劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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騒がしくなるのは何時も通り


入浴施設で遭遇

 ほのかと雫が部屋で休んでいる頃、深雪たちは一年の時と同じく地下の温泉施設で寛いでいた。今回は以前のように男の話で盛り上がる事もなく、普通に入浴を楽しんでいる。

 

「それにしても、エイミィもスバルも、選手として参加すればよかったのに」

 

「私はもういいかなって思っちゃったし、達也さんが担当してくれないと勝ち残れないって分かってるから」

 

「ボクは去年赤っ恥を掻いたから、出来る事なら参加したくなかったって思ってたから、選考から漏れたのは幸いだったよ」

 

「赤っ恥? 何かあったの?」

 

 

 スバルは去年のミラージ・バットで、ほのかの担当をしていた達也に宣戦布告をし、あっさりと敗れたのだ。その事を知らない深雪は、スバルの傷痕を抉るような問いかけをし、スバルは気まずそうに視線を逸らした。

 

「確かスバルは、達也さんに――」

 

「それ以上は言わなくて良いから!」

 

「まぁスバルが知られたくないというなら、私も無理に聞こうとはしないわ。ところで水波ちゃん、さっきから黙ってるけど?」

 

「会話に入る余裕が無いのです。私以外皆さん上級生ですし、去年の本戦の話は、私には分かりませんので」

 

「水波ちゃんは本戦には関係なかったものね。新人戦で活躍して、その後は達也様のお手伝いをしてたから」

 

「え、えぇまぁ……」

 

 

 具体的に何か役に立ったかと聞かれれば、車の中で籠城してた以外活躍した覚えがない水波は、お茶を濁すような答えで深雪の興味を逸らさせる別の話題を探した。

 

「泉美さんや香澄さんは呼ばなくて良かったのでしょうか?」

 

「あの二人は七草先輩とお話があるようだったから、今回は呼ばなかったのよ」

 

「そうだったのですか」

 

 

 あの二人がいてくれれば、このように肩身の狭い思いをしなくて良かったのに、とでも思ったのだろうと深雪は水波の心情を勝手に推察し、これ以上水波に話題を振るのは酷かもしれないと考え始めた。

 

「というか、何度も見てるけど、深雪のスタイルは同性の私たちから見ても凄いよね……」

 

「その気は無くても誘われたら乗ってしまいそうな感じだ」

 

「何それ。私はいたってノーマルだし、スバルやエイミィだってそうでしょ?」

 

「そりゃそうだよ。そうじゃなきゃ達也さんの婚約者に名乗り出たりしないし」

 

「ボクはいろいろと勘違いされていたけど、別に同性愛者じゃないさ。もちろん、そういう趣味の人を否定するつもりは無いけど」

 

 

 そんな話をしていると、脱衣所の方に数人の気配を感じ、深雪と水波を顔を見合わせて首を傾げた。

 

「どうかしたのかい?」

 

「脱衣所に人が……エイミィ、ちゃんと許可取ったのよね?」

 

「もちろん! でもまぁ、貸し切りじゃないから、人が来ても不思議ではないと思うよ」

 

 

 さすがに男女は別なので、そこは心配していないが、深雪たちは軍関係者だったらすぐに出ようとアイコンタクトで意思を統一した。

 

「……七草先輩? それに香澄ちゃんに泉美ちゃんも」

 

「あっ、司波かい――」

 

「深雪先輩!? まさかこのようの場所でお会いできるとは思っていませんでした! あぁ、なんと見目麗しいのでしょうか」

 

 

 香澄のセリフをぶった切って深雪の前に飛んできた泉美に、真由美と香澄が苦笑いを浮かべる。七草三姉妹の後ろには、鈴音や摩利の姿も見受けられる。

 

「何だ、司波たちも入っていたのか」

 

「えぇ。エイミィが許可を貰って来てくれたので、使わせてもらっています」

 

「あたしたちも邪魔させてもらうよ」

 

「どうぞ」

 

 

 別に深雪が所有者というわけでもないので、わざわざ断りを入れる必要は無いのだが、摩利は律儀に断ってから浴室に入ってくる。

 

「泉美ちゃん、何時までも見惚れてないで、早く洗っちゃいなさい」

 

「分かってます、お姉さま」

 

 

 真由美に注意されて漸く動き出した泉美から解放され、深雪はホッと一息ついた。

 

「深雪様、大丈夫ですか?」

 

「えぇ、大丈夫よ。それにしても、泉美ちゃんたちの用事もお風呂だったのね」

 

「そのようですね」

 

 

 真由美が七草の名前で借りたのだろうが、まさか同じ時間帯になるとは思っていなかったので、深雪はそろそろ出た方が良いかもしれないと考え出す。

 

「そういえばエイミィ、スバル」

 

「ん、なに?」

 

「私はあの家でお風呂を借りたことが殆どないから分からないんだけど、普段はどうしてるのかしら? あの時は流れでみんなで入ったけど」

 

「一人で入ったり、今日みたいに一緒に入ったりと、いろいろだね。もちろん、親しい間柄で使うから、今日みたいに中でばったり、なんてことはないけど」

 

「そう……ちょっと羨ましいわね」

 

「深雪先輩がお望みでしたら、私が何時でも――」

 

「いい加減にしなさい!」

 

「うにゃっ!?」

 

 

 深雪との混浴を申し出ようとした泉美の頭部に、真由美が振り下ろした拳骨が命中し、泉美はおかしな悲鳴を上げて恨めしそうに真由美に顔ごと向ける。

 

「何をなさるのですか、お姉さま」

 

「深雪さんに憧れてるのは良いけど、そこまで行くと最早アブノーマルな思考の持ち主よ! 深雪さんの迷惑になりかねないでしょ!」

 

「私は決してそのような邪な考えなど持ち合わせておりません! ただ深雪先輩に寂しい思いをして欲しくないだけです!」

 

「深雪様がお寂しいのでしたら、私がお供します」

 

 

 泉美よりもよっぽど健全な感じで申し出た水波のお陰で、この騒動は一応の終わりを迎えたのだった。




アブノーマルな匂いが……
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