劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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この会頭は本編であんまり出てないな……


それぞれの意見

 さすがに一人で全てを決めるのは難しいので、達也は風紀委員会本部で風紀委員長の幹比古と部活連会頭の五十嵐鷹輔に意見を求める事にした。

 

「――僕はこのメンバーで問題無いと思うけど」

 

「こちらも同じです」

 

「本戦は兎も角、新人戦のメンバーの意見を聞きたいんだ。俺はあまり一年と交流がないからな」

 

「そう言われても、僕も特に部活に入ってるわけじゃないから」

 

 

 一年との交流で言えば、幹比古も達也とさほど変わりはない。この中で唯一交流があるとすれば、部活連会頭の五十嵐だけだろう。

 

「司波君は三矢さんと面識があるんだし、彼女の意見を聞いてみたらどうだい? 彼女なら一年の中心に位置してるし、それなりに詳しいと思うしね」

 

「成績だけで決めるべきではないと?」

 

「一昨年の君みたいな逸材がいるかもしれないし。もちろん、吉田君みたいに実力を発揮しきれていない人材もいるかもしれないし」

 

 

 五十嵐は一科生と二科生の間にある壁を取り除くべきだという考えを持っている、珍しい人物だ。元々そうだったかは分からないが、その原因を作ったのは間違いなく一昨年の九校戦のモノリス・コード――つまり達也たちだ。

 

「だが二科生から選出したとなれば、一科生のモチベーションに関わってくるんじゃないかな? あの時は緊急事態だったし、十文字先輩が有無を言わせぬ雰囲気だったから、とりあえずは何とかなったけど」

 

「今年は司波君が言えば大丈夫だと思うよ? 何せ『あの』四葉家の御曹司なんだから。十文字先輩と遜色ない威力があると思うけど」

 

「別に有無を言わせないつもりは無いんだが?」

 

 

 五十嵐の冗談に、達也は苦笑いを浮かべる。あの時も克人は別に有無を言わせぬような事はしていないのだが、彼の雰囲気とあの表情から、周りが勝手に委縮しただけなのだ。

 

「まぁ、詩奈に聞くのは良いが、そちらでも目ぼしい人間をピックアップしておいてくれ」

 

「分かった。といっても、僕より千葉さんや西城の方が詳しいかもしれないけど」

 

「あの二人が?」

 

 

 幹比古からしてみれば、自分たち以上に一科生の一年との交流が無さそうなエリカとレオの名前が出てきた事は驚きだったが、達也からしてみれば納得のいく話だった。

 エリカは侍朗を鍛えていたり、剣術部の男女部長との交流もあり、一年の実力者を聞いているかもしれない。レオの方はレオの方で、山岳部の一年たちから話を聞いている可能性があるので、五十嵐がその二人の名前を上げたのは当然だという捉え方をしていた。

 

「幹比古、後でエリカとレオをこの部屋に呼んでおいてくれ」

 

「それは構わないけど、達也が自分で呼んだ方が良くないかい? むしろ僕が呼んでもエリカは来ないかもしれないし……」

 

「そんな事ないだろ」

 

 

 幹比古の中では、エリカは自分の言う事を聞くとは思えないのだ。もちろん、達也が呼んでいると言えば来るかもしれないが、達也が直接呼びに行った方が確実だという考えに変わりはない。

 

「そもそもどうして僕なんだい? 達也はこの後どうするんだい?」

 

「そろそろ詩奈が生徒会室に戻ってきてるだろうから、意見を聞くつもりだ」

 

「あっ、そうなんだ……分かった。エリカとレオには僕から連絡しておくよ。一時間後くらいでいいかい?」

 

「あぁ、それで構わない」

 

 

 直通の階段を上がっていった達也を見送って、幹比古はその場に突っ伏す。それを見た五十嵐は、少し幹比古に同情した。

 

「大変なんだね、吉田君も」

 

「そうかな? まぁいろいろと問題はあるけど、そこまで大変じゃないと思うよ。むしろ大変なのは達也の方だと思うし」

 

「あぁ……まだいろいろと言われてるもんね」

 

 

 ディオーネー計画に参加しろと、以前ほど言われなくはなってきているとはいえ、皆無というわけではないし、アクティブ・エアー・マインの事も未だにねちねちと言っている大人もいる。確かにそこと比べれば幹比古の苦労など大変だと言えないのかもしれないけど、五十嵐からしてみれば幹比古も十分大変だと思える部類なのだった。

 

「兎に角、こっちはこっちで一年生の実力者をピックアップしてみるけど、司波君が参考にするかな?」

 

「達也は別に独裁者じゃないよ。ただ達也の観察眼が自分のより劣ってるとは思えないから、こっちが意見する前に達也の意見で納得しちゃうだけで」

 

「あっ、その感覚は少しわかる。司波君って元は二科生だったとは思えない程、魔法に詳しいし、理論分野においては二科生の時からトップだしね」

 

「今では実技分野においても一部の一科生より高い成績を残してるからね……そもそも僕より達也の方が一科に転籍するべきだったと未だに思ってるくらいに」

 

「司波君は魔工科を創設させた張本人だし、さすがにその司波君が魔工科にいないってのは、学校としても恰好が付かないと思うけどな」

 

「そもそも、達也が自分たちより魔法に詳しいってのが居心地悪かったから、技術分野に集中させる為に魔工科を作ったとか聞いたことがあるけど」

 

「誰から?」

 

「七草先輩」

 

 

 幹比古が出した名前に、五十嵐は驚きの前に納得が訪れてしまった。確かに真由美なら学校の裏事情に詳しくても不思議ではないし、その事を平気で喋ってもおかしくはない、というのが彼の中での真由美の評価だったからだ。




達也はいろいろとイレギュラーだからな……

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