劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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一人は電話ですけど


七草三姉妹の相談

 魔法協会で聞いた話を、真由美は香澄に話していた。ついでに、通信を繋いだ泉美にもだ。

 

『つまり、ウチが光宣くんを捕らえる役目で、四葉家が病院内、十文字家が病院外の警備を担当するという事でよろしいのですね?』

 

「あのタヌキオヤジは別のシナリオを考えていたのかもしれないけど、達也くんの前ではあのタヌキも形無しだからね」

 

「お姉ちゃん、本当にお父さんの事が嫌いなんだね」

 

「個人を嫌ってるわけじゃないけどね。あのやり方が気に入らないだけ」

 

 

 策略を巡らせる弘一とは違い、真由美は直球勝負が多いので、相手のやり方が気に入らないというのは香澄と泉美にも理解出来るが、真由美の場合はどう考えても弘一個人を嫌っているような気がしてならないのだった。

 

『光宣くんが水波さんの事を好いているのは分かりましたが、水波さんの気持ちはどうなのでしょうか?』

 

「達也くんと深雪さんを守った功績として、一つだけ望みを叶えてくれるって話になったらしいのね。それで水波さんが望んだのは、達也くんの愛人枠として婚約者の中に入り、深雪さんの側に一生仕える事だったらしいわ」

 

「じゃあ、光宣はパラサイトになった意味がないって事?」

 

「そもそも水波さんを人じゃ無くすような事を、達也くんが受け入れるわけ無いと思うんだけどね……達也くんとそこまで親交があったわけじゃないから、光宣君には分からなかったのかもしれないけど」

 

『深雪先輩のお側に、一生……』

 

「泉美? 分かってるとは思うけど、あんたの場合は意味合いが変わってるからな?」

 

 

 水波が深雪の側にいたいというのは、忠誠心からきている言葉で、泉美のそれは欲望からきているのだと指摘する香澄に、真由美は小さく頷いて同意する。

 

『私は深雪先輩のお側にいたいだけです! 邪な感情など持ち合わせていませんわ!』

 

「女が女の側にいたいって思ってる時点で、邪な考えがあるんじゃないかって疑われて当然だと思うけど?」

 

『深雪先輩は真に尊敬に値するお方ですから、そう思っても仕方ないのです!』

 

「はいはい、泉美ちゃんの百合疑惑はこの際置いておくとして」

 

 

 真由美の言葉に、泉美は「どういう意味ですか!」と叫んだが、真由美も香澄も取り合わなかった。

 

「私たちがお手伝いしようとしても、達也くんや十文字くんの邪魔になると思うのよね。でも、光宣君とはその二人より親交があるから、話し合いに応じてくれるかもしれないわ」

 

「でも光宣はパラサイトになってるんだよね? ボクは前のパラサイト騒動の時は深く関わってなかったから分からないけど、パラサイトになっても聞く耳は残ってるの?」

 

『お姉様からの報告では、光宣くんは自我を保っているという事ですが、昔の資料を見た限りでは、パラサイトになった時点で自我は無くなり他のパラサイトと共有の意思を懐くという事になっていますが』

 

「他にパラサイトがいないからなのか、光宣君が九島家の人間だからかは分からないけど、とりあえず自我は保ってるみたいよ」

 

『話し合いに応じてくれたとしても、私たちでは光宣くんを説得するのは難しいと思うのですが。いざ魔法勝負になった場合でも、私たち三人が束になってかかっても厳しいと思いますが』

 

「光宣は病気がちなだけで、魔法師として超一流の部類だもんな……ましてや戦闘魔法師としての超一流だから、経験不足を差し引いたとしても、勝てそうにないね」

 

 

 光宣の実力を知っているがために、三人はいざ戦闘になった時の事を考え、手伝いを申し出るべきなのかどうか躊躇する。

 

「というか、ウチが捕まえる役目を担うのってどうなのさ。顧傑の時だってそうだったらしいけど、ウチの魔法師って大して役に立ってなかったんでしょ?」

 

「それは……智一兄さんがリーダーを務めてたんだけど、結局達也くんと十文字くん、それから一条君の三人が顧傑を追い詰めたのよね……ウチは、全く見当違いの場所を捜索してたわけだし」

 

『ウチの魔法師のレベルが低いとは思いませんが、光宣くんの捕縛には向いていないと思います』

 

「でも、師族会議で決まったわけだし、今更『出来ない』なんてあのタヌキオヤジが言うとは思えないしね……達也くんに、他の案があるのかもしれないけど、今は邪魔をしないようにしておきましょう」

 

『特にお姉様は、良かれと思って動いた結果邪魔だったという事があり得そうなので、慎重にお願いします』

 

「泉美ちゃんっ!?」

 

 

 妹の辛辣な言葉に、真由美は本気でショックを受けているが、目の前で香澄も頷いているのを見て、自分が妹たちからどう思われているのかを理解した。

 

「私って、そんなにお邪魔虫なの?」

 

「お姉ちゃんは考えて行動してるのかもしれないけど、結果として邪魔だってだけだと思うよ」

 

『お姉様は意外と情に流される事がありますので、前回克人さん側の情報を引き出す時だって、辛かったのではありませんか?』

 

「あれは、達也くんに会えなくて辛かっただけで……」

 

「兎に角、動く前に達也先輩に相談した方が良いと思うよ。もちろん、ボクたちもだけどさ」

 

『そうですわね。深雪先輩のお邪魔になることは避けなければいけませんから』

 

 

 妹たちに言われてショックだったが、達也の邪魔だけはしないようにしようと心に決めた真由美であった。




相変わらず泉美もぶっ飛んでるな……

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