劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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久しぶりに出すと口調が……


辛辣な評価

 久しぶりに戻ってきたので、達也は各所の点検を兼ねて屋敷の中を散策する――といっても、異常があれば気配で分かるので、ただ単に暇つぶしという名目が強いのだが。

 建物の中を見て回り、庭に出たところで達也は自分に近づいてくる四つの気配を感じ取り足を止める。一連の騒動が起こってからというもの、まともに会話出来る時間が無かったので、多少早足なのは仕方ないのだろうと思いながら。

 

「達也様っ!」

 

「愛梨、少し落ち着け」

 

「も、申し訳ございません! 私ったらはしたなく廊下を走ったりなどして……」

 

「いや、その辺りは気にしなくて良い」

 

 

 お嬢様育ちの愛梨からすれば、廊下を走るなど恥ずかしい事なのかもしれないが、真由美やエリカがしょっちゅう駆け回っているのを知っている達也からしてみれば、そのくらいで恥ずかしがる必要はないと思っている。ちなみに、深雪も偶に廊下を走ったりするのだが、走ってる本人は達也に知られていないと思っているのだが、達也はその事も知っている。

 

「達也さん、お久しぶり」

 

「達也殿とこうして話すのは、USNAが余計な事を計画して発表した直後以来かの?」

 

「その後、達也様はトーラス・シルバーじゃないかと騒がれたり、ディオーネー計画に参加しない代わりにESCAPES計画を発表して世間を騒がせたり、USNAから来たパラサイト退治に奔走したりと忙しかったので仕方ありませんが、日に日に愛梨の機嫌が悪くなっていくのを見ていると、少しくらい他の方に任せて、達也様は落ち着かれれば良いのにと思ったりもしましたが、これからはそんな心配は無用なのですよね?」

 

「まだ細々としたことは残っているが、こっちに戻ってこれない程忙しくはならない予定だ」

 

 

 いろいろと裏に隠されていた事を暴露した所為で、USNA軍や新ソ連政府は混乱に陥っているが、達也にそれをどうにかする理由も必要もない。自分が原因でそうなったといわれればそうなのだが、そもそもあちらが先に仕掛けてきた事であり、自分に降り懸かる火の粉を振り払っただけだと公言した時のマスコミの反応は、意外な事に達也に同情的だった。

 

「散々達也様を悪者だと決めつけ、とっととUSNAに行けと言っていたメディアですら、今ではUSNAや新ソ連の対応を叩いていますからね」

 

「最初の方は達也殿の妄言だとのたまっていたのにの。世間から賛同が得られないとみるや否やすぐに方針転換してエドワード・クラークやベゾブラゾフ叩きを始めたからなぁ。まぁ、エドワード・クラークに関しては息子がパラサイト発生の原因であり、USNA軍に空前絶後の被害を及ぼしたわけじゃし、言い逃れは出来ないじゃろうな」

 

「そもそも、達也さんを宇宙に追いやろうとした時点で、こうなるって分かってたんじゃない? 真の力を開放した達也さんなら、エドワード・クラークの周辺だけを吹き飛ばすことだって出来るだろうし」

 

「さすがにそんな事は出来ないし、したらこちらが悪者になるだけだ」

 

 

 達也の魔法『マテリアル・バースト』は、いくら加減したとしてもかなりの範囲に被害が及ぶ。自分の身を守る為にエドワード・クラークの周辺を吹き飛ばしたとなれば、世間からのバッシングは避けられなかっただろうし、このような魔法を使う人間を地球で生活させてはいけないという声が強まる可能性すらあった。

 

「ディオーネー計画への対処が済んで、漸く落ち着けると思った矢先のパラサイト事件ですからね。達也様が穏便に済ますつもりは無いという事は、九島家の末路を見て納得しました」

 

「脅されていたならともかく、積極的に光宣に協力していたわけだからな。俺が穏便に済ませようとしても、最早俺たちだけでどうにか出来る事ではないからな」

 

 

 四葉家だけでなく、十文字家や七草家、間接的にではあるが一条家も巻き込んでの大騒動にま発展してしまったので、九島家への処分は師族会議で話し合われる事になり、お家御取り潰しの上当主である真言は大罪人としてそれ相応の罰が下されることが決定している。

 

「九島家の末路を考えると、リーナ殿は一刻も早く苗字を『四葉』か『司波』に変えたいのではないのかの」

 

「それを言うのであれば、私たちだってどちらかの姓を名乗りたいですわ! たったそれだけとはいえ、達也様との関係を更に強めたという証明になるのですから」

 

「そういえば、新戦略級魔法師となった一条が、自信満々に司波深雪に求婚したらしい」

 

「あらそうなの? そう言えば一条は、達也様が戦略級魔法師であり、一条とは比べ物にならない程の魔法の持ち主だって知らないのでしたね」

 

「それで、深雪嬢はどうしたのじゃ?」

 

「こっ酷く振った上に、一条家に四葉家から抗議文書を送りつけようとしたらしい。ただ御当主様が抗議文書は認めなかったらしいけど。ただ今回の件で一条もかなりダメージを負ったらしく、司波深雪に対して求婚する気力がなくなったみたいだから結果オーライ?」

 

「まぁ、最初から達也様と張り合って勝てるわけ無いのだから、さっさと諦めればよかったものを」

 

 

 だんだんと一条に対する辛辣な発言になってきたのを感じたのか、四人は達也の方を見てバツの悪そうな表情を浮かべたのだった。




沓子は特に難しい……

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