劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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まだまだ邪魔をしてくる連中


魔法協会からの使者

 達也は記者会見に付き合ってくれた牛山とスタッフに感謝を述べるために、会見場のすぐそばの部屋に移動した。

 

「牛山さん、こんな茶番に付き合ってくださり、ありがとうございました」

 

「いえいえ、御曹司の計画に最後まで付き合えず申し訳ねぇと思っています。ですが、御曹司ならきっと成功に導けると信じていますので、第三課一同何時までも御曹司の手下だった事を誇りに思いながら仕事をしていきまさぁ」

 

「大袈裟ですよ。そもそもさっき会見で言ったように、ハードがあってのソフトですから。牛山さんがいてくれなかったら、まだそこまでFLTも有名になっていなかったでしょう」

 

「それこそ大袈裟ですよ。俺がいなくても御曹司なら、十分あのソフトに耐えうるハードの開発をしていたでしょうし、元々FLTという名前は有名でしたから」

 

 

 牛山は毎回こうやって謙遜するが、達也は割かし本気で牛山がいなかったら自分の開発したソフトウェアは実用段階に移行していなかったと思っている。

 

「皆さんも、急な会見だったにも拘わらず、会場の整備やマスコミの対応、ありがとうございます」

 

「いえ、本部長からの命令ですし、こちらの業務を妨害されるのも困るので、貴方様が率先して対応してくれると聞いて、心から安心しましたので」

 

「そうですか。では、自分はこれで。本部長にもよろしく言っておいてください」

 

「お会いしないのですかい?」

 

「向こうは俺になんて会いたくないでしょうし、本部長ともなれば忙しいでしょうからね」

 

 

 達也は龍郎に対して特に何も思っていないが、龍郎は達也に大して複雑な感情を懐いているだろうと達也は思っているので、あえて顔を合わせる必要もないだろうと思っているのだった。

 龍郎の心情に関する推測は、間違っていなかった。更衣室で着替えを済ませて、しつこく網を張っているマスコミを避けるため、地下駐車場に向かった達也を呼び止めたのは、龍郎の部下ではなかった。

 

「司波達也様。少しお時間よろしいでしょうか?」

 

「貴女は?」

 

 

 マスコミではないと分かったが、FLTの人間でもなさそうだと達也が観察していると、女性は慌てて名刺を取り出した。その女性は魔法協会の職員だった。

 

「時間がかかる話なんですか?」

 

「お時間は取らせません。ですがお返事を頂戴したいので……」

 

 

 達也は別に魔法協会に対して悪感情を持ってはいない。彼が迷惑そうに尋ねたのは、この場を早く離れたかったからだ。彼はマスコミの嗅覚を、過小評価していない。

 だが達也のそんな感情が分からない女性職員は、ビクビクした態度で達也の問いに答えた。魔法協会が男性ではなく若い女性を寄越したのは、達也に少しでもいい印象を与えたかっただろうが、この態度では逆効果だ。

 余程男性経験が乏しいのか――性的な意味ではない――彼女は達也の視線に怯えるばかりだ。これでは、相手に特殊な性癖が無い限り、気分を害するだけである。達也には女性を怖がらせて喜ぶ趣味が無かったので、やはり不快感を覚えた。

 

「では、車にどうぞ」

 

 

 魔法協会の使者にそう促したのは、意趣返しの面が全く無いとは言えなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 魔法協会の用件は、明日来日するエドワード・クラークに、魔法協会で会ってほしいというものだった。

 

「明日の午後ですか……?」

 

「はい! 午後でしたら、お時間は司波さんのご都合に合わせますので!」

 

「随分と急なお話しですね」

 

「申し訳ありません!」

 

 

 現在、自走車は自動運転中だが、達也は規則に従い運転席に座っている。そして協会の女性職員は、助手席のドアに身を寄せていた。どうやら彼女は、男性に成れていないというより男性が苦手、もっと言えば男性恐怖症の気があるように見える。

 その怯え様に同情したというより、彼女の態度が鬱陶しくなって、達也はこの話を早々に切り上げる事にした。

 

「仕方がありませんね。では明日の午後二時に、関東支部で」

 

「よろしいんですか!?」

 

「断るわけにもいかないでしょう」

 

 

 このセリフは駆け引きではなく、達也の嘘偽り無い本心だ。正式なものではないが、エドワード・クラークはUSNA政府を代表するような立場で面会を申し込んでいる。会う前から結論は決まっているが、門前払いにするのは外交上の悪影響が大きすぎる。それを無視出来るほど、達也は傲慢でも子供でもなかった。

 

「ああ、ありがとうございます!」

 

 

 女性職員が大袈裟に感激している。その態度がますます鬱陶しく感じた達也は、道端に車を停めて、彼女を車内から追い出す事にした。

 

「ここからならそう協会も遠くないでしょう」

 

「そうですね。貴重なお時間を割いてください、ありがとうございました」

 

「いえ、移動の間ですから」

 

 

 これ以上彼女と付き合うのが嫌なのか、達也は女性職員がまだ何か言いたげだったのを無視して、扉を閉めて運転を再開した。といっても自走車に目的地の変更を打ち込み、再び自動運転で再開したのだが。

 

「魔法協会は明らかな人選ミスを自覚しているのだろうか……そもそも、俺が魔法協会の要請に応じる義理は全くもってないし、エドワード・クラークに会ってやる義理も無いという事が分からないのか?」

 

 

 外交上の問題を考慮して会う事にはしたが、結論が最初から分かっている茶番に付き合うのは、達也にとって無駄でしかないのだ。それが分からない魔法協会に、達也は何となく悪感情を懐いたのだった。




さすがに苛立たずにはいられない達也
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