劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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大人がやれよ、こういうのは……


校長たちへの説明

 真夜に報告を済ませた達也は、一度部屋に戻り制服に着替えてから登校した。登校した達也がまず向かったのは教室ではなく、校長室だ。事前に連絡を入れていたので、校長室には校長の百山と教頭の八百坂、そして達也のクラスの実技担当のジェニファー・スミス教諭の三人が待っていた。

 

「お忙しい中お時間を頂き、誠に申し訳ございません」

 

 

 達也の形だけの謝罪に対して、三者が見せた反応はそれぞれだったが、達也がその事に対して何か思う事は無かった。そもそも自分も巻き込まれた形で今の状況になっているのだ。もしここで責められたとしても、責める相手が違うと言えばそれで終わりなのだから、三人がどんなことを思っていようと達也には関係がない事なのだ。

 

「今朝発表された事について、君自身から説明してもらえるとの事だが」

 

「はい。自分の意思ではないとはいえ、説明しておく必要があると考えました」

 

「自分の意思ではない、ですか?」

 

 

 達也の言葉にスミスが反応を見せる。百山と八百坂は達也の言葉に疑いを持っているが、スミスは達也が嘘を吐く必要が無いと考えているので、達也の言葉の真意を疑う必要が無かったのですんなり質問に移れたのだろう。

 達也はスミスの言葉に応えるように、先ほど四葉家の書斎で真夜にした説明と同じ事を三人にも聞かせた。

 

「――というわけです」

 

「つまり、司波君としては今の状況は不本意であるという事ですね?」

 

「当然です。自分は一科生ではありませんし、表立って九校戦に参加したいわけではありません。ですが、既にメディアがこれだけ盛り上がってしまっている以上、今更間違いだったではすまないでしょう。また必要以上に一高に迷惑が掛かるような展開にならないとも限りません」

 

 

 達也が気にしている事が、春先にあったマスコミの襲来である事は、ここにいる三人には正確に伝わっていた。あの時の一高としての対応はどうだったのかと、四葉家や三矢家から文書で抗議されている事は、スミスは知らないが、百山と八百坂は当然知っている。なお、七草家から抗議文書が送られてこなかったのは、七草が四葉の弱体を狙っているからだろうと二人は思っていた。

 

「必要以上にマスコミを刺激しない為にも、自分は閣下の思惑通りモノリス・コードに参加しようと思っています。もちろん、他の二人は平等に選出してもらう予定ですが」

 

「そうか。我が校としては、君が参加してくれれば優勝の可能性が高まるので異存はない。教頭、生徒に対する説明は任せる」

 

「わ、分かりました。すぐに説明しておきます」

 

 

 百山に命じられ、八百坂は弾かれたように校長室から出て行き、全校生徒に向けて今回の件に対する、発表出来る範囲の詳細を告げるメールを作成するために職員室へ向かった。

 

「それでは、自分もこれで失礼させていただきます」

 

「ああ。わざわざご苦労だったね」

 

 

 百山は達也の態度を気に入らないと思ってはいるが、達也の実力は認めている。魔法科高校の校長を務めている以上、九校戦で優勝すればそれだけ新入生が見込めるので、百山にとっても今回の話は悪い話では無かった。だが事前に相談もなく発表された事が気に入らなかったのだが、達也から事情を聞いてとりあえず納得は出来たので、これ以上達也を校長室に拘束する必要は無くなったので、達也の退室の言葉に素直にそう応えたのだった。

 達也が校長室から出て行き、残ったジェニファー・スミスに視線を向け、百山は独り言のように語りだした。

 

「彼がエンジニアとして参加したとしてもそれなりの不満が上がっただろうが、選手として参加した場合、どれ程の苦情が来ることか分からない。だが、一高の校長として、勝てる人選をみすみす手放すのは惜しい」

 

「確かに彼の実績は高校生離れしていますが、彼が我が校に在籍する高校生であることには違いはありません。他校がどのような苦情を申し出てこようが、九校戦の参加資格を十分に満たしている彼を排除する理由にはならないと思います」

 

「老師もそう考えての行動だったのだろう。もちろん、一言我々に言っていただきたかったが」

 

「司波君でさえも寝耳に水だったのですから、それだけ内密に進められていたのだと思います」

 

「そうだな」

 

 

 もし達也が事前に知っていて、彼の意思で参加表明したのなら百山にもいろいろと考えがあったのだが、本人である達也ですら寝耳に水だったのなら自分が何を言ったところで意味を持たないと理解し、スミスにそれだけ答えて彼女にも退室を命じた。

 

「授業中にわざわざすまなかったね。彼の担当講師である貴女の意見も聞きたかったのだ」

 

「いえ、私がいなくても授業は成立しますので」

 

 

 今の時間、E組は実技の授業中で、講師がいなくても何とかなったのは事実だ。だが本音を言わせてもらえば、この場に自分がいた意味は殆どなかったのではないかとスミスは思っている。周りの人間が何を言ったところで、達也の考えが変わるとは思えないし、圧倒的立場が下である自分なら尚更だと。

 

「では、私もこれで失礼します」

 

「ああ、ご苦労様」

 

 

 最後に一礼して校長室を辞したスミスは、まだ残っている授業時間を確認して実習室へと戻っていったのだった。




勝てれば何でもいいのか……
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