劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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現実を見ようぜ


優勝に向けて

 三高が四高に敗れたことにより、一高の総合優勝が更に近づいた。もちろん、それだけのことで達也たちが油断するはずもないのだが、選手以外の間には既に終わった雰囲気が漂っている。

 

「一条や吉祥寺がいるのに、ノーマークの四高に負けるとはな……」

 

「四高の黒羽選手は、去年の新人戦モノリス・コード優勝の立役者だから、善戦はすると思っていたが、まさか勝つとは」

 

「こりゃこの大会の目玉と言われていた、一高VS三高はそれ程盛り上がらないかもね」

 

 

 すれ違う人々の容赦のない言葉に、三高選手三人はより気づかれないように顔を伏せ、そそくさと控室に駆け込む。まだ優勝の芽は残っているとはいえ、現実的にあり得ないと言い切れるほど、今年の一高はモノリス・コードに力を入れていると言える。

 将輝たちは知らない事だが、達也が自分から参加すると言ったわけではないが、彼がモノリス・コードに参加するということは、他校にとってはモノリス・コード優勝が難しくなるという事だ。無論将輝たちは打倒達也を掲げ僅かな練習期間を過ごしてきたのだが、達也と戦う前に文弥に負けたのだ。受けた衝撃はかなりのものだった。

 

「一条、吉祥寺、これからどうするんだ? まだモノリス・コード優勝の可能性は残っているが、総合優勝はもう無理だろうし」

 

 

 もう一人の選手が、落ち込んでいる将輝と真紅郎に声をかける。彼が言うように総合優勝は諦めた方がいい状況ではあるが、モノリス・コード優勝はまだ可能性が残っているのだ。

 

「現実問題として、決勝リーグに進めれば上出来って感じになっちゃったね。将輝」

 

「そうだな……油断していたわけではないが、アイツに固執し過ぎてたのも確かだ……」

 

 

 達也以外に負けるつもりなど無かったと、改めて自分たちの慢心を思い知らされ、将輝のセリフには覇気がない。つられるように真紅郎の声にも何時もの自信が感じられなかった。

 

「二大エースがそんな調子じゃ困るぜ。まだ完全に負けたわけじゃないんだし、決勝リーグで四高にお返ししてやればいいだけの話じゃないか」

 

 

 将輝と真紅郎を慰める為のセリフを言ってはいるが、言った本人もそれがかなり難しい事であると自覚している。このままいけば、三高はグループ二位で終了し、決勝リーグでは向こうのグループの一位と当たる事になる。まだ結果は出ていないが、別グループの一位の可能性があるのは一高と二高。どちらが来ても厳しい戦いになる事は明らかなのだ。

 

「将輝、爆裂の威力を押さえて牽制する事は出来るかい?」

 

「爆裂は殺傷ランクAだ。モノリス・コードで使えばその時点で失格――敗退が決定する」

 

「じゃあ他の魔法で相手を一ヵ所に押しとどめて、僕のインビジブル・ブリットで敵を倒す方がいいか」

 

「ジョージのインビジブル・ブリット対策は司波達也がしっかりとしているだろうし、九島光宣はパレードの使い手だ。視認出来なければジョージのインビジブル・ブリットは使えない」

 

「別の魔法で仕留めようにも、僕の魔法の威力じゃその間にやられてしまう可能性の方が高い、か……」

 

 

 達也だけを相手にするのであれば、それなりに戦えるつもりだったのだが、それが根底から覆ってしまったのだ。三高メンバーは気の重い雰囲気のまま、五高との試合に臨むことになったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 三高メンバーが沈んでいるのと同じころ、達也たちは六高を下して決勝進出を決め、この時点で総合二位以上が確定した。

 

「この後のミラージ・バットで私かほのかが優勝すれば、その時点で総合優勝が決定するわね」

 

「あんまりプレッシャーかけないでよ。私と深雪はミラージ・バット優勝以外に達也さんの無敗記録も懸かってるんだから」

 

「そっちの方はあまり心配してないんじゃないの? 確かに一色さんは強敵だけど、達也様が調整してくださったCADを使い、達也様が考えてくださった作戦を実行するのですから。ほのかが過度に緊張しなければ準優勝以上は確実だと思うけど?」

 

「そうかもしれないけど……私は数字付きじゃないんだし、愛梨さんの想子保有量が深雪並みだったら勝てないんだけど? 飛行魔法の起動式は公開されているわけなんだし、今年は達也さんが考案した九校戦用の飛行魔法専用CADが納品されてるわけだし……」

 

 

 達也が牛山と話し合って考案した、九校戦のレギュレーションに違反しないギリギリのレベルで飛行魔法を使う為のCADは、各校ともに採用しているはずだ。無論、ハードは同じでもソフトの違いはあるだろうが、魔法師の技量が違い過ぎればその差も決定的なアドバンテージにはならない。ほのかはそれが不安なのだ。

 

「一色さんの魔法力は、この数ヶ月一緒に過ごして分かっているのではなくて? ほのかのその心配性な性格の所為で、達也様の記録が途切れたとなれば、叔母様がほのかの婚約解消を言い出すかもしれないわよ?」

 

「こ、怖い事言わないでよ……」

 

 

 その程度の事で婚約解消するとは深雪も本気で考えていないが、それくらい脅しておいた方が余計な事に気を盗られなくて済むだろうと考えての脅しだ。ほのかもそんな事はあり得ないと分かっていながらも、もしそうなったら立ち直れないと自分を奮い立たせ、夜の本戦に向けて部屋で休む事にしたのだった。




脅しの威力が……
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