劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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騒がしいのは何時も通り


いざ会場へ

 いろいろと問題はあったが、無事開会式前日を迎え、一高メンバーはバスで会場に向かう事になっている。なお、一昨年はいろいろとバスに関して文句を言ったり不満を抱えていた人間がいたが、昨年からエンジニアも同じバスで移動する事になった為、そんな不満を懐いている人間は大幅に減った。中にはもちろん、選手とエンジニアを同列に扱うなんて気に入らないといった思いを懐く生徒もいるかもしれないが、今年は会長以下生徒会メンバーや風紀委員の実力者がエンジニアと同じバスであることを強く望んだので、大っぴらに反対すればどうなるか、上級生になるにつれて知っているので反対意見は出なかったのだ。

 だが一応のけじめは必要だと達也が言った為、選手は前の席、エンジニアは後ろの席と一応の区別は付けたのだが、出発してしまえば席の移動は自由だった。

 

「達也様、今年は何も起こらないとよろしいのですが」

 

「そうだね。一年くらいは何も起こらない九校戦というものを味わってみたいものだな」

 

 

 本来達也の隣はエンジニアとして参加する十三束なのだが、彼は今深雪に席を譲って他のエンジニアたちと会話を楽しんでいる。また達也たちの後ろには水波と泉美、前にはほのかと雫が陣取っていて、彼が定めたルールは最早意味をなさない物となっていた。

 

「一昨年は大会に直接ちょっかいを出してきて、去年は種目を大幅に変更してきたから、達也さんは大変だったもんね」

 

「達也さんだけが大変な思いをする必要は無かったと思いますけど、達也さん以外が解決出来たとも思えないですもんね」

 

「お話を聞いただけですが、一昨年は深雪先輩を危険な目に遭わせようとしてた輩がいたとか。もしその場に私がいれば、犯人を捕まえて生まれてきた事を後悔させたというのに」

 

「その必要はありませんよ、泉美さん。深雪様に危害を加えようとした不届き物は、達也さまによって既に粛正されておりますので」

 

 

 その時の事を思い出し、ほのかと雫は少し引き攣った笑みを、深雪は嬉しさを思い出し恥ずかしそうに頬を押さえて笑みを浮かべた。

 

「そういえば、今年は飛行魔法に関しての制限は無いのですよね?」

 

「ルールは一昨年の物に戻ったという事しか聞かされていないからな。飛行魔法に関するルールが出来たのは去年だ。恐らく制限はないのではないか?」

 

「そうなりますと、深雪様が圧倒的に有利ですね。あの魔法は達也さまが創られただけあって、どなた様でも使う事が出来ますが、あの魔法を深雪様以上に使いこなせる方はいらっしゃらないでしょうし」

 

「常駐型飛行魔法は術者の想子を吸収して発動する魔法ですからね。並みの術者の想子保有量では、深雪先輩に対抗など出来ませんもの」

 

 

 泉美が感動しているのを隠そうともしない態度でほめたたえると、深雪は困ったような表情で泉美の賛辞を受けている。これはほのかと雫も詳しく知らない事だが、想子保有量では深雪よりも達也の方が圧倒的に多く、飛行魔法を一番使いこなせるのは深雪ではなく達也なのだ。

 

「そういえば達也さん、モノリス・コードで使う魔法は決めてるの?」

 

「一昨年と大して変えるつもりは無いが、今年は飛行魔法を使ってみるのもありかと思っている」

 

「ですが、大会のレギュレーション以内のCADで問題ないのでしょうか? 深雪と違って、達也さんはまだどのCADでも実力を発揮出来るわけではないのですし」

 

「どうやら今年から大会用のCADはFLTが担当したらしいし、その開発は俺も少し手伝っているから問題ない。他校のエンジニアが扱えるかはともかく、九校戦のレギュレーションに反しないよう開発した飛行魔法用CADも納品されているはずだし、それなら一高メンバーなら問題なく扱えるだろう」

 

 

 達也がいう一高メンバーというのは、もちろん三年生の事で、二年生以下はなるべくなら飛行魔法無しで戦った方が良いと考えている。

 

「そもそも飛行魔法が必要な競技は、ミラージ・バットだけだと思ってましたので、深雪先輩と光井先輩が使えれば問題無いと思っていましたが、まさか司波先輩もご使用になるとは」

 

「泉美さんは使わないのですか?」

 

「悔しいですが、私では飛行魔法を使いこなす事は難しいでしょうし、その為の練習を積んできたわけではありませんので」

 

 

 この会話から分かるように、本戦ミラージ・バットの参加メンバーは深雪、ほのか、そして泉美の三人だ。香澄も候補に入っていたのだが、彼女は花形競技よりもアイス・ピラーズ・ブレイクのように派手な競技の方が性に合っていると辞退したのだ。

 

「今年は水波ちゃんに向いている競技が無かったから仕方ないけど、水波ちゃんならスピード・シューティングとかで活躍できたんじゃないかしら?」

 

「まだ私は完全に魔法を扱えるわけではありませんので、達也さまの補佐として参加させていただく事にしたのです。もちろん、負荷を掛けない程度なら戦えたかもしれませんが、手を抜くのは対戦相手様に失礼ですので」

 

 

 トゥマーン・ボンバを一人で防ぎ切った所為で、水波の魔法演算領域は相当なダメージを負っており、まだ完治はしていない。去年のようにシールド・ダウンがないため、水波は作戦スタッフとしての参加を申し出て、達也も彼女の状態を考慮し、申し出を受け入れたのだ。




完治は無理でしょう……
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