劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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どっちも所属は一緒だったのに……


元軍人VSパラサイト

 リーナは右手に拳銃、左手にナイフを構えてレグルスを迎え撃つ構えを取った。だが彼女に襲いかかったのはレグルスではなく、海中から飛び出したデネブだった。

 

「リーナぁっ!」

 

 

 デネブがリーナを愛称で呼んだのは、親愛の情からではない。余計な事を考える余裕が意識から消失して、かつての習慣が蘇っただけだった。

 

「レイラっ!」

 

 

 リーナもそこは、勘違いしなかった。彼女は海面から飛び出し、上から襲いかかってくるデネブに魔法を向ける。加重系攻撃魔法『ハンマー』。敵の存在を投影図で確認し、見えている面に対して圧力をかける魔法だ。左側面から加えられた衝撃を、デネブは右方向への移動魔法で緩和した。十数メートルの近距離に、レーザースナイピングの気配が生じる。リーナはミラーシールドを展開するのではなく、ウェポンベルトに差したままのナイフをレグルスに放った。音声コントロールではなく思考操作型CADによる『ダンシング・ブレイズ』だ。

 ナイフはリーナが手で触れる事無く、ナイフのホルスターから飛び出してレグルスを狙う。レグルスが体制を崩したことにより、赤外線レーザー弾は空へ逸れた。

 リーナが放ったナイフはレグルスの背後で反転し、レーザースナイピング用の武装デバイスに襲いかかる。機関部にブレードが刺さった武装デバイスを、レグルスが放り投げた。武装デバイスが海面で爆発する。レグルスは左腰から前に突き出しているグリップを右手で握りしめて、引く抜いた。薄く幅の狭い金属ベルトが華奢な剣、レイピアに変わる。無論、単に突き刺す細剣ではない。金属のベルトはレグルスの放出系魔法により、全体が良くしなる電撃ブレードに変わった。

 その変化に注目している余裕は、リーナには無かった。加重系攻撃魔法『ハンマー』が、今度はリーナへと襲いかかる。彼女が使った『ハンマー』より威力は上だ。

 

「シャル!?」

 

 

 続けざまに加重系魔法がリーナを攻撃する。

 

「……馴れ馴れしいのよ」

 

 

 ベガが堤防に上がってきたのは、リーナが大きく内陸側へ後退した後だった。リーナは拳銃とナイフを構え、油断なく左右へ目を配る。

 正面にベガ。右にレグルス。左にデネブ。そしてその背後から、パラサイト化したスターダストが次々に上陸してくる。しかしリーナは、一等星級三人の相手で精一杯だ。スターダストまで、手が回らない。

 

「貴女たちもパラサイトになったのですね」

 

 

 状況の打開を試みて、リーナが母国語でベガとデネブに話しかける。ベガはリーナの言葉に反応を見せなかったが、デネブは眉を小さく上下させた。

 

「パラサイトに成った今なら、真実を知っているはずです。私がパラサイトを呼び寄せてなどいないと。私が日本に内通したなどというのは、冤罪であることを!」

 

「日本に内通していないのだったら、何故日本に亡命した!」

 

 

 デネブが興奮を露わにリーナに叫びかける。

 

「身を守る為ですよ。貴女たち、反逆者から。そして私は四葉家次期当主の司波達也の婚約者の一人。表面上はスターズを抜けてはいなかったが、本当は帰化していたことを貴女たちも知っていたはずです」

 

 

 リーナは表面上、冷静に言い返した。心の中はデネブに負けないくらい荒れ狂っている。リーナはそれを意志の力で抑え込んでいた。

 

「そうね。あの時は言い掛かりだったわ」

 

 

 ベガの口調は、冷静とは言えなかったが興奮してもいなかった。彼女はリーナに嘲笑を向けていた。

 

「でも、今はこうして日本の民間軍事企業に手を貸している。ステイツの軍人であったくせに、ステイツに敵対している」

 

「日本はステイツの同盟国です。日本が新ソ連に攻められている時に、一緒になって破壊工作を企むなんて不誠実な真似が許さるはずないわ」

 

「それを決めるのはペンタゴンよ。前線の軍人である私たちじゃない」

 

「クッ……」

 

 

 ベガがリーナをやり込めている間にも、スターダストは守備隊に攻撃を加えて徐々に内陸はと攻めあがっている。リーナにもそれは見えている。だが目の前の三人に背を向ければ、斃れるのは彼女自身だ。それが分かっているリーナは、身動きを取れない状態になっていた。

 

「裏切り者のシリウス。貴女がここにいてくれて良かったわ。ステイツに敵対した現行犯で、貴女を堂々と粛清出来るのだから!」

 

 

 ベガがそう言い終えるのと同時だった。ベガ、デネブ、レグルス。三人のスターズ一等星級隊員、USNAトップレベルの魔法師と融合した三体のパラサイトが、一斉にリーナへ襲いかかった。デネブが移動系魔法で間合いを詰め、大型ナイフで斬りかかる。同種の魔法で距離を取ったリーナに、デネブが拳銃を発砲。リーナもこれに応じ、シールド越しの撃ち合いになる。そこにレグルスが自己加速魔法で突っ込み、スタンブレードをシールドに叩きつける。足が止まったリーナに、ベガが加重系魔法で攻撃。リーナが分子ディバイダーで重力場を切り裂く。正しくは、空間に対する分子ディバイダーの事象改変と加重系魔法の事象改変で定義矛盾を引き起こし、魔法を強制終了させた。

 その影響はベガだけでなく、リーナにも返る。シールドが揺らぐ。レグルスのブレードから放たれた電撃がリーナの魔法障壁を破壊し、デネブが放った拳銃弾がリーナの左肩を捉えた。




ペンタゴンもまともに機能してないけど……
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