劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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二月も終わりですね……早いなー……


新風紀委員誕生

 久しぶりに風紀委員会本部に足を踏み入れた達也は、妙に賑わっているのが気になり、壁際に立っていた摩利に視線を向けた。

 

「ミーティングの予定はお聞きしてませんが?」

 

「そうだな。あたしも伝えた覚えはない」

 

「新学期初日のセレモニーでも?」

 

「そういうのは年度初めにしかやらないよ」

 

「では委員会の集まりではないんですね?」

 

「ああ」

 

 

 それだけ確認して、達也はCADを持って見回りに行こうとした。だが数歩歩いて背後を振り返ると、さっきと同じ距離に摩利が居る。つまりは摩利も達也同様歩いたという事だ。

 

「何か?」

 

「世間に疎いのは如何にかした方が良いぞ?」

 

「主なニュースには目を通してるのですが」

 

「そうじゃなくてもっと身近な事だ。実は新しい風紀委員が来るんだ」

 

「歓迎会ですか?」

 

「いや、ここは団結などという言葉は似合わないのは達也君も分かってるだろ?」

 

 

 確かに風紀委員は団結よりも分裂、対立の方が似合ってると、達也も理解はしていた。だが末席の自分がとやかく言える問題では無いので沈黙で返したのだが……

 

「それで女子委員が珍しいから見に来たのだろう。分かりやすい連中だからな」

 

「それでは、委員長の時も騒がしかったのでしょうね?」

 

「……まぁそれは置いておいてだな……新しく来るヤツの世話を達也君、君に頼みたいのだが」

 

「……俺にですか?」

 

「君にだ」

 

 

 摩利が言い切ったのを受けて、達也は一つため息を吐いた。

 

「誰が来るのか分かった気がしますが……一年の俺に頼む問題では無いと思うのですが」

 

「君の想像が当たってると思うぞ。だから君に頼むんだ」

 

 

 摩利が期待してるのを隠そうともしなかったので、達也はもう一度ため息を吐くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 新しい風紀委員、千代田花音に大体の説明を済ませ、摩利は達也に同行するよう花音に言った。

 

「えー! 摩利さんが一緒に来てくれるんじゃ無いんですか?」

 

 

 達也は心の中で花音に援護した。もしかしたら花音の言う事なら摩利は聞くのではないかと思ったからなのだが、その考えは脆くも崩れ去るのだった。

 

「あたしじゃ参考にならないからな。やましい考えがあるヤツは、あたしの顔を見ただけで逃げ出してしまうから。その点達也君は風紀委員の中でも事件の遭遇率ナンバーワンだ。ついでに検挙率もナンバーワンだがな」

 

「なるほど」

 

 

 達也はついでなのかと聞きたくなったが、下手に聞いてまた面倒な事になるのを避ける為に沈黙を選んだ。

 花音の希望でも通らなかったのだから、自分が何を言っても変わらないだろうと諦め、花音と共に見回りに出かける達也。

 

「巡回に決まったルートは存在しません」

 

「そうなんだ」

 

「他の人が如何いうルートを見回ってるのかは知りませんが、特定のルートを見回る人が多いようですよ」

 

「司波君て適応力高いのね。入学直後の武勇伝は聞いてるわよ」

 

「あれは……まぁ、置いておくとしても、基本的に風紀委員は誰かに付き添うって事がありませんので。千代田先輩はそれだけ期待されてると言う事です」

 

「ねぇ、グラウンドの方は見回りしないの?」

 

「そちらは基本的に部活連の管轄ですので。まぁ問題が起これば風紀委員も足を踏み入れますがね」

 

「そうなんだ。でも見回るだけなら問題無いでしょ?」

 

 

 自分も陸上部だからなのか、花音はグラウンドの見回りをしたがっている。もしかしたら問題を起こしたいのかもしれないが、その根拠は無い為達也は渋々花音に付き合うことにしたのだった。

 第二小体育館では、剣術部が練習をしており、丁度休憩時間に達也と花音はやってきたのだった。

 

「司波兄、お前って見るたびにつれている女が違うのな」

 

「変な事言わないでください」

 

「そうよ、桐原君。千代田さんには五十里君が居るんだから」

 

「まぁね……」

 

 

 紗耶香の指摘に、花音は割と本気で照れていたのだが、達也は何故剣道部の紗耶香が此処に居るのかが気になってたので、花音の事には触れようとしなかった。

 

「委員長に同行を命じられたんですよ」

 

「へー。じゃああの噂も本当だったんだ」

 

「噂ですか?」

 

 

 急に話しに加わってきた三十野にも、達也は驚きを示さない。気配で傍に居るのは分かっていたし、何より桐原と紗耶香が居るのだから、三十野が居ても不思議では無いと思えるくらいにはこの三人の関係を理解しているのだから。

 

「ええそうよ。渡辺委員長は自分の跡を千代田さんに継がせたいって」

 

「だから面倒な根回しもしっかりしてるって噂だ。あの人見た目だけじゃなく中身も宝塚なんだな」

 

「へー桐原君。あたしだけなら兎も角摩利さんまで百合扱いするなんて良い度胸じゃない」

 

 

 桐原は別に百合扱いはしていない。中身が宝塚と言うのは、彼なりの褒め言葉だったのだが、花音にはそうは思えなかったらしい。

 

「ちょっと待て! 俺は別に百合だなんて言ってねぇだろ!」

 

「問答無用!」

 

 

 単純な力なら学年ナンバーワンの呼び声高い花音に、桐原は本気で慌てた。だが花音の魔法は発動せずに霧散していった。

 

「きゃん!」

 

「……予想以上の効き目でしたね。正直『快楽点』だなんて眉唾物だと思ってたのですが」

 

 

 八雲譲りの点穴術。達也は花音の背中を突いた指をマジマジと見つめていた。

 

「何するのよ!」

 

「千代田先輩、風紀委員が自ら問題行動を起こすのは止めてください」

 

「でも!」

 

「でもじゃありません。セクハラを受けた場合はあとで懲罰委員に訴追すれば良いのですから。風紀委員の証言は原則単独で証拠扱いされますので」

 

「おいっ!?」

 

 

 急に自分の立場が危うくなった桐原が声を上げる。だが達也はそれを完全に無視して花音に説教を続けた。

 

「い・い・で・す・か? 今後瞬間湯沸かし器みたいな行動は慎んで下さいね」

 

「……分かったわよ」

 

 

 達也に怒られたのが効いたのか、花音はションボリとしてしまった。その所為か、三十野がつぶやいた「今の司波君の行為もセクハラなのでは?」という言葉は花音の耳には届かなかったのだった。

 

「それで千代田先輩、桐原先輩を訴えるのですか?」

 

「ううん、今回は私も暴走しちゃったから止めておく。それに、これ以上司波君に怒られたくないし」

 

「何ですかそれは……」

 

 

 達也に怒られたのが嫌だったのか、花音は意外と穏便にこの事を済ますようだった。だが花音の目が、恐怖以外の理由で潤んでいるのに、達也も他の三人も気付く事が出来なかったのだ。




アニメ化してほしかったな……
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