係ないものを気にしたって無意味だしよ。ただ友達の家の事だから、少し気になっただけで、本気で知りたいとは俺だって思ってねぇよ」

 

 

 俺だってまだ死にたくねぇし、と続けたレオに、幹比古は感心してしまう。あの四葉家の秘密を知れれば損はないとか、そんなことを少しでも考えてしまった自分に対して、レオは純粋に友達の事を少しでも知りたいという気持ちだけを懐いていたのだから、反省と共に感心してしまっても仕方ないだろう。

 

「レオ、君って本当に凄いね」

 

「そうか? 幹比古が何に感心してるのか分からねぇが、褒められるのはこっぱずかしいぜ」

 

「そろそろ訓練を再開しようか。なんとなくだけど、エリカが乱入してきそうな感じがするし」

 

「それは俺も思う。アイツの事だから、素手でも俺や幹比古くらいなら勝てるとか思ってそうだしな」

 

 

 幹比古と顔を見合わせてニヤリと笑ったレオにつられるように、幹比古も笑う。

 

「しかし二人がかりでも達也から一本も取れないとはな」

 

「達也はけた違いに強いからね……エリカ曰く、達也はラスボスらしいから」

 

「侍朗に言ってたあれか? まぁラスボス感はするわな、達也と対峙してると」

 

 

 先ほどから何度挑んでも達也から一本が取れない。それどころか二人がかりで行っても隙すら生まない達也の佇まいは、まさにラスボスと言えなくもないとレオと幹比古は感じていた。

 

「俺は兎も角幹比古は魔法を上手く使えるっていうのに、まったくもって歯が立たないとはな……」

 

「使ったところで術式解体で無効化されるだけだし、使わない方がまだ勝機がある気がするよ……」

 

「どうした? 来ないならこっちから行くぞ?」

 

「何だか本当にラスボスみたいだな」

 

「でもラスボスって、あんなに好戦的なの? 普通部下に命じて相手を倒すんじゃないの?」

 

「目の前に現れた敵は倒すんじゃねぇの?」

 

 

 それほどゲームをしない二人からすれば、ラスボスの定義などイマイチよく分からない。少なくとも達也のような感じなのだろうという感じなので、これがゲームだったら絶対に勝てないだろうなとそんなことを思っていた。

 

「幹比古、先に俺が突っ込むから、後から援護してくれ」

 

「分かった。レオ、くれぐれも怪我をしないようにね」

 

「分かってるっての! ……ん? そういえば何回も吹き飛ばされているというのに、身体の何処も痛くないな」

 

「受け身を取ってるからじゃないの?」

 

「普通はそうなんだろうが、達也相手だと何かされてるんじゃないかって気になるのが不思議だぜ」

 

 

 実際に達也は相手に痛みが無いように吹き飛ばしたり投げ飛ばしたりしているのだが、レオと幹比古にそれを感じ取らせない程自然に行っているので、今の今まで二人は疑問にすら思わなかったのだ。

 

「とりあえず、アイツが来る前に一本くらい取っておきたいな」

 

「そうだね。エリカが来たら僕たちの訓練どころじゃなくなるだろうし、エリカが僕たちの側に加わるとも思えないしね」

 

 

 エリカだったら一対一で達也と対峙するだろうなと考え、幹比古は気持ちでもエリカに負けていると反省する。例え勝てない相手だろうが本気で挑まないと怪我をするだけじゃすまないと頭を切り替え、レオの援護に集中する事にした。

 

「うぉりゃー!」

 

「(猪突猛進な気もするけど、あれで怪我をしてこなかったのが凄いよな……やっぱり鍛え方が違うのかな)」

 

 

 どんな相手にも正面衝突なレオを見て、幹比古は自分の鍛え方の何処がいけないのだろうかと頭を悩ました。その所為で援護が遅れて、レオと仲良く達也に吹き飛ばされたのだった。




幹比古からすれば、レオも十分凄いんでしょうね

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