劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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黒い事を普通に聞く周りも凄い……


襲撃の真相

 達也たちが食事を持って帰ってきて、腰を下ろしたのを見るや否や、エリカが興味津々な目を達也に向けた。

 

「達也くん、随分と面白い事になってたんだね~」

 

「面白くは無いと思うぞ?」

 

「まぁね。実際に襲撃が成功してたらそんな事言ってられなかっただろうけど、達也くんがいるから問題なかったわけでしょ? だから、面白そうって言ってられるんだよ」

 

「何の話だ?」

 

 

 この中で唯一、先ほどの襲撃未遂事件の事を知らないレオが首を傾げる。

 

「さっきここが襲われそうになったって話よ」

 

「はぁ? 何でそんな事になってるんだ?」

 

「それを達也くんに聞こうって事よ。それで、率直に聞くけど、何処からの襲撃だったの?」

 

「新ソ連だ」

 

「それじゃあ、先ほど達也さんがいきなり立ち上がってCADを操作してたのは――」

 

「新ソ連からの長遠距離魔法攻撃に対抗していたのよね?」

 

「黙ってやられてやる義理は無いからな」

 

 

 かなり大事なのだが、達也はまったく興味が無さそうに答える。実際、戦略級魔法『トゥマーン・ボンバ』に必要と思われる大型CADは跡形もなく消し去ったので、これ以上長遠距離魔法攻撃に備える必要は無くなったと言えるので、興味が失せていても仕方ないだろう。

 

「さっき深雪から聞いたけど、今日の天候は『トゥマーン・ボンバ』に最適だから警戒してたの?」

 

「それもあるが、ベゾブラゾフがこのまま大人しくしているとは思えなかったからな。ベゾブラゾフの為人を調べた限り、大人しく引き下がる人物ではないと思っていたし、戦略級魔法師としての任務に失敗した事も無かったようだから、必ず再戦を挑んでくると考えていた」

 

「それで、犯人がベゾブラゾフだという証拠は掴んだのですか?」

 

「ピクシーに魔法の兆候を感知したタイミングから撃退が完了するまでの間、一高周辺の魔法兆候に関するデータを保存するように命じてあるから、それを解析すればベゾブラゾフの戦略級魔法『トゥマーン・ボンバ』であると突き止められるだろう。国防軍は一度、民間人を犠牲にしてデータを取っているわけだし」

 

 

 達也のこのセリフは、国防軍に対する嫌味なのだが、それにツッコミを入れる人間はこの場にはいない。犠牲にされた民間人というのが水波だという事を知っているのと同時に、達也がいなかったらもっと大騒ぎになっていたという事を理解しているからである。

 

「じゃあ達也さんは、今回のデータを国防軍に提出するつもりなんですか?」

 

「でもそれじゃあ、達也さんの魔法も国防軍に知られちゃうんじゃ……」

 

 

 ほのかと雫が心配そうに尋ねると、達也が悪い表情を浮かべて顔を近づける。

 

「もちろん、俺の魔法に関するデータは一切提出するつもりは無い。ピクシーに命じて、俺の魔法に関するデータは意図的に破棄させたからな」

 

「そんな事が可能なんですか?」

 

「普通なら無理だろうし、俺一人でも無理だっただろうが、響子さんに教わってピクシーにその技術を与えたからな。問題なく出来ているだろう」

 

「でもそんなことして、学校側が気づかないの?」

 

 

 雫のもっともな疑問に、達也はもう一度悪い顔を見せる。

 

「一昨年までは七草先輩が堂々と嘘のデータを記録させていたから、今更気にしないだろう。たとえ気にしたとしても、こちらが改竄したという証拠はないからな」

 

「達也さんらしいね」

 

 

 雫の感想に、達也は肩を竦めるだけで何も言わなかった。

 

「達也くんがデータを提出して、世間はどう変わるかしらね」

 

「少なくとも、ディオーネー計画については見直されると思うぞ? 魔法を平和利用する目的で発表して、それに賛同していたベゾブラゾフが一切の被害を顧みずに戦略級魔法を放ったんだ。その計画について何か裏があるんじゃないかと疑う人間が出てきても不思議ではない」

 

「そうなると、達也さんの計画がより進めやすくなるという事ですか?」

 

「政府の人間たちも、自国を攻撃してきた人間が賛同している計画に進んで参加したらどう思われるかくらいわかるだろうし、そもそも何を言われたところで参加するつもりなど無いんだがな」

 

「達也くん個人の意思を無視して参加させようとしてた無能連中たちも、正式発表の後でどう変わるか見ものね。まぁ、自分たちがいかに無能だったかって知らしめられるわけだし、面白くはないと思うかもしれないけどね」

 

「そもそも達也さんの人生を縛り付ける権限なんて、何処の誰にも無かったんだから、今更何を言っても遅いとは思うけどね」

 

 

 雫の辛辣な感想に、美月が引き攣った表情を見せるが、他の面子は力強く頷き、雫の言葉に同意する。

 

「そういえば、これで十三束の奴も大人しくなるんじゃねぇか? ディオーネー計画について見直される可能性が高くなったという事は、これ以上母親に無理難題を押し付けられる心配もなくなるわけだし、達也の言ってた事が正しいって分かるだろうし」

 

「それはどうだろうな。十三束は周りの声を聴かず、自分一人で調べ上げるつもりのようだし、今回の件でそれが変わるとは思えない」

 

「そもそも達也に八つ当たりしてる時点で、自分が間違ってるって分からねぇのか?」

 

「それが分かるのなら、そもそも八つ当たりなどしないだろう」

 

 

 達也の言葉に、レオは「それもそうか」と一つ頷いて、それ以上十三束のことを話題には出さなかった。




十三束の事は、原作でも触れてないからなぁ……

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