劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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自分的には話を作ってて辛かった……


続・IFルート その2

 北山家の別邸で、達也と雫は二人っきりで過ごしていた。今年の独立魔装大隊の訓練は去年ほど大変なスケジュールではなかったのだが、九校戦の煽りを受けて、第三課での開発、研究はより厳しいスケジュールとなっているが、それでも恋人と過ごす時間は確保出来ているのだ。

 

「達也さん、深雪は大丈夫なの?」

 

「雫が心配する事じゃない。ちゃんと深雪も分かってくれてるさ」

 

 

 達也がガーディアンとして深雪を一人にする訳も無く、また四葉も次期当主候補筆頭を危険に晒す訳が無いのだ。

 

「九校戦の間は達也さんとこうして過ごせなかったから、かなり寂しかった」

 

「さすがに学校行事中にするのはな」

 

「でも深雪は達也さんの部屋で寝てた」

 

「……気力回復の為だ。それにベッドは別だからな」

 

「そんなの当たり前! 達也さんと同じベッドで寝て良いのは私だけだもん」

 

 

 まるでほのかの依存癖がうつったかのように、雫は達也に甘えまくっている。また達也も好きなだけ甘えさせるので、雫もブレーキが利かなくなってしまったのだろう。

 

「ねぇ達也さん、九校戦の怪我、本当に大丈夫なんですよね?」

 

「怪我? ああ、問題無い」

 

 

 達也の返事に間があったのに、雫はすぐに気付かなかった。だがよくよく考えて自分が怪我した事を覚えて無いようなのはおかしいと気付き、雫は重ねて質問をする。

 

「ねぇ達也さん、深雪が言ってた『達也さん本来の魔法』って如何いう意味?」

 

「………」

 

 

 聞かれていたとは思って無かった。だが何時かは雫には話そうと思っていた内容だったと、達也は一つ息を吐き出し覚悟を決める。

 

「俺はとある二つの魔法しか自由に使えない。しかもそれはおいそれと人に見せられる魔法では無いんだ」

 

「見せられない魔法?」

 

 

 雫には、そんな魔法が存在してるなんて知識は持ち合わせていない。むしろ知っている人間の方が少ないのだから、雫が決して無知と言う訳では無いのだが。

 

「情報体に直接干渉してその構造を破壊する『分解』、それとエイドスをフルコピーして元の姿に戻す『再成』この二つの高難度魔法が、俺の魔法演算領域に居座ってる為、俺は他の魔法を使えない」

 

「えっと……それじゃあやっぱりあの一条選手のオーバーアタックは」

 

「当然喰らっていた。あの体勢で避けられる訳も無いしな」

 

 

 未だに信じられないという表情を浮かべている雫だが、四ヶ月弱達也と付き合って、こんな事で嘘を吐くような人では無いと分かってしまっている。だから余計に混乱を招くのだろう。

 

「試してみるか?」

 

「えっ、でも何か代償があるんじゃ……」

 

「神経の通わぬ無機物なら問題無い」

 

 

 そういって達也は、自分が愛用しているペンを取り出し、右手でCADを発動させた。

 

「これが『分解』」

 

「……一瞬でバラバラに」

 

 

 そして今度は左手でCADを発動させる。

 

「そしてこれが『再成』だ」

 

「一瞬で元に戻った……」

 

「これが俺の本来の魔法。本当の戦場なら『分解』も有効な攻撃手段だが、魔法競技で使うには危険過ぎるし一条のオーバーアタックなんか問題にならないくらいのルール違反だ」

 

 

 達也は実験に使ったペンをしまい、またCADもホルスターに入れ元あった場所に戻した。

 

「でも耳の鼓膜は治ってなかったんじゃ……」

 

「あれはワザとだ。さすがにあの大音響で鼓膜にダメージが無かったら不審がられるからな」

 

「オーバーアタックで無傷なのも、十分不思議だったよ……」

 

 

 本当に心配していたのだろう。雫は今更になって泣きそうな顔を達也に向けた。

 

「死んじゃうんじゃないかって。ほのかも真っ青な顔してたけど、きっと私はそれ以上に酷い顔をしてたんだと思う」

 

「悪かったな……俺に覚悟が足りなかったから雫を不安にさせてしまって」

 

 

 『本来の魔法』の事は話せても、『本来の苗字』の事については話せない。だから達也は四葉の許可が下りたからこの話をしたという事は雫には教えない。まだ彼女を自分たちの世界に巻き込む訳にはいかないのだと、自分に言い聞かせている。

 

「ねぇ達也さん、こうして二人っきりで過ごしてると、何だか結婚した気分になってくるね」

 

「いきなりだな。俺は普段から深雪と二人暮らしだからな。その気分は分からない」

 

「妹と彼女とじゃ違う気分にならないの?」

 

「違う気分にはなるが、結婚まではいかないかもな」

 

 

 達也はそういいながら雫の頭を撫でる。そして雫はそれを気持ち良さそうな顔で大人しく撫でられている。傍目から見ればこの二人も仲が良い兄妹に見られるだろう。

 

「達也さん、さっき会った人覚えてる?」

 

「すれ違った夫婦か?」

 

「うん。あの二人、私たちを兄妹だって言ってた」

 

「聞こえてたが、まぁ恋人には見えなかったにしても兄妹って感じでも無かったと思うんだけどな……」

 

「悔しいよ、達也さん。私はちゃんと達也さんの彼女なのに、妹じゃないのに」

 

 

 再び泣き出しそうになった雫を、達也は如何対処すれば良いのか悩んだ。深雪にするようにでは、自分も雫の事を妹扱いしてるのと同じになってしまうからだ。

 達也は異性と付き合った事など当然無く、また親しい友人も高校に入るまで居なかった。文武両道で若干近付きにくい雰囲気、それに加えて一年の夏休み明けからの深雪の態度も混ざって、中学時代の同級生は達也を遠い存在だと捉えていたから……

 

「ねぇ達也さん、私って魅力無いのかな……」

 

「いきなり如何した」

 

「だってこうして一緒のベッドに居るのに、達也さんはまったく触ってくれないから」

 

「あのな……俺たちは高校生だぞ」

 

 

 悪しき風習であったフリーセックスは達也たちが生まれる前に廃り、今はそう簡単に肉体関係を持つような恋人達はいない。もちろん達也も知識としてそれを知っているし、こんな状況になっても「そういう事」をしようとは思わなかった。

 だが雫は、達也になら「そういう事」をされても良い覚悟があるからこそ、一緒のベッドで生活していたのだ。

 

「私は達也さんにならされても良い。魔法師は早婚を求められるし、『インデックス』に名前が載った魔法師なら尚更だよ」

 

 

 雫が九校戦で使った魔法、『能動空中機雷』は雫が開発者として『インデックス』に載ることが正式に決定している。それゆえに雫は早く結婚し子供を生む事が求められる事になるだろう。

 

「本当の開発者さんと、その魔法の使い手の子供なら、皆納得してくれると思うよ」

 

「……女の子にここまで言われるとはな。分かった、俺も覚悟を決めよう」

 

「嬉しい。じゃあ脱がせて」

 

 

 随分と積極的だなと思いながらも、達也はゆっくりと雫の服を脱がせていく。脱がせて改めて思ったが、雫はそれほど子供体型では無いのだ。自分の服を脱がせてもらった代わりに達也の服を脱がせ、雫は顔を真っ赤に染め上げて達也に抱きしめられるのだった。




ほのかは兎も角雫は達也につけるのが辛い……でももっと辛いキャラが居るんですよね……

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