劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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ある意味最強キャラ?


純粋な男

 深雪の相変わらずな強さに、花音と三十野はため息を吐いた。特に花音は、自分が同じ競技に参加してたことから、深雪の強さがより実感できたのだろう。

 

「司波さんの強さは知ってるけど、今年は特に強いわね」

 

「司波君が側にいるからじゃないの?」

 

「それもあるでしょうけども、多分何か事情があって本気を出せなかったんじゃないかって思うのよね。新人戦を見た時も強いなって思ったけど、今日の試合はあの時とは比べ物にならないくらいの強さよ。二年経って成長した、って理由だけでは片付けられない程に」

 

 

 ここにいる全員が、深雪の本気など見た事がない。だが花音が言わんとしている事は理解出来た。それくらい今の試合は衝撃的だったのだ。

 

「恐らく深雪さんだけじゃなく、司波君の方も相当技術力がアップしてるんだと思う。もう隠す必要もなくなったから、トーラス・シルバーとしての技術力を存分に発揮してるのかも」

 

「中条さん、なんだか悔しそうな顔をしてるけど」

 

「だって、間近でトーラス・シルバーの技術力を見るチャンスだったのに、私は人混みが苦手という理由でテレビ観戦を選んじゃったんですもの……当時『もしかしたらそうなのかも』って思ってたけど、司波君に聞く事は無かったし、もし確信出来てたらいろいろと聞いてみたかったのに……」

 

「そういえば中条はデバイスオタクだったな」

 

 

 CADの事になると我を忘れて語りだす癖があるとは聞いていた服部だったが、実際にあずさがCADに関して熱く語る場面に遭遇した事はない。二年生の時、達也との決闘の際にあずさが熱く語っていたのだが、その時服部は意識が朦朧としてよく覚えていないのだ。

 服部にツッコまれたからではないが、あずさは自分がヒートアップしている事に気付き、恥ずかしそうに視線を下に落し誤魔化そうとしている。

 

「中条さん、そんなにシルバーと話したいなら、達也くんに頼んで時間を作ってもらいましょうか?」

 

「本当ですか! あっ、でも司波君の現状を考えたら、私とお話ししてる余裕なんてないんじゃないでしょうか」

 

「あぁ、例のエネルギープラント計画だね。僕も興味があるから、一度司波君に話を聞いてみたいと思ってるんだけど……市原先輩も詳しくは分からないって言われたんだよね」

 

「国家プロジェクト級の事業だって言われてるものね。当事者じゃなきゃ分からない事だって沢山あると思う。でも啓なら理解出来るとあたしは思ってるわ」

 

 

 花音の微妙なフォローに、五十里は曖昧な笑みを浮かべる。婚約者が自分の事を信じてくれている事は嬉しいのだが、五十里自身自分が達也程の理解力があるとは思っていないのだ。だから過度な期待をされてもそれに応えられるかどうかが不安なのだろう。

 

「昨日の試合でも思ったが、やはり司波が担当した選手はかなり有利なのだろう」

 

「俺も担当してもらった事があるから言えるが、アイツが調整したCADはかなり使いやすいぜ。スペックが低い大会用のCADでも、普段とまったく遜色ない出来に仕上げてくるしよ」

 

「大会用のCADはかなりスペックが低いのに、あれだけのチューンナップをしてくるとは、さすがは司波君、と言ったところなのだろう」

 

「少なくとも僕には出来ない芸当だよ。僕だけじゃなく、九校戦に参加しているすべてのエンジニアにだって出来ないだろうけども」

 

「そう考えると、カーディナル・ジョージより司波の方が厄介だったんだな。味方だったからあまり意識してなかったが」

 

 

 他校――三高と一高以外の学校の評価は、真紅郎<達也だったのだが、達也を敵として考えていなかった桐原は、今更ながらに達也の厄介さに気が付いた。

 

「司波が考案する作戦は、どれも理に適っていた。だがそれを思いつくだけの実戦経験が無かったから、素直に受け入れる事を拒むヤツもいたらしいしな」

 

「そもそも司波君に担当して欲しくないという男子が多かったと聞いているぞ。元二科生だという事を気にしてたようだが、司波君の実力はそんな事を気にする必要がないくらいずば抜けていたからな」

 

「そうやって受け入れてくれる人ばかりじゃなかったのよね……私も二科生だからってそれだけで下に見られてたし」

 

 

 この中で唯一二科生だった紗耶香がそう呟くと、数人視線を紗耶香から逸らした。ここにいる面子はそれ程ではないにしても、一科生だから二科生だからという理由で相手を判断する事が皆無だったわけではない。特に服部は、達也が二科生だからという理由で下に見て、痛い目に遭った過去がある。

 

「そういえば壬生は二科生だったな。桐原や三十野とよく一緒にいたからすっかり忘れていた」

 

「沢木君はあんまりそういう事を気にしてなかったもんね」

 

「同じ学校の仲間だからな。一科だろうが二科だろうが関係ない」

 

「お前のそういうところは羨ましく思える」

 

「そうか? 何を羨んでるのかは分からないが、服部にそういわれるのは悪い気がしない」

 

「相変わらず皮肉が通じない奴だ……」

 

 

 素直に喜んだ沢木を見て、服部と桐原は顔を見合わせてため息を吐いた。何故二人がため息を吐いたのかが分からない沢木は、軽く首を傾げたが深くは考えなかったのだった。




考えなしとも言える……
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