劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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暫く小春メインで話を進めていきます


先輩の説得

 生徒会長選挙も終わり、ある程度落ち着きを取り戻した第一高校だったが、論文コンペティションに向けての代表三人の選出が近付いてくるにつれて、再び喧騒を取り戻しつつあった。

 

「なあ達也、何で達也は参加しなかったんだ?」

 

「あっ、それアタシも気になる」

 

「私もです」

 

「実は僕も気になってたんだ。あれだけ短時間であれだけの小論文を書ける達也なら、じっくり時間をかければ論文コンペティションに参加出来るだけの論文を書けると思うんだけど」

 

 

 最近の1-Eの教室では達也がコンペティションに参加しないのはおかしいのではないかという雰囲気が日に日に増していたので、痺れを切らせたレオを筆頭に達也に直撃したのだ。

 

「いや、俺はそもそも論文コンペティションの存在を知ったのが最近だからな。その時には既に選考の為に提出する論文の提出期限が終わってたからな。それにあまり興味も無かったし」

 

「そうなの? 結構有名なんだけどな……九校戦とは違って二位以下にも注目されたりするくらい、魔法雑誌に取り上げられたりさ」

 

「悪いが雑誌は読まないからな。それに本当に注目されるべき事なら、新聞なりに載せたほうが注目されると思うのだが」

 

「それは……そうだけどさ」

 

 

 達也の興味の薄さに次第に幹比古までもが興味を失いかけた。だがクラスメイトはその事で納得はせずに、さらに達也に追撃を試みる。

 

「もし達也君に関心がある内容で論文を書けって言われたら、さすがに達也君も書くよね?」

 

「そもそも関心の無い事について論文を書けといわれた時点で断るだろ」

 

「そっか……」

 

「じゃあもし達也が選考されるとして、その論文の内容は何だと思う?」

 

「さぁ? 実際にやった訳でも無いし、もしもの話しに花を咲かせる趣味は無い」

 

 

 エリカやレオの追撃も、達也にはまったく響かなかった。美月にいたっては追撃する前に撃墜してる感じだったのだ。

 

「ごめんなさい、司波君は居るかしら?」

 

「遥ちゃん。達也になんの用だ?」

 

「小野先生でしょ! アンタちょっと気安いのよ」

 

「ウッセイな! 遥ちゃんが良いって言ってるんだからオメェが口出しする事じゃねぇだろがよ!」

 

「何ですって!」

 

 

 エリカとレオの言い争いに目もくれずに、達也は遥に視線を固定し用件を尋ねる。無言のプレッシャーに負けた遥は、達也をカウンセリング室に連れて行くことにしたのだった。

 

「それじゃあ、何時終わるか分からないから先に帰っててくれ」

 

「分かった。僕も二人を止めなきゃいけないしね……」

 

 

 この騒動を止める作業をしなくてもいい達也に羨ましげに視線を向けた幹比古だったが、その視線は当然の如く達也に黙殺されるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 カウンセリング室に来た達也は、先客が居る事に驚いた。普段から存在を探ってる訳ではないので、達也もいきなり目の前に人が現れればそれなりに驚くのだ。

 

「平河先輩、如何かしたのですか?」

 

「司波君……小野先生に呼ばれて来たんだけど、ちょっと待っててって言ってどこかに行ってしまって……」

 

「小野先生なら此処に」

 

 

 逃げようとしていた遥の首根っこをガッシリと掴み、達也は小春の目の前に遥を突き出す。

 

「痛い痛い! 逃げないから放して!」

 

「本当ですね? もし逃げ出そうとしたら、今度は容赦しませんからね」

 

 

 何の説明も無く逃げ出そうとした遥に鋭い視線を向け、達也は遥を解放した。

 

「イテテ……えっとね、平河さんが論文コンペティションの代表候補だって事は前に話したわよね?」

 

「お聞きしてますが、それと今回の呼び出しと如何繋がるのですか?」

 

 

 本音を言えば、達也はとっとと話しを終わらせて図書室へと行きたいのだ。引継ぎ作業もスムーズに終わり、比較的時間の余裕が取れる今、達也は図書室の地下資料を漁りたいのだ。

 

「えっと……とりあえず座って? ちょっと長くなるかもしれないから」

 

「いえ、俺はこのままで構いません」

 

「私が構うのよ! 背の大きい男の子が腕組みしながら壁に寄りかかってこっちを睨むように見てたら如何思う? 怖いでしょ!」

 

「……その代わり関係無いと判断したらさっさと帰りますからね」

 

 

 達也は別に睨みつけていた訳では無い。元々細い目が少し寝不足で細まっていただけで、達也には遥を睨みつけて怖がらせる気など一切無かったのだ。

 

「とりあえず説明だけは聞いてちょうだい。九校戦の時に、平河さんが担当した子が事故に遭ったのは司波君も知ってるわよね」

 

「小早川先輩ですよね。その現場にいましたので当然知ってますが」

 

 

 言外にさっさと説明を済ませろといわれた感覚に陥り、遥は説明を急いだ。

 

「その事故がきっかけで平河さんが自信を失ってるのもこの間話したわよね?」

 

「ええ」

 

「そして場合によっては司波君に説得を頼みたいとも」

 

「引き受けたわけではありませんが」

 

「でも平河さんの住所を渡したでしょ? 一回くらい訪ねたんじゃないの?」

 

 

 遥の発言が初耳だったのか、小春は驚いた表情を浮かべていた。

 

「小野先生……平河先輩の了承無く俺に住所を渡したんですか?」

 

「君なら悪用はしないだろうと信じてたからね」

 

「………」

 

 

 無言のプレッシャーにカウンセリング室の空気が重くなる。その空気を払拭させるが如く遥が説明を続ける。

 

「それで、これはカウンセリング部からの正式なお願いなんだけど、司波君に平河さんの説得をお願いしたいの」

 

「何故俺なのですか? そもそも俺と平河先輩にそれほど面識はありませんが」

 

「君なら難なく出来そうだから? とりあえず推薦したのは私だけども、まさかホントに君に頼る事になるなんて思って無かったから」

 

 

 面倒事の原因は遥のようだと、達也は責めるような視線を遥に向ける。その視線に耐えられるわけも無く、遥は逃げ出すように話題を変えた。

 

「このまま行けば平河さんは論文コンペティションの代表に選出されるわ。でもこのコンディションでは本番までもたないと思うの。だから説得に協力して! 何とか退学は思いとどまってもらったのよ!」

 

「でも私、小早川さんの人生を狂わせておいて自分だけ……」

 

「前にも言いましたが、あの事故は平河先輩の所為ではありません」

 

「でも司波君は気付けたのに私は! 私は……」

 

 

 泣きそうになった小春を見て、遥は人の悪い笑みを浮かべていた。

 

「司波君、女の子を泣かせちゃ駄目でしょ」

 

「別に俺が泣かせたわけでは……」

 

「罰として今から平河さんをお家まで送り届けてあげなさい。その間に説得もお願いね」

 

 

 断れないように遥が仕向けてきたと、達也は気付いたのだが、如何も対処出来ないのでそのまま小春を家まで送る事にしたのだった。

 事情は深雪にメールで伝えたのだが、家に帰れば質問攻めだろうなと思い、少し気分の落ちた達也だった……




千秋に恨ませるには、小春を完堕ちさせれば良いんですかね……とりあえずは学校に来てますし……
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