劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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あんまり喋っていい内容じゃないと思うんだが……


真由美からの説明

 エリカと言い争っていて、それなりに時間が経ってしまっていたのに気づいたリーナは、とりあえずリビングに顔を出す事にした。

 

「あら、リーナさんじゃないの。無事に日本に帰ってこれたのね」

 

「ハイ、真由美。生憎無事に、じゃないんだけどね」

 

 

 リビングで寛いでいた真由美に、エリカは少し疲れた表情で答える。その表情が気になったのか、真由美が身体を乗り出してリーナの顔を覗き込む。

 

「もしかして、USNAでも問題発生?」

 

「えぇまぁ……USNA『でも』?」

 

 

 先程のエリカとの会話でも引っ掛かったリーナだったが、今度ははっきりとその原因が理解出来た。先程のエリカも、今の真由美も、リーナを心配するだけではなく、面倒事が増えたという感じなのだ。

 

「もしかして、こっちでも何か問題が発生しているわけ? さっきエリカが言った、ベゾブラゾフの襲撃の件?」

 

「その事はもう片付いているわよ。というか、これ以上は達也くんがどうこうする問題じゃないもの」

 

「襲撃の件も、達也が対応すべき事ではないとは思うけど?」

 

「達也くんがどう思おうと、狙われてたのは達也くんだからね」

 

 

 一方的な逆恨みとはいえ、伊豆の別荘を襲った攻撃も、先日一高上空を狙った襲撃未遂も、狙いは達也なのだ。彼が対処しなければ、相当数の死傷者が出ていた事だろう。その所為で再び魔法排斥運動が活発化されたら、ますます面倒になりかねなかったと真由美は感じていた。

 

「それじゃあ、ベゾブラゾフ以上の問題が達也を襲っているわけ?」

 

「うーん……ベゾブラゾフと条件を一緒にして良いなら、達也くんだって悩まないでしょうけども」

 

「どういう事よ……」

 

 

 リーナには今一つ理解出来ないが、相当な問題が発生しているという事だけは理解出来た。それも、達也を擁しても簡単に解決出来ない事が起こっていると。

 

「一応リーナの再従姉弟になるのかしら。九島光宣君の事は知ってるわよね?」

 

「九島家の末っ子よね? 直接の面識はないけど、とても優秀な魔法師だという事は聞いているわ。その彼がどうかしたの?」

 

「……とある理由で自らの身体にパラサイトを取り込んで、四葉関係者を襲撃したのよ」

 

「パラサイトを取り込んだっ!? でも、日本でマイクロブラックホール実験は行われていないでしょ?」

 

「前回達也くんが封じたパラサイトの内の一体は、公式上は行方不明になってるのよ」

 

「公式上? 裏では何処にあるか分かっているという事ですか?」

 

「まぁね……昨年の九校戦の裏で行われていた、パラサイドール開発の首謀者が持っていったのよ」

 

「その首謀者というのは?」

 

「……九島烈。光宣君のお爺さんよ」

 

「そんな……」

 

 

 リーナにとっても浅からぬ縁――ここにいる誰よりも縁が深いと言っても過言ではない人物が首謀者だと聞かされ、リーナは少なくない衝撃を受けていた。

 

「それで、その光宣がパラサイトを取り込んだ理由というのは?」

 

「一回目のトゥマーン・ボンバによる襲撃によって、四葉家の魔法師が一人負傷したのよ。その傷を治したいがために、光宣君はパラサイトになっても自我を保てる事を、自分の身体を使って証明したかったらしいの」

 

「負傷って、達也の魔法を使えば問題無いんじゃないの?」

 

 

 リーナは達也の魔法『再成』を知っているので、ただ怪我を治す為だけにパラサイトになる理由が分からなかった。リーナの疑問を受けて、真由美は自分の説明不足を反省し、更に詳しい情報をリーナに与える。

 

「その傷を負った箇所というのは、魔法演算領域なのよ。幾ら達也くんとはいえ、脳の無意識下にある魔法演算領域の負傷を治す事は出来ないわ」

 

「魔法演算領域の負傷……まさか、オーバーヒートを起こしたっていうの!?」

 

「そのまさかよ。彼女は一人でトゥマーン・ボンバを防ぎ切ったのよ」

 

「彼女……? 深雪じゃないわよね?」

 

 

 亜夜子と達也の会話の中で、巳焼島には深雪もついてくるという話だったので、負傷したのが深雪ではない事はリーナにも分かっていた。だがリーナは、真由美が言う『彼女』が誰なのか分かりたくなかっただけなのだ。

 

「負傷したのは桜井水波さん。リーナさんも面識はあるわよね?」

 

「水波が……彼女って確か、普通の魔法師じゃないのよね? そんな彼女がオーバーヒートを起こすまで魔法を行使したとなれば、無事で済むわけがない……」

 

「肉体的には問題ないわ……というか、魔法演算領域の負傷以外は達也くんが何とかしたらしいのよ」

 

「……それで、光宣は何故水波を救いたいの? 水波の気持ちが達也に向けられている事は、数回しか会った事ない私でも分かったわよ?」

 

「光宣君にとって、水波さんは数少ない同年代、それも異性のお友達だったらしいのよね。そんな彼女に恋慕の情を懐いてしまっても、ある意味仕方ないのかもしれないわ。ただでさえ美少年として、周りから距離を置かれていた光宣君だもの。対等ではないにしても、身構えないで接してくれた水波ちゃんの事が気になっちゃったのかもしれないわ」

 

「片思いだって分かってるのに、わざわざパラサイトに……? 随分と惚れていたのね」

 

「別のシチュエーションならロマンティックで済んだかもしれないわね……」

 

 

 事情が事情だけに、ロマンティックで片づけられないと真由美も分かっているので、彼女は少し疲れた表情でそう呟いたのだった。




一応身内になるから良いのか?

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