九校戦最終日、今日行われるのはモノリス・コードの決勝リーグのみで、各校の選手たちもだいたい観客席に顔を見せている。その中でも一高、二高、三高、四高の関係者たちはだいたい会場に足を運んでいる。
既に総合優勝の可能性は潰えたが、まだモノリス・コード優勝の可能性は残っているのだ。特に二高と四高の関係者たちは、この中に自分たちの学校が残っている事が嬉しく、選手総動員で応援する様子がうかがえる。
「さすがに盛り上がってきたわね。お祭りの最後はこうじゃなきゃ」
「さっきまで人が多いとか文句言ってたくせに」
「何か言った?」
「なんでもねぇよ。ところで、さっきエイミィたちに会ったんだが、別々で良かったのか?」
「あの子たちは期間中殆ど別行動だったじゃない。それに、エイミィたちは深雪たちに連れて行かれちゃったし、いない方がアンタが気楽になれるでしょ?」
「まぁな」
いくらレオがいい意味で鈍感とはいえ、大勢の女子の中に男子一人という状況は避けたいと思える感性は持ち合わせている。
「美月は既にミキを応援する事で頭がいっぱいのようだし、大勢いたらからかわれてそれどころじゃなくなっちゃったかもしれないし、別行動を選んだのはお互いの為だったのよ」
「俺たちの事情は分かったが、お互いの為ってどういう事だ? あの面子なら二科生の俺たちがいたとしても問題ないだろ?」
「選手として選ばれてもおかしくない実力者の面子だもの、二年生たちが参加枠を譲ってもらったお礼にって連れて行ったのよ。深雪たちも一緒に」
「なる、そういう事か」
レオから見ても、エイミィやスバルたちは選手としても十分に活躍できたはずだと思える実力がある。だが来年を見据えた選出に加え、エイミィやスバルに参加の意思が無かったので今回は応援に徹したのだ。
「さて、そろそろ達也くんたちの出番だし、あたしたちも応援しましょうか。まぁ、達也くんならあたしたちが応援しなくても勝つでしょうけども」
「俺もそう思うが、幹比古もいるんだ。ちゃんと応援してやろうぜ」
レオの言葉に、エリカは「それもそうね」と呟いて頷く。彼女である美月よりも付き合いが長いので、その好で応援してやろうとエリカはそんな事を考えながらフィールドに視線を向けたのだった。
一高の準決勝の相手は三高、既に総合優勝の夢は潰えており、予選も二位通過という事で関係者の盛り上がりも他の三つに比べて控えめだった。
そんな中、達也の婚約者である愛梨、栞、沓子、香蓮の四人は少し離れたところから観戦する事にしていた。理由は簡単で、心のどこかで達也を応援してしまうであろう自分たちがあの輪の中にいたら、来年以降に影響を及ぼしてしまうかもしれないと香蓮が指摘し、愛梨たちもそれがあり得るかもしれないと考えたからだ。
「ワシらの立場を考えれば、達也殿も一条たちも応援してしまうのも仕方ないのではないかの?」
「私たちはそれで良いけど、これ以上三高内がぎくしゃくするのは避けるべき。私たちが一高に通って三高の授業に参加してるのを面白くないって思ってる人間もいるんだから」
「三高にいないのに、成績上位者には名前が載ってるから余計に、でしょうけどね」
「私たちだって努力しているのですから、その結果は当然だと思わないのでしょうかね。まぁ、達也様に教えていただいたおかげで理解出来た問題もいくつかあった事は否定しませんが」
試験も一高で受けたので、三高内では愛梨たちが不正を働いていい結果を残したのではないかと噂を流した輩が存在している。無論、三高で授業に参加していたころから、彼女たちの成績は素晴らしいものだったので、殆ど相手にされていない噂なのだが、それでも自分たちが三高の足並みを崩してしまう原因になっている事を心配しての行動だ。たとえ三高の輪の中にいたとしても問題は発生しなかっただろうが、余計な軋轢を生む可能性はなるべく排除しておくべきだと沓子や栞も思っているので、無理にあちら側で観戦しようとは言わなかった。
「ここにいれば周りの目を気にする必要もありませんし、達也様を応援してしまったとしても問題ありません」
「まぁ、ワシたちが達也殿を応援してしまうのは仕方ない事じゃからな。何せワシらは達也殿の婚約者で、一条のヤツは一昨年、達也殿を危険な目に遭わせたんじゃからな。多少怪我してしまえと思っても仕方ない事じゃ」
「さすがに怪我は負わせないでしょうけども、達也さんに負けろとは思ってしまうかもしれないわね」
「そもそも一条や吉祥寺じゃ、達也様に勝てるわけありませんわ」
「残りのメンバー、吉田幹比古くんと七宝琢磨くんも実力者ですから、よほどの事が無い限り決勝進出は達也様たち一高でしょう」
香蓮のこの言葉は、達也の婚約者としてではなく、三高の――愛梨たちの参謀として冷静に戦力分析した結果だ。ここにいる三人はその事を理解しているが、もしこの場に別の三高関係者がいたとしたらどう思うか、彼女たちはそんな事を考えて苦笑いを浮かべたのだった。
将輝たちがより噛ませ犬になった……