劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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誰に心当たったんでしょうね……


詩奈の心当たり

 風紀委員会本部から生徒会室に戻ってきた達也を、深雪とほのかが出迎えたが、達也は二人に対して軽く相手をしただけで、作業中の詩奈に声をかけた。

 

「少し良いだろうか?」

 

「わ、私ですか?」

 

「九校戦の件で、少し聞きたい事がある」

 

「あっ、そういう事ですか」

 

 

 ひょっとして自分が何かしてしまったのではないかと思った詩奈は、はじめ達也に声をかけられた時肩を震わせていたのだが、話しかけられた理由が分かりホッとし、肩の力が抜けた。彼女の横で作業していた泉美がそんな詩奈の態度を見て苦笑いを浮かべたが、達也は詩奈の反応に対して何も言わなかった。

 

「それで、私に聞きたい事って何ですか? 一年の成績は、司波先輩もご存じのはずですが」

 

「もちろん知っているが、CADの調整が得意な人間や、学校の成績では評価されない実力者がいるかもしれないと幹比古たちに言われてな。それで、一年の事情に詳しい人間に意見を求める事にしたんだ」

 

「学校の成績では評価されない実力者、ですか?」

 

「達也さまの事ですね。達也さまの魔法は学校や軍の評価基準では測れないものですし、他にもそのような方がいるかもしれないと、吉田委員長や五十嵐会頭は思われたのでしょう」

 

「ですが、そのようなイレギュラーがそうそういるとは思えないのですが? エンジニアの方はまだ納得がいきますが、司波先輩には誰か選出したい方がいらっしゃるのですか?」

 

「特にそういうわけではないが、今年はどこの学校も『打倒一高』に燃えているらしいと聞かされ、こちらも何か策を弄さないと勝たせてもらえないのではないかという不安の声が上がっている、と五十嵐から聞かされてな。学校の成績では評価されない『優等生』を探してみてくれと頼まれただけだ」

 

 

 達也の言葉に、泉美は一応納得したように頷いたが、詩奈の表情は難しいままだった。その表情を見て、泉美はまだ腑に落ちていないのだろうと思ったのだが、達也は別の事を感じ取っていた。

 

「誰か心当たりがあるようだな」

 

「い、いえ……そういうわけではないのですが」

 

「すぐに答えてもらう必要は無い。まだ少しではあるが期限もあるし、思い出したら俺じゃなくても深雪にでも水波にでも良い。教えてもらえると助かる」

 

「わ、分かりました」

 

 

 詩奈が誰に心当たったのか、何となく分かってはいるのだが、詩奈はその相手に相談したいのだろうと察し、達也はこの場でその相手の名前を聞き出そうとはしなかった。

 

「達也様。一年生の実力者なら、エリカや西城君にも聞いてみては如何でしょう?」

 

「この後その二人にも意見を聞きに行く予定だ。悪いがまた席を外させてもらう」

 

「かしこまりました。達也様の分の仕事は既に終わっておりますので、どうぞご自由に行き来してくださいませ」

 

 

 達也がこうして動いている理由として、授業が免除されているという以外にも、生徒会業務を早々に終わらせることが出来るという面もある。深雪とほのかが達也を生徒会室から見送り、揃って詩奈に視線を向けた。

 

「な、なんでしょうか?」

 

「詩奈ちゃんは、誰を思い浮かべたのか気になっただけよ」

 

「達也さんが期待してるような人に心当たりがありそうだったから、ちょっと気になっちゃって」

 

「深雪様、ほのか様。達也さまが急かさなかったのですから、この場で三矢さんから聞き出すのは如何なものかと考えます」

 

「……そうね。ゴメンね、詩奈ちゃん」

 

「い、いえ……」

 

 

 まさか水波から助け舟が出されるとは思っていなかった詩奈は、慌てて水波に頭を下げ作業を再開する。だが深雪やほのかから向けられる好奇心の篭った視線を受け、何時も以上にミスを連発してしまい、結局泉美に手伝ってもらい漸く終わらせることが出来たのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 深雪たちが詩奈に対して好奇心を向けている頃、達也は剣道場にいるエリカの許へ、レオを伴ってやってきていた。達也の姿が見え嬉しそうにしたエリカだったが、レオも一緒という事で少しテンションが落ち着いた。

 

「達也くんがこんなところに来るなんて珍しいね」

 

「ちょっとエリカ! 『こんなところ』なんて随分と失礼じゃない? こっちは場所を貸してやってるっていうのにさ」

 

「弥生に文句を言われる筋合いはないわよ。私は相津部長に許可を貰ってるのであって、弥生から借りてるわけじゃないんだけど?」

 

「相変わらずむかつくわね! というか、いい加減私との勝負を受けなさいよ!」

 

「どうでもいいじゃない、決着なんて。というか、弥生の勝ちでいいわよ、もう」

 

「納得行かないわよ! というか、エリカの方が圧倒的に有利なのに、勝ちを譲られて嬉しいと思うわけ!?」

 

「はいはい、今度ね。さっきから相津君がこっちを睨んでるから、さっさと戻ったら?」

 

「ぐっ!」

 

 

 エリカに手で戻れと言われ、弥生は悔しそうに歯がみをしながら側を去って行く。そんなやり取りを見ていた達也とレオは、エリカに生暖かい視線を向けた。

 

「あによ?」

 

「いや、お前は相変わらずだなと思っただけだ」

 

「あんですってっ!」

 

 

 ここで何も言わないという選択が出来ないレオは、一年の事から成長していないのだろうと、達也はエリカに脛を蹴り上げられたレオを見てそんな事を考えたのだった。




剣術部の二人も久しぶりに……いや、一人か
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