劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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仕方ないかもしれないな


美月の誤解

 昼休みになり、深雪たちは達也たちと食堂で合流し、達也たちが場所取りをしてくれてる間に食事を取りに行った。その深雪たちの後姿を見て、達也は疲れ切った顔でため息を吐いた。

 

「達也くん、なんだかお疲れ?」

 

「朝から九校戦の話題でいろいろと聞かれたからな。俺が知ってるわけないと分からないのか?」

 

「達也くんは情報通だし、達也くんに聞くのが一番早いって思ったんじゃない?」

 

 

 校内に限れば、達也よりもエリカの方が情報通なのだが、今回は学外の話なので、達也の方に質問が集中してるのではないかとエリカは感じていたが、質問の内容を聞いて、達也が疲れ切っている理由に納得がいった。

 

「俺が原因じゃないと散々説明しているにも関わらず、四葉家が中止を進言したんじゃないかと疑ってる連中が後を絶たなかったんだ」

 

「四葉家がそんなことして何の得があるっていうのよ」

 

「俺もそう言ったんだがな」

 

 

 達也が魔法力を完全にコントロール出来ないからとか、九校戦で活躍した深雪の映像をPRに使われるからとか、様々な憶測が飛び交っているのはエリカも聞いていたが、まさかそれを本気にしている人間がいるとは思っていなかった。

 

「達也さん、授業中でもチラチラと見られてましたからね」

 

「別に視線を浴びせられたからと言って集中力が乱れる事はないが、ああも露骨だと辟易する」

 

「達也くんがそういうって事は、相当見られてたんだね。あたしだったらそんな視線の集中砲火の中で実習なんてしたらミスしそうだけど」

 

「エリカちゃんも凄い集中力だけど、達也さんと比べるとね。私だったら、ちょっと注目されただけで失敗しそうだし」

 

「それはありそうね」

 

「エリカちゃん!」

 

 

 からかわれているのは美月も分かっているので、ツッコミもそこまで本気のものでは無かった。だが一連の流れを聞いていなかった人間は、またエリカが美月をからかい倒したのだと感じたようだ。

 

「エリカ、また柴田さんを苛めてるのか?」

 

「あたしは美月を苛めたことなんてないわよ! というか、ミキはあたしが本気で美月を苛めると思ってるわけ?」

 

「エリカならありえるとは思うけど」

 

「あたしは苛めたりはしないわよ! あたしのは愛のあるからかいだもの」

 

「からかわれてる側からすれば、苛めと大差ないって……まぁ、エリカがそんな人間なら、達也や深雪さんがここまで親しくすることはないだろうし、僕だって一応人を見る目はあるつもりだし」

 

「はいはい。ほら、美月の隣は取っておいてあげるから、ミキはさっさとお皿を取って来なさい」

 

「僕の名前は幹比古だ!」

 

 

 お決まりのやり取りをしてから、幹比古も食事を取りに行く。その後姿を見て、美月は恥ずかしそうに視線を逸らした。

 

「なに? まだ付き合ってるって実感が持てないの?」

 

「そ、そういう事じゃないけど……お付き合いするようになって、どう付き合っていけばいいのか分からなくて」

 

「今まで通りで良いんじゃない? 無理に変える必要はないだろうし、それがミキと美月の付き合い方だと思うけど」

 

 

 視線で達也にどう思うか問い掛けたエリカは、達也が頷いたのを見てもう一度美月に視線を戻した。

 

「そもそも、あのミキが付き合いだしたからといって、美月にすぐ何かしようとはしないでしょうから、美月もそんなに身構える必要は無いと思うわよ」

 

「何かって……」

 

「ん? デートとかそういう事をすぐしようなんて思うなら、とっくに告白してたでしょうから、初デートは当分の間お預けって意味だったんだけど」

 

 

 何故美月がここまで照れているのかが分からなかったエリカは、首を傾げながら達也に理由を尋ねた。一方で勘違いした美月は、大慌てで両手を振って達也に何も言わないように頼んだ。

 

「まぁ、エリカならありえそうだから、美月が勘違いしても仕方なかったんだろう」

 

「え? あたしだったらって、どういう意味?」

 

「何でもないよ! というか、エリカちゃんは私が勘違いするのを狙ってたんじゃないの?」

 

「だから、あたしが何を勘違いさせようとしたっていうのよ?」

 

「分からないならそれでいいの。というか、紛らわしいこと言わないでよ」

 

 

 何故自分が責められているのかが分からないが、とりあえず勘違いさせてしまった事は確かなので、エリカは美月に頭を下げて謝罪した。

 

「あら、エリカは何をして美月に怒られたのかしら?」

 

「別に何もしてないと思うんだけど、とりあえず誤解させちゃったみたいだから」

 

「誤解?」

 

 

 食事を持って戻ってきた深雪に一連の流れを説明すると、深雪はチラリと達也に視線を向け、そして納得したように頷いた。

 

「確かに、エリカだったら誤解されちゃうかもね」

 

「そうなの? うーん、別に他意はなかったんだけど、何を誤解されたのかしら」

 

「誤解だって分かって終わってるんだから、エリカが気にする事じゃないと思うけど」

 

「だって、何で誤解されたのか分からないとスッキリしないじゃないのよ。達也くんも教えてくれないし」

 

「達也様が教えないことを、私が教えるわけ無いじゃない」

 

「そうよねー……はぁ、なんだか仲間外れにされてる気分」

 

「エリカちゃんを仲間外れにするのは難しいと思うよ」

 

「どういう意味よ」

 

「別に、言葉通りの意味だよ」

 

 

 珍しく美月に反撃され、エリカはますますテンションが落ちたのだった。




エリカならそう仕向けたと思われそうだし
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