劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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前回のIFルートの設定を受け継ぎ、九校戦を過ごした物語になっています。若干R指定高めの展開に……


続・IFルート その1

 深雪や雫は知っているが、達也とほのかが付き合ってる事は原則秘密扱いなのだ。だから相変わらず達也はモテるので、ほのかはハラハラしながら毎日を過ごしている。

 

「達也さん、浮気は駄目ですからね」

 

「分かってる。それにそんな甲斐性も無いしな」

 

 

 四月の一件から密かに付き合い始め、九校戦で埋まっていた夏休み前半も終わり、漸く恋人らしく夏休みを過ごしてる二人。達也は深雪の護衛を四葉に任せ、ほのかと一泊旅行に来ていた。

 

「それにしても、よくこんなホテルを予約出来たな」

 

「実は雫の家のコネなんです。小父様に知られちゃってお祝い代わりにって」

 

「そうか、じゃあ今度雫にもお礼を言っておかないとな」

 

 

 高校生の外泊を勧める友人の父親というのも変な話だが、今回はありがたいと達也も思っていた。

 

「そうだ! 達也さん、耳は大丈夫なんですか?」

 

「ん? ああ、もう大丈夫だ」

 

 

 モノリス・コードで破れた鼓膜は、達也本来の魔法で既に修復済みだ。だがその事を知らないほのかは、心配そうな目で達也を見ている。

 

「いくら治癒魔法を掛けたからといって、そんなに早く治る程度だったんですか?」

 

 

 達也はグルリと部屋を見渡し、盗聴器類が無い事を確認し、ほのかを抱きよせる形で耳元でささやいた。

 

「実は治癒魔法とは関係無く治ったんだ」

 

「えっと……如何いう事でしょう?」

 

「俺が本来自由に使える魔法のうちの一つで、鼓膜はもちろん一条の攻撃で負傷した内臓や肋骨も治したんだ」

 

 

 これは本来なら他人に話して良い事では無い。だが今回ほのかと出かける為に四葉本家に深雪の護衛を任せる際に、真夜からとある事を言われていたのだ。その事とは……

 

「その彼女と添い遂げるつもりがあるのなら、四葉である事を伏せ、その事以外は本当の事を話しても良いわよ」

 

 

 との事。真夜は達也の幸せを願い、そして束縛していた事を後悔しているからこそ、四葉という事以外の事を話しても良いと達也に言ったのだ。

 

「達也さん本来の魔法?」

 

「俺は基本的に二つの魔法しか自由に使えない。情報体に干渉して分解する魔法と、情報体を再構成する魔法。どちらも現代では高難度魔法とされているものだ。俺はその二つの魔法に演算領域をほぼ占領されてしまっている為に、他の魔法が自由に使えない。そしてこの二つの魔法は簡単に人に見せられるものでも無いからね」

 

 

 達也の告白に、ほのかは口をポカンと空けて固まっている。それだけ衝撃的な告白だったし、そんな魔法の存在をほのかは知らなかったのだ。

 

「もちろん他言無用で頼む。ほのかに教えたのは俺の彼女だからだ。それ以外の相手に話したらその人の口を塞がなくてはいけなくなるからね」

 

「口を塞ぐって……」

 

「そうだ。ほのかが想像した通りの事だが、死体も残らない。本当に存在を『消す』んだからな、俺の魔法は」

 

 

 達也が無頭竜を一人で潰した事も、そもそも自分たちが無頭竜のターゲットになってた事すら、ほのかは知らない。だが達也の言葉が誇張ではなく本当なんだろうと、達也の雰囲気からほのかは悟っていた。

 

「私に教えてくれたのは、達也さんが私と秘密を共有したいと思ってくれたと受け取って良いんですよね?」

 

「そうだね。ほのかがエレメンツの家系とか関係無く、この子となら一緒に居られると思ったから話した。だからほのかもちゃんと秘密は守ってくれよな」

 

「もちろんです!」

 

 

 自分の家系の事を知られてた事に、ほのかは驚きを感じなかった。苗字で分かる人には分かるだろうし、達也なら知っていてもおかしくは無いとほのか自身が思っていたからだ。

 

「それにしても、達也さんって本当に凄い人なんですね」

 

「何だいきなり……」

 

「だって高難度とされている魔法を生まれつきで使えるんですよね? それって凄い事ですって!」

 

「……だがその所為で一般的な魔法は上手く使えない、如何足掻いても国際ライセンスはCまでだろうからね」

 

「それでも! 達也さんは魔工技師としての技術もあるじゃないですか! ライセンスがCまでしか取れなくても、達也さんならそれで生活出来ますよ!」

 

「もう一つ、ほのかに言っておきたい事がある」

 

「何でしょう?」

 

「俺は既に、魔工技師として活動している」

 

 

 達也が言おうとしている事は、本来の魔法よりも有名で、そしてさっき以上の衝撃を与えるものだった。

 

「俺は『トーラス・シルバー』の片割れ、『シルバー』として収入を得ている」

 

「達也さんが……『トーラス・シルバー』……」

 

「これも他言無用で頼む」

 

 

 この短時間に衝撃的な事を言われすぎて、ほのかの頭は情報整理が追いついていない。慌てふためくほのかだが、ずっと達也に抱きしめられていた事を思い出し、一瞬で茹で上がった。

 

「あの、達也さん、そろそろ離してください」

 

「……ホントに離していいのか?」

 

 

 達也は行き過ぎた性欲は持ち合わせて無いが、性欲が無い訳では無い。もちろん同年代の青少年に比べれば無いに等しいくらいだが、まったく無い訳でもない。

 

「えっと……嫌です」

 

「俺も、ほのかの体温を感じてたい」

 

 

 まさか達也がこんな事を言うとはほのかも思っていなかった。だから出来るだけ達也に体温を感じてもらおうと、ほのかからも抱きしめ返す。

 

「達也さん、五月蝿くないですか?」

 

「何が?」

 

「私の心臓の音。凄くドキドキしてます」

 

 

 抱き合ってるからといって、相手の鼓動が聞こえるなんてことはほぼありえない。それこそ胸に耳を当てるとかしなければ……つまりはこの言葉はほのかのおねだりなのだ。

 

「……しっかりと聞こえる、ドキドキしてるんだな」

 

「だって、達也さんに抱きしめてもらえてるんですから」

 

 

 服の上から胸に耳をあて、達也はほのかの鼓動を感じる。その行為でほのかの鼓動は更に早くなるのだ。

 

「達也さん、このまま一緒に……」

 

「しょうがないな」

 

 

 この部屋にはベッドが一つしかない。これは達也たちのミスでは無く雫の父親のミス……というか確信犯だとほのかは思っている。

 フリーセックスと言われた時代は終わっているが、それでも高校生のうちに経験する人が皆無になった訳では無いのだ。

 達也が四葉だという事以外の秘密をほのかに打ち明け、それがほのかの最後の枷を取り払ったのだ。エレメンツの家系は、相手に依存する傾向がある。その依存方法も様々であり、単純に甘えるだけの場合もあれば、肉体的依存の可能性だってあるのだ。そしてほのかはその両方の特性を持っている。

 夏の甘い一夜を、達也とほのかはじっくりと過ごす事にしたのだった……




R-18にしたくなかったので、物足りない人が居るでしょうが、その場合は個々で妄想してお楽しみ下さい。

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