劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

1394 / 2283
妥当な反応


会見後の反応 一高生編

 放課後になって、達也は校内のカフェテリアで友人と落ち合った。生徒会室で顔を合わせた深雪たちだけでない、何時ものメンバーだ。今日は車で来ているので、下校路の途中にある何時もの喫茶店が使えない。そこら中から向けられる生徒の視線が鬱陶しかったが、今日に限って言えば仕方のない事である。達也の記者会見録画が再生されたのは生徒会室だけではない。昼の食堂でも、大画面で映し出されていた。自分の情報端末に録画して視聴した生徒も多い。それだけ関心の的だったのである。当然、彼の友人たちも見ていた。

 

「達也、見たぜ」

 

「バカのお相手、お疲れ様」

 

「達也さん、あんなことを考えてらしたんですね」

 

「本当に凄いと思った。僕には到底考えつかない事だ」

 

 

 順にレオ、エリカ、美月、幹比古。生徒会組より元クラスメイトの方が、反応が開けっ広げだった。余計な感情が無いからかもしれない。

 

「恒星炉を使ったエネルギー生産プラントの計画か。達也、何か言いやすい略称みたいなもんはないのか?」

 

 

 レオが百山校長と似たような事を尋ねた。もしかしたら、多くの人が思っている事かもしれない。

 

「非公式だが、ESCAPES計画という略称がある」

 

「エスケイプス? 何の略だ?」

 

「Extract both useful and harmful Substances from the Coastal Area of the Pacific using Electricity generated by Stellar-generator、ExtractのE、SubstancesのS、Coastal AreaのCとA、PacificのP、ElectricityのE、StellarのSでESCAPES。『恒星炉による太平洋沿海地域の海中資源抽出及び海中有害物質除去』の略だよ」

 

「ははぁ……察するところ、ESCAPEって単語に合わせたんだな」

 

「ご名答だ」

 

「何からの脱出なんだ?」

 

「軍事利用からの」

 

 

 達也のその言葉に、それまで楽しそうに笑っていたレオが真顔になった。レオは兵器として開発された調整体魔法師の血を引いている。「軍事利用からの脱出」が「兵器であることを強制される魔法師の宿命からの脱出」であることを、彼は敏感に悟った。

 レオだけではなく、同じように兵器としての調整体の血を引く水波はある意味当然の事として、他のメンバーも神妙な顔になっている。特に、ほのか、香澄、泉美の、親や祖父の世代で遺伝子操作を受けた可能性が高い三人は、表情が硬かった。

 

「……そういう事か?」

 

「そういう事だ」

 

「是非とも、成功させなきゃね」

 

「大丈夫でしょ、達也くんなら」

 

 

 しんみりとした声で幹比古が呟いたのを受けて、エリカがその雰囲気を吹き飛ばすように明るく言った。それで、全員の表情が和らいだ。

 

「そうですね。達也さんならきっと大丈夫です」

 

「場所の選定は始めていると仰ってましたけど、実際には何時頃から建設を始められるんですか?」

 

 

 ほのかの信頼と言うより信仰にちかいセリフに続いて、美月が具体的なスケジュールを問う。

 

「計画はもうスタートしている」

 

「えっ? じゃあ学校には?」

 

「今までと同じで出席は免除されているが、もう少し落ち着いたら学校には通うつもりだ」

 

「そうだんですかぁ。良かったぁ……」

 

 

 目を丸くした美月に、達也が軽い笑みを作りながら答えると、ほのかが大袈裟に胸を撫で下ろした。その仕草が、下級生を含めてみんなの笑いを誘う。おそらくほのかは、達也が遠くに行ってしまうと怯えていたのだろう。

 そんなほのかに微笑ましげな表情を向けていた雫が、達也に視線を移して真面目な顔で話しかける。

 

「達也さん」

 

「何だ?」

 

「父が、会いたいって」

 

 

 雫のセリフに、ほぼ全員が驚きの表情を浮かべた。雫の父親がどんな職種の人間か知っているのと同時に、今日発表されたばかりの計画についてだろうと全員が分かっていたので、その驚きはかなり大きいものだった。

 

「プロジェクトについて、達也さんに直接会って聞きたい事があるみたい」

 

「分かった。何時、伺えば良い?」

 

 

 達也はすぐに、東道が手を回したのだろうと思い当たった。だがそれは顔に出さず、ただ真面目な表情で雫に尋ねた。

 

「日曜日に会えたら嬉しいって」

 

「時間は?」

 

「特に指定は無かった」

 

「では午後、そうだな、一時過ぎにお邪魔しても良いか?」

 

「大丈夫だと思う。都合が悪かったら電話する」

 

「ああ、頼む」

 

 

 この時間は単なるコーヒーブレイクのつもりだったが、達也にとって思いがけなく有意義なものとなった。

 

「達也くん、この後はどうするの?」

 

「そうだな……伊豆に戻る予定だったが、明日は魔法協会関東支部に、明後日は雫の家に用事が出来たからな。今日は新居に、明日は調布の家に泊まる事にするよ」

 

 すると女子陣が――美月と泉美を除く――大袈裟に反応してみせたのを見て、達也は苦笑いを浮かべた。

 

「それじゃあ、俺は深雪と水波を送ってから向かうから、ほのかたちは先に帰っててくれ」

 

「分かりました。御夕食を用意して待っていますね」

 

「それじゃ、達也くんまた後でねー」

 

 

 校門で一時的に別れ、達也は調布のビルに深雪と水波を送り届ける為車に乗り込んだのだった。




達也が新居に来ると分かり、女子陣歓喜
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。